三国志関連書籍・関連DVD紹介


Last Updated: 2014.11.3 (Mon)
渡邉義浩『「三国志」の政治と思想』 2012年(推奨度 ★★★★★) を追加。

※推奨度は★★★★★がMAX。

三国志関連書籍

★史料★

陳寿『正史 三国志』(ちくま文庫) 297年【Amazon必読!!
(1) 歴史書です。構成は、魏書・蜀書・呉書の3部。叙述は紀伝体で、人物ごとに行状を記録しています。三国志好きにとっては避けて通れない書物でしょう。物語としての面白味はそれほどありませんが、史実を知るうえでは最高の資料です。偉大なる『演義』の源泉を探るという意味でお薦め。(2) 文庫版は全8冊です。(推奨度 ★★★★★
  • 井上泰山訳『三国劇翻訳集』(関西大学出版部)【Amazon
  • 立間祥介訳『全相三国志平話』(潮出版社)【Amazon

★概説・伝記・随筆★

1950年代

宮崎市定『九品官人法の研究』(中公文庫) 1956年【Amazonお薦め!
(1) 中国史研究の名著です。魏の陳羣が考案した九品官人法について詳細に論じています。この制度はもともと魏が漢の人材を吸収するために立てられたのですが、目的を達成後は貴族化してしまったそうです。『三国志』絡みとしては、貴族・豪族の考察として有益でしょう。易姓革命の裏側が垣間見えるほか、劉備と諸葛亮の関係に違った光が当てられていて、貴族というフィルターが有効に作用しています。扱っている時代が広い(魏晋南北朝)ので、とりあえず拾い読みするといいです。(2) 1956年に東洋史研究会から出版、1997年に中央公論社によって文庫化されました。(推奨度 ★★★★
吉川幸次郎『三国志実録』(ちくま学芸文庫) 1956,58年【Amazonお薦め!
(1) 「曹氏父子伝」、「曹植兄弟」の2編を収録。三曹(曹操・曹丕・曹植)を題材にした読み応えのあるエッセイで、主に彼らの文学的才能に目を向けています。建安の詩的世界を背景に、親子関係・兄弟関係の厳しさ、そして非情な乱世を描きだしているところが圧巻でした。いちぶ時代の制約が感じられる箇所があるものの、歴史に対する態度は極めてまっとうで、碩学らしい格調高い文章が味わえます。(2) 1997年に文庫化されました。(推奨度 ★★★★

1960年代

植村清二『諸葛孔明』(ちくま文庫) 1964年【Amazon
(1) 伝記としては力作の部類ですね。日本で諸葛亮がどのように論じられていたか、研究史を辿るうえで参考になります。劉備を稀代の野心家と捉えたり、軍人としての諸葛亮を「理論家」と評したり、曹操に信長との類似性を見出したり。著者は該博な知識を誇っているようで、ことあるごとに日本史・西洋史を引き合いに出しています。これがあまりに頻繁で鬱陶しいです。(2) 1964年に筑摩書房から出版、1985年に中央公論社によって文庫化されました。さらに、2011年にはちくま文庫になってます。(推奨度 ★★★)
狩野直禎『諸葛孔明』(PHP文庫) 1966年【Amazon
(1) 標準的な伝記です。これといった深い考察がないうえ、情報や解釈も古いので、今更読むような本でもないでしょう。諸葛亮について語った部分よりも、後漢の政情や巴蜀の歴史といった背景説明のほうが有意義でした。(2) ところで、本書の初出年代がよく分かりません。私が読んだのは1981年の本ですが、どうやらこれ以前にも同じ内容で何度か出版されていたようです。調べた限りでは、1966年がもっとも古い数字でした。(3) 2003年に文庫化されました。(推奨度 ★★★)

1970年代

竹田晃『曹操』(講談社学術文庫) 1973年【Amazon
(1) 年代相応のオーソドックスな内容です。昔の本にしてはまあまあ頑張っています。特徴的なのが、詩歌の紹介に多くを割いているところでしょう。曹操は人民の痛みを知り、乱世を生きる苦しみを感じていた。実際家の英雄としてだけでなく、その繊細な詩から人間味あふれる横顔を導き出しています。(2) 1996年に文庫化されました。(推奨度 ★★★)

