立体モアレ2
基本的な例
Basic Examples
実験・
2色の格子・
その他の方法
ここで作る立体モアレを図2−1に示します。幅6吋×高さ4吋の面を縦に6分割し、周期と奥行きが異なる立体モアレM1 〜 M6を作ります。Grid A,Grid BはOHPシートにインクジェットプリンタで印刷して作るものとし、印刷解像度を600 dpiとします。

図2−1 制作する立体モアレ
以降の実験でも使えるようにGrid Aは30 lpiの均一な格子とし、Grid Bのピッチ w を変えて周期 λと奥行き D を変化させます。ここではモアレ縞が0.5, 1.0, 1.5吋の三種類となるように w を決めました。これには式 (a) を変形した式 (c) を使います。

Grid A,Grid Bの面積分割の様子は図2−2に示すようになります。さらに計算した設計値の一覧を表2−1に示しますが、奥行き D は二枚の格子間距離 d に比例して変化します。
表2−1 設計値(mm)
| λ | w | D |
| M1 | 38.1 | 0.8283 | 45d |
| M2 | 25.4 | 0.8194 | 30d |
| M3 | 12.7 | 0.7938 | 15d |
| M4 | -12.7 | 0.9071 | -15d |
| M5 | -25.4 | 0.8759 | -30d |
| M6 | -38.1 | 0.8659 | -45d |

図2−2 Grid A,Grid Bの面積分割
C++で描画プログラムを作り、 Grid A と Grid B のパターンを作りました。以下からダウンロードできます。設計通りの結果を得るためには、これらを600 dpiの画像としてOHPシートに印刷すれば良いのですが、これとは異なる倍率であっても、両格子を同じ倍率で印刷すれば λ と D の絶対値が変わるだけで、同様の結果が得られます。
Grid A, file name = "grid_a.gif"
Grid B, file name = "grid_b.gif"
ライトボックスの上にGrid Bを置き、厚さ4mmの透明なアクリル板を重ねた上にGrid Aを置いて立体モアレを観察しました。視点を左右に移動して撮影したものが写真2−1ですが、左右の視点でモアレ縞の位置が変わっていることが分かります。
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| 左の視点 | 右の視点 |
写真2−1 二つの視点で撮影した立体モアレ
屈折率 n の媒体における厚さ t は、屈折率1の媒体(空気)に換算すると t/n に相当しますから、アクリル板の屈折率1.49から d = 4.0/1.49 = 2.7 となり、奥行き D は下表のようになります。
表2−2 モアレの奥行き(mm)
| M1 | M2 |
M3 | M4 |
M5 | M6 |
| D | 122 | 81 | 41 |
-41 | -81 | -122 |
通常であれば平行法によって二枚の写真を立体視することができるのですが、立体モアレに限っては、その方法が使えません。実際にやってみれば実感してもらえると思いますが、なぜなのでしょうか。
立体像の観察では、左から右に視点を移動すると、奥にある像は左から右に、飛び出す像は右から左に移動することで、その奥行きを感じます。これを運動視差と言います。
左右二つの視点で見える像しかない場合には、それら二枚の画像から運動視差を推定するのですが、立体モアレではこの運動視差が一意に決まりません。モアレ縞が周期模様であるため、縞が右に動いたとも、左に動いたとも両方の解釈が可能で、このため同じモアレ縞が時には奥に見えたり、逆に飛び出して見えたりして定まらないのです。さらに言えば、一周期、あるいはそれ以上の周期分、余計に移動したとも解釈することができ、結局二枚の画像では奥行きが決まらないのです。
これが二枚の画像による立体視の限界ですね。
もちろん実際に立体モアレを見れば、ちゃんと奥行き感を感じることができます。このことを敢えて2Dの画像で示そうとするなら、視点(カメラ)位置を連続的に移動させて運動視差をビデオ撮影し、動画によって表現するのでしょう。
設計ではM1とM6、M2とM5、M3とM4はそれぞれ周期 λが等しいはずですが、実際の写真では下のモアレが大きく見えています。これは近くのものが大きく、遠くのものが小さく見える遠近法的な効果、パースペクティブが効いているためで、モアレ縞がまさに空間的な立体像として存在していることを示しています。ちなみに観察距離が大きくなれば上下のモアレ周期の差は小さくなるはずですから、実際に実験する方は確認して見てください。さらに Grid A と Grid B の位置を交換すると、モアレ縞の奥行きは全て逆転しますが、これは同じ立体像を裏から見ることに等しいのです。
立体モアレには、当然のことながら元の格子 Grid A や Grid B が重なって見えることになりますが、立体モアレだけを目立たせるためには、なるべく元の格子は見えない方が良いでしょう。そのために格子のピッチを細かくするのも一つですが、プリンタの印刷解像度を考えるとむやみに細かくすることもできません。そこで考えたのが2色の格子を使うことです。図2−3左の通常の格子に変えて、同図右の赤−シアンの格子を使えば、少なくとも輝度の変動が1と0になっていない分見えにくくなり、一方で2色が補色の関係になっているため、2色が重なる部分の光が遮られて同様のモアレ縞を作れるはずです。
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| 通常の格子 | 2色の格子 |
図2−3 色を使う格子の例
先ほどと同じ仕様で2色の Grid Ac と Grid Bc を作成しました。以下からダウンロードすることができます。こちらもインクジェットプリンタでOHPシートに印刷して使います。
Grid Ac, file name = "grid_ac.gif"
Grid Bc, file name = "grid_bc.gif"
実際にこれらを使って表示した立体モアレを写真2−2に示します。カラーバランスがきちんと取れていれば全体的にグレーに見えるはずですが、現実には赤・青・紫の色がはっきり付いてしまいました。インクジェットプリンタを使った色調の調節は、思いの外難しいと言うことでしょう。元々透過原稿を想定したインクではないことも原因の一つかもしれません。残念ながら期待通りの結果を得ることはできませんでした。

写真2−2 2色の格子を使って表示した立体モアレ
専用の描画ソフトが無くとも立体モアレ用の格子を作ることは可能です。もしフォトショップや GIMP のようなフォトレタッチができるソフトを持っているのであれば、 Grid A のパターンを倍率 w/p に拡大縮小して Grid B のパターンを作ることができます。またもし単一のモアレパターンで良ければ、 Grid A のパターンを印刷する際に、印刷倍率を w/p にして Grid B を作っても良いでしょう。要はアイデア次第で、特別な道具は無くとも結構色々できるものです。ちょうど学校は夏休みで、自由研究のシーズンですが、中学生にはちょっと難しいテーマでしょうか。
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