出版業界にはフリーランスの立場で仕事をしている人がたくさんいます。ライター、グラフィック・デザイナー、カメラマンなど、専門職の人たちは、実際にどんな仕事をしているのでしょうか。その立場と仕事ぶりをこちらのページで紹介いたします。以下の職種は、フリーが多いのですが、中には個人事務所を持っている人もいますし、会社(出版社、新聞社、制作会社など)に勤務している人もいますので、一概に誰もがフリーであるとはいい切れません。その点、誤解のありませんようお願いいたします。
●編集者●
実は編集者については、フリーよりも出版社などに勤務している「社員さん」の方が多いです。編集は、スペシャリスト(専門職)とゼネラリストの両方の素質が要求される仕事です。雑誌の誌面や単行本を企画し、進行、制作の全般を担当します。
企画というのは、誌面で何をやるか、何で誌面を埋めるのかを考えることです。例えば、女性誌の夏号の企画ならば、まず「汗による化粧くずれを防ぐコツ」を紹介すると決めて、さらに具体的な内容を検討します。最新のお役立ちコスメ(化粧品)を探してくる(雑誌は新しさ命!)、化粧上手な女性のテクニックを盗む、プロのメイクさんにコメントをもらう、くずれるメイクとくずれないメイクの違いを解説するなど、誌面に掲載する要素とおおまかな分量(ページ割り)を決めます。
また、「見せ方」をどうするかを同時に考えておかないといけません。同じ情報でも見せ方によって誌面は全く変わります。タイトル、見出し、レイアウトをどうするか、どの写真を大きくするのか(小さくするのか)、どの要素をメインにして、どの要素をコラム扱いにするのか、どんな「切り口」にするのか。このあたりが、編集者の腕の見せ所なのです。編集者は誌面の「設計者」であり「現場監督」でもあります。制作現場のマネージメント機能とディレクション機能(権限)を持っています。
そして、もうひとつ。スタッフの任命(ちょい大げさ)という仕事もあります。企画によって適したライター、カメラマン、スタイリストなどを選んでいます。だから、ライターであるsakuraには大事な存在なんですね(笑)。それから、印刷所への入稿(原稿類を入れること)や出稿(校正紙が出てくる)の窓口となり、出版までのタイムスケジュールを管理しています。
●ライター●
読んで字の通り、文章を執筆する人のことです。が、実際の仕事は「書くだけ」に留まりません。雑誌や単行本など出版関係のライターは、とにかく雑用が多いのです。書くためには、事前の取材や調査が必要になります。一応、肩書きはライターなのですが、編集者の仕事の多くの部分をライターが兼任しているのです。
たとえば、上記の「汗による化粧くずれを防ぐコツ」特集であれば、化粧品メーカーに電話して、新製品情報を仕入れる、撮影用に商品を借りる(後に返却する)、メーカー担当者に取材する、資料を揃える、モデルを手配する、撮影場所を設定する(スタジオを予約する。お店に撮影許可をもらう。場合によっては事前のロケハンも必要)、撮影後は写真の上がりをチェックして、写真を切り出す、誌面のレイアウトを考える、原稿を書く、校正するなど、たくさんの作業があります。ライターといっても、実際のところは「原稿が書ける制作者」といった方が正しいかも知れません。取材、執筆以外の仕事をどれくらい担当するかは、雑誌(本)や出版社によってかなり違ってきます。出版社によっては、フリーのライターが自由に使えるデスクや電話を用意している社もあります。だから、立場はフリーでも、このような仕事場に毎日のように″出勤″しているライターもいるのです。
ライターの中には得意分野を持っている人も多いようです。ファッション専門とか、美容専門とか、経済誌しかやらないとか、パソコン・インターネット関係とか、守備範囲をある程度限定して、その中で「××通」として仕事をしているわけです。得意分野があった方が、その分野の情報を得やすい、人脈をつくりやすいなど、メリットがあると思うのですが、sakuraはかなりいろいろな分野に関わっているため、「得意分野は?」と聞かれると、ちょっと回答に困ってしまいます。いろいろあり過ぎて、うまくまとまった回答が出てこないという感じでしょうか。
