『新訂高等小学唱歌 伴奏付』第一学年用

文部省編(1935 年 4 月)




表紙.
奥付.


『新訂高等小学唱歌 伴奏付』第一学年用〜第三学年用(文部省編,1935年4月)は先に文部省が発行した高等小学校(高等小学校の修業年限は 3 年)用の唱歌教科書『新訂高等小学唱歌』第一学年用〜第三学年用(文部省編,1935年3月)(男女別の全 6 冊)に教師用伴奏をつけたものである. 作曲は信時潔,片山頴太郎ら東京音楽学校の教官が担当した.
『新訂高等小学唱歌』は,先に編集された『高等小学唱歌』全一冊(文部省編、1930年5月)(編集委員は,小山作之助,島崎赤太郎,岡野貞一,乙骨三郎,高野辰之ら)とは直接の関連はなく,むしろ『新訂尋常小学唱歌』の続編というのがふさわしい.
高等小学校では合唱曲も教えることができた.第一学年用では二部合唱曲が,第二学年用では二部合唱曲,2声輪唱曲,第三学年用では三部合唱曲などが収録されている.また,劇形式の曲,謡曲の平曲の節を取り入れた曲もあった.
戦後も一部の曲は新制中学校の音楽の教科書に再録された.





  緒 言

一、本書ハ、音楽教育ノ進歩ト時代ノ要求トニ鑑ミ、高等小学
 校唱歌科ノ教科用トシテ、新ニ編纂セルモノナリ。

ニ、本書ハ、各学年ソレゾレ男子用ト女子用トニ分チテ編纂
 シ、何レモ毎巻二十ニ章トセリ。内、各十五章ハ、男子用・女
 子用共通ノ教材、他ノ各七章ハ、男子用・女子用ノ別ニ従ヒ
 テ、歌詞・楽曲トモニ相異ナルモノヲ以テ充テタリ。

三、本書ノ歌詞及ビ楽曲ハ、歌詞ニ高等小学読本・農村用高等
 小学読本所載ノ韻文ノ一部(第一学年用「昭憲皇太后御歌」・第二
 学年用「夏ノ暁」・第三学年用「稲刈」)ヲ採用セル以外、総ベテ本省
 ノ新作ニ係ル。

四、本書ノ教材拝列ハ、程度ノ難易ノミニヨラズ、一面、歌詞
 ニ示サレタル季節・行事ニ就キテモ考慮セリ。

五、本書ハ、取扱者ノ便宜ノタメ、唱歌曲ノミノ楽譜ヲ掲ゲタ
 ルモノト、伴奏附ノ楽譜ヲ掲ゲタルモノト、二種類作製セリ。
 但シ、後者ハ、男子用・女子用共通ノモノ、男子用・女子用各
 別ノモノヲ併セ掲ゲタルヲ以テ、各巻二十九章ヨリ成ル。

六、本書ノ楽曲ハ、事情ニヨリ、伴奏ヲ附セズシテ授クルモ差
 支ナシ。然レドモ、伴奏ヲ附スルコトニヨリテ、タダニ歌唱
 ニ便スルノミナラズ、ナホ歌曲ノ興趣ヲ増進セシムルコト
 ヲ得ベシ。

七、 唱歌曲ノミヲ掲ゲタルモノニ於テハ、伴奏ノ前奏・間奏・後
 奏ノ部分ニ対シテ、必要ナル休止符ヲ附シ、又ハ休止符ト併
 セテ当該箇所ノ伴奏ノ主要旋律ヲ記シ、以テ歌唱ニ便ナラ
 シメタリ。

八、本書ノ唱歌曲中、重音ノ箇所ハ、事情ニヨリ、上部主要旋律
 ノミヲ採リ、単音唱歌トシテ課スルモ妨ゲナシ。其ノ際ニ
 ハ、正規ノ場合ト同一ノ伴奏ヲ附スルコトヲ得。

