『教科統合 少年唱歌』全八冊

納所弁次郎,田村虎蔵 共編(十字屋,1903年4月〜1905年10月)





参編表紙.


納所弁次郎(1865 - 1936. 5)


田村虎蔵(1873. 10 - 1943. 11)


 『教科統合 少年唱歌』は『教科適用 幼年唱歌』の続編として民間から出版された楽譜付きの歌集で,言文一致唱歌の嚆矢のもの. 高等小学校(現在の小学5年生から中学2年生が対応する)を対象に作られた.
編者の納所は東京音楽学校の2期生で,バリトンで鳴らし,学習院の教師となった.田村は大分後輩で東京高等師範学校付属小学校の訓導で音楽教育界のリーダー的存在となった.
曲には「春風」(S. Foster 作曲 "Massa's In De Cold Ground"),田村虎蔵 作曲「虫の楽隊」,「祝捷歌」(Richard Wagner の楽劇『ローエングリン』の「結婚行進曲」),「雪の朝」(Weber のオペラ『魔弾の射手』の「花輪」),「愛らしき花」(Brahms作曲「子守歌」),「静けき夜」(Franz Gruber作曲.現在は「きよしこのよる」) ,「漁船」(Mozart作曲『春への憧れ』K. 596)などがある. その他イギリス,アメリカ,フランスの国歌やオーストリア,ロシアの旧国歌も採用されている.
原本は,主として国会図書館,東京芸術大学図書館の所蔵本による.




  緒 言

本書は、現今の小学校における唱歌科の、流弊を一洗せんと欲し
て、さきに編輯したりし「幼年唱歌」と、同主義を以て編纂したるも
のなり。要は教育的教授に適切なる教材の供給に外ならず。教材
は、高等第一学年より同第四学年に至る、各学年各学期に配当し
たれば、編を逐ひて順次児童教科用書に充て得べし。編纂の用意
下の如し。
 一、題目、 事実は、専ら修身・国語・地理・歴史・理科等の諸教科にて
    教授すべき事項、及び季節に因みて之を取り、以て各教科
    の統一を完からしめんことに力めたり。
 一、歌詞、 多年小学教育に経験を有する識者の作に成りて、児
    童も心情に訴へ、其嗜好に鑑み、初は国語科の程度を追ひ
    て、而も児童の詩的興味を発揮せんことに注意し、漸く古
    今名家の作に及ぼして、以て国民感情の養成に資せんと
    したり。
 一、曲節、 編者多年の研究の結果に成るものと、和声(ハーモニー)を附し得
    る欧州曲の、我国児童に適切なるものとにして、其音程、音
    域の如何を審査し、児童が心身発達の程度を精察し、快活
    流暢なるものより、優雅諄美なるものに進め、以て審美的
    感情を育成せんことを期せり。
以上の外、用意の詳細、及び音楽上併に教授上の注意に至りては、
毎巻の初に之を記述せり。

 明治三十六年二月十一日      編 者 識 す


  目次

初編 (1903年4月13日 発行)

第一  春風 (作曲 ほすたー氏 作歌 加藤義清)
第二  運動会 (作曲 田村虎蔵 校閲 坪内雄蔵
                      作歌 石原和三郎)
第三  熊沢蕃山 (作曲 納所弁次郎 作歌 旗野士良)
第四  春の別れ (作曲 未詳[西洋曲] 作歌 佐々木信綱)
第五  高田屋嘉兵衛 (作曲 田村虎蔵 作歌 石原和三郎)
第六  航海 (作曲 納所弁次郎 作歌 桑田春風)
第七  我国兵士 (作曲 くっけん氏 作歌 旗野士良)
第八  虫の楽隊 (作曲 田村虎蔵 作歌 桑田春風)
第九  紫式部 (作曲 納所弁次郎 作歌 大橋銅造)
第十  紅葉 (作曲 田村虎蔵 作歌 石原和三郎)


第二編 (1903年6月4日 発行)

第一  新井白石 (作曲 田村虎蔵 作歌 石原和三郎)
第二  軍艦 (作曲 へんりー、かれー氏 作歌 加藤義清)
第三  冬の月 (作曲 納所弁次郎 作歌 桑田春風)
第四  雪中の梅 (作曲 田村虎蔵 作歌 桑田春風)
第五  我国 (作曲 不明(西洋曲) 作歌 旗野士良)
第六  ナイチンゲール (作曲 納所弁次郎 作歌 石原和三郎)
第七  新年 (作曲 田村虎蔵 作歌 石原和三郎)
第八  富士山 (作曲 野村成仁 作歌 田辺友三郎)
第九  進軍 (作曲 あー、めとふえっせる氏 作歌 旗野士良)
第十  王政復古 (作曲 田村虎蔵 作歌 大橋銅造)


第三編 (1903年9月23日 発行)

第一  日の出 (作曲 田村虎蔵 作歌 石原和三郎)
第二  春の野遊 (作曲 不明(独逸国連邦中ツリンゲル国民歌)
             作歌 大橋銅造)
第三  松平定信 (作曲 納所弁次郎 作歌 石原和三郎)
第四  夕涼 (作曲 田村虎蔵 作歌 桑田春風)
第五  富国強兵(米国国歌) (作曲 ホプキンソン氏
                     作歌 旗野士良)
第六  上杉鷹山 (作曲 内田粂太郎 作歌 旗野士良)
第七  水車 (作曲 納所弁次郎 作歌 桑田春風)
第八  故郷の空 (作曲 エフ、ルート氏 作歌 旗野士良)
第九  リンコルン (作曲 田村虎蔵 作歌 石原和三郎)
第十  秋の七草 (作曲 納所弁次郎 作歌 旗野士良)


第四編 (1904年2月17日発行)

第一  弁慶 (作曲 納所弁次郎 作歌 旗野士良)
第二  良友 (独逸国国民歌 作歌 旗野士良)
第三  谷間の泉 (作曲 田村虎蔵 作歌 桑田春風)
第四  軍隊歓迎 (作曲 ルート氏 作歌 旗野士良)
第五  グラッドストーン (作曲 納所弁次郎 作歌 石原和三郎)
第六  大和心 (作曲 ナイハルト氏 作歌 大橋楽浪)
第七  霜 (作曲 田村虎蔵 作歌 石原和三郎)
第八  憲法発布(墺国国歌) (作曲 ハイドン氏  作歌 旗野士良)
第九  平田篤胤 (作曲 田村虎蔵 作歌 旗野士良)
第十  早春 (作曲 納所弁次郎 作歌 桑田春風)


第五編 (1904年5月16日 発行)

第一  桃園 (作曲 納所弁次郎 作歌 桑田春風)
第二  軍艦旗 (作曲 シー、ウォーク氏 作歌 旗野士良)
第三  ジェンナー (Jenner) (作曲 田村虎蔵 作歌 石原和三郎)
第四  森の小鳥 (作曲 不明(西洋曲) 作歌 大和田建樹)
第五  滝 (作曲 納所弁次郎 作歌 石原和三郎)
第六  常磐木 (作曲 不明(独逸国国風歌) 作歌 旗野士良)
第七  読書の秋 (作曲 田村虎蔵 作歌 大和田建樹)
第八  学の友 (作曲 不明(独逸国国風歌) 作歌 大和田建樹)
第九  小さき星 (作曲 田村虎蔵 作歌 桑田春風)
第十  墳墓の国 (作曲 ウイルヘルム氏 作歌 旗野士良)


第六編 (1904年8月4日発行)

第一  林 子平 (作曲 田村虎蔵 作歌 石原和三郎)
第二  希望 (作曲 カール、グロース 作歌 武島又次郎)
第三  祝捷歌 (作曲 ワグネル 作歌 旗野士良)
第四  釣遊 (作曲 納所弁次郎 作歌 旗野士良)
第五  急流 (西洋曲 作歌 大和田建樹)
第六  籠の小鳥 (作曲 ゲルバッハ 作歌 旗野士良)
第七  護国の歌 (作曲 田村虎蔵 作歌 大和田建樹)
第八  雪の朝 (作曲 ウェーベル 作歌 大和田建樹)
第九  海原 (作曲 ルボッフ 作歌 大和田建樹)
第十  ワシントン (作曲 納所弁次郎 作歌 武島又次郎)


第七編 (1905年3月25日発行)

第一  春の遊 (作曲 スコット 作歌 大和田建樹)
第二  吉田松陰 (作曲 納所弁次郎 作歌 佐々木信綱)
第三  愛らしき花 (作曲 ブラームス 作歌 大和田建樹)
第四  進撃 (作曲 ルーヂ,デゥ,リス 作歌 旗野士良)
第五  静けき夜 (作曲 グルーベル 作歌 坂 正臣)
第六  夕日 (作曲 田村虎蔵 作歌 旗野士良)
第七  勧学 (作曲 ドゥリンゲル 作歌 大和田建樹)
第八  同窓会 (作曲 モツアルト 作歌 旗野士良)
第九  兵士の夢 (作曲 ラインゲル 作歌 大和田建樹)
第十  銃猟 (作曲 納所弁次郎 作歌 石原和三郎)


第八編 (1905年10月11日 発行)

第一  茸狩 (作曲 メトフェツセル 作歌 佐々木信綱)
第二  コロンブス(作曲 納所弁次郎 作歌 石原和三郎)
第三  愉快(作曲 不明(欧州の古歌) 作歌 大和田建樹)
第四  陣営の月(作曲 エス、ビー、ダナ 作歌 佐々木信綱)
第五  漁船(作曲 モツァルト 作歌 大和田建樹)
第六  亡友(作曲 不明(独逸国国風歌) 作歌 佐々木信綱)
第七  皇祖(作曲 スタンツ 作歌 大和田建樹)
第八  枯野(作曲 不明(独逸国国民歌) 作歌 大和田建樹)
第九  別れの歌(作曲 田村虎蔵 作歌 石原和三郎)
第十  春の歌(作曲 不明(讃美用古代曲) 作歌 佐々木信綱)