1980年代

守屋洋ほか『三国志の英雄たち』(新人物往来社) 1982年【Amazon
三国志の英雄たちについて語ったアンソロジーです。執筆者は、守屋洋・竹内良雄・山谷弘之・丸山松幸・和田武司・花村豊生・中村スナオ・岸陽子・大石智良・丹羽隼兵・市川宏・佐々克明の12名。諸葛亮が忠誠を誓ったのは「理念としての漢」だと喝破する丸山松幸、袁紹の美意識に「男らしさ」があったとする岸陽子、この2人の論考が出色でした。(推奨度 ★★★)
丘振声『「三国志」縦横談』(新人物往来社) 1983年【Amazon
1990年に翻訳・出版された随筆集です。著者は中国の学者で、お国ではロングセラーになっているとか。三国志が中国でどのように受容されているのかがほの見えて興味深いです。特に雑劇・京劇の項は、日本人にとって馴染みが薄いので貴重でしょう。全体的に今更な論考が多いですが、“中国人の証言”として注目に値します。(推奨度 ★★★)
川合康三『曹操―矛を横たえて詩を賦す』(ちくま文庫) 1986年【Amazonお薦め!
(1) 様々な資料を引用しながら、一つの類型に収まらない曹操の多面性を明らかにしています。武人・文人としての能力だけでなく、その得体の知れない人物像が魅力的です。曹操の事績を丹念に追っているので、基本的な事実を知るにはうってつけでしょう。合わせて石井仁の本【Amazon】も読むと理解が深まります。(2) 『レッド・クリフ』【Amazon】の影響でしょうか、2009年に文庫化されました。(推奨度 ★★★★

