| EMセミナーに参加して |
平成26年5月 | 小金芳弘 | |
| 私は5月24日(土)、東京国際フォーラムで(株)EM生活社が開催したEMセミナーに参加した。以下はその報告というよりもむしろ、それまで私が抱いていたEMと環境問題に関する疑問とそれに対する私なりの解答であって、これを機会にEMというものを知らなかった人たちにこの問題の持つ性質と重要性を理解して頂けたら幸いである。 1 EMとは何か? EM(Effective Microorganisms)−有用微生物群―とは、30年ほど前に琉球大学教授比嘉照夫氏が開発した製品であって、農業・畜産・環境・建設・工業利用・健康・医学などの分野で活用され、現在世界150ヵ国余りに普及している。 これが生まれる契機となったのは、教授の著書「新・地球を救う大変革」(2012年8月、サンマーク出版)によれば、1968年に彼が九州大学の大学院でミカンの品質を良くする研究に従事していた時、光合成細菌というものに出会いそれを使って栽培したミカンの味が不思議に良いのに気付いたので、それから色々な細菌を集めて試したことだった。ただその頃の彼は化学肥料や農薬を信奉していたので、細菌の利用は品質対策の一つとしか考えていなかった。 その後、母校の琉球大学にもどって助教授となった1972年頃、農薬の影響でひどく健康を害したことから化学的製品の恐ろしさを知り、それに代わるものとして微生物の研究に本格的に取り組むようになった。その後いくつかの体験を経て、微生物を一つずつではなくいくつか組み合わせて使うことによってその能力が飛躍的に向上することを発見したことがEMの開発に繋がったと言う。 このように、教授が元々は農薬や化学肥料に替わる土地改良資材として作り出したEMが産業技術に替わってこれからの日本(と世界)の発展を牽引する機関車となり得ると考えるようになったのは、1986年のチェルノブイリ原発事故後にベラルーシで10年以上に渡って実験を重ねた結果、それが放射能汚染を減少させる効果を持つことを実感したためだと思われる。 その後、1999年12月には教授はNPO法人地球環境・共生ネットワーク―Uネット―を設立し、(株)EM研究機構、(株)EM生活社、(株)EM研究所および多くの会を傘下において数々の活動を行うようになった。そして、東日本大震災が発生するとこのグループの活動は更に活発化し、今は全国で千数百団体、約30万人ものボランティアが各地域で各種の活動に取り組んでいる。 以上に述べたようなことは、私が今年の2月7日に世界平和教授アカデミーの季刊誌「世界平和研究」に比嘉氏が「EMによる福島の放射能汚染対策の成果」と題して提出した報告を読み、22日に彼に直接会って話を聞きその著書を読むようになってから知ったことであって、それまでは、古くからの友人で今は農業をやりながら地域で活動している人から化学肥料や農薬の代わりになるEMというものがあり、色々言う人はあるが自分の経験では好かったということを、それもその少し前に初めて聞いたくらいだった。 2 環境汚染との戦いから体制との戦いへ 私にとって最大の疑問は、EMという生物技術の製品が単に化学的製品の代替物として強力であるだけでなく、核分裂によって生まれる放射能被害の除去ないし軽減についても有効だということがもし事実なら、原発事故によって大きな被害を受けた上に今も汚染水を処理できずに苦しんでいる日本にとってこの上もない朗報であるのに、それが事故後3年も経った今でも新聞やテレビで全く伝えられていないのは何故か?ということである。 考えてみればこのことは、放射能対策だけでなく汚染対策一般についても同じであって、私自身は化学的製品と違って生物学的製品が汚染対策として有効であろうこと、および将来的にはそれが前者に取って代わるだろうことを20年前から考えてはいたが、それがEMという名前を持ち多くの国で使われていることは、数か月前まで全く知らなかった。 その原因は、この問題が全国紙やテレビに全くと言って好いほど取り上げられることがなかったためであって、これは知り合いの雑誌編集者、証券会社社員、経済企画庁で一緒に働いた仲間たちに聞いてみても全く同じだった。そこでこの問題をインターネットで検索してみると、ずいぶん前からEMという製品の能力を信じる者と信じない者との間で論戦が繰り広げられていることが判った。 マスコミが提供する情報とインターネット上に飛び交う情報の間に大きな落差があることは最近のSTAP細胞問題でも明らかになったが、EMはSTAP細胞とは違い実際に広く使われている製品であり、それが放射能汚染を含む環境汚染に対して強力な武器になるかどうかということは、今の日本のマスコミが連日のように取り上げてもおかしくないほどの大きな問題である。それなのに実際は、福島をはじめとして多くの東北地方の住民と他地域からのボランティアたちの支持があるという事実を報じないだけでなく、それに対する根強い反対があるということも報じてはいない。その理由を私なりに考えて得た結果を述べると以下のようになる。 EMが環境汚染対策の武器として出発した時、その能力が大きければ大きいほど、巨大企業が生産する農薬や化学肥料などの汚染源の市場を奪う可能性は大きいので、甚大な被害が予想された。しかし環境汚染を防ぐことは初めから国家の重要な政策課題だったので、その目的自体にケチを付けることはできない。