『新訂高等小学唱歌 伴奏付』第二学年用

文部省編(1935 年







  目次

新訂高等小学唱歌 伴奏附
第二学年用
文部省
昭和十年四月 発行 昭和十年六月 訂正発行

A 一 若草 (男01 女01)
A 二 千里の春 (男02 女--)
A 三 羽衣 (男-- 女02)
A 四 小鳥よ (男03 女03)
A 五 潮 (男04 女--)
A 六 初夏 (男05 女04)
A 七 小袖曽我 (男06 女--)
A 八 蓑虫(二部合唱) (男07 女05)
A 九 夏の曉 (男08 女06)
A一〇 月見草 (男-- 女07)
A一一 街路樹 (男09 女08)
A一二 夕立そそぐ(二部合唱) (男10 女09)
A一三 山 (男11 女--)
A一四 野分 (男12 女--)
A一五 秋草 (男-- 女10)
A一六 清少納言 (男-- 女11)
A一七 実のりの秋 (男13 女12)
A一八 聖恩 (男14 女13)
A一九 明治神宮 (男15 女14)
A二○ 菊の香(二部合唱) (男16 女15)
A二一 我が家 (男17 女16)
A二二 校庭にて (男18 女--)
A二三 渡り鳥 (男-- 女17)
A二四 吉野の宮居 (男19 女18)
A二五 霰三題 (男20 女19)
A二六 少女のまとゐ (男-- 女20)
A二七 兄弟(二部合唱) (男21 女--)
A二八 姉妹 (男-- 女21)
A二九 告別の歌(二部合唱) (男22 女22)




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『新訂高等小学唱歌』第二学年男子 29曲(昭和10年) 『新訂高等小学唱歌』第二学年女子 29曲(昭和10年)


A 一 若草(男01 女01)

一、若草の 野辺のかなたは、
     磯もなく、
     砂原もなく、
  果てしなき 海にてありき。

  海原の 朝にゆふべに、
     渚吹く
      風の如くに、
  潮鳴を 野辺にて聞きぬ。
二、若草は 春のしとねか、
     草の香を
      かぎつつすわり、
  ゆくりなく 海をば思ふ。

  海原も 春の日なれば、
     若草は
      波に萌えずも、
  かげろふは 海よりも立たん。



A 二 千里の春 (男02 女--)

一、野も、丘も 緑に萌えて、
   草のいろ 煙るが如し。
   大空も かすみわたりて、
   はて知らぬ 春は来(きた)れり。
二、わが祖国・郷土の誇、
   山と水 畫がくが如し。
   蝶・鳥も 花を求めて
   行くところ、春は薫れり。
三、海越えて 遥かのかなた、
   高梁は 背高く伸びて、
   満洲の 土もやはらぎ、
   ひろびろと 春は渡れり。



A 三 羽衣 (男-- 女02)

合唱 三保の松原、 うらうらと
    日は晴れ渡る空の上。
    天津乙女の舞の袖、あざやかにこそ見えにけれ。
 天女 あら、かなしや、
     松の枝(えだ)の羽衣失(う)せて、帰るすべなき雲の通路(かよひぢ)。
合唱 得たりと拾ふ、浜の漁師、
    持ち帰りてぞ宝にせんと。
 天女 衣(ころも)なくては、如何にして 雲居のはてに帰るべき。
     疾(と)く疾く返せ、人間に 着る用もなき羽衣を。
 漁師 返せとや、さて返せとや。いと惜しけれど、さらば返さん。
     天人も、心しあらば、更に一(ひと)さし舞ひても見せよ。
合唱 舞ふや、霓裳(げいしゃう)羽衣(うい)の曲。
    見る見る、影は遠ざかり、
    あとに残れる富士の山、うららかにこそ浮かびけれ。

[注] 「霓裳羽衣の曲」は,楽史「楊太真外伝」によると,唐の玄宗皇帝が三郷駅に登り,
女几山を眺めた時に愛妃楊貴妃のために作曲したものであるという説と,玄宗が,仙人の
羅公遠に連れられ,月に行き,仙女が舞っていた曲の調べを,覚えて作曲させたという説
の双方が記されているという.