九、本書ノ楽譜ニ配当セル歌詞ノ記法ハ、概シテ新訂尋常小学
 唱歌ニ準ゼルモ、其ノ間、ナルベク発音上ノ実際ニ適切ナラ
 シメンタメ、更ニ新ナル考慮ヲ加ヘタリ。

一〇、本書ノ楽曲ハ、概ネ中等諸学校ノ初年級並ビニ青年学校
 等ニ於テモ使用スルコトヲ得ベシ。

   昭和十年三月
                       文  部  省


  目次

新訂高等小学唱歌 伴奏附
第一学年用
@ 一 昭憲皇太后御歌 (男01 女01)
@ 二 春の曲 (男-- 女02)
@ 三 鴎 (男-- 女03)
@ 四 鯉幟 (男02 女--)
@ 五 風薫る (男03 女04)
@ 六 野球の歌 (男04 女--)
@ 七 藤(二部合唱) (男-- 女05)
@ 八 希望 (男05 女06)
@ 九 梅雨晴 (男06 女07)
@一〇 太平洋 (男07 女--)
@一一 登山 (男08 女--)
@一二 海国男子 (男09 女--)
@一三 秋近し (男10 女08)
@一四 灯 (男11 女09)
@一五 舟にのりて (男12 女10)
@一六 紫式部 (男-- 女11)
@一七 高嶺の月 (男13 女12)
@一八 村時雨 (男14 女13)
@一九 満州の野 (男15 女--)
@二○ 子守歌 (男-- 女14)
@二一 御代の栄(二部合唱) (男16 女15)
@二二 冬来る (男17 女16)
@二三 御裳濯川 (男18 女17)
@二四 薩摩守 (男19 女18)
@二五 雪の行軍 (男20 女--)
@二六 幼き頃の思出 (男-- 女19)
@二七 春の訪れ (男21 女20)
@二八 雛祭の宵 (男-- 女21)
@二九 送別の歌(独唱及び二部合唱) (男22 女22)




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『新訂高等小学唱歌 伴奏付』
第一学年用

(1935 年 4 月 15 日発行
1935 年 6 月 15 日訂正発行)

@ 一 昭憲皇太后御歌(昭憲皇太后 作詞)(男01 女01)

一、人知れず思ふ心のよしあしも
     照らし分くらん天地(あめつち)の神
二、日の本のさかひ離れてゆく船に
     国の光も載せてやらまし
三、神風の伊勢の内外(うちと)の宮柱
     ゆるぎなき世をなほ祈るかな
四、朝毎にむかふ鏡のくもりなく
     あらまほしきは 心なりけり




@ 二  春の曲 (男-- 女02)

一、空に流るる ひとひらの
   雲にも 見ゆる あたたかさ。
   きびしき冬は 過ぎさりて、
   春は来にけり。いざ友よ、
   春の曲を うたはん。
二、ほのに霞める 山ふもと、
   小川の水の せせらぎは、
   たのしき歌を さそはずや。
   若き みどりの 野に出でて、
   春の曲を うたはん。
三、木木(きぎ)のこずゑに 花ひらき、
   ほのぼの にほふ 草の色。
   あかるく歌ふ 諸鳥(もろとり)の
   声に あはせて、 いざ友よ、
   春の曲を うたはん。



@ 三 鴎 (男-- 女03)

一、夢や見るらん、けふもまた
   汀(みぎわ)にねむる 鴎鳥(かもめどり)。
    水の流(ながれ)の、音もなく。
    静かに暮るる 春の日や。
二、夢なさましそ、川舟の
   舟うたしげく 聞こねば、
    水にまどろむ 水鳥の、
    静かにむすぶ けふの夢。
三、夢路たどりて 汀辺(みぎはべ)の
   水に、姿も うつしつつ。
    夢は、鴎に 幸多く、
    ひねもす、水も静かなれ。



@ 四 鯉幟 (男02 女--)

一、五月の空は晴れわたり、
   風の薫れば、矢車の
   音もほがらに、陽を浴びて
   雄雄しく泳ぐ鯉幟。
      日本男児の意気見せて。
二、地上の影のをどるにも
   力溢れて、ひもすがら、
   口に、眼(まなこ)に、尾に、鰭(ひれ)に、
   命のこもる鯉幟。
      日本男児の姿にて。
三、都に、鄙(ひな)に、匂はしく
   青葉・若葉のもゆる時、
   男(を)の子ここにも生まれぬと、
   ほこるに似たる鯉幟。
      日本男児の数増して。
四、緋鯉はあかく、まごころを、
   真鯉まくろく、健(けな)げさを
   我にしめして、この年も
   望みにいさむ鯉幟。
      日本男児はかくあれと。



@ 五 風薫る (男03 女04)