「明治の唱歌」のトップへ戻る


初編 

(1903年4月13日 発行)(高等小学第一学年前半用)

@ 第一 春風 (加藤義清 作詞 S. Foster 作曲)

一 吹けそよそよ吹け、春風よ、
  ふけ春風ふけ、柳の糸に、」
  吹けそよそよ吹け、春風よ、
  ふけ春風ふけ、我等の凧に、」
  ふけよふけ、春風よ、
  やよ、春風ふけ、そよそよふけよ。』
二 やよ、吹くなよ風、この庭に、
  風ふくなよ、風、垣根の梅に、」
  やよ、吹くなよ風、この庭に、
  風、吹くなよ風、我等の羽根に、」
  ふくな、風、この庭に、
  やよ、吹くなよ風、吹くなよ、風よ。』

[注] 原曲はフォスター作詞作曲の"Massa's In De Cold Ground" (1852).
この曲の日本初演は,ペリー艦隊が連れてきた芸人の minstrel show
で上演された 1854 年 3 月 27 日 (嘉永 7 年 2 月 29 日).Cf.
http://www.geocities.jp/saitohmoto/hobby/gakki/Perry/Perry.html

歌姫 Marguerite Dunlap による歌唱 (1912) は
Massa's in de cold, cold ground - Marguerite Dunlap, 1912.mp3



Stephen Collins Foster (1826 - 1864)


第二  運動会 (坪内雄蔵 校閲・石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 日ごろきたへに、きたへた力、
  見せるは、この時、いざ腕だめし、
  走りくらなら、アラビヤ馬よ、
  高とび、はばとび、カンガル何の。」
二 脚は金鉄、みがきをかけて、
  フートボールは、天へもとゞけ、
  腕は、すぢ金、よりをばこめて、
  綱は、ちぎれよ、ひくたびたびに。」
三 勝つも、まけるも、勝負は、ならひ、
  おのが全力、つくした、うへで、
  勝てば喝采、まけても拍手、
  つゆも卑劣な、振舞するな。」
四 二十世紀の、多事なる世界、
  日本男児の、つとめは多い、
  無病のからだに、無病のこゝろ、
  きたへよ、体を、まづ第一に。』



@ 第三 熊沢蕃山 (旗野士良 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 旅宿にあふみの、 物語
  聞きて、ゆかりの、藤の木を、
  たづねて蔭に、  やどらんものと、
  ちぎりし、志望も、そらだのめ。」
二 たのむ誠実を、  明しかね、
  ふつか、ふたばん、檐 (のき) にたつ、
  身を、おいびとの、慈愛によりて、
  学問の門口、   入りそめぬ。」
三 そめて、色ます、 綾錦、
  かざる故郷の、  名のみかは、
  その世に高き、  蕃山先生、
  文武をわかたぬ、 道しるべ。』



@ 第四 春の別れ  (佐佐木信綱 作詞 作曲未詳[西洋曲])

一 惜しめど、かひなし、暮行く春は、
  悔れど、すべなし、 過ぎ行く時は、
  ゆけゆけゆけゆけ、 心のまゝに、
  ゆけゆけゆけゆけ、 思のまゝに。」
二 嘆けど、かひなし、 散しく花は、
  いためど、すべなし、うつらふ色は、
  ちれちれちれちれ、 心のまゝに、
  ちれちれちれちれ、 思のまゝに。」
三 惜めど、悔れど、  かひなき春は、
  なげけど、いためど、すべなき花は、
  ゆけゆけゆけゆけ、 心のまゝに、
  ちれちれちれちれ、 思のまゝに。』



@ 第五 高田屋嘉兵衛  (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 氷に、とざす、えぞのはて、
  ふゞきに、くらき、エトロフの、
  嶋に渡りて、土人らに、
  すなどりの業、授けたり。
  百折たゆまぬ、
      丈夫の、こゝろざし
  ほまれは広し、
      オコツクの海よりも。」
二 たまたま露艦に、とらへられ、
  ゐて、ゆかれたる、カムサツカ、
  ふゞきも雪も、忍べども、
  忍びがたきは、はづかしめ。
  大喝一声、
      丈夫の、いきどほり、
  むけし、かれらが
      銃口も、くるひけり。」
三 千辛万苦の、かひありて、
  シベリヤ、とざす、あつ氷、
  彼と我との、胸もとけ、
  なみ風しづまる、北の海。
  暴威と、たたかふ、
      丈夫の、やまとだま、
  いさをは今も、
      高田屋世にたかし。』



@ 第六 航海 (桑田春風 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 万里の風、千里の波。
   ゆくて、張るけし、我等が船路、
   いざいざ進め、撓まず走れ、
  海国男児の、 膽斗の如し、
  竜の宮居も、 探らば、さぐれ。」
二 太平の洋 (なだ)、北氷の海。
   ゆかぬ、くまなし、我等が船路、
   いざいざ走れ、勇みて進め、
  海国男児の、 抱負は偉大、
  宝の嶋を、  拓きて、かへれ。』



@ 第七 我国兵士 (旗野士良 作詞 Kücken 作曲)

一 我国兵士の、
  勇気を見よや、勇気を見よや、
  君主に報ずる、忠義は高し。
  ヒマラヤ山の、嶮岨も何ぞ、
  国家に尽くす、公義は深し、
  太平洋の、  風波も何ぞ、
  日の丸さゝげて、
    勇ましく、
      この世照らす。』
二 大詔一度、
  出でたる方は、出でたる方は、
  眼中敵なし、世界の限。
  愉快に進む、虎狼の野山、
  腰剣 (つるぎ) は吼えて、弾丸叫び、
  懲罰 (きため) て過ぐる、奸邪のちまた、
  さてこそ卓絶 (すぐれ) し、
    我国の
      兵士なれや。』

[注] 原曲は Friedrich Kücken (1810-1882) 作曲,Friedrich Güll
(1812-1879) 作詞,"Wer will unter die Soldaten".
J.P. McCaskey "Franklin Square Song Collection", no. 1 (New York:
Harper & Brothers, 1881), p. 89: "Robin Redbreast" として採録されて
いる.[桜井: 私信 2013. 1. 22/24]

メロディーは
Wer Will unter die Soldaten-Ingeb Org.mid



@ 第八 虫の楽隊 (桑田春風 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 千草八千草、乱れ咲きて、
  花をしとねの、夢おもしろと、
  おのずからなる、虫の声々。
   チンチロリン、チンチロリン、
    スヰッチョ、スヰッチョ、
   ガシャガシャ、ガシャガシャ、
    ガシャガシャ、ガシャガシャ、
  月ある夜半は、
  秋の野もせの、楽隊をかし。』
二 鈴虫、松虫、くつわ虫や、
  こほろぎ、馬追、鐘つき虫の、
  ふしも、さまざま、歌にはやしに。
   チンチロリン、チンチロリン、
    スヰッチョ、スヰッチョ、
   ガシャガシャ、ガシャガシャ、
    ガシャガシャ、ガシャガシャ、
  風なき夜半は、
  秋の野もせの、楽隊をかし。』



@ 第九 紫式部 (大橋銅造 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 立おほふ、
   都大路の、けがれし世のちり、
   いとひて、すむや、石山の、
  秋の夜の月、水にうつして、
   あはれあはれ、女のかゞみ。」
二 色ふかく、
   文の林に、匂へる、むらさき、
   あな、たぐひなや、九重の、
  雲居のほまれ、よろづ世、かけて、
   あはれあはれ、女のかゞみ。』



@ 第十 紅葉 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 時雨に色ます、 唐くれなゐ、
  夕日に照りそふ、古金襴。」
   誰が手に染めたる、
   誰が手に織りたる、
  つやゝかなりや、高嶺の紅葉。』
二 風に舞ひたつ、 錦のきれ、
  川瀬に浮べる、 あや模様。」
   誰が手に染めたる、
   誰が手に織りたる、
  はなかなりや、 谷間の紅葉。』




第二編

(1903年6月4日発行) (高等小学第一学年後半用)

A 第一 新井白石   (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 二葉にこもる、せんだんの、
   かをりは今も、かたりぐさ。
  三歳(みとせ)のころに、筆をとりて、
   かいたる文字は、「天下一。」
二 昼間みじかき、冬の夜の、
   ふけて、ねむけの、さすころは、
  はだへを、つんざく、水をあびて、
   かきこそ、をはれ、四千文字。
三 「生きて封侯(ほーこー)、えられずば、
   死して、えんまの、王たらん」
  ちかひは果して、筑後ノ守、
   ああ大丈夫、大丈夫。



A 第二 軍艦  (加藤義清 作詞 作曲者不詳)

一 わだ(海)の、はらに、島の、ごとく、
     見ゆるは、」
  『よする仇を、ふせぐ、ふねよ、
    あ、ををし、たけし、
      軍艦(いくさぶね)よ。』(復唱)
二 わだの、はらに、山の、ごとく、
     見ゆるは、」
  『皇御国(すめらみくに)、まもる、ふねよ、
    あ、ををし、たけし、
      軍艦(いくさぶね)よ。』(復唱)

[注] 元歌は 英国国歌.
Henry Carey (1687 - 1743) 作曲とされるが,疑わしい.Cf.
http://en.wikipedia.org/wiki/God_Save_the_Queen
アメリカでは "My Country 'Tis of Thee" (旋律名:AMERICA) の
歌詞で国歌並みの扱いを受けている.
『讃美歌并楽譜』(大阪:美國派遣宣教使事務局,1882. 3; 覆刻版・
附解説は東京:新教出版社,1991. 12) には AMERICA の旋律名で
4 部合唱の楽譜と歌詞 3 編:「かみよきたり」,「みたまきたり」,「てんちの
かみよ」が掲載されている.
合唱版としては本邦初出であろう.[桜井:私信 2013. 1. 19/ 23]