1990年代

『三国志 上・下(歴史群像シリーズ 17・18)』(学習研究社) 1990年【Amazonお薦め!
(1) この分野の定番本です。雑誌みたいな構成で、多数の識者が分担して記事を書いています。内容はいま読むと大したことない(刺激的な見解が少ない)ですが、地図・イラスト・統計グラフといった資料が豊富なので、手元に置いておくと便利です。必読というよりは必携の本。(2) 類書に『群雄三国志(歴史群像シリーズ 28)』【Amazon】、『演義三国志(歴史群像シリーズ 83)』【Amazon】、『三国志英雄録(新・歴史群像シリーズ 7)』【Amazon】があります。(推奨度 ★★★★
立間祥介『諸葛孔明』(岩波新書) 1990年【Amazonお薦め!
諸葛亮について過不足なく述べた伝記本です。三顧の礼の解釈なんかは、裴松之の注に重きを置いていて、わりとモダンな立ち位置にあります。また、諸葛亮は夷陵の敗戦後に法正の不在を嘆いてました(法正が生きていたら劉備を止めた云々)が、本書はその解釈もなかなか鋭いものがあります。どちらも蓋然性が非常に高い。伝記としても要点を押さえているので、ファーストチョイスにぴったりです。(推奨度 ★★★★
駒田信二『三国志故事物語』(河出書房新社) 1993年【Amazon
「桃園結義」から「破竹」まで、年代順に故事を紹介した本です。背景を詳しく追っているため、通読すると三国志全体のあらすじが分かるようになっています。もちろん、『正史』と『演義』の区別は万全。一見すると初心者向けに思えますが、詩歌の引用や史料の比較など、意外と本格的でびっくりします。(推奨度 ★★★)
篠田耕一『三国志軍事ガイド』(新紀元社) 1993年【Amazonお薦め!
三国志の軍事が1冊に詰まった労作です。武器や防具、戦術はもちろんのこと、組織図や社会システムなど、軍事関連のトピックを網羅しています。これはもう研究書の領域ですね。そこらのムックとは明らかに「濃さ」が違います。「昔のことなのにここまで分かっているのか!」と単純に驚きました。当時の中国がどれだけ高度な軍事制度を持っていたのか、淡々とした記述でしみじみ分からせてくれます。(推奨度 ★★★★
金文京『三国志演義の世界』(東方書店) 1993年【Amazonお薦め!
『演義』を中核に、雑劇・平話・民間伝承など、中国の文化的背景を探っています。翌年刊行の井波律子『三国志演義』【Amazon】に比べると見劣りしますが、ある程度広い文脈で三国志を捉えているところがポイント高いです。個人的には、『演義』の出版事情と『花関索伝』についての記事が参考になりました。(推奨度 ★★★★
渡辺精一『三国志英雄伝』(小学館) 1994年【Amazon
『演義』のあらすじと解説、さらに人物伝を収録しています。要点を押さえているので入門には最適でしょう。また、「文学作品として丁寧に読む」という姿勢なので、新たなステップへのきっかけにもなります。本書は『演義』の緊密な構成を明らかにした部分が刺激的でした。(推奨度 ★★★)
高島俊男『三国志 きらめく群像』(ちくま文庫) 1994年【Amazon必読!!
『三国志 人物縦横談』の文庫版。三国志のきらめく登場人物たちを、独自のややひねくれた視点で語っています。まずこの著者はものすごい博識で、かつ本職の歴史家ではないせいか、大胆な発言が多くて面白いです。史実を踏まえながらも蓋然性を重視していて、新たな物の見方を教えてくれます。三国志が好きでなおかつ洞察力を鍛えたい人は必読でしょう。(推奨度 ★★★★★
井波律子『三国志演義』(岩波新書) 1994年【Amazon必読!!
『平話』と『演義』を比較・分析し、両者の面白さを探っています。この著者は日本語にやや難がある──カタカナ語を濫用し、「付言すれば」を多用する──のですが、本書に関しては内容がとても優れていて、文章上の欠点を吹き飛ばしてしまうほどです。文学として『演義』がどれほど洗練されているのか、先行テキストを土台にどれほどの工夫が凝らされているのか、羅貫中ほか『演義』に関わった人たちの見事な仕事ぶりが分かります。(推奨度 ★★★★★
福原啓郎『西晉の武帝司馬炎』(白帝社) 1995年【Amazon