●カメラマン●
スチールカメラで、人や物や風景を撮影する人です。「マン」とつくだけに、ほとんどが男性です。sakuraのまわりではほんとどがフリーですが、数人で会社をつくっている人もいますし、会社組織の個人事務所を持っている人もいます。
カメラマンになるには、必ずしも写真学校を出ていなくても構わないようです。学校で習うことよりも、プロのカメラマンにアシスタントとしてついて、実践で学ぶことの方が役に立つからです。撮影技術はもちろんですが、ある程度、自分で機材を持っていないと仕事になりません。
仕事の現場は、撮影スタジオかロケ(屋外、特定のお店などスタジオ以外の場所)かどちらかになります。現場に行って写真を撮って、上がり(現像の上がり)を編集者やライターに届けるまでが仕事です。時には撮影日より以前に打ち合わせをすることもありますが、編集者やライターに比べると拘束時間は短く、ある意味、効率のいい仕事かも知れません。
●モデル●
モデルはフリーというよりも、どこかのモデル事務所に所属しているのが普通です。逆に、所属している人=プロのモデルといってよいでしょう(最近、素人の読者モデルも多いので)。sakuraはいろいろなモデルさんとお話しましたが、事務所があってもフリーの立場とそれほど変わらないと思いました。サラリー(給料)というのはなくて、仕事をした分だけのお金が入ってくるようです。歩合給ってことですね。
フリーライターであるsakuraとの違いは、仕事を斡旋する事務所があるか、ないかだけかも知れません。モデル料は、仕事先から所属事務所に入金された後、個別にモデルに振り込まれるそうなので、仕事が終了してからキャッシュになるまで、かなり時間(数ヶ月間)が長くかかるようです。
もちろんスタイル維持、お肌のつや維持など、モデルとしての日々の努力は欠かせません。若い女の子のモデルは、たいがい「すっごい細い!」です。写真や画面では、それがちょうどよく見えるのです。だけど、容姿がきれいだからといって、ツンツンしているわけでもないし、結構普通です。若い男の子で見た目はハンサムなのに、性格はズッコケていてすごい面白い人もいました。これが、ビジネススーツを着込んでカメラに向かうと、ビシっとしているから余計におかしいのです。
●スタイリスト●
撮影用の洋服や小物を調達してきて、現場でコーディネイトする人です。アパレルメーカーのプレスルームやお店などから品物を借りてきます。無料で借りて返却するのが普通ですが、場合によっては買い取りをすることもあります。雑誌のテイストや企画にあわせて、イメージに合う品物を探してきます。どこで何を借りるか、どこに行けば目的のものが調達できるか、頭の中にタンスの引き出しをたくさん持っていないといけません。実際に誌面に掲載する数量よりも、かなり多めに調達してくるので、見えない苦労が結構あるのかも知れません。
シーズンごとの流行を先取りすることはもちろん、つねにファッション業界のトレンドを把握している必要があります。手間ヒマのかかる仕事なので、スタイリストの人たちは時間をうまくやりくりして、効率よく動くようにしているようです。
撮影現場では、洋服や小物をモデルに着せてコーディネイトします。スカートの裾やシャツの袖が長すぎる場合は、テープや糸で仮止めして上げたり、だぶついてるところも仮止めしてきれいに整えたりします。この他にも、洋服にアイロンをかけたり、靴の裏にテープなどを貼って、すり減らないように保護したりします。また品物(とくに衣類)に汚れがつかないように気を配ったり、商品タグ類をきちんと管理する(撮影で取り外すので紛失しやすい)など、きめ細かい作業をしています。
●ヘアメイクさん●