2002 年の英エリザベス女王の誕生日式典での演奏は
God Save the Queen Sing-A-Long (arranged by Sir William Walton)
http://www.youtube.com/watch?v=DnuoGOo3Bew
米国版はオバマ大統領の就任式でも歌われた.
Barack Obama Inauguration - Aretha Franklin - Sings 'America' My
Country 'Tis of Thee
http://www.youtube.com/watch?v=YsNHhJTZAM0



Henry Carey (1687 - 1743)


A 第三 冬の月  (桑田春風 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 空は氷と、凍(い)てつきて、
   風は、つるぎと、さえわたる、
    母や待つらん、父やなき、
  山に柴刈り、粗朶(そだ)樵(こ)りて、
   けふも日暮し、帰る子の、
    家路を照らす、冬の月。
二 千家(せんか)万家(まんか)も、戸をさして
   往来(ゆきき)もたえし、四辻に、
    按摩の笛の、いとあはれ、
  都も冬は、さびしきに、
   柳は枯れて、霜白き、
    大路を照らす、冬の月。



A 第四 雪中の梅  (桑田春風 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 天のはて、地のきはみ、
   見渡すかぎり、しろじろと、
    降りうづめたる、けさの雪。」
  庭に木立に、野の面(おも)に、
   白銀の花、咲きみちぬ。」
  やがて朝日の、照るまゝに、
   雪は消ゆれど、消え残る、
    賎が籬根(かきね)の、梅の花。」
二 物みなは、枯れはてて、
   春まつ頃を、ほこりがに、
    まづ花ひらく、梅の花。」
  雪に氷に、木枯に、
   おごれる姿、あなゆかし。」
  思へ、寒苦に、耐へてこそ、
   梅も百花に、魁(さきが)けて、
    清くも、高く、かをるなれ。」



A 第五 我国  (旗野士良 作詞 西洋曲)

一 山河は秀優(ひいで)、土地(つち)は肥饒(こえ)て、
   物沢山(ものさは)に、足(たら)ひ、四(よつ)の時、
  ゆたかに、めぐりて、花鳥も楽し。」
  美麗(うまし)国ぞや、千五百(ちいほ)、秋の、
  瑞穂の名こそ、まことなれ。』
二 大君は仁恵(めぐみ)、人民(たみ)は勤勉(つとめ)、
   事物(ものごと)に敏(さと)く、世の為に、
  生命(いのち)も、惜まぬ、益荒雄ぞ多き。」
  勇猛(たけき)国ぞや、微妙(くはし)、戈の、
  千足(ちたる)の名こそ、まことなれ。』

[注] 原曲は学生歌 "Das Urbummellied" (歌詞:Studio auf einer Reis',
Juchheidi, juchheida). "Upidee", "Youkaidi Youkaida" など他の表題
もある.
J.P. McCaskey "Franklin Square Song Collection", no. 1 (New York:
Harper & Brothers, 1881), p. 68: "Upidee" として掲載されている.[桜井:
私信 2013. 1. 14/ 23]

歌唱は例えば
Studio auf einer Reis
http://www.youtube.com/watch?v=ikyHo3r5A0Q



A 第六  ナイチンゲール  (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 黒海海上、雲あれて、
   クリミヤ半島、血をふらす、
    叫喚地獄の、其なかに、
     にほふ、はちすの、花一輪。
二 ておひの兵士、やめる兵、
   永き、ねむりに、つく人の、
    あはれ神とも、仏とも、
     たのまぬ、ものぞ、なかりける。
三 根ざしは、ふかき、慈悲博愛、
   心は赤き、赤十字、
    赤十字社の、つぼみよと、
     かぐはしき名を、のこしけり。



A 第七  新年  (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 君が代の、ときは、かきはの、みさかえは、
   門ごとに、立てつらねたる、松竹の、
    色にも見えて、めでたやな、
     年のはじめよ、新年よ。
二 皇国(すめぐに)の、とよさかのぼる、いきほひは、
   家ごとに、かかげつらねし、日の丸の、
    旗にも見えて、たのしやな、
     年のはじめよ、新年よ。
三 国民(くにたみ)の聖代(みよ)にあひぬる、よろこびは、
   人ごとに、ゑみこぼれたる、かんばせの、
    みめにも見えて、うれしやな、
     年のはじめよ、新年よ。



A 第八  富士山 (四季の景)  (田辺友三郎 作詞 野村成仁 作曲)

一 三保の松原、  田子の浦、
  あしたか山の、 峯かけて、
  春は、ひとつに、打ちかすむ、
  霞のうへに、   あらはれて、
  八島みおろす、 富士の山。」
二 金の、ふもとに、とくる日も、
  その、いただきに、夏はなし、
  雲を、わあけつつ、のぼりたち、
  ふりさけ見れば、四方山(よもやま)は、
  足の下なる、  富士の山。」
三 すみに、すみたる、秋の夜の、
  心も、そらに、 すむものは、
  外山(とやま)のうへに、 遠白く、
  千秋きえぬ、  雪の色、
  月に照りそふ、 富士の山。」
四 雲の、をのへに、かかるより、
  ふもとに、すさぶ、木枯の、
  はては、いづこぞ、するが湾、
  遠州なだに、  たつ浪も、
  神のみわざか、富士の山。』



A 第九  進軍  (旗野士良 作詞 Albert Methfessel 作曲)

一 進め、すすめ、進む方向(かた)の、
  山も、河も、いまは、なにぞ、
  『荊棘(おどろ)の、ふさぐ坂路(さかぢ)、
  荒浪よする、断岸(きりきし)。』(復唱)
二 進め、すすめ、進むかたは、
  敵(あだ)の弾丸(やだま)、霰なすも、
  『精神(まごころ)、込めて向ふ、
  我等が身には、障らず。』(復唱)
三 進め、すすめ、進むかたは、
  銃(つ つ)のけぶり、霧は、たつも、
  『勇気(いきほひ)、充満(みち)て叫ぶ、
  我等が息に、吹き散る。』(復唱)

[注] 原曲は A. Methfessel (1786 - 1869) 作詞作曲の "Gesang ausziehender Krieger" ['Hinaus in die Ferne mit lautem Hörnerklang'}(1813). 異なる表題・歌詞も幾つかある.[桜井: 私信 2013. 1. 19]

歌唱は
Chor und Orchester Harry Pleva - Hinaus in die Ferne
http://www.youtube.com/watch?v=PPCd1hTAqKw



Albert Gottlieb Methfessel (1785 - 1869)


A 第十  王政復古  (大橋銅造 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 寄せ来し黒船、
    とどろく火砲(ほづつ)、
  千代田の城の、
    のどかなる、
      夢を破りて。」
  渡るひびきに、
    津津浦浦も、
  尊王攘夷、尊王攘夷、
      尊王攘夷。』
二 かがやく天つ日、
    にしきの御旗、
  七百年の、
    雲霧も
      あとなく消えて。」
  仰ぐ民草、
    津津浦浦も、
  王政維新、王政維新、
      王政維新。』




第三編 

(1903年9月23日 発行)(高等小学第二学年前半用)

B 第一 日の出 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 朝靄、おしわけ、  横雲ひらき、
  あさひは、いでたり、東の海に、
   ねむれる魚類も、 ひれふり浮かび、
   大舟、小舟も、  帆を、はりあげて、
  世界の物みな、   はたらき、いだす、
  たふとき光よ、   あさひの光。」
二 松の木、ひの木の、 木ずゑをわけて、
  あさひは、のぼりぬ、東の山に、
   草の葉、木の葉も、そよめき、はじめ、
   ねぐらの小鳥も、 さへずり、そめて、
  世界の物みな、   はたらき、いだす、
  たふとき光よ、   あさひの光。』



B 第二 春の野遊 (大橋銅造 作詞 Thüringen 民謡)

一 若菜まじる、 野辺の芝生、
   錦綾の、   むしろか、
  今日の課業、 早く終へて、
   行きて遊ばん、いざいざ。
二 たんぽぽ、すみれ、今や盛り、
   黄金、珠玉も、何かは、
  母に、ひとつ、坊にも一つ、
   つみて行かん、いざいざ。
三 いつか移る、 春の日あし、
   かすみかゝる、遠山、
  謡ふ、ひばり、ねぐら、いづこ、
   われも家に、 いざいざ。

[注] Friedrich W. Kücken (1810 - 1882) 作曲 "Treue Liebe" ('Ach,
wie ist's moglich dann!'). 『明治唱歌 第三集』第九
「菫つみ」
と同じ.[桜井: 私信 2013. 1. 14]

歌唱は
Comedian Harmonists - Ach, wie Ist's moglich dann 1933 -
Sommerfrische 1927
http://www.youtube.com/watch?v=3-mTUHhIcq4



B 第三 松平定信 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 いらだつ気質も、  自ら、おさへ、
   みがき、あげたり、 心のま玉、
  かよわき、からだも、自ら愛し、
   保ち、たりけり、  長き、よはひ、
  あゝ清し、     白河の水、
  克己の、かがみ、  摂生の、かがみ。
二 古今の書物に、   眼をされし、
   かきのこしたり、  あまたの書物、
  文武の道を、    心に入れて、
   改められたり、   天下の政事、
  あゝ清し、     白河の水、
  勉強のかがみ、   誠実の、かがみ。



B 第四 夕涼 (桑田春風 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 夕風涼し、   出でても涼まん、
  団扇片手に、  いざいざ来ませ。
   庭の築山、  池の、みぎは、
   千点万点、  風に、みだれて、
  あれあれ蛍が、 火花のよーに。』
二 夕風涼し、   門辺に涼まん、
  月も出でたり、 いざいざ来ませ。
   小川の、ほとり、橋の、たもと、
   光に、かくれ、闇をば縫うて、
  あれあれ蛍が、 水の上飛ぶよ。』



B 第五 富国強兵(米国国歌) (旗野士良 作詞  Philip Phile 作曲)

一 富ませよ国を、 いざ身にかへて、
  謀り成す事も、 慮ひ起つ業も、
  国をのみ目的(めあて)に、とませよ、富ませ。」
   暴風吹く海に、 商船 (あきぶね) すゝめ、
   氷の島に、   [金偏に重から下の二をとった旁:すき]鍬とどめ。」
  国富み、たらば、兵も、また強けむ、
    是れ我が民の、現世の義務。』
二 強めよ兵を、  いざ身はすてゝ、
  君のため思ひ、 国のため忍び、
  兵士たる胆魂、 つよめよ、強め。」
   かたきある山に、屍を、さらし、
   あだ守(も)る河に、 血潮を、そそぎ。」
  兵強からば、  国も、また富みなむ、
    是れ我が民の、このよの、つとめ。』

[注] 原曲は "Hail Columbia". 作曲 (1793) はPhilip Phile.19 世紀末
までアメリカ国歌扱いされた.以下の楽譜に書かれた Hopkinson は作詞者である.
日本初演はPerry が日米和親条約調印のため横浜に上陸した1854 年
3 月 31 日(嘉永7年3月3日)に米楽隊によって演奏された. Cf.
http://www.geocities.jp/saitohmoto/hobby/gakki/Perry/Perry.html
『中等唱歌集』第十
「御国の民」
としても採用されている.

