針穴写真8/ステレオ写真13
ステレオピンホールカメラ(印画紙)
基本と印画紙カメラ
印画紙を使うカメラと撮影例・
より広角なカメラ
ステレオ写真をピンホールカメラで撮るのは簡単である。ピンホールを二つにして二つの像が横に並ぶようにすればよい。他に必要なことは二つのピンホールの像が重ならないようにすることであろうが、これにはピンホールとフィルムの間にマスクを置いて光線を規制すれば良い。図13−1にこの様子を示した。

図13−1 二つのピンホールとフィルムの間にマスクを置いて像の重複を避ける
もちろん暗箱を二つに仕切るように遮光板を入れる方法もあるが、これまで紹介したカメラと基本的に同じ構造を採用するのであれば、このような遮光板はフィルムの出し入れの邪魔になる可能性がある。
図13−1の方法で二つの像が重ならないようにするためには、マスクはピンホール−フィルム間のピンホール寄りの位置に置かなければならない。これを図13−2の平面図で説明する。

図13−2 ピンホール−マスク−フィルムの位置関係
ここでは像の全幅をWとし、ピンホールはW/2の間隔で並べるものとする。図でAp<M/2ならマスク開口部の幅ApW/2MはW/4より小さくなり、開口部間の遮光幅W/2−ApW/2MはW/4より大きくなる。この結果フィルム面での陰がW/2より大きくなるため、一方のピンホールによる像はもう一方のピンホールの陰に入るわけである。
なお図13−1からわかるように、このカメラのフィルム上には左右の倒立像が鏡像になって形成されるため、これからコンタクトでポジを作り、さらに180度回転して正立像にして見たときには右目像が左、左目像が右に並ぶ交差法の配置になる。
ステレオベースを目の間隔6.5cmに近くするならフィルム幅は13cmほどになり、120のフィルムか印画紙が候補になる。ここでは9cm×13cmの印画紙を使うこととしてカメラを制作した。
写真13−1 制作したカメラ(左)とマスクを引き出した様子(右)
これは針穴写真5の《5.無理のない広角写真》で紹介したものと同一のカメラで、ピンホールを交換することで通常の一コマ写真とステレオ写真の撮影を切り替えられるようにしてある。さらにステレオ写真を撮影する際には、先に説明した遮光マスクを写真13−1(右)のようにピンホールとフィルムの間に挿入する。
印画紙の幅は13cmであるが、両端5mmはフィルムをホールドするために使えず有効な像幅は12cmになる。これからステレオベース(ピンホールの間隔)は6cmとしてある。
さらに投影距離は80mmで、画角は135フルサイズに換算して34mmレンズに相当する程になる。
このカメラによるステレオ写真の撮影例を二つ以下に掲げる。

写真13−2 撮影例1 露出10分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2, ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト

写真13−3 撮影例2 露出10分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2, ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト
これらをトリミングして平行法の配置に並べ替えると以下のようになる。
写真13−4 撮影例1をトリミングして平行法の配置に並べた
写真13−5 撮影例2をトリミングして平行法の配置に並べた
いずれも程良い視差で見やすいステレオ写真になっている。カメラを作る手間はかかるが材料費は安いので、金をかけずにステレオ写真を楽しみたい人にはお勧めである。
針穴写真2で紹介した四つのピンホールを持つカメラもピンホール部を交換できる設計になっている。これにステレオ写真用のピンホール部を付ければ、投影距離が47mm程と短いのでかなりの広角写真が撮れるはずである。ステレオ写真用ピンホールを取り付けたカメラを写真13−6に示す。

写真13−6 投影距離47mmの広角ステレオピンホールカメラ ピンホールの間隔(ステレオベース)は80mm
カビネサイズの印画紙を使用する
カビネサイズの印画紙を使用すると、左右それぞれの画面サイズは対角線で135mmほどになり、135フルサイズ換算で15mmのレンズに相当する画角になる。
このカメラの撮影例を写真13−7に示し、比較のために同じ位置から写真13−1のカメラで撮ったものを写真13−8に掲げた。

写真13−7 写真13−6の広角カメラで撮影 露出5分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2
ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト

写真13−8 写真13−1のカメラで撮影した比較例 露出10分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2
ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト
これらを比較すれば写真13−6のカメラがいかに画角の大きいものであるかがわかる。これらをトリミングして平行法の配置に並べ替えたものを写真13−9と写真13−10に掲げた。
写真13−9 写真13−7をトリミングして平行法の配置に並べた
写真13−10 写真13−8をトリミングして平行法の配置に並べた
これらの写真は被写体までの距離が長く残念ながら立体感が希薄である。とりわけ画角の大きい写真13−9では、ステレオベースが20mm大きいにも関わらず写真13−10より奥行き感を感じにくくなっているが、これは画面サイズに比べて視差が小さくなるためと思われる。
「適正撮影距離はステレオベースの30倍」というルールは写真の画角によっては柔軟に解釈すべきで、広角になるほど撮影距離はより短くすることが好ましいと考えるべきかもしれない。例えば松原氏のサイトでは「ステレオベースは、被写体までの距離の1/50がよい」とされており、撮影距離とステレオベースの好ましい関係については人によって主張が若干異なっている。これは視差や奥行き感を左右するのがステレオベースのみではなく、画角などの他のファクターも影響しているためと思われる。
写真13−11は写真13−6のカメラを使った他の撮影例である。中央の滑り台までの距離は2m弱で、ステレオベースの30倍におおよそ等しい距離になっている。

写真13−11 広角カメラの撮影例 露出5分, ネガ・ポジともにゲッコーVR2
ネガ現像:D-76 (1:3希釈), ポジ現像:セレクトールソフト
これをトリミングして平行法の配置に並べ替えたものが写真13−12である。
写真13−12 写真13−7をトリミングして平行法の配置に並べた
奥行き感の判断は人によっても異なるであろうが、個人的な意見を言わせてもらえばこの写真の奥行き感はやや薄く感じる。考えてみればプリズムフィルターを使ったステレオ写真のように画角の小さいものは、撮影距離が長目でも奥行き感の不足をあまり感じないこともあった。
やはり画角が大きくなるほど、より接近して撮影する方が好ましいように感じるのであるが、いかがであろうか。
ステレオピンホールカメラの構成・
印画紙を使うカメラと撮影例・
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