佐賀市ガス事業民間譲渡反対の闘いについて

1.はじめに
 私たち佐賀市ガス労働組合が全水道本部及び九州地本拠点闘争として取り組んでまいりました 「佐賀市ガス事業民間譲渡反対の闘い」は2002年12月27日、これまで闘争の基本方針として 掲げてきました『民間譲渡反対』の旗については降ろさざるを得ないと判断し、今後は、民間譲渡 に伴う勤務労働条件の確立や、その後の都市ガス事業の動向を監視するなど、闘う方針を変更 することと致しました。
 「佐賀ガス闘争」は、佐賀市が2000年7月18日に市長の私的諮問機関として「佐賀市行政改 革推進会議(以下、推進会議と略)」を設置し、8月22日の第2回推進会議でガス事業の民間売 却が提起され闘いが始まって以降、2年半に及ぶ極めて長い闘いとなっております。
 この間、全国の全水道の仲間は勿論、地域の労働組合や市民団体及び都市ガスをご利用のお 客様など多くの関係者の協力、支援を得て闘ってまいりました。この場を借りまして、心から感謝 申し上げます。
 『民間譲渡』の旗は降ろしましたが、民間譲渡に伴う勤務労働条件や引継業務への対応など多 くの課題や問題が残されており、闘いは継続しております。
 改めて、闘いの経過の概略と今後の考え方について報告させて頂き、これまで支援していただ いた皆様方のご理解を頂きたいと考えております。
2.3月(2002年)市議会までの経過
(1)推進会議
1)  佐賀市が「行財政の健全化・効率化などの意見をまとめる」ことを目的に、14人の委員で構成する 推進会議を設置し、第2回推進会議で論争のタタキ台として、「佐賀市行政改革推進のため取り組む べき事項(私案)」が出されました。
 この私案は、市が行政改革に取り組む課題として16項目を提起し、その中で≪官と民の役割分 担について≫の項で、「地方公共団体が住民福祉のために直接行わなければならない必要性が薄 れてきた事項」として、「ガス事業の民間売却」を提起したものでした。
2)  この動きに対して、佐賀市ガス労働組合は「私案に対する見解」をまとめて、推進会議の委員宛に示 し、その後も、議論の節目で「見解」をまとめ各委員にガス事業の公営存続を訴えるなどの対応を繰り 返しました。
3)  2001年3月の第8回推進会議で「中間報告」が整理され、27日に市長に手度されました。その 中では、「ガス事業については、極めて近い将来、大幅な規制緩和が進むことは確実である。従って、 これまで以上に大きな競争と自由化が到来することが予測され、併せて38億円とも試算される熱量変 更事業を実施した場合、従来どおり安定した経営と住民サービスが維持できる保証もない。なお、『黒 字経営の今、なぜ譲渡なのか』との意見もあつたが、むしろ経営が安定し、大幅な規制緩和を前にした 現在が譲渡のタイミングといえる」とされ、「以上、総合的に判断すれば、公営ガス事業の今後のあり 方として、民間への譲渡を有力な選択肢とすべきである」とされたのです。
 なお、「関係者を交えた検討委員会の設置」や「民間譲渡の根拠が乏しい」など6項目の反対意見も 付記されました。
 私たちは、「中間報告」を受け、直ちに「声明」を発表し、内外に闘う決意を明らかにしました。
(2)ガス事業問題検討委員会
1)  佐賀市は、推進会議の「中間報告」を受けて、「ガス事業問題検討委員会(以下、検討委員会と 略)を設置し、ガス事業の今後のあり方について検討を進めることとしました。
 しかし、この「検討委員会」は、「中間報告」にある「関係者を交えた検討委員会の設置という提 言とは異なり、市の助役を筆頭に収入役や部長クラスによる内部組織であり、構成そのものに疑 問を持たざるを得ないものでありました。
2)  「検討委員会」は第1回を4月28日に開催し、7月13日まで合計7回が開催されました。
 「検討委員会」ほ非公開での議論となったため、詳細な議論内容はわかりませんが、その後公開 された議事録を見る限り、なぜ「時期を失することなく民間に譲渡すへきである」との結論になったの か、全く理解できない議論経過でした。
 特に、ガス事業管理者は最後まで民間譲渡に反対の立場を主張しており、他の委員からも民間 譲渡に反対や疑問の意見が投げかけられています。そのことも含めて、民間譲渡の理由の矛盾が 明らかになり、最終的には「官と民の役割分担を明確にすべきである」という一般論のみしか残りま せんでした。
3)  しかし、佐賀市行革推進本部(木下市長が本部長)は、7月24日に市の執行部の基本方針として、 「市営ガス事業については、行政改革の一環として民間に譲渡すべきである」との決定をしました。
(3)市民・都市ガス利用者との共闘