演奏は
Hail Columbia
http://www.youtube.com/watch?v=VZ1wBkEn6tc



B 第六 上杉鷹山 (旗野士良 作詞 内田粂太郎 作曲)

一 国の基本は、  民にあり、
  民は田耕(たがや)す、業にあり、
  業や、これから、鍬とりて、
  その労苦 (いたつき) を、試みん、」
   嗚呼、上の為せるところ、
      下これに、ならふとかや。』
二 人の行為(おこなひ)、道にあり、
  道は学の、   書(ふみ)にあり、
  ふみや勧めよ、 教官(をしへびと)、
  片山里の、   笹屋まで、」
   あゝ、上の好むところ、
      下これに、きそふとかや。』

B 第七 水車 (桑田春風 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 みのり豊けき、 八束穂の、
  黄金の穂波、  なびけつゝ、
  秋の田面を、  わけくれば、
  野川の、ほとり、米つく家か、
  けふも機械の、 音高く、
  水にくるくる、 水車。
二 細き流の、   水せきて、
  つくり、なしたる、水車、
  めぐる車の、  力にて、
  山なす米を、  見るまに精(しら)げ、
  風雨、昼夜の、 わかちなく、
  水に、くるくる、水車。



B 第八 故郷の空 (旗野十一郎 作詞 George F. Root 作曲)

一 おぼろに霞む、 桜の、あした、
  道の朋友と、  杖を曳き、」
  川風青き、   柳の岸に、
  小船とどめ、  書を読む。」
   かゝる折も、はた、
    他こそ 知らね。
  楽しと思ふ、  心に、そへて、
  故郷の空、   眺めらる。』
二 さやかに晴れて、月すむ夜頃、
  遊歩がてら、  歌を詠み、」
  白雪つみし、  学の窓に、
  考案(おもひ)こめて、筆を執る。」
   かゝる時も、また、
    吾のみ 殊に。
  詫しき、ふしの、あるにもあらで、
  故郷の空、   眺めらる。』

[注] George F. Root 作詞作曲 (1864) "Tramp! Tramp! Tramp!".[桜井: 私信
2013. 1. 14]

Mormon Tabernacle Choir による合唱は
Tramp, Tramp, Tramp, the Boys Are Marching
http://www.youtube.com/watch?v=AO6SmllpTR8
同志社の応援歌にもなっている:
同志社大学応援団(6)若草萌えて
http://www.youtube.com/watch?v=7zqFb8AdW0c



B 第九 リンコルン (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 北アメリカの、  片田舎、
  見るかげもなき、 山かづの、
  家に生まれし、  リンコルン、
  まだ、いとけなき、頃とかや、
  ある日、こゝろに、思ふやう。
二 合衆国を、    うちたてゝ、
  国の父よと、   末ながく、
  世に仰がるゝ、  ワシントン、
  かれも人なり、  我れも人、
  勉めて及ばぬ、  ことやある。
三 かくて智徳を、  ねりきたへ、
  つとめ、はげみし、かひありて、
  大統領に、    推されたり、
  をりから奴隷の、 議論より、
  南北戦争、    はじまりぬ。
四 自由のために、  身をさゝげ、
  人道のため、   命をも、
  すてゝ惜しまぬ、 ますらをの、
  正義の、やいば、 慈悲の楯、
  国のみだれを、  しづめけり。
五 功成り、名遂げて、国民の、
  万歳となふる、  声のうち、
  兇人の手に、   斃れしも、
  やがて第二の、  国の父、
  美名は朽じ、   千代までも。」

[注] 表題の誤植「ンリコルン」を訂正.



B 第十 秋の七草 (旗野士良 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 秋の野の、 露わけて、
  むかし誰が、見初めけむ、
   小萩、撫子、 ふぢ袴、
   尾花は招く、 女郎花 (をみなへし)。」
二 朝顔の、  はかなさを、
  葛の葉や、 うらみなむ、
   菊は 桔梗に、とりかへて、
   今、七腐と、 謡ふなり。』




第四編 

(高等小学第二学年後半用)

C 第一 弁慶 (旗野士良 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 天下の名品(めいき)に、逢(あ)はばやと、
  夜な夜な五條の、橋に出(い)で、
  九百九十、九本めの、
  太刀(たち)は源家(げんけ)の薄緑。」
二 黒革縅に、袈裟頭巾、
  薙刀杖に、仁王立ち、
  七個(ななつ)道具を、背負しに、
  智謀の多きぞ、知られける。」
三 うち振る兵器は、八角棒、
  三十二個の、鉄の疣(いぼ)、
  阿修羅と見ゆる、勇僧は、
  西塔(さいとー)別当、武蔵坊。」
四 君に忠義の、みこし路や、
  安宅(あだか)の関を、うち過ぎて、
  末の世までも、清き名を、
  洗ひ流しし、衣川(ころもがは)。」



C 第二 良友 (旗野士良 作詞 Friedrich Silcher 作曲)

一 誠実(まこと)しやかに、まじはりても、
  好(よ)きには進み、悪(あし)きに避け、
  わが世の道に、両筋(ふたすじ)あるは、
  友には似て、非(ひが)なる友。」
二 相(あひ)逢ふときに、さはなくとも、
  別れし後は、こゝろをこめ、
  艱難(つらき)を助け、憂苦(うき)をば救ふ、
  友こそ是れ、真(まこと)の友。」

[注] 原曲は Silcher 作曲 "Mein guter Kamerad" ('Ich hatt einen
Kameraden').『女学唱歌』@ 第二十五
「懐友」
と同じ.[桜井: 私信 2013. 1. 14]

歌唱は例えば,
Ich hatt' einen Kameraden | The good Comrade | Le Bon Compagnon
http://www.youtube.com/watch?v=8LOf4ci1_WU



C 第三 谷間の泉 (桑田春風 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 清き姿に、湧き出でて
  球を砕きて、岩になり
  白ゆふ曳きて、瀬に謡ひ
  岸辺の花を、ひたしつつ、
  流れて行くか、谷間の泉。」
二 峰に嵐の、吹き、すさび、
  紅葉うかべて、流るれば、
  波くれなゐの、くゝり染、
  深山(みやま)の秋を、つげ顔に、
  里に、いづるか、谷間の泉。」



C 第四 軍隊歓迎 (旗野士良 作詞 G.F. Root 作曲)

一 遠音に響く、伴の男達(をたち)を、
  迎へ祝ふけふぞ、」
  鬼にもまさる、益荒男たちを、
  迎へ歌ふいまぞ、」
   国家(よ)の事には、身を捧ぐ
   壮快(いさまし)や、雄々しや、」
  我等も他日(のち)は、然(さ)こそ成らめ、
  いさましや、をゝしや。」
二 軍隊(いくさ)の装束(さま)の、厳然(いかめし)猛然(たけし)、
  宜(うべ)も怖る敵(あだ)は、」
  思へば、もとは、兄弟(はらから)同胞(うから)、
  同じ国の、み民、」
   国家(よ)のためには、身を殺す、
   壮快(いさまし)や、、雄々しや、」
  人たるものは、斯(かく)ぞあらん、
  いさましや、をゝしや。」

[注] 原曲は George F. Root (1825-1895) 作曲 (1862) "Battle cry of freedom".
このメロディーはかつて学習院舗仁会の応援歌にも使われた事がある.

歌唱は
Battle Cry of Freedom - George F. Root (1862)
http://www.youtube.com/watch?v=OU_9CCPFWDY



C 第五 グラッドストーン (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 正しき道と、信じなば、
  あくまで、とほせ、貫けの、
  負けじ魂、そなはりて、
  かよわき野菜、うゑつけの、
  物あらそひにも、芽ざしけり、
  これや二葉の、せんだんか。」
二 よく励み、また、よく遊び、
  心に、からだに、ねりみがく、
  その習慣(ならはし)は、イートン校、
  オクスフォルドの、大学に、
  エトナの火山の、いただきに、
  今も残れる、かたりぐさ。」
三 さて国会に、出でてより、
  政事の舞台に、五十年、
  しのぎ、けづるも、国のため、
  正義に向ふ、刃(やいば)なく、
  やがてイギリス、大宰相、
  美名は世々を、照すなり。」



C 第六 大和心 (大橋楽浪 作詞 A. Neithardt 作曲)

一 大和男児、何をかする、
  皇国の文化、進めんと、
  たゆまずに、書(ふみ)をば読みて、
  己が智を、みがくなり、」
   あはれ、たのもし、
      その雄心、
  国のため君のため、
      尽くせ力をつくせ。」
二 大和男児、何をかする、
  皇国の富を、はからんと、
  夙に起き、夜半に、いねて、
  己が業(ぎょー)を、はげむなり、」
   あはれ、たのもし、
      その雄心、
  国のため君のため、
      尽くせ力をつくせ。」
三 大和男児、何をかする、
  皇国の名誉、けがさじと、
  太刀とりて、小銃(こづつ)とりて、
  己が身を、きたふなり、」
   あはれ、たのもし、
      その雄心、
  国のため君のため、
      尽くせ力をつくせ。」

