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プロローグ

 ゐつもの昼下がり。
 此処は桜田家のリビング兼薔薇乙女の社交場である。
 今更説明も糞も無いが、皆で紅茶を楽しんだり、時には闘争したりする場だ。
 取り敢えず今は平和そのものであり、各々が楽しい時間を過ごしていた。
 が……そこへ恐慌状態の真紅が乱入した事で、事態は一変する――。

 ドアの音がした。
 同時に轟く、ガタリ、と言う大きな音。
 皆が一斉に其方を向くと、伏した第五ドール真紅の姿。
 場の空気が一瞬、凍り付く。
「真紅ッ!?」
 逸早く駆け寄る蒼星石。
 倒れた真紅を抱き起こし、呼びかける。
「どうしたです!? しっかりするですよ!」
 半歩遅れた翠星石が青褪めつも、揺さぶりながら叫ぶ。
「……ったわ」
「!? 何ですか? 聞こえねえです!?」
「……見てしまったのよ」
「見たって、何を見たんだい真紅!?」
 慄く双子と、その背後から心配そうに覗く雛苺と金糸雀。
 だが、真紅は場の状況とは不釣合いに、頬を朱に染めながらこう言った。
「見てしまったのよ。JUMがその……マ、マス……マス……」

「ゲェーッ! マジですか!? あのチビがマス掻きなんて」
「その言い方ははしたないのだわ翠星石!」
「ひぃ!? ゴメンですぅ!」
「J、JUM君が、お……オナニーを」
「蒼いのも止すのだわ! せめてマス……マス……」
「もうマス大山か増田キートンで良いのかしら! 乙女はそんな事口にしないんだからッ!」
「あああ……私は此れからJUMとどんな顔をして会えばいいの……」
 あたふた騒ぐドールズ。まさに周章狼狽。
 されど、その中に一体……場の空気を理解せぬ者が居たッ!

(うゆ……みんなの言ってるコトが良く分からないのよ)
 雛苺だッ!
(そうだ……! JUMに聞けばいいのよ!)
 首をかしげながら、リビングから廊下に出る。
「あれぇ、何処へ行くのかしら雛苺〜!?」
 一人気付いた金糸雀に声に振り返り、

「“おなにー”が何だかJUMに聞いてくるの〜」

 と言って奴は走り去ったッッ!!!

「マズイのかしるあぁぁぁ――――ッ!!?」


 そのころ、JUMの部屋――。
 彼は真っ白に燃え尽きていた。
 elegantlyにオナニーしてmoodilyにザーメンをブッ放したのを真紅に見られたが故である。

(終わりだ……)

 おまけに、オカズは真紅の無防備な寝顔の写真(寝てる隙にデジカメで撮った)であった。
 薔薇乙女全員の写真でローテーションしている内の一枚に過ぎないが……。

(ふ……僕のペ○ニスを見て怯えた顔でイッてしまうなんて……僕はヘンタイだ)

 JUMはつい数分前までの光景を追想し、自嘲する。
 だがこの姿さえ虚勢、空元気で、本当はこんな事を考えるほど心の余裕は無い。
 内心、他のドールに知れて、それから自分がどう見られ、扱われるかが心配で仕方ないのだ。
 そこへ雛苺がやって来た……。

「JU――――N!」
 助走を付けたジャンプでJUMの膝に乗り、にっこり笑顔を見せる。
「はは……また抱っこか? 空気読めないチビだな……」
「えへへ……あのねー、ヒナJUMに教えて欲しい事があるのよー」
「教えて欲しい事……?」
「JUM、オナニー教えてなのー」


『何イイィィィィッッッ!!!??』

 薔薇乙女一同、廊下で盛大にズッコケる。
 JUMは椅子からずり落ちかけたが、辛うじて止まり、呟く。
「せんずり……か」
「ねーねーJUM〜早く教えて〜」
「よぅし! 一丁伝授してやるか!」
 そう答えると、雛苺のドロワースに手を掛けて脱がしてまった。
「あっ、やー」
 嫌がってスカートの上から押さえようとするも、既に下穿きはJUMの手の中だ。
「こんなのズボンみたいなの穿いてたら邪魔だろ?」
 ひらひら目の前でちらつかされるドロワース。
 雛苺は困った顔つきで取ろうと手をバタつかせる。
「ヒナのドロワース返してなの〜」
 囚われの下着に目が行っている隙に、秘所にJUMの手が触れた。
 固く閉じた割れ目にそって指で数度なぞられる。
「…………?」
 雛苺の手が止まる。
 不意に股間を撫でられた感触に目を白黒させている。
「JUM〜」
「ん……どうだった?」
「……変な感じ。でも……もっとして、なの」


