Lenticular-lens
レンチキュラーレンズ・ まとめ1.格子の開口幅
前回の Grid A,Grid B には、いずれも透過部と遮光部の幅が等しいものを使用しました。ここでは Grid A のピッチを変えずに、透過部の幅(開口幅)を減らしてみましょう。ここでは 開口率 :A =透過部/(透過部+遮光部)を使って開口幅の大小を表すものとし、前回使用したA = 50%の格子と今回使うA = 20%のものを図3−1に比較しました。
図3−1 開口率Aを変えた格子
A = 50% A = 20%
A=20%の Grid A は以下からダウンロードすることができます。同じ印刷解像度でOHPシートに印刷してください。
Grid AN, file name = "grid_an.gif"
この格子を前回の Grid A と置き換えて実験したものを、前回のものと比較したものが写真3−1です。開口率が小さい方は全体的に暗くなりますが、モアレ縞のエッジはシャープになり、コントラストも強くなっています。
写真3−1 Grid Aの開口率を変えた立体モアレ
A = 50% A = 20%
この場合の断面図を図3−2に示します。Grid A の開口幅が小さくなると、断面図上のそれぞれの開口部は、ピンホールカメラのピンホールのように働いて Grid B の像を投影し、これが重なるところに像が形成されます。この図を立体モアレ1の図1−2、図1−4と比較すれば明らかなように、 像の位置(奥行き)はモアレ縞のそれと同じで、まさにモアレ縞に他ならないのですが、像投影の原理が働く分シャープに見えると考えて良いでしょう。
図3−2 装置の水平断面図
ここではGrid A の開口幅を変えてみましたが、Grid A はそのままにして、Grid B の開口幅を小さくしても同じ効果が得られます。両方とも格子なので等価性があるのですね。この場合をどう説明するかは考えて見てください。
2.レンチキュラーレンズ
もし3D用のレンチキュラーレンズがあれば、これを Grid A の変わりに使うことが可能です。図3−3に示すように、レンチキュラーレンズは透明な板の片面に円柱面レンズ(シリンドリカルレンズ)が平行に並んだもので、印刷物と合わせる3D用のものであれば、平面の側にピントが合うように設計されています。
図3−3 レンチキュラーレンズ
使用するレンチキュラーレンズのピッチに倍率を合わせてGrid B のパターンを印刷し、それを上図に示した平面の側に合わせます。例えばレンズピッチが30 lpiなら印刷倍率はそのまま600 dpiで、40 lpi なら800 dpi、20 lpi なら400 dpiとなります。60 lpi や 75 lpi のレンチキュラーレンズも不可ではありませんが、市販のインクジェットプリンタの解像度を考えると、あまりピッチの細かいレンズを使うことはお勧めできません。
ここではGrid B のパターンを600 dpiでスーパーファイン紙に印刷し、30 lpiで厚さ1.35mmのレンチキュラーレンズを重ねてみました。これを写真3−2に掲げます。
写真3−2 レンチキュラーレンズで表示した立体モアレ
写真3−1に比べて明らかにシャープでコントラストの高い立体モアレになります。基本的にモアレ縞だけが見え、Grid A や Grid B が重なって見えない点でも見易くなっていると思います。このレンチキュラーレンズはPET製で、屈折率1.58から d = 1.35/1.58 = 0.854 となり、奥行き D は下表のようになります。
表3−1 モアレの奥行き(mm) M1 M2 M3 M4 M5 M6 D 38.4 25.6 12.8 -12.8 -25.6 -38.4
この場合の断面図を図3−4に示します。図3−2の Grid A がレンチキュラーレンズに変わっただけですが、レンズによって投影される像はピンホールカメラの像よりずっと鮮明ですから、モアレ縞がシャープな格子の像になることは容易に理解できます。
図3−4 装置の水平断面図
レンチキュラーレンズは透明で遮光部がなく、前面からの照明光が使えます。このためライトボックスは不要で、白い紙(光沢紙やスーパーファイン、画質にこだわらなければ普通紙も可)に印刷したGrid B を使えるため、高価なOHPシートが不要でコスト的には楽だと思います。もちろんレンチキュラーレンズは必要ですが、ライトボックスよりは安価でしょう。
反面、ピッチ p や奥行きを決める間隔 d がレンチキュラーレンズで決まってしまうため、これらを変えて実験をしたい時には不便です。
3.まとめ
開口率を変えた格子とレンチキュラーレンズを使った立体モアレの見え方を、明るさの分布によって示すと図3−5のようになるでしょう。Grid A の開口率を減らしてゆけばモアレ縞はその分だけシャープになりますが、同時に明るさも減少してしまいます。一方レンチキュラーレンズを使えば、像のシャープネスはレンズの収差で決まり、明るさを犠牲にすることがありません。
図3−5 各方式におけるモアレ縞の明るさ分布
レンチキュラーレンズを使う立体モアレと、格子を使う立体モアレの比較を表3−2にまとめます。レンチキュラーレンズを使うことで幾つかの制限は生じますが、その長所を生かすことで様々な可能性が広がることも事実です。次回に取り上げるテーマはその良い例になると思います。
表3−2 両方式の特徴 格子 レンチキュラーレンズ 長所 ○p, d の選択が自由
○明るくシャープでコントラストが高い
○元の格子が見えない
○紙(光沢紙,スーパーファイン,普通紙)に印刷可能
○バックライトが不要短所 ●シャープネスと明るさが反比例する
●モアレ縞に元の格子が重なる
●OHPシート(透過原稿)に印刷する必要がある
●バックライトが必要●p, d がレンチキュラーレンズで決まる