1)  ガス事業民間譲渡については、労使間決着を基本としながら一方では、多くの市民の日常生活に直面 する問題であり、ガス事業に関連する労働者の雇用と労働条件にも重大な影響を及ぽす問題であること から、市民、関係団体、地域の労働組合などの協力を得て、「ガス事業民間譲渡反対」の運動を作り出 そうと考えました。
2)  その結果、市民団体代表、有識者、ガス関連団体、労働組合などの協力のもと、2001年8月5日に 「公営ガスを守る佐賀市民の会」が発足しました。
3)  「市民の会」は、総会での取り組み方針に基づき、市民にガス事業民間譲渡反対の理解を求めるために、 チラシ配布、地域の学習会、街頭宣伝活動などに取り組みました。
 また、市長や政党・議員に対する要請や市議会の傍聴なども合わせて取り組みました。
 特に、署名活動については、全水道と共に取り組み、市長宛に22,190筆、市議会議長宛に21, 153筆という多くの署名を集めることが出来ました。この署名については、3月議会に「ガス事業廃止 条例案」が提案される動きが見られたため、2002年2月8日に提出されました。
4)  その他、市長に対する「公開質問状」や市主催の「市民説明会」への対応、市民の会が主催する「公開 討論集会」などの開催など、幅広い活動を繰り広げられました。
(4)団体交渉など労使間協議
1)  佐賀市ガス労働組合は、全国的に公営ガス事業の民間譲渡の動きが強まっていることから、労使協譲を 通じて、公営ガス事業を守り、市民のためのガス事業の発展と健全経営に向けて努力することを再三に亘 って確認をしてきました。
 そうしたことから、推進会議の論議が始まった時点から事業管理者と市長との協議を求め、事業管理者に これまでの確認どおり「ガス手業は公営で守っていく」としましたが、市長は推進会議の論議中であること を理由に団体交渉拒否の態度をとり続けました。
2)  「検討委員会」の設定前後にも、当局と団交を行い「公営での継続」を確認するなど、節目では三役折衝も 含めて労使協議で「検討委員会」に臨む姿勢などを確認しました。
3)  「検討委員会」での「民間譲渡」の方針決定を受けて8月に入りガス局ほ、突然「民間譲渡に伴う勤務労 働条件について」として、団交を申し入れてきました。
 その後、そのことを巡って
-1-約束不履行に対する謝罪
-2-民間譲渡の具体的な根拠・理由
-3-民間譲渡そのものが労使協議事項であり、一方的に取り組みを進めないこと
 などを申し入れ、団体交渉を重ねました。
(5)議会対応
1)  「ガス事業民間譲渡問題」については、労使協議による解決を基本としながら、市が「検討委員会」を 設定した段階から、労使協議を無視して「民間譲渡」を強行に推し進めようとする姿勢が判明したことか ら、市議会各会派の議員に対してその不当性を訴え、理解を求める取り組みを進めてきました。
2)  私たちは、労働組合と協力関係にある政党のに対して、推進会議で民間譲渡問題が取り上げら れた投階から、状況説明と協力要請を行ってきました。
 特に「検討委員会」が設定された段階から、市議会で「労使間協議や関係者との協議を十分に行 うべきである」との追求を要請し、市当局も「関係者と十分話し合いを持ち、理解を求めるように努 力する」と約束せざるを得ませんでしたが、結果的には約束は果たされませんでした。
3)  このような状況のなか、市議会で否決決定できる体制を作りあげるため、各会派、議員に佐賀市ガス 労働組合の見解をまとめた文章などを持って説明・要請を繰り返しました。
(6)3月市議会
1)  2002年3月市議会では、「ガス局廃止条例案」が提案され、18・19日の建設企業委員会で議論が なされました。
 建設企業委員会で提案説明後、市側は突然「民間譲渡の契約方式は随意契約を優先したい」と発言 し紛糾、19日も長時間に亘って議論が行われ、採決の結果、賛成4・反対4の可否同数となり、委員長 が採決権を行使し5:4で可決されました。
2)  しかし、議案は、市の財産処分に関する特別な案件であることから、本会議では2/3の賛成が必要であり、 25日の本会議では、反対15、賛成20、棄権1で否決決定されました。
3)  否決決定がされましたが、木下市長は採決の前のテレビ報道で「議案が否決されても早い時期に再提案する」 と発言し、議会終了後も同様の発言を繰り返しました。
3.3月〜9月市議会の取り組み
1)  ガス事業の民間譲渡については3月議会で否決決定され、本来であれば、この時点で決着がついたことになる のですが、この間の市長の言動などから、「近い内の再提案もあり得る」ことを想定し、直ちに団交を開催しました。
 4月4日および18日の団体交渉においては、
-1-労使合意のないまま議会提案したこと