一、鳥の音(ね)しげき山あひの
   青葉・若葉に、日の光り、
   丘の麦畑(むぎばた) 飛ぶ蝶の
   白き翅(つばさ)に、風薫る。
二、牧場の昼の静けきに、
   群をはなれし若駒は、
   雲雀きくとや、眼をとぢて、
   立ちて動かず、風薫る。
三、桑の葉満(み)てて、篭せほひ、
   急ぎ 野路を 帰り行く、
   歌もほがらの はらからの
   頬に吹来て、風薫る。



@ 六 野球の歌 (男04 女--)

一、陽光みなぎるみ空の下(もと)に、
   鎬(しのぎ)をけづるよ、攻守の二軍。
   観衆ひとしく固唾(かたづ)をのみて、
   集むる瞳は、投手に、打者に。
二、陣営静けき真中(まなか)に立ちて、
   深謀めぐらす、投手の胸は。
   青嵐(せいらん)梢をさやかに吹けど、
   満場声なく風雨を待てり。
三、白線ゑがきて熱球飛べば、
   力を集めし鉄棍(てっこん)一打、
   音あり、虚空をかすむる球の
   勲(いさを)も高しや、手練の腕(かひな)。
四、勝者は誇らず、敗者も悔いず、
   堂堂あらそふ男児の意気に、
   喝采わきたち、号笛鳴れば、
   はなやぐ夕日に、戦士は帰る。



@ 七 藤 (男-- 女05)

一、砂の白きに、紫の
  花のこぼれし 美しさ、美しさ、
  しばし 讃(たた)へて、をさな児は、
    紙 わかちては、包みては、
    笑みかはしたる
      藤日和、藤日和。
二、少女(をとめ) 幾人(いくたり)、次次に、
  日傘 たたみて、下駄ぬぎて、下駄ぬぎて、
  藤の花房 くぐりては、
    先 争ひて 登りゆく
    声ぞ賑(にぎは)ふ
      太鼓橋、太鼓橋。



@ 八 希望 (男05 女06)

一、見よや、
     野路(のみち)の草に 見よや。
      枯れはてたりと見えながら、
    昨日も、今日も、新しく
    芽は 萌(もえ)出でぬ、
        望に燃えて。
        芽は 萌(もえ)出でぬ、
            望に燃えて。
二、見よや、
     静かに、枝を 見よや。
      さびしく立ちし木木に、みな、
    かくれし強き力もて
    葉は 伸び出でぬ、
         望に燃えて。
        葉は 伸び出でぬ、
             望に燃えて。
三、見よや、
     我等の明日を 見よや。
      をさなくあれど 若き日に
    生まれて来にし人として、
    名を あげでやは、
         望に燃えて。
        名を あげでやは、
             望に燃えて。
四、見よや、
     来ん日の日本(にっぽん) 見よや。
      正しく、高く、日の御旗
    かざして、永久(とは)に 外(と)つ国と
    手を とりゆかん、
         望に燃えて。
        手を とりゆかん、
             望に燃えて。



@ 九 梅雨晴 (男06 女07)

一、屋根に、
  雀の 幾日ぶりに
  朝日を待ちて高らになけば、
  庭の青葉を 吹来る風の
   清きをほめて、
     窓 あけはなち、
   青き空見る 清清(すがすが)しさよ。
二、よくも
  つづきし 梅雨今朝はれて、
  しめりも清き 夜明の庭に、
  こぼれこぼれし石榴(ざくろ)の花を
   掃きすてかねて、
     手に とりあげて、
   一つ二つは、土払ひ見る。



@一〇 太平洋 (男07 女--)

一、波涛 千里、洋洋と
  東にうねり、西に寄せ、
  日出ずる国の 暁に、
    雄雄しく歌う、海の歌。
    黒潮越えて いざ行かん、
    我等の海よ、太平洋。
二、怒涛 万里(ばんり)、渺々(びょうびょう)と
  南に走り、北に去り、
  日出づる国の 島陰げに、
    ほがらに歌ふ 海の歌。
    波乗り越えて いざ行かん、
    我等の海よ、太平洋。

[注] 金田一京助、安西愛子編『日本の唱歌 [中]』(講談社文庫,[1979], 1998)
pp. 196 - 197 によれば,信時 潔 作曲,武内俊子 作詞.