これは司馬炎についての本というよりは、司馬一族についての本です。司馬懿の活躍から西晋の滅亡までを扱っています。無味乾燥な文体で無難にまとめた典型的な学者本といったところでしょうか。この分野は類書がないため、本書の一人勝ちになっているようです。(推奨度 ★★★)
小松健一『三国志の風景』(岩波新書) 1995年【Amazon
三国志ゆかりの地を巡ったオールカラーの旅行記です。異国情緒あふれる写真がふんだんに盛り込まれています。むしろ、写真が主で文章が従といった趣でしょう。ただの名所旧跡巡りではなく、土地と人間が溶け合った日常の風景を題材にしており、中国の一断面を写したような美しさがあります。(推奨度 ★★★)
井波律子『三国志曼荼羅』(岩波現代文庫) 1996年【Amazonお薦め!
(1) エッセイ集です。魏・呉・蜀の話題を万遍なく扱っています。諸葛亮をロマンチストに仕立て上げたり、曹操・曹丕・曹植を詩人の観点から語ったり、しっかりしたテーマがあって面白いです。ただ、一部内容が『三国志演義』(岩波書店)【Amazon】と被っているのが気になります。(2) 元は筑摩書房の単行本。2007年に岩波書店で文庫化されました。(推奨度 ★★★★
瀬戸龍哉『三国志武将画伝』(小学館) 1996年【Amazonお薦め!
『演義』をベースにした武将画伝です。中村亮が232人のイラストを書き、そこに瀬戸龍哉が簡単な伝記をつけています。この本のすごいところはデータ部分でしょう。主要な武官には「軍略年表」と「一騎討ち勝敗表」が、主要な文官には「献策・進言・謀略年表」がついているので、その人物がいつどこで活躍したのかが一目瞭然になっています。惜しむらくは、『演義』の章立てに対応していないところ。この作業を網羅的にやってくれれば最高でした。(推奨度 ★★★★
渡辺精一 楡今日子『諸葛孔明』(総合法令) 1996年【Amazon
(1) 諸葛亮の生い立ちから劉備の入蜀までを楡が、劉備の死から五丈原までを渡辺が担当しています。本書は斬新な史料解釈がウリのようで、確かに一部鋭いところもありますが、大半はこじつけで読むのがつらいです。歴史家的な発想というよりは、作家的な発想といったところでしょうか。勘違いするといけないので、初心者は読まないほうがいいです。(2) 「一般では○○と思われているが、本当は△△だ」式の記述が鬱陶しいです。書き手のどや顔が透けて見えてすごく下品。(推奨度 ★★)
瀬戸龍哉『三国志 英雄たちの100年戦争』(成美堂出版) 1997年【Amazonお薦め!
黄巾賊の乱(184年)から石頭城の戦い(280年)まで、『演義』の戦争を一つ一つ解説したムック本です。地図を使って各軍の動きを分かりやすく示したうえ、参戦した武将の伝記も付記しています。イラストは中村亮。こういうのは1冊持っていると便利です。(推奨度 ★★★★
尾崎秀樹ほか『名将の戦略 中国の群雄6』(講談社) 1998年【Amazon
(1) 荀彧・関羽・周瑜・司馬懿を取り上げています。執筆者は春名徹・立間祥介・寺尾善雄・尾崎秀樹の4名。内容は水準程度です。(2) 老学者に華を持たせようとした企画本っぽいですね。(推奨度 ★★★)
松浦友久『詩歌三国志』(新潮社) 1998年【Amazon
土井晩翠の長編詩「星落秋風五丈原」を逐語的に解説しています。この詩は作者(晩翠)の諸葛亮への傾倒が強く表れた作品。その解説書である本書は、随所に李白や杜甫などの漢詩を交えることで、独特の詩的世界を立ち上げています。諸葛亮は古来から詩人を惹き付けて止まなかったわけですね。本書は趣味に走った本という感じで渋いです。(推奨度 ★★★)
山口久和『「三国志」の迷宮』(文春新書) 1999年【Amazon必読!!
思想史の文脈から英雄たちの行動を分析した野心的な本です。偽善と任侠の観点からその素顔を暴く「劉備論」。劉備との関係、蜀での立ち位置に違った光を当てた「孔明論」。そして、当時の学術事情を詳しく解説した「易学の歴史」。東西を自在に行き来する知識の広さと、明快な論理に基づく納得の史料解釈、双方が同居していて読み応えがあります。(推奨度 ★★★★★