[注] 原曲はプロイセン王国(1830-1840)国歌の "Preußenlied"
(歌詞:Ich bin ein Preuße! kennt ihr meine Farben?). Bernhard
Thiersch (1793-1855) が作詞 (1830), August Neithardt (1793-1861)
が作曲 (1832) し, F.Th. Schneider が歌詞を追加 (1851) した.[桜井:
私信 2013. 1. 20]

歌唱は
Ich bin ein Preuße, kennt ihr meine Farben? (Alle Strophen, zum
Mitsingen)
http://www.youtube.com/watch?v=Z-Tl7_6mQCA



C 第七 霜 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 曲)

一 朝風、をかして、田舎の、こみち、
  落葉の上を、ふみゆけば、
  立てるは立てるは、霜ばしら、
  足おと、おもしろ、みしみしと、
  我よりさきに、たが、ふみわけし、
  二の字、二の字の、下駄のあと。」
二 朝寒、をかして、都のはづれ、
  川の、ほとりに、来かゝれば、
  おけるは、おけるは、橋の霜、
  足おと、おもしろ、とん、とんと、
  我よりさきに、たが渡りけん、
  千鳥につけたる、靴のあと。」



C 第八 憲法発布 (旗野士良 作詞 Joseph Haydn 作曲)

         (紀念歌)

一 日月(つきひ)の影かも、
      隅なく照るは、」
  めぐみの露かも、
      漏さず、おくは。」
  さてしも比喩(たと)へん、
      ものなき御代ぞ。」
  今日(明治廿一年二月十一日)より発布(しき)ます、
      此大憲法(おほみのり)。」(復唱)
二 ますます栄えん、
      わが日の本の、」
  威光(みいつ)や世界に、
      耀くはじめ。」
  やがても光の、
      功績(いさを)ぞ映(にほ)ふ。」
  「たふとき憲法や、
      かしこき憲法。」(復唱)
三 いよいよ繁らん、
      青人草(あをひとぐさ)の、」
  花さくときこそ、
      是より来たれ。」
  やがても、その実の、
      結ぶは著明(しる)し。」
  「楽しき、みのりや、
      嬉しき、みのり。」(復唱)

[注] 原曲は Joseph Haydn (1732 - 1809) 作曲,皇帝 Franz II 世の誕生日
1797 年 2 月 12 日に初演の "Gott erhalte Franz den Kaiser".
1922-1946年に旧ドイツ,そして 1991 年より現在のドイツ国歌.
歌詞についてはさまざまな変遷があり,ナチス時代の歌詞は変更されている.
またハプスブルグ家崩壊後から第二次世界大戦終結までの旧オーストリア国歌
でもある.

メロディーは
National anthem of Germany
http://www.youtube.com/watch?v=XtP8XbzFVsg



Jozef Haydn (1732 - 1809).


C 第九  平田篤胤(旗野士良 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 潮泡の、漢唐天竺(からあまき)、
   国の教に、迷へる人を。」
  梓弓、引きかへす、
   やたけ心の、篤胤大人(うし)よ。」
  うしなればこそ、石(いそ)の上(かみ)、
  古の神ごと、唱へたれ、
  終に罪なく、配流(さすら)へて、
  あはれ秋田に、
       月を見るまで。」
二 山菅の、乱れにし、
   神の真道(まなみち)、清らにせんと。」
  焼鎌の、鋭鎌(とがま)もて、
   刈りつ払ひつ、百(もも)ぶみ千(ち)ぶみ。」
  ふみ開きたる、功績(いさをし)は、
  今の世とても、後とても、
  いかで尽めや、垣穂なす、
  他(ひと)は彼に是(か)く、
   評論(あげつ)らふとも。」



C 第十 早春 (桑田春風 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 吹く風は、まだ、 寒けれど、
  庭の梅が香、   はや薫り、
  深山に雪は、   残れども、
  野の新草は、   もえいでぬ、
  春は来ぬ、    春は来にけり。」
二 冬ごもりする、  夢路より、
  春の野面(ののも)は、さめけりな、
  小川の氷、    とけそめて、
  初鶯の、     声ぞする、
  春は来ぬ、    春は来にけり。」



第五編 

(1904年5月16日 発行)(高等小学第三学年前半用)

D 第一 桃園 (桑田春風 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 春日、のどかに、かすみ、
  園生には、桃さきて、
  鴛鴦(おし)眠る、池の面(も)に、
  くれなゐの、影ひたす。」
二 遊ぶ、をとめら、二人、
  花手折る、何のため、
  けふはこれ、弥生三日、
  まゐらすか、雛の君に。」
三 愛(は)しき、姉妹(はらから)、ふたり、
  けふこそと、雛祭、
  桃の花、折りそへて、
  かしづくよ、やさしくも。」
四 花と、少女と、いづれ、
  艶なりや、絵の如く、
  昼静か、桃の園、
  太平の、世の姿。』



D 第二 軍艦旗 (旗野士良 作詞 Henry C. Work 作曲)

一 高檣(マスト)に閃く、旗こそは、
  いとども畏き、天皇(すめらぎ)の、
  たまひし賜物、疎略(おろそか)に、
  ゆめな汚し、そよ。
   我君の、御威(みいつ)載せ、
   我国の、保護(まもり)負ふ、
  軍の艦(ふね)たる、章(しるし)なれ、
  ゆめな、けがし、そよ。」
二 高檣に閃く、旗影は、
  さすがに輝く、日の本の、
  軍艦(みふね)と見る者、先ずおそる、
  ああ勇まし、やな。
   青海の、つづく、はて、
   白波の、かよふ、くに、
  何処(いづこ)も射照す、しるしなり、
  ああいさまし、やんじゃ。』

[注] アメリカの南北戦争当時の北軍の歌 "Marching through Georgia"
(1865). 南部人に嫌われている歌で "hymn of hate" の異名で呼ばれる.
[桜井: 私信 2013.1.14]

University of California - Santa Barbara 所蔵の Edison Gold
Moulded Record の録音版 (1904) は
Marching through Georgia-cusb-cyl4313d.mp3

日本では替え歌がはやった.例えば:
エノケン パイのパイのパイ (Marching through Georgia)
http://www.youtube.com/watch?v=sTaT6KOTZO4



D 第三 ジェンナー (Jenner) (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 疱瘡といふ、病ほど、
  世に、おそろしき、物あらじ、
  顔に、あとつけ、目をつぶし、
  命をさへに、奪ひゆく。
二 さても種痘と、いふことが、
  発明せられぬ、その頃の、
  世のあるさまは、いかなりし、
  聞くも身の毛の、たつばかり。」
三 その発明者は、イギリスの、
  ジェンナー氏なり、ジェンナーは、
  牛痘よりぞ、思ひつき、
  苦心研究、二十年。
四 或はわが子に、これをうゑ、
  或は理論を、世に示し、
  ののしり、あざけり、物とせず、
  所信は、かたき、鉄石心。
五 事実は理論を、証拠だて、
  今はうたがふ、人もなく、
  種痘のために、命をば、
  たすかる人の、幾千万。
六 ああジェンナー氏、ジェンナー氏、
  生きては悪魔と、よばれしも、
  死にては命の、まもり神、
  思へば尽きぬ、いさをなり。』

[注] 四番の「わが子」とあるのは本当は使用人の子だった. Cf.
Edward Jenner - Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Edward_Jenner
[桜井: 私信 2013. 1. 23]



D 第四 森の小鳥 (大和田建樹 作詞 作曲者不明(西洋曲))

一 松吹く風の、 音も絶えて、
  のどかに霞む、春の山。
  山路は長し、 麓は遠し、
  ねぐらに帰る、森の小鳥、
  いそがぬ歌は、まだあれに。」
二 夕日の影は、 峯にかくれ、
  しづかに暮るる、谷の空。
  我屋はいづこ、故郷はいづこ、
  うらやましきは、森の小鳥、
  わかれね友と、うちつれて。』

[注] 原曲は学生歌 "Upidee". Cf. A 第五「我国」.[桜井: 私信 2013. 1. 14]



D 第五 滝 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 鳥も声なき、山かげの、
  谷間にひびきて、さらさらと、
  練りたる帛(きぬ)を、晒すが如く、
  玉の簾を、かけたる如く、
  おちくる滝の、涼しさよ、
  滝よ、滝よ、たきつせよ。」
二 峨峨たる断崖、絶壁より、
  天地を、ふるひて、どうどうと、
  天(あま)の川瀬の、みなぎる如く、
  みそらの雲の、降(くだ)るが如く、
  おちくる瀑布の、ををしさよ、
  瀑布よ、瀑布、大瀑布。』




D 第六 常磐木 (旗野士良 作詞 ドイツ民謡)

一 夕立の宿に、 名誉 (ほまれ) あらはし、
  凩 (こがらし) に笑ひ、霜雪を凌ぐ、
  松こそは、げにや、木木の公 (きみ) なれ。」
二 旅路ゆく人に、梢知らせて、
  おほ空に高く、雲霧を払ふ、
  樅こそは、げにや、木木の長なれ。」
三 さても斯く、己が、群に抜け出で、
  千歳経る操、 五百枝 (いほへ) さす姿、
  嗚呼松や樅や、世にぞ、たふとき。』

[注] 作詞は一番は
史記曰。秦始皇上泰山、風雨暴至、不休於松下、因封其松。
[秦の始皇泰山に上り、風雨暴至、松下に於て休まず、因て其松に封ず。]
二番は
菅公記曰。樅の梢かすかに見ゆるに、君が住む宿の梢の行く行くも、
          かくるる までにかへり見しはや。
に基づく.
メロディーはドイツ民謡 "O Tannenbaum".良く知られたクリスマス・キャロル
となっている.