@一一 登山 (男08 女--)

一、真夏なれども、真冬の装(よそおひ)、
  暁寒き 小屋を出でて、
  金剛杖も しばしは 肩に、
   幾年(いくとせ)くはだて、幾年願(ね)ぎし
    これなる峡谷、今年われよづ。
二、朝日はまだ出ず、小鳥も目ざめず、
  氷の如き 渓(たに)の流れ、
  こごしき岩根、けはしき坂路(さかぢ)
   おのれの手足の力のままに、
    渉(わた)れば、登れば、武者ぶるひする。
三 たよる かんじき・アルペンストック、
  一足毎の 歩(あゆみ)高し。
  滑るな、深きクレバス近し。
   早くも起出で、やさしき声に、
    親子の雷鳥 巌角(がんかく)にあり。
四、お花畠の、目ざむるばかりに、
  いろどり はしく きそひ咲くを、
  かたみに愛(め)でて 見上ぐる尾根に、
   白きは キャンプか、白衣(びゃくい)の人か。
    行手に珍し、偃松(はいまつ)の海。
五、低くなりゆく 下界の山山、
  頂ばかり 霧の海に
  島かと見えて、目路(めぢ)いと広し。
   思いもよらざる方(かた)より 出でし
    朝日に向かひて、鬨(とき)の声あぐ。



@一二 海国男子 (男09 女--)

一、ああ、我等は 海国男子。
    幸(さひわひ)多き 島国に、
    心も清く 生い立ちて、
    渚の砂に 仰ぎ見る
    朝焼たふとき 富士の雪。
二、ああ。我等は 海国男子。
    岩根を洗ふ 潮の音(と)も、
    夢路にひびく 子守歌。
    幼き日より 舵とりて、
    海行く業(わざ)を 学びけり。
三、ああ、我等は 海国男子。
    望(のぞみ)は翔(かけ)る 海遠く。
    心に抱く あこがれは、
    波乗越ゆる 大艦(おほふね)に
    輝きなびく 軍艦旗。
四、ああ、我等は 海国男子。
    アジアにつづく 大海(おほうみ)は、
    誉(ほまれ)も高き 日本海。
    かの武夫(ますらを)の 血をくみし
    我等の血潮 高鳴りぬ。
五、ああ、我等は 海国男子。
    浦辺の住家(すみか) 睦ましく、
    富は尽きせじ、太平洋。
    朝日の海に 帆を張れば、
    波はほがらに 招くなり。





@一三 秋近し (男10 女08)

一、庭の垣根に咲きのこる
  花の向日葵 いろさめて、
  思ひ入(い)るがに うつむきぬ。
  はや秋近し、秋近し。
二、道のほとりの草むらに、
  虫のはたおり 羽(はね)のべて、
  機(はた)やおるらん、鳴きいでぬ。
  はや秋近し、秋近し。
三、やがて暮れゆく夕空の
  星のまたたき 見あぐれば、
  光さやかに ゆらぐなり。
  はや秋近し、秋近し。



@一四 灯 (男11 女09)

一、高いみ空に
  灯(ひ)が一つ。
    星かと思へば、
    窓あかり。
二、遠いみ空に
    灯が一つ。
    窓かと思へば、
    お星さま。
三、海の向かふに
  灯が一つ。
    船かと思へば、
      島の灯だ。



@一五 舟にのりて (男12 女10)

一、舟にのりて 川を下る。
   ゆるき流、清き淵瀬、
    小魚(こうを)くぐり、
   岸の草に、崖の枝に、
    花も咲きて、小鳥飛びて、
   峯にわくは、雲か、霧か。
  心楽しく、ただ ひたすらに
  川を下る、川を下る、
    舟に のりて。
二、舟にのりて 海を渡る。
   舵は 誠(まこと)ただに一つ。
    遠き行手、
   波を蹴たて 汽船ゆけど、
    風に 白帆 高くあげて、
   広き波路、目あて かへず。
  心正しく、ただ ましぐらに
  海を渡る、海を渡る、
    舟に のりて。



@一六 紫式部 (男-- 女11)

一、学(まなび)の道の 深さをも、
  才のすぐれし 力をも、
  ゆかしくつつむ 徳高く、
  ちとせ尽きざる 文(ふみ)のわざ、
  今も かがやく
    紫式部。
二、平安朝の 美しさ、
  絵にもひとしき ありさまを、
  ゆかしくうつす 筆のあや、
  光源氏の ものがたり、
  今も かがやく、
  紫式部。
三、もの書くをみな 昔より
  あまたあれども、男さへ
  およばぬほどの 高き名を、
  とほき異国に 知らせつつ、
  今も かがやく
  紫式部。