(なぁッ!? マ!? マ、マス…マス……な の だ わ)
(益荒男 か し ら!)
(み、みんな落ち着くんだ! あれはオナニイじゃない!)
(キィ――ッ! 何であんなチビとなんですか!!? JUM! 前でも後ろでもくれてやるから止めるですぅ!!)


 ドアをちらりと開けた隙間から現場を覗き込み、声を殺して悶絶する乙女達。
 そんな彼女等を他所に、JUMは雛苺の手を取り、下腹部へ持っていく。

「ほら、自分でやってみな」
 JUMは誘導してやりながら、雛苺に自らの手で陰処を探らせ始める。
「ん……気持ち良いの……」
「そっか、じゃあ一緒に胸も触ってみな」
 JUMの言葉に、雛苺は自分から胸を摩り、乳首を摘んだ。
「うゆ……すごいの、頭がぼうっとなるのに体はビクッてなるのよ」
 少しずつ押し寄せる快感に羞恥も忘れ、雛苺は手淫を続ける。
 ただなぞるだけでなく、割れ目を指で抉じ開けて擦り上げたり、包皮の上から陰核に触れたりした。
 敏感な部分を弄る両手の動きがどんどん速くなり、やがて口から甘い吐息が漏れる。
 愛蜜が貝の口を湿らす頃には、指はもう秘裂に挿し込まれ、中を掻き混ぜていた。
 グチュグチュと粘液が立てる音とともに
「ひゃん……! あひっ、ひぁ……ひぃん!」
 雛苺は歓喜の悲鳴を上げる。
 感じるのは『大好き』な少年の膝の上と言うのもあるだろう。
 その大好きな男は先程から痛いほどに勃起し、一物が少女のお尻の下で苦しげに押し込められていた。
「はぅっ、はぁ……あぅ! …………!」
 目に涙を溜めながらも決して止まらない手淫に腰がうねる。
「あぁぁぁぁぁ――――ッ!!!!」
 そして遂に、指を奥深くまで埋没させたまま、雛苺は絶頂を迎えた。
 体が反り返り、くたりとJUMの腹に凭れかかった。
 酷く脱力した様に、JUMは思わず雛苺の顔を覗き込む。
「おい、大丈夫か!?」
「うゆ……気持ち良かったの」
「そ、そうか」
「うん……でも、もう自分の指じゃ満足できそうにないの……」
「ゑ? あ、じゃあ僕がやってやるか?」
 少々面喰ったJUMの言葉に雛苺は頭を振り、

「ううん……ヒナはね、こっちが欲しいの……」

 パンパンに張ったJUMの陰茎を、ズボン越しに撫でた。

「こっち、ってお前なあ」
「太くて硬くて暖かくて……きっとすごく気持ち良いわ」
 少し悪戯っぽい笑みを見せて、雛苺はジッパーに手を掛ける。
 JUMは困り顔で見てはいるが、鼻息も荒く口元も緩んでいる辺り、乗り気だった。
 息子も準備万端。トランクスから顔を覗かせた途端、弾かれたように屹立する。
 先洩れを照り輝かせながら、膣道で暴れ回るのを今か今かと待っているのだ。
「だから、JUMのこれをヒナの中に入れて」
 雛苺だって目をキラキラ輝かせて、とんでもないことを口走っている。
 するなら今の内。
 理性など蚊帳の外だ。