A 四 小鳥よ (男03 女03)

  小鳥よ、
   お前は海から来たのか。
  小鳥よ、
  お前は山から来たのか。
  聞きなれぬ小鳥のこゑ。
  海から来たやうな、
  山から来たやうな、
  珍しい小鳥のこゑ。
  磯馴松(そなれまつ)の林に、
  はればれとした小鳥のこゑ。



A 五 潮 (男04 女--)

一、春の日なれや、
    ひとりして
  砂山の陰にたたずみ、
    今日はしも 海の音聞く。

  海の音聞きつつをれば、
    立つ波は、いとも はげしく、
  荒磯に白く砕けて、
    磯陰に、牡蠣も生まれん。
二、春の日なれや、
    ゆくりなく
  砂山の上にのぼりて、
    今日はしも 沖を眺めつ。

  海の音聞きつつをれど、
    立つ波は、いとも しづけく、
  荒磯に白く打たずも、
    磯陰に、牡蠣や生まれん。



A 六 初夏 (男05 女04)

一、五月の風は、 さわやかに
  色ある如く流れ来て、
  都会の空は、ただかなた。
  見ゆるかぎりは青きかな。
二、草の香かおる野の胸に、
  日はひろびろとさし渡り、
  光と土の喜に
  生物(いきもの)の舞ふ影も見ゆ。
三、新墾道(にひぼりみち)の両側に
  つらなる並木、若葉して、
  瑞枝(みづえ)の影も伸びやかに、
  もゆる緑の色増しぬ。
四、欅の幹の、地に高く、
  自然の強さ思はしむ。
  林はさすが 旧(ふ)りたれど、
  夏は来れり、新しく。



A 七 小袖曽我 (男06 女--)

一、曽我十郎祐成(すけなり)は、
  弟五郎を伴ひて
  今を最期の暇乞(いとまごひ)、
  母の許(もと)をぞたづねける。
二、母はかねての誓ゆゑ、
  弟五郎を遠ざけて
  かたく否(いな)むを、祐成が
  兄の情(なさけ)にとりなしぬ。
三、「さらば許す。」と一言葉(ひとことば)
  聞くより、五郎は、嬉しさに
  落つる涙をふり拂ひ、
  ともに首途(かどで)の物語。
四、母の恵に、同胞(はらから)は、
  形見の小袖を戴きて、
  いざや狩場の五月晴、
  富士の裾野に立ち向かふ。

[注] 曽我十郎祐成と五郎時致兄弟が,父親の仇である工藤祐経を討つために,
1193年6月 (建久4年5月)に源頼朝が行う富士の巻狩りに出発しようとする際の
母への暇乞いに基づく.(室町時代成立の『曽我物語』に詳しい.)



A 八 蓑虫(二部輪唱) (男07 女05)

一、みのむし、みのむし、
  蓑は手のもの、笠がない。
  笠はなけれど、蓑さへあれば、
  雨が降つても、濡れないだらう。
二、みのむし、みのむし、
  蓑を乾すなら 朝がよい。
  露は落ちても、小枝の蓑は、
  宙にぶらりと、落ちないだらう。
三、みのむし、みのむし、
  そとへ出るにも、出られない。
  緑もえたつ若葉のなかで、
  蓑は、いかにも、脱げないだらう。
四、みのむし、みのむし、
  どこにゐるのか、声がない。
  蓑を着たまま、顔さへ出さぬ。
  秋が来ないと、鳴かないだらう。



A 九 夏の暁 (男06 女07)

一、残れる月の 影踏みて、
  歌ふ唱歌も さわやかに、
  小川のほとり 牛飼へる
  村の男の子が 胸の辺(へ)を、
  吹くや朝風 そよそよと。
  働く身には 憂なし。
二、またたく星を 戴きて、
  露の白玉 踏みしだき、
  向かひの岡に まぐさ刈る
  里の少女が 前髪を、
  吹くや朝風 そよそよ。と
  働く身には 憂なし。
三、朝食(あさげ)の煙 うちなびき、
  仰ぐ日の出の 麗(うらら)かに、
  小牛追ひつつ 帰る子が、
  吹くや口笛 勇ましく、
  生気溢るる 朝ぼらけ、
  働く身には 望みあり。
四、家路を急ぐ 少女子(をとめご)が、
  篭に添へたる 白百合の、
  にほへるまみの にこやかに、
  足の運(はこび)も いそいそと、
  生気溢るる 朝ぼらけ、
  働く身には 望みあり。



A一〇 月見草 (男-- 女07)

一、夕霧こめし 草山に、
  ほのかに 咲きぬ、 黄なる花。
   都(みやこ)の友と、去年(こぞ)の夏 手折(たお)り暮しし 思出の
     花よ、花よ、
    その名も ゆかし、月見草。
二、月影白く、 風ゆらぎ、
  ほのかに 咲きぬ、 黄なる花。
   都にいます 思出の 友に贈らん、匂こめ。
     花よ、花よ、
    その名も いとし、月見草。
   風清く、 袂(たもと)かろし。

   友よ、友よ、来れ、丘に。
   静けくも、 月見草 花咲きぬ。

[注] 金田一晴彦,安西愛顧編『日本の唱歌 [中]』 (講談社文庫,[1979], 1998)
pp. 198 - 199 によると,長谷川良夫 作曲,勝田香月 作詞.



