昨年度,国内の経済を振り返ると,好調な輸出に支えられ,景気回復は軌道に乗ってきました。個人消費についても,持ち直しの動きが見られます。このように,経済がゆるやかながらも成長を遂げている一方で,景気の回復を実感できない人々は多く,雇用については,正社員を減らし,パート・派遣社員を増やすという不安定な状態は続いています。景気回復の波に乗って勢いづく企業がある中で,好景気が個人や地方に波及しない現実もあります。いわゆる「格差是正」についても早急な対策が必要です。また,相次ぐ食品偽装問題や年金記録漏れ,政治活動費偽造等の問題が国民の不安や怒りを増長しました。さらに,最近の子供たち倫理観や規範意識だけでなく,学力や体力水準までもが低下しているといわれます。しかし,一方では,昨年,スポーツ界で,佐賀北高校を始め,高校生が目覚ましい活躍をし,国民にさわやかな感動を与えてくれました。このように子ども達には素晴らしい可能性があることや不撓不屈の精神や日々の努力の大切さを改めて社会に伝え,一人一人に大きな希望や勇気を与えたと言えます。
子どもたちを取り巻く環境も,より厳しさを増しています。いじめを苦にした自殺の多発や,幼児が保護者から虐待を受け,尊い命まで奪われるなど,子どもが犠牲になる事件が相次ぎ,教育関係者のみならず日本中に衝撃を与えました。相手を一人の人間として尊重する心や,子どもを慈しみ守るといった,本来,人として持つべき道徳心,価値観まで喪失してしまったのではないかと思われることは残念でなりません。また,飲酒運転による事故の多発,給食費の未納問題に見受けられるように,大人の遵法精神や規範意識の低下が社会問題となりました。これらの問題を解決するためには,政治・経済の安定とともに国民の規範意識の回復が必要です。そして何より,国が責任を持って長期的は展望に立った教育施策を実施し,学校だけでなく社会全体で教育環境を整備することに取り組まなければなりません。
昨年12月に教育基本法が改正され,これからの教育のあるべき姿,目指すべき理念が明らかにされました。この改正を踏まえ,学習指導要領が改定され,「基礎的・基本的な知識・技能の習得を基盤とし,「思考力・判断力・表現力等の育成」や「学習意欲の向上・学習習慣の確立」等が重視されました。そのような中で,私たち教職員は,「美しい日本人の心の育成」という基本理念を大切にし,強い情熱と確かな力量を持ち,総合的な人間力を備えた教育専門職として学ぶことの良さや意味を実感できる「質の高い教育」を追究しなければなりません。さらに,子どもたちに対する愛情や責任感を持ち,子どもたちにとって何が必要なのかをしっかりと見極め,指導内容の適正化や指導方法の工夫をしていく必要があります。また,教育職員免許法及び教育公務員特例法の改正により,教員免許更新制の導入等が規定されました。これらの制度を教職員の専門性の向上としてとらえ,教職員にとって過剰な負担感を与えることのないようにし,教職の魅力の低下につながらないよう働きかけていかなければなりません。そして,教員の意欲や主体性を引き出せるような制度運営が求められています。
このような時に,われわれ佐教連は,様々な教育問題に積極的に対応しながら,個性や人格を尊重し,豊かな心の育成を目指して,保護者や社会の信頼に応えていかなければなりません。そのためには,教育専門職として指導技術を高め,社会の変化に対応できるような研修を積み,資質の向上に努め,平和で心豊かな日本国家の発展を願いつつ,21世紀を担う児童生徒の健全な育成に努力していきます。さらに,自らの安定した生活を確立し,情熱を持ち安んじて職務に専念できるように,専門職にふさわしい給与体系の確立,勤務条件や教育条件の整備・改善に積極的に取り組み,佐教連綱領と信条にのっとって,ねばり強く運動を展開していきます。
教育の正常化に向け,われわれが取り組んでいる「美しい日本人の心の育成」を目指す活動には,大きな期待が寄せられています。われわれは,これまでに確立してきた運動の正しさに自信を持ち,その方向性をより鮮明にし,運動の輪を広げ発展させていきます。
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