「よし! やろう、今すぐ!」

 JUMは雛苺の腰を浮かせると、そそり立つ肉棒で狭い膣口に押し入った。
「うっ、あ……キツ」
「あうっ…うぅぅぅ……!!!」
 粘膜同士が擦れながら深みへと嵌まってゆく感触に、二人は呻く。
 JUMは初めて女を抱く悦び。
 雛苺は愛しい少年と結ばれる悦び。
 互いに今満たされようとしている実感に打ち震えながら、二人の体は繋がっていた。

「JUM」
「ああ、いくぞ」

 腰が動き出す。

 動く度に、グチュグチュと音が鳴る。
 粘液が混ざる淫靡な音だ。
「う……んん……」
 音とともに空間に洩れる息。
 先ほどの自慰よりも切なげだが、どこか嬉々としている。
「ううっ、ふぅ…うぅん……んはぁ」
「ハァ……ハァ、いいぞ」
 JUMも雛苺も頬を真赤にしながら、互いを探り合うように体をくねらせ、絡ませる。
 行為前の興奮もあってか激しくはあるが、それ以上に粘着質。
 激情的で甘ったるく、ねちっこくもある交わり。


(ヒィ――――ィ!! い、入れ……)
(ああ……JUM、雛苺……)ガクリドタッ

 ……JUMと雛苺がセックスしている、という現実。

(チクショ――――ッッ! 何で、JUM……JUM……悔し〜いですぅ……!!!)
(すす翠星石!)
(も、もうJUMを殺して翠星石も死ぬです……ギギギ)
(落ち着いて! ちょ、如雨露しまって!)

 目の当たりにしたギャラリー達は、当の本人らよりもある意味乱れていた。
 気絶する真紅、泣き喚く翠星石、おろおろする他。
 しかし、各々をまるで嘲笑うかのように、愛し合う二人の営みは続く。

「ああ……JUM、あはぁ…ん、…ん!」
 捲り上げられたスカートから忍び込んだJUMの左掌は雛苺の右の胸に当てられ、
 指先は紅味がかった桜色の実を転がしたり、摘み取るように弄んでいた。
「気持ち良いか?」
「うん、すっごく気持ち良いの……特に下のトコおぉッ! あぁッ!!」
「ココが良いんだろ?」
 無論、右の手が休んではいない。
「…んもぅ!! JUM、そんな…強っ! ……しないで! やぁん!!!」
 下腹部のなだらかな丸み。柔らかくすべすべした恥丘に沿って這わされている。
 さっきから、陰部に生る実の包皮を優しく剥いて、その核を抓み、捏ね回し、擦り上げていた。
 お陰で雛苺の秘部からは熱い液が溢れに溢れ、繋ぎ目から零れ落ちるどころか、JUMのトランクスも
 ズボンもビッショリと濡らしてしまう程だった。
 もう二、三度絶頂を迎えている。
 JUMも我慢の限界。
 今すぐにでも雛苺の中で果ててしまいそうだった。
「ひ、雛苺! 僕、お前の中で…!」
「うん! JUMでヒナの中をいっぱいにしてぇ!」
 蕩けそうな顔でのやり取りからほんの数秒。
 JUMが雛苺の最深部に到達した瞬間、
 二人の体が跳ね上がり、ガクリと落ちた。

 ドアの向こうで、
 ギャラリー達も崩れた。

「……やっと終わった」
事後――。

 快楽の余韻と全身の疲労感を楽しみながら、二人は抱き合っていた。
 存在を確認し合うように、離れてしまわないように、
 この時が少しでも長く続くように。

「JUM……」

 不意に雛苺が口を開く。

「ん…… !?」

 何だ? と聞こうとしたJUMの唇を、小さな唇が閉じる。

「……こら」
「えへへ……」

 してやったりと大輪の笑顔の雛苺。
 JUMは笑いながら髪をなでてやる。
 その様子は親子でも兄妹でもない。
 小さな恋人達。

「えっち、またしようね」



 ドアの向こう――。

 つまり、廊下。
 真紅はようやく意識を取り戻し、状況を把握した。
 JUMと雛苺は結ばれてしまったのだ、と。

「はあ……あんなお子様にJUMを盗られてしまったのだわ」

 トボトボと廊下を去る。

 しかし、此処で気付いておくべきだった。

 他のドールが居ない訳を。
 一人、置き去りにされた理由を――。