A一一 街路樹 (男09 女08)

一、暑き日ざし 受けて、br>   影を人にあたふ
  街路樹、街路樹、しげれ、
  青く、広く、しげれ。
    空暮れて 月のぼり、
    星満ちて 露ふかし。
    ねむれ、街路樹、葉を垂れて。
    したたる露は よき露ぞ。
二、白き埃 負ひて、
  野辺の鳥をしたふ
  街路樹、街路樹、のびよ、
  高く、長く、のびよ、
    雲いでて 風走り、
    来(きた)るらし、夜の雨。
    振れや、街路樹、枝枝を、
    おちくる雨は よき雨ぞ。



A一二 夕立そそぐ(二部合唱) (男10 女09)

一、雷(らい) 一(ひと)しきり、風 一わたり、
    黒雲くづれ、空をおほひ、
    斜に飛びて 夕立そそぐ。
  八つ手(で)の陰を 出来(いでこ)し太き蟇、
              (太き蟇)
  よろこびて、両手をつきて、
  動かざる背をたたき、たたき、
    夕立そそぎ、そそぐ。
二、木木(きぎ) ざわめきて、蝉 なきやみて、
    黒蟻ぬれて 路を迷ひ、
    池の面(も)たたき、夕立そそぐ。
  いずこにゐたる、小さき鯉の群(むれ)、
              (鯉の群)
  よろこびて、左へ、右へ、
  泳ぎ行く背をたたき、たたき、
    夕立そそぎ、そそぐ。







A一三 山 (男11 女--)

一、ああ、東(ひんがし)の 大空に
  天(あま)そそり立つ、 春の山。
    ねぐらを出でし 荒鷲か、
    峯の巌を 飛び立ちて、
  雲のかなたに 翔(かけ)り行く。
    諸人あふげ、しののめの
    希望に映(は)ゆる 春の山。
二、ああ、落日の 色うけて
  雄雄しく聳(そび)ゆ、秋の山。
    幼き日より あふぎ見る
    峯の巌は、若人に
    高き理想を 授けたり
  諸人あふげ、夕焼の
  平和に映ゆる 秋の山。



A一四 野分 (男12 女--)

一、吹け、吹け、野わけ、
  丘のすすきを 押しなびけ、
  木木のこずゑを ゆすぶつて。
  吹け、吹け、野わけ、
  おもひたつては やめられぬ
  男のやうな いきほひで。
二、吹け、吹け、野わけ、
  あまい眠の 夢さめぬ
  窓のとびらを ゆりたたき。
  吹け、吹け、野わえ、
  人のこころに 天然の
  力のほどを 見せてやれ。
三、吹け、吹け、野わけ、
  ゆくてさへぎる ものは、みな、
  強い力に うちなびけ。
  吹け、吹け、野わけ、
  空飛ぶ鳥の つばささへ、
  たわますほどに 吹きまくれ。



A一五 秋草 (男-- 女10)

一、流るる雲の 色にさへ、
  秋は來にけり、野に、山に。
  桔梗・いとはぎ・ふぢばかま、
  風にそよぎて 咲きそめぬ。
二、山路をゆけば、をみなへし
  秋の光を 照りかへす。
  姿をかしき われもかう、
  小さき野菊の めでたさよ。
三、河原につづく 一面の
  薄(すすき)もやがて 穂に出(い)でん。
  蝶の舞ひゆく かなたには、
  あかきなでしこ、群咲けり。
四、思へばふかき 天然の
  こころなりけり、秋は来れば、
  姿やさしき 花草(はなくさ)の
  色も静けき 風情あり。



A一六 清少納言 (男-- 女11)

一、香爐峯(こうろほう)の
  雪はいかにと のたまわす
  きさきの宮の み言葉に、
  御簾(みす)をかかげて、才学の
  高きほまれを のこしたり。
二、枕草子
  をりにふれつつ 書きつけし、
  詩興の筆の 新しく、
  いろもにほいも ならびなき、
  高きほまれを 伝へたり。
三、歌に名ある
  元輔の子と 生まれ来て、
  歌こそ詠まね、俊才の
  中にまじりて、いやさらに
  高きほまれは 輝きぬ。



