『歪んだコロ,またはいびつなおむすび』



イギリスのコインのうち20ペンスと50ペンスは7角形という珍しい形をしている.不思議に思い,友人達に理由を聞いた.
P教授の説では

「7に特別の意味は無いが,この貨幣は少し丸みが付けてあり,これを転がすと高さは一定になるようにしてある」

ということだ.つまりある意味で円と同じ性質を持たせてあるというのだ.なるほどそう言われたみればそのように見える.正三角形とか正五角形とか,一般に奇数の多角形なら常に可能であるようだ.

そこで筆者は 「他の形で,できたら対称形でないもので,円と同じく高さが一定という性質を持つ図形を作れるか」 という疑問を持った.以下はその答である.

イギリスの50ペンスと20ペンス硬貨.


改めて問題を言い直すと,平行に置かれた二つの直線の間を両方の直線に常に接しながら転がる図形 (これをコロ,あるいはおむすびと呼ぶことにする) を考える.対称性の無い形でそれが可能かどうか,というものである.

答は「可能」である.一つの例として次のような図形にすれば良い.

非対称なコロ.どのような姿勢になっても,
高さは一定である.
点線は d > 0 のとき,実線は d = 0 のとき.


まず任意の三角形 △ABC を描く.説明を簡単にするため,三角形の一番大きい角を A,二番目の大きさの角を B,一番小さい角を C (ただし等しくても良い) としておく.また辺の長さを BC=a, CA=b, AB=c とする.

まず頂角が一番大きい点 A を中心として,二番目に長い辺 CA より長い半径 r=b+d (d は0または任意の正値とする)の円弧を∠BAC の間に描く.直線 AB と交わる点を P,AC と交わる点を Q とする.当然 CQ = d,BP = b+d-c である.

次に点 C を中心として半径 CQ の円弧を描き,この円弧と辺 BC の延長部分との交点を R とする.

続けて点 B を中心として半径 BR (=a+d) の円弧を∠ABC内に描き,直線 AB と交わった点を S とする.

以下同様にして点 A を中心にして半径 AS (=a+d-c) の円を描き,直線 AC との交点を T とし,点 C を中心として∠ACB内に半径 CT (=a+b+d-c) の円弧を描き,直線 BC との交点を U とする.最後に点 B を中心として半径 BU (=b+d-c) の円弧を描けば,点 P とつながり,求める曲線の出来上がりとなる.

実際このとき

CQ=CR=d, AS=AT=a+d-c, BU=BP=b+d-c

となり,それぞれの円弧は点 P,S で直線 AB と,点 R,U で BC と,点Q,T でCA と直交するから,円弧を結ぶ点で曲線は滑らかにつながる.ただし d=0 としたときは,点 Q,R は点 C に一致するから,点 C では角張る (つまり接線の向きが連続的でない).また特に元の三角形が正三角形のときは,角が三つある三回対称の形となる.

このコロ図形を転がすと高さが常に PS=QT=RU=a+b-c+2d で一定となる.

 (2005年12月)


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