歌唱は例えば,
CARRERAS DOMINGO PAVAROTTI - Oh Tannenbaum
http://www.youtube.com/watch?v=IrFqDzPPGE8



D 第七 読書の秋 (大和田建樹 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 夕風すずしく、雲を払ひ、
  山辺の、けしきは、今こそ秋、
  待たれし時節ぞ、いざいざ友よ、
  机を、ならべて、読書せん。」
二 遠くに聞ゆる、野辺の虫は、
  我等をもてなす、唱歌の声、
  心も勇みて、楽しき今宵、
  たゆまず勉めん、十時まで。』



D 第八 学の友 (大和田建樹 作詞 ドイツ民謡)

一 同じ窓の内に、
   机ならべ据ゑて、
    学びし友よ。
  鳥は枝に鳴き、
   蝶は花に舞ふ、
  われも慕ふ心、
   はなれじ 君を。」
二 朝に我を勤め、
   暮に我を助け、
    睦びし友よ。
  月は空を行き、
   影は土にあり、
  わかれて後ながく、
   はなれじ 夢は。』

[注] メロディーは"Freuden sängedeutsche Brüder" またはこの原曲
の "In des Waldes düstern(/finstern) Gründen" から.[桜井: 私信
2013. 1. 19]



D 第九 小さき星 (桑田春風 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 晴れたる、夜半の空を、
  こころ、とめて、ながめよ、
  遠く、小さき、星の、
  見るほどに、数も、よまれず。
  かがやき、いづる、そのさまは、
  空の園、とこしへ匂ふ、
  花とさく、黄金、白銀、
  その花か、小さき星よ。」
二 大空、晴れし夜半を、
  ひとり、立ちて、ながめよ、
  名なき、小さき、星の、
  見るほどに、かぎり知られず。
  かすかに、ひかる、そのさまは、
  空の海、底に、ひそめる、
  美はしき、真球(またま)白玉、
  その玉か、小さき星よ。』



D 第十 墳墓の国 (旗野士良 作詞 Karl Wilhelm 作曲)

一 大洋隔てて、名誉は立つとも、
  精神は変らぬ、日本の人草、
   墳墓の国ぞや、
    墳墓の国ぞや、
  いかで、それを忘れん、
    いかで、それを忘れん。」
二 万里の遠方に、戦ひ死すとも、
  霊魂帰りて、あくまで守らん。
   墳墓の国ぞや、
    墳墓の国ぞや、
  いかで、それを忘れん、
    いかで、それを忘れん。」
三 天地開闢し、ときより継継、
  承来し親ども、吾等も人民なり、
   墳墓の国ぞや、
    墳墓の国ぞや、
  いかで、それを忘れん、
    いかで、それを忘れん。』 

[注] かつてのドイツの準国歌 Karl Wilhelm 作曲 "Wacht am Rhein" (1854).
『中等唱歌集』第十四
「火砲の雷」
と同じ.[桜井: 私信 2013. 1. 14]

演奏は
Die Wacht am Rhein
http://www.youtube.com/watch?v=zikcHnimsxk
同志社のカレッジ・ソングとなっている:
同志社カレッジソング(栄光館にて・アルママータ5th)
http://www.youtube.com/watch?v=I3jHCiqsmKE




第六編 

(高等小学第三学年後半用)

E 第一 林 子平 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 我が日の本は、海の国、
  国の、まもりぞ、第一なると、
   筆を、そめたる、三国通覧、
   心をこめたる、海国兵談、
  あゝたかし、先見の明。」
二 時を得ざるぞ、ぜひもなき、
  ひとまの、うちに、おしこめられて、
   おきては破らぬ、忠肝義胆、
   心は、くまなし、月日(げつじつ)地天、
  あゝきよし、国士の鑑。』

[注] 林子平(しへい,1738年(元文3年6月)- 1793年(寛政5年6月))
は仙台藩の人.『三国通覧図説』,『海国兵談』を表し,ロシアの脅威を
説き,北方の警備を唱えるが,時の老中松平定信により危険思想とみなされ,
禁書となり,蟄居処分とされ死亡.



E 第二 希望 (武島又次郎 作詞 Karl Groos 作曲)

一 み空に聳えし、
    かの富士の山も、
   数しれぬ、ちりひぢの、
   重なりて、あつまりて、
  かくは、なれるぞよ。」
二 世界のすぐれし、
    古今の英雄偉人も、
   たえまなき、勤労(いそしみ)の、
   重なりて、あつまりて、
  かくは、なれるぞよ。」
三 ひとびと勉めよ、
    富士のごとく名高き、
   手がらをば、たてよかし、
   大いなる、けがれなき、
  希望(のぞみ)を、いだきて。』

[注] 原曲は "Des Knaben Berglied" ['Ich bin vom Berg der Hirtenknab' ']
(1818).[桜井: 私信 2013. 1. 19]

メロデイーは
Des Knaben Berglied.mid



E 第三 祝捷歌 (旗野士郎 作詞 Richard Wagner 作曲)

         (運動会、ボート、競争等ニ用フ。)

一 見わたす、方方、
  いづれ猛き、伴の男(を)。
  さてこそ、あらそふ、
  技倆(わざ)も、まこと、はえあれ。」
   いなづまの、かがやき、
   いかづちの、とどろき。
  あれあれ、かちたり、
  みごと、みごと、勝ちたり。」
二 かなたも、こなたも、
  いづれ人に、ますら男。
  さてこそ、くらぶる、
  ちから、まこと、みえあれ。」
   とらにのる、いきほひ、
   鷲鳥(はやふさ)の、迅飜(とがへり)。
  あれあれ、かちたり、
  万歳万歳、万万歳。」

[注] リヒャルト・ワーグナー作曲,楽劇『ローエングリン』(1848 年
完成,1850 年初演)第三幕の「結婚行進曲」.

旋律は『明治唱歌 第五集』第七
「春の夜」

と同じ.[桜井: 私信 2013. 1. 23]

歌唱は
Lohengrin bridal chorus Wiener Staatsoper
http://www.youtube.com/watch?v=mTqbPNharPk



Wilhelm Richard Wagner (1813 - 1883)


E 第四 釣遊 (旗野士郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 柳の岸に、糸たれて、
  水に浮世の、さまを見る、
  深き智謀(はかり)の、底しらで、
  嘲(あざみ)笑ふぞ、愚人(おろかびと)。
  太公望が、釣り得たる、
  八百年も、このあそび。」
二 小舟の竿を、さす汐、
に   ゆくも、帰るも、海(わだ)の原、
  広き心の、楽みを、
  知らず[此冠に言;そし]るは、鈍人(うるけびと)。
  浦島太郎が、竜宮の、
  三百年も、このあそび。』

[注] 通称太公望,本名呂尚は紀元前 11 世紀頃の中国周の軍師,
後に斉の始祖.渭水で釣をしていたところを周の文王に見いだされ
たとされる.



E 第五 急流 (大和田建樹 作詞 西洋曲)

一 泡立てて行く、水の流れ、
  千軍の叫か、万馬の蹄か、
  雪の如く、空に飛び、
  雷(いかづち)の響は、巌(いはほ)を打つ。
  愉快に躍り、
     愉快に舞踏して、
  いつまでも飽かず、
     遊べや遊べ。」
二 矢を射るに似て、早き流れ、
  鋒(ほこさき)を揃へて、落ちくる滝つ瀬、
  胆も冷えて、夏さむく、
  まろび散る白玉、鼓の声。
  嬉しく歌ひ、
     楽しく唱歌して、
  足ぶみの高く、
     遊べや遊べ。』



E 第六 籠の小鳥 (旗野士良 作詞 Joseph Gersbach 作曲)

一 巣だちにし、森も、
       求食(あさり)たる野も、
  いつかはや、忘れ、
       籠をわが屋と、
  住み馴れし状(さま)、
       飛ぶ羽根に見せ、
  楽げの小鳥。」
二 許多(あまた)年、すめば、
       渡木に馴れ、
  心地よき様子を、
       主人にもアア、
  知れ顔に、汝が、
       いま高音挙ぐ、
  嬉げの小鳥。」
三 楽げの、さまも、
       心なる影、
  嬉げのこゑも、
       心なる色、
  小鳥さへ如斯(かく)、
       世の恩恵(めぐみ)知る、
  顧(かへりみ)よ吾等。』

[注] 原曲は Joseph Gersbach (1787-1830) 作曲 (1828),Friedrich
Rückert (1788-1866) 作詞 (1821/1823),"Es Kamen Grüne Vögelein".
[桜井: 私信 2013. 1. 22]

メロディーは
Es Kamen Grüne Vögelein-IngebOrg.mid



E 第七 護国の歌 (大和田建樹 作詞 田村虎蔵 作曲 )

一 わが国は四方海、
    守るには要塞あり、
  敵の船もし寄せば、
    粉砕して漏すまじ、
   心づよや我国。」
二 わが国は海の国、
    戦ふに海軍あり、
  打ち向ふ者あらば、
    轟沈して残すまじ、
   心づよや我国。」
三 わが兵は、すべて胆(たん)、
    突き入るに水雷あり、
  弾丸も飛ばば飛べ、
    命捨てて進むべし、
   心づよや我国。』



E 第八 雪の朝 (大和田建樹 作詞 Carl Maria von Weber 作曲)

一 一度にかなさく、枯野の草葉
  いづこも春めく、冬木の桜
  うつくし、雪ふるけしき、
  おもしろ、朝のながめ。」
二 緑も隠るる、園生の松葉、
  姿も埋るる、垣根の笹葉。
  暮まで、降れ降れ雪よ、
  明日まで、積め積め雪よ。』

[注] ウェーバー作曲,オペラ『魔弾の射手』「花輪」.

『明治唱歌 第一集』第二十四
「朝雲雀」
にも採用.