A一七 実のりの秋 (男13 女12)

一、実のりの秋は
  来りぬ、ゆたけくも。
   門田のあたり、
  よろこびの声
   うづまき、うづまく。
二、垂穂(たれほ)の稲は、   黄金に 波うてり。
   見わたす田の面(も)、
  かちどきは 高く
   とどろき、とどろく。



A一八 聖恩 (男14 女13)

一、天つ日の照らさんきはみ、
  ふり仰げ、千代田の宮居。
  大君は神の御裔(みすえ)ぞ、
  畏(かしこ)しや、敬(うやま)ひまつれ。
二、遠き夜の伝(つたへ)なれども、
  香に残る恩賜の御衣(みけし)。
  臣(おみ)として君に捧ぐる
  まごころのためしとなれり。
三、高き恩、深き恵を
  朝夕にかうむる我等、
  万代(よろづよ)に、すめらみかどの
  御栄(みさかえ)をことほぎまつれ。



A一九 明治神宮 (男15 女14)

一、朝日の如く 正しく、強く、
  一すぢ 直(なお)く 開け進む
  日出づる御国の光を夙(つと)に
  放(はな)ちたまひし大帝(おおみかど)、
    しづまりまします代代木の宮、
  床し、畏(かしこ)し、代代木の宮。
二、月ごと深く、年ごと広く、
  よろこび 四方(よも)に 溢れ満ちて、
  海国日本の雄飛の基(もとゐ)
  固めたまひし大帝、
    しづまりまします代代木の宮、
  床し、畏し、代代木の宮。
三、貴き、高き、賤しき、低き
  国民(くにたみ) なべて 一つの愛児(まなご)、
  あはれみ、はぐくみ、導きたまひ、
  力賜る大帝、
  しづまりまします代代木の宮、
  床し、畏し、代代木の宮。






A二○ 菊の香(二部合唱) (男16 女15)

一、空清らかに澄みわたる
  秋の終に咲きいでて、
  心しづかに、人の世の
  塵さへ据ゑぬ菊の花。
二、後にはつづく花もなく、
  ひとり久しく匂ひつつ、
  置くは、露霜かはれども、
  かはらぬ色の菊の花。
三、わが敷島の国がらも、
  清き薫りにふくまれて、
  千代に、八千代に限りなき
  齢(よわひ)を延ぶる菊の花。



A二一 我が家 (男17 女16)

一、我が家は、貧しくも、
    足らぬ事はなく、
   むつましく
      たのしき家なり。
  朝(あした)には 星かげあふぎ
    畠に 出でて、
   安らけく 日毎すごせり。
二、我が家は、何事も
    心をあわせて
   業(わざ)はげむ
      たのしき家なり。
  夕(ゆうべ)には、月かげふみて
    家居にかへり、
   一日の 疲(つかれ)やすめつ。
三、我が家は、夏・冬も
    日も、夜も、おだしく、
   すこやかに、
      たのしき家なり。
  父母の 言葉を守り、
    力をあはせ、
   親しみて 共にはたらく。



A二二 校庭にて (男18 女--)

一、ゆたけき春の朝日を浴びて、
  今ぞ躍る、若き命。
    赤よ、赤よ、負くるな、勝てや。
    突けや、防げ、それ 白、白よ。
  清き血潮は頬にもえて、
  球うけ、球蹴る 教の庭に、
  歓声あがれば梢にひびき、
  満庭見る見る、花吹雪。
二、さやけき秋の夕日の影に、
  友と語る こころ靜か。
    見よや、今日も暮れゆく空を。
    夢と過ぎぬ、われらの八年(やとせ)。
  幼き思出胸にわきて、
  窓閉ぢ、人なき 校舎のほとり、
  歌声放てば梢にひびき、
  金扇ひらひら、銀杏散る。



A二三 渡り鳥 (男-- 女17)

一、夜を日につぎて 渡り来る、
  冬のはじめの 渡り鳥、
    小さき翼も すこやかに、幾山川や 過ぎてけん。
二、今、大空を 渡り来て、
  しばしやすらふ ひまもなく、
    小さき翼を かへりみて、幾日の旅や 思ふらん。
三、なほゆくさきは 遥かなり。
  遠く飛来(とびこ)し 空の旅、
    小さき翼も つかれにき、幾友がらと はぐれつつ。
四、夜を日につぎて、寒空を、
  冬のはじめの 渡り鳥、
    小さき翼も かろやかに、渦まきながら 渡りゆく。