撮影の際、モデルのヘアとメイクを担当します。撮影の仕事の他に、サロンワークをする人としない人がいます。サロンワークとは、ヘアサロンで一般の人の髪をカットしたり、パーマをかけたりする仕事です。サロンワークをするのは、ヘアサロンを経営しているか、そこに勤務している人ですね。通常の撮影では、ヘアよりもメイクに手間ヒマをかけるので、名称を短縮して「メイクさん」と呼ばれることが多いようです。メイクさんは、大量のアイシャドーやリップカラーを常備していて、道具を見ているだけでも面白いのです。
●ロケバスさん●

大掛かりな撮影の時は、車を手配しますが、その車をロケバスといいます。「ロケバスさん」とは、ロケバスを運転する人のことです。10人くらい乗れるワゴン車を持っていて、撮影機材や衣装、小物、モデルやスタッフを運びます。車内後部に洋服をかけるためのハンガーがあって、クローゼットのように洋服を吊るすことができるのが特徴です。
場所を移動しながら撮影するときや、荷物が多いときにロケバスを活用しています。ロケバスさんは、会社組織でやっている人もいますし、個人でやっている人もいます。車を運転するだけでなく、スタッフの一員として、荷物の積み下ろし、撮影に関わる雑用もしています。
●グラフィック・デザイナー●
グラフィック=印刷物。グラフィック・デザイナーは、広告ポスターやリーフレット、雑誌や本のデザインをする人です。出版業界では、デザインのことを「レイアウト」「割り付け」ともいいます。誌面を構成する要素は、タイトル、見出し、写真やイラストなどのビジュアル(絵的要素)、本文、キャプションなどです。これらをどのような分量で誌面に配置するか、編集者、ライターの意向をもとにして、デザイナーが紙の上に落とす作業をしています。
かつてはデスクの上にレイアウト用紙を広げて、定規やテンプレートを使って線を引くのが普通でしたが、この数年間で技術革新が進み、パソコン(ハードはマッキントッシュ利用者がほとんど)を使ってデザインするケースが増えてきました。いわゆるDTP(デスク・トップ・パブリッシング)ですね。DTPの方が訂正、変更に対応しやすく、印刷コストが安く上がるために普及してきました。sakuraの主観でしかありませんが、手作業のデザインを経験してきたデザイナーの方が仕事のクオリティが高いように思います。DTPの方の歴史がまだ浅いためともいえますけど……。DTPってそれほどデザインの知識がなくても、カタチだけはできちゃうんですよね。
●イラストレーター●

広告物や雑誌、書籍にイラストを描く人です。イラストレーターになりたい人は、たくさんいるようですが、この仕事1本でやっていくのは、なかなか厳しいようです。デザインやイラストの専門学校を出ても、イラストレーターとしての就職口というのはほとんどないため、グラフィック・デザイナーとして就職する人も多いようで、デザインの仕事をしながら、人脈をつくって時々イラストを描いていたりします。就職せずに、フリーでバイトをしながらイラストを描いている人もいるようです。
もちろん中には、イラストだけで生活している人もいます。この職種の人は、ほとんど家で仕事をしているので、出版社に行ってもあまり顔を合わせることがないです。
●校正さん●
文字校正をする人です。印刷所に原稿を入れてから、印刷するまでの間に校正紙が出稿されます。校正紙とは、雑誌などの誌面を見開きページごとに1枚の紙に印刷したものです。雑誌や本の形式にはなっていなくて、1枚ごとのペラ紙の状態です。 最終的な校正紙(校了紙といいます)の段階で、プロ(専門職)の校正さんが赤字を入れます。もちろん、編集者やライターも校正しますが、それでも超プロフェッショナルな校正さんの「目利き」には脱帽なのです。漢字、送り仮名の間違い、固有名詞(地名、タレントの名前)の確認、表記の統一、読みやすい文章にするために訂正した方がいいと思われるところを指摘してくれます。校正さんは本当にすごい! ライター、編集者が見落としている間違いもほぼ確実に拾ってくれます。本当にもの知りです。デスクに向かってひたすら静かに仕事をしています。sakuraは丸まった校正さんの背中に、畏敬の念を感じてしまいます。いつも物静かな校正のおじさんたち、妙に大好きです。業界の中でもいちばん玄人のイメージがあるんですね。