針穴写真3
印画紙カメラ2
フィルム用現像液
D-76(1:1希釈)による現像・
D-76,4倍(1:3)希釈現像・
知識と経験、研究が必要
前回は現像を制御するために印画紙用現像液を希釈して現像速度を下げて使用したが、現像速度が遅いフィルム用現像液であれば希釈せずにそのまま使えるのではないかと思われる。表3−1にゲッコールに近いと思われるMD-51処方とフィルム用現像液D-76の処方を比較した。
表3−1 MD-51(保存液)とD-76の処方(共に1リットル)
MD-51の処方は「写真科学」文芸社による。
| 薬品 |
MD-51 |
D-76 |
| メトール |
2g |
2g |
| 無水亜硫酸ナトリウム |
30g |
100g |
| ハイドロキノン |
8g |
5g |
| 炭酸ナトリウム1水塩 |
52.6g |
− |
| 臭化カリウム |
1.5g |
− |
| ホウ砂 |
− |
2g |
両者の主な違いはカブリ防止剤(臭化カリウム)の有無とアルカリ剤で、主薬のメトールやハイドロキノンの含有量はあまりかわらない。現像速度はアルカリ性の雰囲気中で高く、主に液のpHによって決まっている。
前回はゲッコールを通常の10倍に希釈して使ったが、これではpHとともに現像主薬の濃度が大幅に低下する。ネガの濃度が全体的に上がりにくい理由はここにあったのかもしれない。そうであればフィルム用現像液を希釈せずに使えば、十分な濃度のネガが得られる可能性がある。昔は印画紙用の現像液を薄めてフィルム現像に使うことが良くあったとのことであるから、逆にフィルム用の現像液を印画紙を使うことも可能なはずである。
D-76の1:1希釈(2倍)はフィルム現像によく使われている。これはMD-51処方の使用液と同程度の主薬濃度であるから、これで印画紙を現像できればフィルムに近い調子のネガが得られるかもしれない。
露出は前回同様ISO0.6相当とし、液温20℃で現像時間を変えて比較した。結果のネガとプリントを写真3−1に示す。
| 現像時間 |
ネガ |
プリント |
| 2分 |
 |
 |
| 2分30秒 |
 |
 |
| 3分 |
 |
 |
| 4分 |
 |
 |
写真3−1 D-76(1:1希釈)を使った現像における現像時間とネガ及びプリント。
コンタクト時の光量はそれぞれ調節。
ネガは低い濃度で飽和することなくかなり高い濃度まで達し、コントラストは高めになる。一方現像速度はかなり速く、現像時間2分〜2分30秒で調子の良いネガになっている。フィルムの現像時間が8〜10分であることを考えると、印画紙の現像速度はフィルムの4倍ほどになる。
D-76の1:1希釈現像ではコントラストがやや高く、また現像時間の管理を考えると現像速度はもう少し遅いほうが好ましい。そこで希釈倍率を4倍(1:3)に増やして再度同じ検討を行った。
結果を写真3−2に示す。
写真3−2 D-76,4倍(1:3)希釈液を使った現像における現像時間とネガ及びプリント。
コンタクト時の光量はそれぞれ調節。
予想通りネガの濃度はやや下がり軟調になっている。また現像時間も約5分が適正で1:1希釈の約2倍になる。ネガの濃度や調子を適正と判断する基準は好みによっても違うであろうが、個人的にはかなり良いネガになっていると感じる。また現像時間もこのくらい(5分)が管理しやすいのではないだろうか。
印画紙であってもフィルム用現像液でそこそこ良いネガを作れることがわかった。印画紙用にしろフィルム用にしろ現像液はいろいろあり、どれを選択しどんな条件(希釈倍率、温度など)で使うかはその人次第である。
針穴写真は知識と経験、研究が物を言う、凝り性の人には最適な趣味と言えるだろう。
印画紙用現像液とフィルム用現像液・
D-76(1:1希釈)による現像・
D-76,4倍(1:3)希釈現像