@一七 高嶺の月 (男13 女12)

一、分けゆく山の 登口(のぼりぐち)、
  幾つかあれど、やがて見る
  月は一つと うたはれし、
  高嶺の月の けだかさよ。
二、濁(にごり)に満てる 人の世に、
  わが身を清く ふるまひし
  代代(よよ)の聖(ひじり)も おもはるる、
  高嶺の月の たふとさよ。
三、浮世の塵(ちり)に まじるとも、
  われらも共に つとめつつ、
  磨け、心を、うつくしく、
  高嶺の月を 鏡にて。



@一八 村時雨 (男14 女13)

一、木(こ)の葉に、草に、
  さらさらと
  過ぎゆく雨や、村時雨。

  野原に、山に、村里に、
  日は照りながら、
  束の間に、
    ただ さらさらと
    そそぎゆく。
二、過ぎゆくあとを
  眺むれば、
  心も、いつか 洗はれつ。

  野原も、山も、村里も、
  目ざむるばかり、
  束の間に、
    ただ すがすがと
  なりにけり。



@一九 満州の野 (男15 女--)

一、わが幾万のますらをが、
  正義のために 戦ひし
  戦(いくさ)のあとぞ、満州は、
  陽も 赤赤と沈みゆく。
  見渡すかなた、曠漠(こうばく)と
  天に連なる 地平線。
    思へば、過ぎし
      日ぞかなしき。
二、わが幾万のますらをが、
  正義の名をぞ とどめたる
  戦のあとの 満州は、
  陽(ひ)も ほのぼのと明けてゆく。
  見渡す野辺の はてまでも、
  実(げ)にや、平和の 理想郷。
    思へば、今日の
      日ぞうれしき。





@二○ 子守歌 (男-- 女14)

一、ねむれよ、ねむれ、
   風もうららに、
   花散る 木陰。
     ねむれよ、母と、
     揺篭は 揺れぬ。
  やよ、ねむれ、ねむれ、幼児(をさなご)。
二、ねむれよ、ねむれ、
   波は 日暮れて、
   鴎も ねむる。
     ねむれよ、母の
     歌声をききて。
  やよ、ねむれ、ねむれ、いとし児。



@二一 御代の栄(二部合唱) (男16 女15)

一、国はひろく、土地はひらけ、
  人は多く、物はゆたか。
  かかる時に 生まれあひて、
  ほめよ、たたへよ、
        御代の栄。
二、陸に、海に、そなへ成りて、
  さらに進む、空の護(まもり。
  我等 ここに 安く住めり。
  ほめよ、たたへよ、
        御代の栄。
三、伝統遠き誇もちて、
  しかも若き国は日本。
  伸ぶる力、内に充(み)てり。
  ほめよ、たたへよ、
        御代の栄。



@二二 冬来る (男17 女16)

一、里の小川の板橋に、
  此の頃、朝毎、
  霜しげくして、
  流も細く なりまさり、
     冬来(きた)る、冬来る。
二、雑木林の鳥の音(ね)も、
  雲間をもれ來る
  日の光さへ、
  さすがに寒き心地して、
     冬来る、冬来る。
三、夕(ゆうべ)、遥けき 北山の
  頂白きは、
  我が知らぬ間に
  雪こそはやも降りにしか。
  冬来る、冬来る。



@二三 御裳濯川 (男18 女17)

一、朝清(あさぎよ)め 御裳濯川(みもすそがは)に、
  神路山(かみぢやま) 影を映して、
  行く水の 流かはらず、
  末かけて 澄みぞまされる。
二、深みどり 木立がくれに、
  いや高く、千木(ちぎ)に鰹木(かつをぎ)、
  神垣(かみがき)の ひろき大前(おおまへ)、
  おのずから 伏して額(ぬか)づく。
三、大八州(おほやしま) 国つはじめの
  大神(おおみかみ) 斎(いづ)きまつれる、
  神風の 伊勢の御社(みやしろ)、
  ふり仰ぎ 見るもたふとし。



@二四 薩摩守 (男19 女18)