-2-民間譲渡の提案理由の不当性
-3-議会終了後の市長発言

などについて追求を行いました。
 当局は、謝罪や議会説明の誤りなどについては認めましたが、市長の姿勢は、「公営でガス事業を進めるよう」 にガス局管理職全員で木下市長に要請したにもかかわらず、民間譲渡の考えは変わりませんでした。
 また、議会での経過については、4月24〜26日に都市ガスご利用のお客様などにチラシ配布を行い、「民間 譲渡」の根拠などの矛盾点を明らかにししてまいりました。
2)  その後、8月に入り、市・当局が再提案を強行するため、議会の多数派工作を行っていることか判明し、 8月末から9月にかけて団交を重ね、当局を厳しく追及しました。
 団交は、途中から全組合員による団交に切り替え、連日、深夜未明まで追求をしましたが、その間に事業 管理者が所在不明になるなど大きく進展をしませんでした。
 また、市側も議員の動向をにらみ、追加提案として取り扱ったため、議案提出日を巡る攻防として、9月 9日から11日までガス局内における早朝座り込み行動なども実施しました。座り込み行動には、地域の仲 間からも激励や座り込みに参加をして頂くなか、3日間の行動を貫きました。
3)  団交の経過を受けて、不当労働行為として9月5日に地方労働委員会に提訴しました。
 また、9月6日から事業管理者が所在不明になったため、36協定が結べなくなるなど、当局との関係は 混迷を極めました。
4)  9月市議会に対しては、17〜18日の建設企業委員会を巡る攻防が焦点として、全水道本部は全国動員 体制で臨むこととし、前日の16日に「ガス事業民間譲渡反対全水道決起集会」を豪雨のなか開催し・地域 の労組なども含めて310人が参加しデモ行進などを取り組みました。
 また、翌日には、佐賀地区労組会議が「ガス事業民間譲渡反対」のスローガンの下に450人の仲間が結 集して、市庁舎横の公園で決起集会を開催しました。
 さらに、17〜18日の両日は、議会・市庁舎に対するビラ配布と共に、市役所横の公園で座り込み闘争 を取り組み、佐賀市ガス労働組合は勿論、全水道県支部、九州地本、本部や地域の労働組合の仲間達、市民 の会など多くの仲間が座り込みに参加して頂きました。
5)  建設企業委員会では、多くの問題点が指摘されましたが、反対1・賛成6・退席1で可決され、本会議 でも反対5・賛成29・退席1で可決決定されました。
4.議会決定から12月市議会までの取り組み
1)  基本的には、9月市議会で決定されましたが、「ガス事業民間譲渡の議会決定は認められない」という 労働組合の立場をとり、労使間決着を目指すこととしました。
 その理由として
-1-3月市議会で一度否決決定された議案を情勢変化のない中で再提案したこと
-2-「根本から検討し見直した」内容が労働組合や市民に対して説明されずていないこと
-3-議会に対する説明資料は、一方的に改ざんされており、現状にもマッチしないこと
 などが極めて不当であるからです。
2)  その後の闘いの焦点として
-1-労使交渉での当局追求〜この点が最大のポイント
-2-九州経済産業局への働きかけ〜事業認可を認めさせないために
-3-地労委闘争の勝利を目指す
 等としました。
 具体的には、方針を全組合員のものとするため、職場ごとの話し合いを行い、組織内での闘争体制の確立 を期することとしました。
 また、議会決定の不当性を明らかにすると共に、こうした労使間で決着をはかる労働組合の立場を理解し て頂くためのチラシ配布を、10月12、14日に市内全域を対象に行い、合わせて「市民の会」もチラシ を配布しました。
3)  団体交渉については、9月市議会での委員の追及を受けて助役が出席する中、9月27日に開催し、「管 理運営事項と労使協議事項について」「再提案に至った経過と根本的に見直した根拠」を巡って市・当局を 厳しく追及しましたが、まともに答えることが出来ず、次回に文書で示すことを約束させました。
 その後・数回に亘り団体交渉を重ねましたが、何ら進展せず、その間、新たに「民間譲渡準備室」の設置 を巡ってのヤリトリや佐賀ガス(株)との仮契約など議論を行いましたが、明確な回答が得られないままに 終始しました。
4)  地労委闘争については、申し立て以降、その対応について、全水道本部の問弁護士も交えて協議を重ね、 事前審査を経て第1回審問が11月25日に行われました。
 第1回審問は、申立人側の主尋問であり、この間の市当局の態度や対応、また、公営ガスを巡る状況など について発言・不当労働行為の要件に該当する事実を証言しました。
 第2回審問は、12月17日に主尋問に対する反対尋問が行われ、その間、安藤会長の見解なども示され る中、最終的には、2003年1月10日に申し立てを取り下げました。
