幻の歌劇『ラクメ』



『ラクメ』が朝日国際フェスティバルで上演されることになった.この上演は日本では80年ぶりとのことで幻の歌劇上演と言われる所以である.非常に珍しいオペラなので,見ることができたのは幸運であった.


ポスターと切符.

ラクメで一番有名なのはコロラトゥーラの超絶技巧が必要な『鐘の歌』である.予習をしようとして,私のCDアルバムを調べたが,わずかにカラスのリサイタルの『鐘の歌』があるのみで,全曲版はもとよりハイライト版も持っていない.早速それを聞き,永竹由幸の「オペラ名曲百科」で予習して公演にのぞんだ.

主役のラクメはイタリアのコロラトゥーラ・ソプラノ,デジレ・ランカトーレ.この人はこの正月に『ランメルモールのルチア』のタイトルロールを歌ったので,聞いた事がある.高音部がすばらしく安定している.中声部と高温部のつながりがもう少し滑らかになれば第一流の声だとその時思った.ラクメの恋人役のジェラルドはスペインの新進チェルソ・アルベロである. 演奏はスロヴェニア国立マリボール歌劇場の面々,指揮はフランチェスコ・ローザである.


『鐘の歌』を歌うランカトーレ.(当日のプログラムより)

今回のランカトーレは前にも増して声が柔らかくなり,とても聞きやすく進化していた.鐘の歌の出だしでチョット,ミスったがそれ以外は完璧のできだった.大いに満足.

相手役のアルベロは軽い声のテノールでとても声が美しい.技術的にも完璧だった.アライサの後継者と言って良いのではないか.すばらしい.将来はアラーニャのようにスピント系のアリアも歌うのであろうか.そうなればドミンゴの再来ということになる.ただし演技の方は,装束がイギリス兵の服であったということを考えても,まだドミンゴの域には達していないようだ.


死に瀕したラクメを悲しむジェラルド.(当日のプログラムより)

『ラクメ』を聞き終わって,『鐘の歌』以外,あまり良く知られていないのは不思議だと感じた.第一幕の五重唱とか,侍女マリカとのとても美しい二重唱など聞き所は『鐘の歌』だけではない.また異国情緒豊かなメロディーにのったダンスとか,楽しい要素が沢山ある.もし人気がないとしたら,それは全編のメロディーが甘く美しいため,アクセントが無く,現代の風潮に合わないせいなのだろうか.

もっとも異国情緒豊かな祭りのメロディーは私には中近東風に聞こえた.またバラモンの神が乗っている動物がどう見てもアッシリアのレリーフにあるライオンの形をしていた.思わずインドにライオンはいないと突っ込みたくなる.

翌日の朝日新聞にラクメの上演の記事が載った.国際フェスティバルを後援していることを割り引いても,オペラの記事が一般の欄に出るのは珍しいのではないか.


2007年4月19日朝日新聞の記事.

(2007年4月)


「素人のオペラ談義」のトップへ戻る

ホームへ戻る