2000年代

石井仁『曹操―魏の武帝』(新人物往来社文庫) 2000年【Amazonお薦め!
(1) 曹操の実像を探ろうとした本です。体言止めを多用する素人臭い文体が気になりますが、ところどころ眼光紙背に徹する見解が出てきます。曹氏と丁氏の関係を明らかにしたり、曹操の文武両道ぶりに同時代の典型(チュウコウ・橋玄)を見出したり、袁紹の戦略を光武帝に類するものと喝破したり。過大評価と過小評価を避け、ときに大胆な推測を交えながら曹操に迫っています。川合康三の本【Amazon】と合わせて読むとよいでしょう。(2) 2010年に文庫化されました。(推奨度 ★★★★
今泉恂之介『関羽伝』(新潮社) 2000年【Amazon
関羽の神格化にスポットを当てた本です。あくまで神格化がテーマのため、史実だけでなく、関羽ゆかりの地を巡って民間伝承を採取しています。これが色々逸話があって面白い。さらにバイオグラフィーを紹介するにあたっては、『演義』の記述を適宜参照することで、偶像としての関羽を浮き彫りにしています。関羽はイスラムを除いたアジア地域でもっとも信仰されている神らしいです。(推奨度 ★★★)
荒俣宏『読み忘れ三国志』(小学館) 2002年【Amazon
エッセイ集。荒俣氏らしく雑学は豊富ですが、「三国志」については誤謬が目立ちます。おそらく書き飛ばしたのではないでしょうか。(推奨度 ★)
NHK取材班・編『三国志英雄伝(その時歴史が動いた)』(KTC中央出版) 2002年【Amazon
(1) NHKの同名番組を書籍化したぬるま湯的な本です。地の文で三国志のハイライトを紹介、要所要所で陳舜臣とジュディ・オングがコメントしています。さらに、これだけではページが埋まらなかったのでしょう、三国志業界に燦然と輝く17名の書き手たちがエッセイを寄せています。(2) 番組パートでは諸葛村に取材したくだり、エッセイパートでは堀敏一「曹操政権の人材」が良かったです。この2つのおかげで面目を保っているという感じ。また、渡邉義浩による書籍紹介も役に立ちます。(推奨度 ★★★)
雑喉潤『三国志と日本人』(講談社現代新書) 2002年【Amazon
三国志と日本人の関わりを、『日本書紀』の時代から説き起こしています。万葉歌人・『太平記』・『八犬伝』、そして、現代のブームに繋がる吉川英治・柴田錬三郎・陳舜臣。内藤湖南は反演義的な立場から諸葛亮に迫り、吉川幸次郎は『三国志実録』で曹操を再評価、花田清輝はユニークなエッセイを残している……。新書のため、情報の濃度にムラがありますが、壮大な受容史として概観するには便利な本です。(推奨度 ★★★)
三国志新聞編纂委員会『新版 三国志新聞』(日本文芸社) 2003年【Amazonお薦め!
(1) 黄巾の乱から晋の統一まで、新聞形式で歴史を叙述したユニークな本です。『正史』をベースにしながらも、ところどころ『演義』ネタをちらつかせて笑わせてくれます。これはもう「面白い!」のひとことですね。硬派と軟派のバランスが素晴らしく、新聞的クリシェで歴史を弄る手並みは芸術的でさえあります。また、花くまゆうさくの4コマ漫画が最高にシュール。初心者から上級者まで幅広く楽しめます。(2) 旧版は1996年に刊行されています。(推奨度 ★★★★
金文京『中国の歴史04 三国志の世界(後漢 三国時代)』(講談社) 2005年【Amazon必読!!
入門書の新たなスタンダードになりそうな本です。三国時代の文化や宗教、名士の動きなど、汲み取りづらいトピックを分かりやすくまとめています。史書の淡泊な記述の先には、それぞれの思惑なり信条なりが広がっていた。平面だったものが立体になったようで新鮮でした。歴史としての三国志を知りたい人は必読です。(推奨度 ★★★★★
坂口和澄『三国志人物外伝』(平凡社新書) 2006年【Amazonお薦め!
新書のわりには本格的な内容でした。『正史』におけるマイナーなトピックや『演義』が見逃した面白エピソードなどを、数多の文献に寄り添った形で紹介しています。同時代の人から見た趙雲の実像、外交で活躍した呉の文官たち(趙咎・陳化・鄭泉)、劉備嫌いの費詩・李バク・張存……。『演義』ファンを小馬鹿にしているところが気になりますが、その豊富な知識と丹念な分析はためになります。(推奨度 ★★★★
満田剛『三国志―正史と小説の狭間』(白帝社) 2006年【Amazon必読!!
これはかなりの良書です。『正史』と『演義』の差異を明らかにし、史実を解説した本ですが、たくさんの史料・論文を駆使しているため、歴史研究の面白さがダイレクトに伝わってきます。実証的に事実を炙り出す作業は最高にスリリング。文体はやや硬く、表紙のデザインもストイックなため、大学の教科書に使えそうな感じです。(推奨度 ★★★★★
渡邉義浩『図解雑学 三国志演義』(ナツメ社) 2007年【Amazon
図解を多く交えた入門書です。『演義』のあらすじや合戦の概略、その他三国志にまつわる雑学など、基礎的な知識が得られます。注目すべきは、『演義』が成立するまでを解説した第4章でしょう。それぞれの英雄像の変遷が興味深いです。また、巻末の人物紹介では「名士」の観点を強調しています。(推奨度 ★★★)
さくら剛『三国志男』(サンクチュアリ・パブリッシング) 2008年【Amazon
ネタ満載の愉快な旅行記です。中国全土にまたがる三国志遺跡を単身で回っています。キレ味するどいギャグが豊富で、著者の文章力に感銘を受けることしきりでした。が、後半からはつまらない題材を無理矢理盛り上げている観があってだるいです。こういうのはブログでやるべきでしょうね。写真もカラーにできますし。(推奨度 ★★★)
守屋洋・市川宏監修『軍師たちの大三国志』(新人物往来社) 2009年【Amazon
(1) 軍師と合戦に焦点を当てたムック本です。第1章で7人の軍師を紹介し、第2章で三国時代の軍事制度を解説、第3章で13の合戦をレーダーチャート付きで取り上げています。執筆者は、島崎晋・市川宏・小林春樹・岡崎由美・村山マコト・守屋洋・狩野あざみ・伴野朗・来村多加志・田中宏巳・中林史朗・渡邉義浩。内容は可もなければ不可もないですが、約1名、独自の「名士」論に拘っている人がいて目を惹きます。(2) ちなみに、狩野あざみはホウ統を主人公にした小説を載せています。ファンは要チェックでしょう。(推奨度 ★★★)
立間祥介『知識ゼロからの三国志入門』(幻冬社) 2009年【Amazon
横山光輝の漫画とコラボした入門書です。大きめのフォント・分かりやすいチャート・場面に応じたイラストなど、小学校の学習参考書みたいな体裁になっています。タイトル通り「知識ゼロ」の人向けでしょう。横山光輝の漫画からたっぷり引用しているので、具体的なイメージが沸きやすいと思います。(推奨度 ★★★)