5)  九州経済産業局への働きかけについては、9月30日に支局に出向いて、議会で決定された民間譲渡の 経過や佐賀市ガス事業の現状を詳細に報告しました。特に、労使間で決着がつかない状況での引継業務 への対応など、安全・安定供給について意見交換をしました。
6)  「市民の会」の動きとしては、10月10〜14日にかけてのチラシ配布と10月19日には、「おかし いぞ!公営ガス民間譲渡・市民集会」を開催し、議会決定に至る経過の矛盾や疑問を訴え、「市民の会」と しても最後まで闘う姿勢を鮮明にしました。
7)  こうした状況にもかかわらず市側は、12月4日から開催された市議会に仮契約に基づく補正予算案を 提案、しかもその取り扱いは議会運営ルールを無視する「先議」として提案する暴挙に出てきました。
 議案は、同日に提案され本会議質疑、午後から建設企業委員会で議論・採決し、9日の本会議の冒頭で 採決されました。
5.市長との団交および窓口協議
1)  12月市議会で補正予算が成立し、佐賀ガス(株)との仮契約が自動的に本契約となり、議会の場とし ては最終結論が出されました。
 しかし、建設企業委員会では労使関係の問題が最大の争点となり、「このまま議会で補正予算が決定し ても準備作業がすすまないのではないか」「市長自ら組合との団交に出席し協議すべきである」との指摘 が多くの委員から出され、頑なに団交出席を拒否してきた市長が「団交出席」を確認するなか、そのこと を前提に委員会では採択されました。
2)  市長との団交に臨む態度としては、議会での経過や地労委闘争および熱量変更事業を前にした事業譲渡 から言えばギリギリの時期であるなどから、職場討議を重ね、誠意をもって応えるのであれば、重大な組 織判断を検討せざるを得ないと判断しました。
3)  木下市長が出席した12月10日の団交は、これまで争点となった課題を追求し、それらの課題整理に 向けて、市側が助役など3人、労働組合側も本部・地本・ガス労組の3人を窓口にして協議することを確 認しました。
4)  窓口協議の内容は、団交で申し入れのあった事項
-1-佐賀ガス(株)との随意契約の理由
-2-平成18年度に料金10%値下げすると予測した根拠・契約書に値下げを記載しなかった理由
-3-平成13年8月21日に締結した確認書に対する責任
-4-契約書にガス労組への協議がないまま、引継事務に協力すると記載したこと
-5-ガス事業に深く関わりの持つ人や会社に対する扱い
-6-ガス局職員の今後の勤務・労働条件

 について、公式・非公式に事務折衝・協議を重ねました。
5)  協議は公式だけでも8回におよびましたが、大枠の部分でまとめることが出来ましたので、12月 20日に市長が出席して団体交渉を行いました。
 団交では、冒頭に木下市長から組合員に対する謝罪があり、その後、窓口協議の内容について確認 を致しました。
 最後に、「前向きの対応と受け止め、組織としても判断し.出来るだけ早い時期に判断を伝える」 とし、団交を終えました。
6.闘争方針変更から今後について
1)  団交終了後、職場討議を重ねると共に、地本・本部も機関会議に報告し判断をしました。12月27日 の現地での合同会議において、「佐賀ガス闘争については、不本意であるが、民間譲渡に整理をつけて、 民間譲渡に伴う勤務労働条件に移行する」ことを判断・確認しました。
 その後、窓口協議を行い、組合側の判断を伝えると共に、確認した内容について「確認書」を取り交わ しました。
2)  また、勤務労働条件についても、窓口協議を重ねて、今日時点における合意を得ることが出来たので、 2003年1月24日に確認書を取り交わしました。
3)  民間譲渡反対の旗は降ろすこととなりましたが、ガス局職員の市長部局などへの異動や引継業務への 対応など、残された課題も多くあります。
 さらに、民間譲渡された都市ガス事業がどのようになるのか、労使確認が守られるのか、引き続いて の監視が必要であり、そのことが、この間、協力を頂いた「市民の会」をはじめとする地域の皆様、2 万筆を超える署名を頂いた需要家の方々に対する労働組合としての社会的役割を果たすことになると考 えております。
 また、ガス局職員についても同様であり、市長部局などでの勤務労働条件が守られるのか、引継業務 への対応および業務終了後の異動など、難しい課題も残されており、佐賀市ガス労働組合は、全水道本 部・地本と対応をどのようにするのか協議を行っているところです。

 改めて、都市ガスをご利用のお客様、市民の会の皆様、地域の労働組合の仲間の皆様に心から感謝を 申し上げると共に、今後につきましても、ご理解、ご協力をお願いし報告といたします。