Der Freischütz - Parte 11 - Gran Teatre del Liceu - Barcelona -
16-02-1988
http://www.youtube.com/watch?v=i70VfI_OHdg



Carl Maria von Weber (1876 - 1826)


E 第九 海原 (大和田建樹 作詞 A. Lwoff 作曲)

一 空につづく、海の上、
    是ぞわが家里、
  波の音楽、うしほの舞、
    つきせぬ楽しみ。」
二 陸も見えず、島もなく
    ひろき此海原、
  月も日影も、波より出で、
    波にぞかくるる。」
三 かかる遠き、波路にも、
    アメリカを探り得て、
  見よや朽ちせぬ、千年の名を、
    のこしし大丈夫。』

[注] 1833 年に作曲された旧ロシア帝国国歌.
『女学唱歌』A 第四
「日出の富士」
と同じ.[桜井: 私信 2013. 1. 14]

演奏は
Боже, Царя храни! (God Save the Tsar!) with lyrics
текст
http://www.youtube.com/watch?v=9yDs72NuCrg



E 第十 ワシントン (武島又次郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 国と民との、自由のために、
  身をば挺(ぬき)んで、敵(かたき)にむかひ、
  アメリカ国の、独立の、
  もとゐ固めし、ワシントン。」
二 千代に輝く、無類のいさを、
  「国の親」ぞと、ほめ、そやされて、
  ロッキー山の、嶺よりも、
  その名は高し、ワシントン。』



第七編 

(高等小学第四学年前半用)

F 第一 春の遊 (大和田建樹 作詞 Walter Scott 原詩)

  遠く近く満ち満ちたる、
      春の景色おもしろや、
  いざや友よ今日も出でて、
      菫摘みつゝ遊ばん、
  いざや友よ明日も行きて、
      桜をりてかざさん、
  四方の山辺霞みわたり、
      かよふ風ものどけし、
  空に満つる雲雀の歌、
      野辺に満つる蝶の舞、
  楽し嬉し天地すべて、
      若やぎ喜ぶ此時。」

[注] James Sanderson (c.1769 - c.1841) 作曲,J.A. Jones 編曲 (1812),
"Hail to the Chief". 原詩は Walter Scott の長編詩 "The Lady of the
Lake" (1810) の一節から採られた.大統領が登場する時演奏される.[桜井:
私信 2013. 1. 14/ 23]

演奏は
U.S. Presidential Anthem - Hail to the Chief (With Lyrics)
http://www.youtube.com/watch?v=hwJvxY7uENM



F 第二 吉田松陰 (佐々木信綱 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 鎮西に将(はた)、東北に、
  歴史のあとを、探り見て、
  すぐれし人に、交りて、
  活きたる智識(さとり)を、旅行(たび)に得つ。」
二 黒船とまれる、下田沖、
  万里波涛を、渡らんの、
  その企謀(くはだて)は、破れても、
  その雄心は、いや燃えつ。」
三 松下村の、村塾に、
  教へし年月、短きも、
  狭き校舎の、爐辺(ろばた)より、
  革命の火は、もえたちつ。」
四 三十年の、生涯は、
  長き月日に、あらねども、
  その熱誠の、こゝろざし、
  歴史に活きん、とこしへに。』



F 第三 愛らしき花 (大和田建樹 作詞 Johannes Brahms 作曲

一 草の上に、玉なす露、
   心地よの あけぼのや。
  笑顔ぬれて、立つ姫百合、
   誰に似たる、その面影。」
二 露の上に、残れる月、
   おもしろの、有明や。
  眠さめて、立つ撫子、
   花の中の、その乙女子。』

[注] Johannes Brahms 作曲 (1868) Op.49 No.4 "Wiegenlied/ Lullaby".

原典版の演奏は
Elisabeth Grümmer "Wiegenlied" Brahms
http://www.youtube.com/watch?v=6oBIJTnqXMg


Johannes Brahms (1833 - 1897)


F 第四 進軍 (旗野士良 作詞 Rouget de Lisle 作曲)

一 朝日照る、わが御旗、進めよ、進めよ。
  黒雲の、渦巻く、荒山の、塁砦(とりで)。
  [風偏に火が三つ;つむじ] 風、逆吹く、千尋の、谷の、要害。
  いかに、いかに。
   彼れは、守るとも、彼れらは、防ぐとも、
  かざす、将の、太刀の、下の、
      ゆけ、ゆけ、号令に。
  敵は、あらじ。」
二 哄(とき)の声、波起てて、破れよ、破れよ。
  鋼鉄の、網張る、空壕の、固構(かたち)。
  剣、鉾、逆立つ、八尺(やさか)の、穴の、防禦。
  いかに、いかに、
   彼れは、築くとも、かれらは、工造(たく)むとも、
  むかふ、兵の、銃の、先の、
      うて、うて、猛烈に、
  敵は、あらじ。』

[注] Rouget de Lisle 作曲 (1792) "La Marseillaise". フランス国歌となる.

元歌の歌唱は
http://www.youtube.com/watch?v=221UWotqwdo



F 第五 静けき夜 (坂 正臣 作詞 Franz Gruber 作曲)

一 こさめ、やみて、 庭は暗し、
  月は、など、   おそきぞ、
  はし居して、   待つ間に、
  ほととぎす、ただ、高く、ひと声。」
二 かすみ、はれて、 星は照れり、
  を簾のひま、   もりきて、
  たちばなぞ、   薫れる、
  くひなさへ、いま、遠く、ひと声。」
三 を田の、さなへ、 緑涼し、
  蛍おふ、     子は去り、
  風もなく、    ふくるよ、
  耳もとに、かの、 ほそく、ひと声。』

[注] 1818 年作曲.

歌唱は
Silent Night -- Original Version
http://www.youtube.com/watch?v=V6gnRvumDiA



Franz Xaver Gruber (Sebastian Stief 画,1846 年)


F 第六 夕日 (旗野士良 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 森のこずゑ、 青黒く、
  遠(をち)の山の端、 さかひだち、
  濃紅(くれなゐ)ぼかして、空に薄らぎ、
  一村二村、  のこる雲に、
  けふの、なごりの、影うつして、
  さしいる、夕日。」
二 かへる鴉、  にぎやかに、
  明日の好晴(ひより)を、空に呼び、
  を川の汀(みぎは)に、小鍬洗ひて、
  仰ぎ見、仰ぎ見、歌ふ農夫(おのこ)、
  おなじいさみの、声かけつつ、
  牛おふ、童子(わらは)。』



F 第七 勧学 (大和田建樹 作詞 Ph.J. Düringer 作曲)

一 今日の時を、
     むだに暮らし、
  明日になりて、
     悔むなかれ。
  あはれ、春見し花、
  「青葉となり、
     紅葉となり、
   立つ年は、
     夢の間ぞ。」復唱
二 蜂は花に、
     蜜を尋ね、
  おのが食を、
     貯へ置く。
  あはれ、霊ある人、
  「学ばずして、
     日を送らば、
  虫鳥に、
     劣るべし。』復唱

[注] Philipp Jakob Düringer 作詞(経歴から見るとおそらく作詞者)の
"Des Mädchens Klage" (歌詞: "Den lieben langen Tag / hab i' nur
Schmerz und Plag").[桜井: 私信 2013. 1. 23]

旋律は
Des Mädchens Klage-KStV78.mid

Frida Bennèche の歌唱 (1916-08-02) が
Library of Congress の National Jukebox:
Des Mädchens Klage
http://www.loc.gov/jukebox/recordings/detail/id/5100/
で聞ける.



F 第八 同窓会 (旗野士良 作詞 作曲者不詳)

一 窓の戸の、 あけぼのに、
  同じ花、  まもりし友
  其花の、  露だにも
  そむきたる、心はなく
  和(のど)かなる、風のむた
  おたがひに、薫合(かほらひ)こし
  年ごろの、
   親交状(したしき)、
        重ぬる、
  会合(まどゐ)なれ、今日こそは。」
二 学校の傍の、ゆふぐれに、
  おなじ月、 ながめし友、
  その月の、 影だにも、
  たがひたる、念(おもひ)はなく、
  清らなる、 ひかり着て、
  ともどもに、照合こし、
  年ごろの、
   したしさ、
        重ぬる、
  まとゐなれ、けふこそは。』

[注] 原曲は "Hinaus, hinaus! es ruft das Vaterland".[桜井: 私信
2013. 1. 19]

モーツァルト協会に問い合わせたところ,K175 氏よりの返答は以下の通り:
この曲は、添付ファイル(Hinaus, hinaus! es ruft das Vaterland -
MarkomannenWiki. 楽譜は章節罫線の位置がデタラメです)にあります
ように「民謡(1813年にドイツの大学生の読本に収録された歌)」との
ことです.
1813年,ライプチッヒ会戦(戦争)に際して作られたという歌詞は,いか
にも昔のドイツ風な愛国的な内容です.
ドイツ語のサイトには「民謡」とあり,作曲者については触れられており
ませんが,モーツァルト自身の作曲した旋律とは思えないものです.
ほぼ確実にモーツァルの作品では無いと思われます.
日本モーツァルト協会 事務局 K.175.[三浦登: 私信 2013. 1. 24]

メロディーは
Hinaus, hinaus es! ruft das Vaterland.mid




F 第九 兵士の夢 (大和田建樹 作詞  C.G. Reißiger 作曲)

一 父母ともなひ、はらから打ち連れ、
    楽しく遊びし、桜の下かげ、
     『思へば夢かや、今までありしは。』復唱
二 友達あつまり、火鉢を囲みて、
    嬉しく語りし、故郷の夕暮、
     『さむれば夢かや、たしかに見えしは。』復唱
三 野営のかがり火,をぐらく照らして、
    枕におく霜、寒けき暁、
     『故郷のおとづれ、誰にか問はまし。』復唱

[注] 原曲は Carl Gottlieb Reißiger (1798 - 1859) 作曲 (1824),
August Kopisch 作詞 (1824), "Noah" (歌詞:Als Noah aus dem
Kasten war).[桜井: 私信 2013. 1.22]