2010年代

河南省文物考古研究所『曹操墓の真相』(国書刊行会) 2011年【Amazonお薦め!
(1) 2009年に発掘が開始された曹操墓に関する考古学ドキュメンタリーです。発掘によって得られた遺物と書物から知れる史実を丁寧に照合して、この墓が曹操のものであるかどうかに迫っています。(2) カラー写真や図板が多く、全体的に気合いの入った本であることは間違いありません。個人的には、巷間に広まった「七十二疑塚」の話を否定する部分が面白かったです。幅広い史料に当たって自説を論理的に展開していくところが素晴らしい。これぞ考古学研究の醍醐味という感じがします。(推奨度 ★★★★
渡邉義浩『関羽』(筑摩書房) 2011年【Amazonお薦め!
関羽の神格化にスポットを当てた本です。今泉恂之介『関羽伝』【Amazon】と同一のテーマですが、本書のほうがより専門的で硬派な内容になっています。『関羽伝』がフィールドワークだとすれば、本書は史料研究といった感じになるでしょうか。正史『三国志』の段階では関羽の評価はそれほど高くなかったのですが、そこからどのようにして神格化されていったのか、関羽信仰の歴史が詳しく書かれています。意外にもキーワードは塩。宋代に山西商人の台頭によって状況が一変したという指摘が興味深かったです。(推奨度 ★★★★
渡辺精一『三国志40人の名脇役』(二玄社) 2012年【Amazon
『三国志演義』の脇役にスポットを当てた本です。内容は初心者向けでしょうか。40人を200ページに満たない分量で紹介しているので、一つ一つの記事が薄っぺらいです。人物の行動を解釈した部分にも鋭さはなく、全体としては毒にも薬にもならない本でした。なぜ今更こういう本が出版されたのか疑問です。(推奨度 ★★)
渡邉義浩『「三国志」の政治と思想』(講談社) 2012年【Amazon必読!!
(1) 三国志を「名士」という観点から分析した内容で、著者の集大成とも言うべき本です。「名士」とは、知識人の間に得た名声を自らの存立基盤にする者であり、戦乱の世に独自のネットワークを保持、三国時代は君主と名士層のせめぎあいの時代であった。魏・呉・蜀ともに君主と名士層の関わり方が違っていて、その精緻な分析内容に驚くことしきりでした。この「名士」論には賛否両論あるかもしれませんが、歴史を違った角度で見ることができるので一読をお勧めします。(2) 実は本書を読むまでは、「名士」論という異端な説を既成事実にするために、この著者は大量の一般書を書いているのだと思ってましたが、本書を読むとその完成度の高い世界観に圧倒されます。これは「名士」論の時代が来たかもしれません。(推奨度 ★★★★★
渡邉義浩監修『ビジュアル三国志3000人』(世界文化社) 2013年【Amazon
(1) 三国志ゆかりの人物を写真付きで紹介した本で、400ページのうちカラーページが8割を占めています。紹介文は人によって6ページあったり、2行で終わったりまちまちですが、ここまで網羅的に人物を取り上げた本は珍しいです。写真と図解が豊富で、ところどころに三国志関連のコラムが挟まっているのも特徴でしょう。サイズが大きいので書斎で読むタイプの本です。(2) お金に余裕があれば手元に置いてもいいですが、事典的な本なら他に良書があるので特にお勧めはしません。(推奨度 ★★★)

★事典★

沈伯俊・譚良嘯『三国志演義大事典』(潮出版社) 1989年【Amazonお薦め!
(1) 1996年に翻訳・出版された事典です。全部で4164項目あり、『演義』に出てくる人物が全て載っています。訳注で『正史』との相違をフォローしていて地味に便利です。難点は個々のプロファイルが簡素すぎるところ。事績や活躍については抜け落ちていることが多いので、他の事典と併用しないと使えません。(2) 京劇に項を割いているのが中国らしいですね。(推奨度 ★★★★

