タイ映画史に残る?大作「スリヨタイ」を観る
![]() 2001年8月12日の王妃誕生日に合わせるように、ついに公開された映画「スリヨタイ」。タイ映画史上最高の4億バーツの製作費を投じ、撮影だけでも2年かかったという超大作です。1万人のエキストラと数千頭の象さんも出演したというこの映画(ちょっとサバよんでるんじゃ…)。自ら原作も書き下ろしたタイの黒澤、チャトリチャルーム監督の采配ぶりやいかに? というわけで、マーブンクロン7階のSF CINEMA CITYにやって来ました。いつもMajor Cineplexに行くのに、なぜ今日はSF CINEMAなのか?最近ローカルテレビで恥ずかしげもなくやっているSF CINEMAのべたなコマーシャルに敬意を表したのです。実にチープなCMなのですが、こんな感じのものでして… @映画館の劇場出入口の扉を、劇場の外側からカメラがフィックスでとらえている。 A映画が終わり、案内係の男が扉を開ける。 B映画を見終わった客が次々と扉から出てくる。 Cしかし劇場から出てくる客はみな、銃を構えるポーズをしながらロビーの床を匍匐前進。 Dみんな口々に「バキューン、バキューン」などと叫んでいる。 つまり戦争映画を中でやってたため、みんなすっかり染まっちゃったってオチなんですね。それほど夢中になるSF CINEMA CITYだと。はぁ〜。 それにしてもすごい人気です。平日の昼間だというのに、次の上映も次の次の上映もほぼ満席。スクリーン最前列の端っこのようなクソ席しか空いてません。学生の多いマーブンクロンとはいえ、すごすぎる。「タイタニック」の興行記録を塗りかえそうだというのは、おそらく本当でしょう。シネコン側でも、総力戦ともいえる対応をしており、館内の映画館のほとんど全部で一日中「スリヨタイ」を上映しまくる布陣をひいています。「猿の惑星」見たい人は一体どこ行きゃいいんだ? 街には渋いデザインのポスターがあふれ、テレビの芸能ニュース番組では「よかったあ〜」と満足げに語る観覧後の観客のインタビューが。ついでに缶入りビアシンも「スリヨタイ」特製デザインのやつが売り出されています。主役の女優さんがビアシンだしてる会社の一族らしいですね。ふむ。この時期日本から遊びに来た人は、御土産に買って帰ってキープしておけば将来プレミアムがつくかもしれません。いや、とっとと飲んじゃった方がいいか…。 スリヨタイというのは、アユタヤ王国を守るため国王である夫とともにビルマ軍と戦った16世紀に実在した王妃の名前です。英語字幕が一応付いているのですが、地名や人名の固有名詞が長ったらしくて死ぬほど読みにくく、全部読み終わる前に字幕が消えちゃって追いつくことができません。語学力よりも動体視力が必要な映画です。特に前半は人間関係が分りにくく、スコータイ朝とアユタヤ朝の関係なども、なんだかもひとつ分りませんでした。さらに物語が進んでいくと、北を治める諸侯の複雑な力関係や、謀略の中心になるウトン家の血筋って一体なんなのかとか、頭痛の種がどんどん増えていきます。それなりの演出意図があるのは理解できるのですが、少女時代のスリヨタイと、結婚したスリヨタイに産まれる娘を、同じ若手女優が1人2役でやっており、これも結構混乱させてくれます。ふい〜っ。自らも王族であるチャトリチャルーム監督ですが、予想していたよりも国威発揚的な内容は薄めでした。シナリオ面で特徴的なのは、王室内部での勢力争いや謀反劇といったNHKの大河ドラマ的エピソードにたっぷり時間が割かれていることです。ビルマとタイの抗争にお話が絞られてくるのは、本当に最後の30分で、とってつけたような感じすらします。 闇に乗じたバージでの仇討ちシーンや象の戦闘シーンなど、見せ場は派手に楽しませてくれるし、マニア泣かせのしっかりした歴史考証に基づく王室内の描写等は一見の価値があります。ただ残念なのは、人間ドラマの部分が弱く登場人物の性格描写が紋切り型だという点でしょうか。タイのトップシンガー・マイはいつものムチムチ毒婦役。彼女にそそのかされるタイテレビドラマ界の色男第一人者ジョニーは野心満々で国王暗殺。忠実な荒くれ男の家臣もいれば、思慮深く控え目な第二国王もいる。やっぱり新味の感じられないパターンですよね。 3時間以上ある大作ですが、決して退屈はしません。ただ、ドラマにメリハリがないのがちと厳しいです。スリヨタイ自身の人物描写も決定的に不足しています。映画のタイトルにもなった主人公なのに、出番が妙に少ないのも不思議です。不思議といえば、侵略者ビルマの王が志村けんのバカ殿みたいな白塗りだったのはなんだったんでしょう。当時のビルマの偉い人は本当にあんなだったのかな?あとびっくらこいたのは、映画の途中で何箇所かおっぱいポロリがあったこと。洋画とかだったら、これでもかっていうくらいぼかしをかけたり、丸々ワンシークェンスカットしてしまったりするくせに、この映画は特別なんでしょうか?ポロリの必然性などほとんどないシーンだったのですが…。いろんな意味で、タイ映画のニューエポックを印象付ける作品でした。 |