そこで企業側は、色々と悪意のある風評を流す一方で、EMの有効性には科学的な根拠がないという文句を付けた。 マスコミにとっては、EMが汚染を伴わないで農業の生産性を上げたり厳しい規制をしなくても川や海の浄化を進めたりすることができるとすれば、その普及が進むことに文句の付けようはないが、自分たちの大事なスポンサーである巨大企業が困るような情報は流せないし、特定の商品の宣伝になるという苦情も考えられる。そこで、科学的な根拠のない情報を流すことは無用な混乱を招くので差し控えるということにした。 更に、EMが放射能汚染対策としても有効かどうかということになると、問題は営利企業の間の争いではすまなくなり、原発の安全性や核のゴミの処理の問題を含む研究開発や法制制度にまで関係してくるので、専門家の権威などもからんで国家の体制にも影響を及ぼすようになる。マスコミがその体制の中で自分の意見を言うことが使命だとすれば、何も言えなくても当然かも知れない。 しかしEMの開発者である比嘉氏とその陣営の人たちはそのようなことは考えず、ひたすら国民と人類のためだと信じてそれを普及しようとしているので、この運動はある意味では、かつての革命家たちと体制との戦いにも似た様相を呈している。この場合の主要な武器は資金と情報だが、EMはそれ自身が強力な商品なので軍資金が不足する恐れはないし、マスコミが味方をしてくれないならインターネットを使って、いくらでも発信したい情報を発信することができる。 3 科学革命への道 私がEMを知った当初からその陣営を支持したのは、大量のエネルギーを自然界から抽出して投入することによって生産性を上げる産業技術は、このまま行けば環境を修復不可能にまで破壊することが必至なので、それを防ぐためには、自然のエネルギーを遥かに効率よく利用できる仕掛けを遺伝子の中に持っているに違いない生物を対象とする生物学の知識にもとづく生物技術を利用するしかない、と思ったからである。 従って、生物技術による製品は化学的製品のように自然を痛めつけることなく動物や植物を育てるだろうということまでは予想できたが、既に汚染されている川や運河までを浄化できるとか、まして核分裂から生まれる放射能に対する武器として使えるとかまでは、想像もできなかった。 しかし、EMを使って各地で行われた自然環境の回復のための活動の数々の成果を示されると、それが物の起こす環境汚染だけでなく放射能のような波動が起こす汚染に対抗する手段としても有効だということを信じざるを得なくなった。微生物の組み合わせによって生まれるEMの能力は、人間が一人では到底できない仕事も何人かが協力すればできるようになるのと同じように、元の微生物たちが持っていたものとは異質で巨大な能力になると考えることができるからである。 そう考えると、EMがそのような能力を持つという説には科学的な根拠がないという主張は、微生物の持っている遺伝子を組み合わせると元のものとは全く違う能力が生まれる可能性を考えられなかったために出てきたものだということになる。この争いを決着させるためには、EMが放射能汚染に対する武器として実際に有効かどうかを見るために、現在東電が大量に溜め込んでいる汚染水にEMを投入して、汚染水何万トンに対して放射能が何ベクレル、有害なセシウムが何グラム減ったかどうかを試してみることが条件になる。 そして、もしそれが「事実」だということになったら、その次は「何故」そうなのかを、微生物学を含む生物学はいうまでもなく、素粒子やその波動の性質を探求する部門までを含むすべての科学が連合して解明に努めるべきである。このような遺伝子の持つ力の秘密を他の自然界の構造と関連させて解き明かすのには何十年も何百年もかかるかも知れない。しかしそれは、これからの科学の進歩にとって不可欠であるだけでなく、その過程では、核のゴミをどう処理するかという問題から原発をどうするかという重大な政策問題についてまで、合理的で実際的な解答が生まれることも期待できる。 4 セミナーの印象と感想 以上のような認識を抱いたまま私は、5月24日のセミナーに参加した。その参加者の大部分はEM普及のために活動しているUネットの会員ではなく、これからEMの使用者になって貰いたい人たち―いわば将来の顧客―だと思われたが、東京国際フォーラムのCホール(定員1500人)というかなり大きな会場に、恐らく口コミで誘われた人たちが7割ぐらいは入っており、世話役のスタッフもたくさんいて、これは私が想像した以上に大きな組織だと実感した。 そこでは午前中は、白鳥哲監督の映画「祈り―サムシンググレートとの対話」の上映と監督の講演があり、午後は、EMに関する予備知識を持たない(であろう)人たちに対しての説明を3人の人が行った後で比嘉教授の講演が行われた。 その時に私は、マスコミが沈黙を守っている理由として、原子力の安全問題については政府の専管事項になっているので口は出せないと言っていることを知ったが、それはマスコミの責任回避のための建前にすぎないと思う。政府だけが核技術の安全性を守れるとか事故後の後始末を適切に行えるとかいうことではないことは、東電の事故後に明らかになっているからである。いずれにしてもこの問題に関する私の意見は、3の最後に述べたものと変わることはなかった。 参考 「小金芳弘のホームページ」 「EMを原動力とする第二の産業革命」 「EM革命の戦略」 小金芳弘「産業社会の過去と未来」(2013年1月、東海大学出版会) |