さんぽ日記 |
森川彩美 |
足元を見る |
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| <足元を見る> 散歩コースの途中に川があり、私はその川べりを歩いている。夕方の川を渡る涼しい風を身体で受けながら土の上を歩いていく。アスファルトでまだ固められていない土手を歩いているとき、ふと足元を見た。子供の視線ならこれくらいの低さかな、などと腰をかがめているうちに足元に目が行ったのだ。少し足元を見ながら歩いているうちに、人はいろんなものを踏みつけながら歩いているのだと気づいた。土手に生えているのは雑草だけど、その雑草だって必死に生きている。その影の薄い、足元を見るまではぜんぜん気づいていない雑草を、私は踏みつけて歩いていた。遠めに見ると景色の一部に溶け込んでいる雑草。もちろん、雑草なんて名前の草はないから、なにがしかの名前のついた野草。それを私は毎日踏みつけて歩いている。いつも川面を見ながら、空を仰ぎながら、腕を縦横ふりまわしながら、遠い山のかすみを眺めながら。人は遠くを見ている間、気づかないうちに、足元の何かを踏みつけて歩いているのだ。 |
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