一、栄華の春も移(うつ)ろへば、
  雲北嶺にむらがりて、
  六波羅の夢破れよと   荒(すざ)ぶは 木曽の青嵐(あをあらし)。
二、雲井の空と分かれては、
  末八重潮の浪枕。
  さだめの果(はて)を行くわれと
  悟れどかなし、歌の道。
三、野山に屍(かばね)さらす身の、
  師の御情(みなさけ)を蒙(こうむ)りて
  一首を集(しふ)にとどめんと、
  たたくもあはれ、夜半の門。
四、かたみを遺(のこ)す武士(もののふ)の
  名は、千載の言の葉に、
  昔ながらの香を留(と)めて、
  誉(ほまれ)もゆかし、山ざくら。

[注] 『平家物語』巻七「忠度都落」. 一ノ谷の戦いで源氏方の岡部忠澄に討た
れた平忠度(たいらのただのり)の逸話.歌人として知られる.



@二五 雪の行軍 (男20 女--)

一、暁の    空はひろく、
  末(すえ)煙(けぶ)る 雪の野原。
     一面(ひとつら)に 銀(しろがね)展(の)べて
     朝鳥の 翔(かけ)るも見えず
  行けや、いざ、らららららら、
  人の跡なき道を分け、
          歩(あゆみ)も 軽(かろ)く。
二、暁の
  空を仰ぎ
  勇ましや、雪の行軍。
     朝戸出(あさとで)の 力は満ちて、
     冬の威(ゐ)も 頬に涼し。
  歌へ、いざ、らららららら、
  若き われらのこころをば、
          調(しらべ)も 軽く。
三、暁の
  空の下(もと)に、
  うつくしや、雪の野山。
     にほひ立つ 山脈(やまなみ)染めて、
     朝日子(あさひご)の 光(ひかり)流る。
  友よ、いざ、らららららら、
  急げ、われらの兎追ふ
          麓も近し。



@二六 幼き頃の思出 (男-- 女19)

一、去(い)にし秋、姉妹(あねいもと)、
  茸(たけ)狩り 遊びし
         かの松山。
   幼き頃の 思出(おもひで)は、
   ああ、美しき 夢と残る。
二、月の夜、友追ひて
  影ふみ遊びし
        かの砂山。
  幼き頃の 思出は、
  ああ、懐かしや、胸に環(かえ)る。
三、母の声、子守歌、
  とはにぞ 忘れじ
    かの揺篭。
  幼き頃の 思出は、
  ああ、ふる里に 心運ぶ。

@二七 春の訪れ (男21 女20)

一、春が来ると いち早く
   咲くや、野中の梅の花。
  そよ吹く風も、花の香の
        匂(にほひ) ゆかし。
二、すがたやさしき 鴬の、
   裏の小藪に音(ね)も高く、
  野山の鳥に さきがけて、
        春を告げぬ。
三、ほのも芽ぐみし 若草の、
   色もさやけく青みつつ、
  野原も、山も、うらうらと、
        霞みそめぬ。



@二八 雛祭の宵 (男-- 女21)

一、ぼんぼりに灯(ひ)を入るるとて、
  電燈 殊更 消すもよし。
  瓔珞(えうらく)ゆれて、きらめきて、
    物語めく
           雛祭(ひな)の宵。
二、十二一重(じふにひとえ)の姫君の
  冠少しく曲がれるを、
  直すとのべし 手の触れて
    桃の花散る
         雛祭の宵。
三、官女 三人(みたり)のまねすとて、
  妹 まじめの振舞に、
  加(くはは)りたまふ 母上の
    ゑまい うれしき
           雛祭の宵。



B二九 送別の歌 (男22 女22)

一、行くか、わが友、学舎(まなびや)あとに。
  さらば翔(かけ)れよ、小鳥の如く。
  [独唱] 野はみどりに萌え、
      花咲き、風にほふ この春に、
  霞を越えて 光へ、光へ、希望の光へ。
二、行くか、わが友、学舎あとに。
  さらば漕ぎ出よ、努力の船を。
  [独唱] 世の嵐は吼え、
      霧巻き、波荒(すさ)ぶ その海を、
  雄雄しく越えて 港へ、港へ、理想の港へ。
三、行け、やわが友、まさきくあれや。
  されど思へよ、泉の如く
  [独唱] その心に湧く、
      尽きせぬ思出の この窓ぞ、
  夢にも通ふ 故里、故里、こころの故里。




以上

(2013 年 3 月)



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