メロディーは
Als Noah aus dem Kasten war-Ingeb Org.mid



Carl Gottlieb Reißiger (1798 - 1859)


F 第十 銃猟 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 鳥うち帽子に、  みがるな洋服、
  小銃かついで、  猟犬つれて、
  あさ寒おかして、 田舎の小道を、
  いそいそいそいで、中ばは、かけあし。」
二 枯野のあなたに、 一むら白く、
  のぼるけむりに、 聞ゆるつゝおと、
  驚く小鳥の、   ちりちりばらばら、
  しとめし、えものは、三羽か七羽か。」
三 家にかへって、  ほこるは何なに、
  つぐみの三羽に、 雀の五六羽、
  鳩にかけすに、  鶉(うづら)にごゐさぎ、
  まだある大きな、 きれいな雉雉。』



第八編 (1905年10月11日 発行)

(高等小学第四学後半用)

G 第一 茸狩 (佐佐木信綱 作詞 A. Methfessel 作曲)

一 空は澄みて、風しづか、
  さ霧はれし、野辺山辺。
  紅葉あかく、百舌うたひ、
  たどり登る、道たのし。
  あはれ、  おもしろや、
  おもしろや、今日の遊び、
  早もつきぬ、松林。」
二 あなたこなた、呼びかはす、
  声もたのし、松のかげ。
  こゝに一つ、かしこにも、
  こゝにも又,また一つ。
  あはれ、  おもしろや、
  おもしろや、今日のあそび、
  籠にみちぬ、茸あまた。』

[注] 原曲は Albert Methfessel 作曲 (1815), August Friedrich Ernst
Langbein 作詞 (1810) "Der Zecher" (歌詞:Ich und mein Fläschlein
sind immer beisammen).[桜井: 私信 2013. 1.20]



G 第二 コロンブス (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 わが人類の、 すまゐする、
  地球はまろき、ものなるか、
  はた平らなる、ものなるか、
  この疑ひの、 はれん日を、
  神はいつより、まちつらん。」
二 コロンブス氏、クリストファー、
  新大陸を、  見いだして、
  その疑ひを、 ときてより、
  北と南の、  アメリカに、
  日々文明の、 進みゆく。」
三 あゝ、クリストファー、コロンブス、
  君、世にいでて、新旧の、
  世界は一つと、なりにけり、
  地球はまろく、なりにけり、
  いさをは朽ちじ、世のかぎり』



G 第三 愉快 (大和田建樹 作詞 欧州古歌)

一 晴れたる朝も、 雨ふる暮も、
  休まず眠らず、 歌ふは水よ、
  花さく春べも、 紅葉の秋も、
  疲れず倦まずに、躍るは水よ。」
二 淋しき森にも、 友うちつれて、
  嬉しき調べに、 歌ふは鳥よ、
  花なき野辺にも、塒(ねぐら)をしめて、
  楽しき心に、  遊ぶは鳥よ。』

[注] 原曲は Wilhelm Zuleger 作詞,"Brüder sammelt, euch in Reihen".
[桜井: 私信 2013. 1.22]

メロディーは
Brüder sammelt, euch in Reihen-Ingeb Org.mid



G 第四 陣営の月 (佐佐木信綱 作詞 Mary S.B. Dana 作曲)

一 戦かちたり、敵軍にげつ、
  轟く砲音(つゝおと)、 凱歌の響、
  潮の如くに、満ちくる我軍、
  林の下かげ、あなたに此方に、
  ひらめく、 日の旗。」
二 全軍眠りて、ふけゆく夜半を、
  大空仰ぎて、銃(つつ)とり立てば、
  月影寂しく、思ひぞわきくる、
  遥けき故郷、うせにし戦友、
  うかぶは、面かげ。』

[注] 原詩はアメリカの詩人 Mary S.B. Dana(本名 Mary Stanley Bunce
Shindler, 1810-1883)が作詞した "Flee as a Bird to Your Mountain"
["The Northern Harp" (New York & Boston, 1841[初版], 1842) pp. 72-73].
作曲者不詳.現在は古関吉雄作詞「追憶」として知られる.『明治唱歌』
第五集第三曲
「月みれば」
に同じ.[桜井: 私信 2013. 1.14]

Henry Burr (Recorded: 18 Aug 1917) の歌唱は
"Flee as a Bird"
FleeAsABird.mp3
日本語版は
「追憶」 石井 健三
http://www.youtube.com/watch?v=EwDM3ZxdBg0



Mary S.B. Dana (Shindler) (1810-1883).


G 第五 漁船 (大和田建樹 作詞 Mozart 作曲)

一 朝なぎひろき、海の上に、
  三つ四つ浮ぶ、海士(あま)の小舟、
  釣れたる魚は、何と何ぞ、
  鰹か鯛か、  鯵か鯖か。」
二 夕風さむき、 波の上を、
  こぎくる舟に、親子二人、
  艪(ろ)の音、高し、得物いかに、
  入日の雲は、 明日も日和。』

[注] Mozart作曲『春への憧れ』K. 596.

旋律は『明治唱歌 第二集』第十二
「上野の岡」
と同じ.[桜井:私信 2013. 1. 23]

原曲は [桜井: 私信 2013. 1.22]

歌唱は
Mozart K.596 'Sehnsucht nach dem Fruhling' Elisabeth Schwarzkopf
http://www.youtube.com/watch?v=umw-8J-O14o



Wolfgang Amadeus Mozart (1856 - 1791)
(J. Lange 画,1789 年)


G 第六 亡友 (佐々木信綱 作詞 ドイツ民謡)

一 楽しき春の日、 花さくかげに、
  静けき秋の夜、 月照るもとに、
  幾年おなじき、 学の窓に、
  睦びぞかはしゝ、懐しの友、
  共にぞ学びし、 したはしの友、
  その友いまなし。」
二 咲く花みるごと、思ひぞいづる、
  月にし向へば、 忍びぞいづる、
  書(ふみ)をし開けば、面影うかぶ、
  み空を仰げば、 雲ただ深く、
  奥つき処は、  露のみ繁し、
  なき友いづこぞ。』

[注] 原曲旋律は民謡曲(Volksweise)ないしは不明とした楽譜と,J.A.P.
Schulz 作曲と書かれたものとがある.歌詞は Heinrich Schiller の "An
die Freude" (歌詞:"Freude, schöner Götterfunken") (ベートーヴェンの
交響曲第九番『合唱付き』第四楽章の合唱と同じ歌詞).
旋律は『明治唱歌』第三集第十九
「今宵の心」
と同じ.[桜井: 私信 2013. 1.22]



G 第七 皇祖 (大和田建樹 作詞 Josef H. Stanz 作曲)

一 日向の国より、
  波路を凌ぎ、
  御船を難波の、
  浦辺につけて、
  仇なす賊徒を、
  大和に攘(はら)ひ、
  万世不易の、
  偉業を創(はじ)め、
  都し給ひし、
  神武の帝、
  仰げ仰げ、
   天と、共に、
    高きみいづを。」
二 海外万里に、
  御船を出だし、
  傲慢不遜の、
  三韓うちて、
  千載不抜の、
  国威を示し、
  朝貢誓はせ、
  降伏させて、
  凱旋ましたる、
  神功皇后、
  仰げ仰げ、
   海と、共に、
    広きいさをを。』

[注] 原曲は Josef Hartmann Stuntz (1793-1858) 作曲 (1830) で,歌詞は
Ludwig Uhland 作詞の "Freie Kunst" (歌詞:Singe wem Gesang gegeben)
(1813) または Heinrich Weißmann 作詞の "Vaterlandssänger" (歌詞:Auf,
ihr Brüder, laßt uns wallen) (1838).[桜井: 私信 2013. 1. 14/1. 20]

歌唱は
Freie Kunst 熊本大学合唱団創立55周年記念演奏会より
http://www.youtube.com/watch?v=1QjEOIyhLuI



Josef (Joseph) Hartmann Stuntz (1793-1858).


G 第八 枯野 (大和田建樹 作詞 ドイツ民謡)

一 枯野の原に、 夕日おちて、
  そよ吹く風の、寒けさ、
   春つみし、 花すみれ、
    秋めでし、女郎花(おみなへし)、
  今はいずくぞ、色も香も。」
二 小(を)笹の上に、霰ふりて、
  暮れゆく空の、寒けさ、
   春きゝし、 朝雲雀、
    秋きゝし、夜の虫、
  今はいづくぞ、その歌も。』



G 第九 別れの歌 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 いつくしみ深き、親鳥の、
  はぐくみ受けて、つばさ伸びし小鳥。
  巣立ちし後も、 親鳥の、
  深き恵を、   忘るまじきぞ、
  もとの古巣を、 みすつまじきぞ。」
二 いつくしみ深き、師の君の、
  教を受けて、  わざを終へしわれら。
  いま別るとも、 師の君の、
  深き御恩を、  いかで忘れん、
  この学校(まなびや)を、などて忘れん。」
三 いつくしみ深き、師のもとに、
  朝ゆふ睦み、  したしみし友よ。
  別れて後も、  睦みてし、
  古のことを、  いつか忘れん、
  その楽しさを、 などか忘れん。」
四 ああわが友どち、師の君よ、
  志す道、    さまざまなりとも。
  学に業に、   いそしみて、
  一つこころを、 国に尽さん、
  同じこころを、 君に尽くさん。』



G 第十 春の歌 (佐佐木信綱 作詞 讃美用古代曲)

一 「春は来れり、 楽しき春、
  鶯うたひ、   桜にほふ。』
  畑にはれんげ、 野には菫、
  霞たなびき、  胡蝶遊ぶ。
二 「いざや遊ばん、友よ友よ、
  霞こめたる、  野辺にいでて。』
  いざや謡はん、 友よ友よ、
  鶯うたふ、   花のかげに。

   ●注意 一章二章共に、「』の部分は、終より
      始に反して復唱し、』にて終るものとす。




以上

(2012 年 12 月)



「明治の唱歌」のトップへ戻る

ホームへ戻る