★小説・漫画★

周大荒『反三国志』(講談社文庫) 1919~?,87年【Amazon
蜀が中国を統一するという架空戦記です。徐庶を荊州に引き留めることで歴史の流れが劇的に変わっています。個人的にこれは地雷本ですね。訳文のテンポはいいのですが、展開が単調ですぐに飽きます。そのうえ、やたらと分量が多い。所詮は作者の願望充足なので、武将たちの活躍にも興味が持てませんでした。話の種として読むならありでしょう。(推奨度 ★)
吉川英治『三国志 全8巻』(講談社文庫) 1939~40年【Amazonお薦め!
初心者向けの定番テキストです。黄巾の乱から五丈原までを描いています。古いわりには読みやすく、私もこの小説から三国志の世界に入りました。日本では『演義』本家よりも有名で、漫画やゲームといったサブカルチャーへの影響は計り知れないです。これから読む人は張コウ(魏将)の死に注目しましょう。(推奨度 ★★★★
横山光輝『三国志 全60巻』(潮出版社) 1971~86年【Amazon必読!!
吉川英治の小説をベースにした漫画です。コミック版で60冊、文庫版で30冊あります。物語は蜀漢の滅亡までを描いてますが、諸葛亮の死後は駆け足気味です。これは不朽の名作ですね。独特の垢抜けない絵柄が微笑ましいです。現代の洗練された漫画に慣れた人たちは、このレトロな絵を新鮮に感じることでしょう。また、趙雲や周瑜がむさ苦しいおっさんなところも新鮮です。(推奨度 ★★★★★
山原義人『龍狼伝』(講談社) 1993~【Amazon
三国志の世界を借りたファンタジー漫画です。日本の高校生が207年の中国にタイムスリップし、当初はその歴史知識でもって劉備軍をサポートしています。この漫画の大きな特徴は、武人が超人的な武術を身につけているところです。特に仲達(司馬懿?)率いる虎豹騎が尋常でない強さで、主人公もそれに対抗するように体術を身につけています。ファンタジーとして割り切れば、これはこれで面白いのではないでしょうか。(推奨度 ★★★)
李學仁 王欣太『蒼天航路 全36巻』(講談社) 1994~2005年【Amazon必読!!
曹操を主人公にした漫画です。基本的には『正史』に準拠しています。曹操を徹底した合理主義者として、儒教をはじめとする因習へのアンチテーゼとして描いています。登場人物はみんな異様に濃いですし、絵柄もダイナミック、さらには強靱な哲学まで備えていて、読み応えは相当なものです。三国志漫画の頂点と言っても過言ではありません。(推奨度 ★★★★★
赤羽堯『曹操伝三国志異聞』(文藝春秋) 1995年【Amazon
『演義』ベースの小説です。魏王となった曹操が頭痛で苦しみ、名医・華佗に診てもらう。そこから回想していくという形式になっています。小説としてはお世辞にも出来が良いとは言えず、同時代のローマに注意を向けているところが目新しいくらいです。赤壁での曹軍疫病説を、さも独自の見解のように披露しているのには驚きました。(推奨度 ★)
陳舜臣『曹操 魏の曹一族 上・下』(中公文庫) 1998年【Amazon
曹操を「家族」の観点から捉えた小説です。曹操と架空の人物の対話がメイン。血沸き肉踊る場面がいっさいないので、刺激に飽きたマニア向けになるでしょう。宗教に目を向けるなど、原典のアレンジに多少見るべきところがありますが、無理して読むような本でもありません。(推奨度 ★★)
酒見賢一『泣き虫弱虫諸葛孔明』(文春文庫) 2004~【Amazon】(詳しいレビューはこちら
語り手が突っ込みを入れていくお笑い色の強い小説です。司馬遼太郎の手法を喜劇に応用したような感じでしょうか。ギャグセンスは一級品で、それなりに楽しい場面が多かったりします。難点は冗長なところ。話があまりに進まないので、途中で心が折れそうになりました。 (推奨度 ★★★)