A二四 吉野の宮居 (男19 女18)

一、めぐる春秋 五十七、
  万乗(ばんじょう)の君 かしこくも
  なやませ給ふ、吉野山。
     花の色 ほこれども、
     はれやらぬ 大御歌(おおみうた)。
  ああ、はれやらぬ 大御歌。
二、つもる星霜 五十七、
  忠節の臣(しん) つぎつぎと、
  身まかり失せぬ、吉野山。
     月の顔 さゆれども、
     かきくもる 天(あめ)の下。
  ああ、かきくもる 天の下。



A二五 霰三題  (男20 女19)

一、廂(ひさし)をたたく音高く
  命あるごと 争ひて
  はねて、跳(をど)りて、
  鉢植の
  万年青(おもと)の葉と葉に
     はさまりて、
  ただ一粒が、紅(あけ)の実に
  ふと並びたる
      霰かな。
二、大空くらく、風うなり、
  雲の上なる 国原(くにばら)に、
  おぞや、戦(いくさ)の
  始まりて、
  たけなはなりとや、
     それ弾丸(たま)の
  飛来る如く、散る如く、
  今、降りしきる
      霰かな。
三、村より村へ、ひねもすを
  手ぶり、足ぶり おもしろく
  猿をまはして、
  をどらせて、
  疲れて帰る
     猿曳(さるびき)の
  背に寒寒(さむざむ)と 眠りをる
  猿驚かす
      霰かな。



A二六 少女のまとゐ (男-- 女20)

一、おなじ少女(おとめ) 生まれ来て、
  心のあへる 友だちと、
  静かに語り 遊び得る、
  今日のまとゐの うれしさよ。
二、胸にあふるる 花の夢、
  望(のぞみ)に満てる 行末の
  かなたの空の おもふにも、
  若きいのちは 楽しきに。
三、行手はるけき 世の中に、
  互(かたみ)の道は けはしくも、
  手に手をつなぎ 助けんと、
  語るまことの たのもしさ。
四、同じおもひに 歌ひつつ
  仰げば浮かぶ 青雲も、
  ひかりを添へて、親しげに
  今日のまとゐを いはふらし。

A二七 兄弟(二部合唱) (男21 女--)

弟「かへりみる
  狭霧の門(かど)に、
  かすみつつ
  立つ影は母よ、
    我等を送る。」
兄「片岡の
  狭霧の畑(はた)に、
  かすみつつ
  鍬振るは父よ、
     朝より励む。」

  この愛と力に生きて、
  垂乳根の大き幹より
  枝分けしはらからなれや。
   「その枝に花の咲かずば。」
   「その花のあだに散りなば。」

  さきはひも、涙も、ともに、
  ひとしなみ生(お)ひし我等の、
  伸び伸びつ秀枝(ほづえ)となりて、
   「その枝に花をかざらん。」
   「その花に実をば結ばん。」



A二八 姉妹 (男-- 女21)

一、桃の花咲く 雛祭、春三月の窓近く、
  姉と呼び、妹(いもと)と呼びて、睦しく、
  めでつつ雛を飾りけり。
  ああ、心やさし、姉妹(あねいもと)。
    幾たび春はめぐるとも、
    変らぬ姉のほほゑみよ、
    いとしき妹のほほゑみよ。
二、よめな摘合ふ草堤(くさづつみ)、はや夕霧のこめたれば、
  姉と呼び、妹と呼びて、語りつつ、
  手を取合ひて帰りけり。
  ああ、心やさし、姉妹。
    幾たび春はめぐるとも。
    変らぬ姉のほほゑみよ、
    いとしき妹のほほゑみよ。



A二九 告別の歌(二部合唱) (男22 女22)

一、花は咲けど、鳥は歌へど、
  業(わざ)卒(を)へし喜びあれど、
  今ぞ知る、わかれの心。
  師の君の厚き御教(みおしえ)、
  限りなき愛よ、光よ。
    我等みな、いかで忘れん、
    この窓に学びし日をば。
二、庭の草木も、あたりのながめも、
  なつかしの思出満ちて、
  今よりぞここに繋(かか)る。
  よき友よ、さらば別れぞ、
  信(まこと)もて永遠(とは)に思へや。
    我等とて、いかで忘れん、
    この園に睦びし日をば。




以上

(2013 年)



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