
「あぜ道」
NHKのテレビドラマ「坂の上の雲」の一場面。日清戦争に出征する秋山好古に妻が「生きて還ってきて下さい」と願いを込めて言う。時を超えて繰り返されてきた言葉だ。日本で、この言葉を聞いて、心穏やかならざる者のほとんどはこの世を去ったか、去りつつある。死の間際、還って来なかった者と出会えたのか、根拠のないまでも知りたいところだが…。「戦死せる子に会うことが楽しみと小さく細りて母は逝きたり――柿沼良訓」。ドラマの一端を見ていると、そこにある明るさは、国の隆盛への希望であり、それは軍事という頂点に向かっている、と感じる。日清戦争で2万、日露戦争で8万人が還らなかった。勝ち戦の戦死者の家族は嗚咽を許されたのだろうか。実は、「生きて還ってきて下さい」という言葉は、時だけでなく、国も民族も超えている。ドラマで無造作に沈められる敵艦の一人一人も、「生きて還ってきて下さい」と言われて出てきた。戦争というのは、勝てば勝つほど、悲しさは増さないのか? 「征く吾を見えぬ眼に涙して送りし父は日露の古兵――井田勢猪蔵」。国も夢を見るのか、そして夢とは破れるのか。「戦死者の妻の歌など今の世に意味なきものとなりて老いたり――星野美子」。

「みちくさ新聞」155号
「地上にて」――草風夏五郎
「人生を変える知恵」――村上和雄
「いつもいいことさがし」――細谷亮太
「内なる火花」――犬養道子
「死ぬときは苦しくない」――永井友二郎
「みちくさ新聞」156号
「歌集・山姥」――鶴見和子
「野生からの伝言」――竹田津実
「日本を恨んでいない」――森達也
「はるかな誓願をもとう」――玄侑宗久
「すてきなあなたに5」――暮しの手帖