三国志関連DVD

『人形劇 三国志』 1982~4年【Amazonお薦め!
NHKで放映されていた人形劇です。桃園の誓いから五丈原までを描いています。川本喜八郎による人形が実に凝っていて、その一挙手一投足に目が離せません。ストーリーは『演義』を基軸としながらも、ところどころ独自のアレンジがなされています。関羽が貂蝉と良い仲になったり、呂蒙が血も涙もない悪党だったり……。また、若き日の島田紳助も出演しています。(推奨度 ★★★★
『横山光輝 三国志』 1991~2年【Amazonお薦め!
(1) 横山三国志のアニメ版です。原作よりも登場人物がスタイリッシュになってます。特に曹操の甲冑姿は必見。オリジナル要素も多数あり、ストーリーは原作よりもとっつきやすいです。惜しむらくは赤壁の戦いで終わっているところでしょうか。(2) FENCE OF DEFENSEによる主題歌が格好いいです。私はCDを買いました。(推奨度 ★★★★
『やわらか三国志 突き刺せ!!呂布子ちゃん』 2007年【Amazon
(1) 呂布と陳宮が現代日本にタイムスリップ。気がつくと2人は少女の姿になっていた……。女子小学生の呂布子ちゃんが暴れるドタバタアニメです。舞台となる漁村には曹操や夏侯惇(どちらも漁師)も住み着いており、後から関羽(そのままの格好)も加わります。これはキャラ立ちが素晴らしいですね。特に若本【Amazon】演じる高順がいい味出していて、彼が暴走する回は笑いの連続でした。若本の存在感は群を抜いています。(2) やらないか【Amazon】の2人がゲスト出演しています。これだけでも一見の価値はあるでしょう。(推奨度 ★★★)
『恋姫†無双』 2008年【Amazonお薦め!
(1) 主要人物を女性化し、ストーリーも大胆に改変した究極の百合アニメです。関羽が巨乳、張飛がお子様、趙雲が下ネタ担当と、各自別人のように生まれ変わっています。『演義』で敵役にされている人たちもだいたい「イイ人」として描かれているので、ある意味安心して楽しめるでしょう。基本コメディですが、ところどころシリアスな要素も入っています。 (2) 原作は18禁ゲーム【Amazon】。そのせいか、やたらと裸のシーンが多いです。あと、巨乳率も高い。(推奨度 ★★★★
『レッドクリフ Part I & II』 2008,9年【Amazon】(詳しいレビューはこちら
赤壁の戦いを武侠テイストで描いた異色作です。最新技術による抜群の映像美を誇ってますが、テレビゲームの映画化みたいでげんなりします。長々と続く戦闘シーンが退屈。良くも悪くも『三國無双』【Amazon】のノリなので、年季の入ったファンにはお勧めしません。(推奨度 ★★)
『真・恋姫†無双』 2009年【Amazonお薦め!
(1) 『恋姫†無双』【Amazon】 の続編。関羽と愉快な仲間たちが楽しい冒険を繰り広げています。相変わらずキャラたちの掛け合いが面白いです。みんな個性的でそれぞれ見せ場がある。さらに今回は前作以上に下ネタが多く、裸のシーンも満載でした。(2) 特筆すべきは歴史の絡め方でしょう。特に太平要術から黄巾党の流れは神がかっていて、世界観に見合った決戦を用意しているところが素晴らしい。初心者のみならず、上級者にとっても見ごたえのある脚本になっています。(推奨度 ★★★★
『真・恋姫†無双~乙女大乱~』 2010年【Amazonお薦め!
(1) 『真・恋姫†無双』【Amazon】の続編。今回も史実や原作の取り込みが絶妙で、髀肉の嘆、兵馬俑、魏延と馬岱の関係など、あっと驚く知的なアレンジがなされています。また、このシリーズならではのゆるネタも良い。何進の猫耳や劉備のおっぱい体操など、笑いのツボにはまりまくりでした。(2) 特徴的なのが世界観の守り方でしょう。戦国ものでありながら、「血を流さない」「人を殺さない」というのを徹底しているため、観ているほうも安心できます。例外は最後の于吉だけでしょうか。とはいえ、あれは死んだというよりは成仏したという感じですが。(推奨度 ★★★★
『最強武将伝 三国演義』 2010~1年【Amazon
(1) 日中合作のテレビアニメです。脚本は荒く、CGっぽい平板な絵も気になりますが、晋の統一まで描いているところは賞賛に値します。アニメでここまでやったのは初めてではないでしょうか。(2) ある回を境に諸葛亮がいきなり老けたのには笑いました。原作ではまだ30代なのに、アニメでは突然60代の風貌になっている……。さらに、南蛮の人たちがインディアンなのもポイント高いです。(推奨度 ★★★)

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