ステレオ写真19
アナグリフカメラ4(望遠レンズ)
口径の大きな望遠レンズでステレオベースを拡大
接写リングを加えて画角を小さく・
縦長の構図にする・
ステレオベースを減少
前回は標準レンズ(50mm)をアナグリフレンズに改造したが、今回は135mmの望遠レンズをベースにしてアナグリフレンズを作る。一般的に焦点距離が長い望遠レンズは口径が大きく、ステレオベースを大きくとれるのに加え、画角が狭まるので適正な撮影距離が伸び、1〜2mほどの距離で奥行き感の不足しないステレオ写真を撮れる可能性がある。標準レンズに比べて撮影距離を倍増できることは大きい。
改造に使ったレンズはCANON FD135mm F3.5 S.C.(写真19−1左)で、絞り羽根が動かないジャンクレンズをオークションで入手した。この手の不具合は絞り羽根が油で貼り付いて起こることが多く、その場合は絞りユニットを外して洗えば修理することができる。実際絞りユニットを外してみると案の定油だらけで、アルコールで油を拭き取り元に戻して不具合は解消した。ただアナグリフレンズは常に開放で使うので、たとえ絞りが動かなくとも開きっぱなしであれば問題なく使える。
写真19−1 CANON FD135mm F3.5(左)とアナグリフフィルター(右)
このレンズに写真19−1右のアナグリフフィルターを組み込むのであるが、これはボール紙とミューズボード(1mm)を図19−1に示した形状にカットし、ボール紙に赤とシアンのフィルムを貼ってから図19−2のように張り合わせて製作する。標準レンズでは穴の間隔が10mmであったが、これを1.5倍の15mmにしてステレオベースの拡大をねらう。写真19−1右ではさらに小さな紙片を貼り付けピンセットで掴めるようにした。

図19−1 カットする形状 ボール紙(左)とミューズボード(右)

図19−2 カットしたパーツでアナグリフフィルターを作る
このレンズの銘板はねじ込み式になっているので、これを写真19−2左に示したゴム製のオープナーを使って外す。実際には二番目に大きなゴムを同図右のように銘板に押し当て、反時計回りに回して外す。(オープナーはジャパンホビーツールで購入した)
写真19−2 ゴム製の吸盤オープナー(左)でレンズの銘板を外す(右)
銘板を外すとネジの頭が三つ見える(写真19−3)が、ドライバーでこのネジを外すとフィルター枠を取り外すことができ、さらに前玉まで外すことができる。

写真19−3 銘板を外すとネジが3本見えるのでこれも外す
こうして写真19−4の状態まで分解する。

写真19−4 分解した様子 数字は外す順番
前玉を外したレンズの中を見ると、写真19−5左のように三本のネジで固定された絞りユニットが見える。この状態でレンズをカメラのボディに取り付け、小さく切った両面テープを使って絞りユニットの枠にアナグリフフィルターを貼り付ける。この時赤が向かって右に、シアンが左に並ぶようにする(写真19−5右)。
写真19−5 絞りユニットが見える(左) 角度を合わせるためレンズをボディに付けた状態でアナグリフフィルターを貼り付ける(右)
あとは取り外したパーツを元に戻せば良い。正面から見ると写真19−6左のように二色のフィルターが見えるが、前玉で拡大されるのでステレオベースは20mmほどになる。
写真19−6 正面から見ると横に並んだフィルターが見える(左)が他の角度から見ると普通と変わらない(右)
ステレオベースの30〜50倍が適正撮影距離とすれば60cm〜1mになるが、望遠レンズでは画角が狭いのもう少し長目でも悪くないと思われる。1〜2mにある被写体を写すつもりで撮影してみた。撮影例を二つ掲げる。

写真19−7 撮影例1(AV-1, ISO400)

写真19−8 撮影例2(AV-1, ISO400)
くどいようであるが絞り位置は常に開放で撮影しなければならない。撮影例はいずれもシャープに写っていて、アナグリフフィルター(赤とシアンのフィルム)がベースにしたレンズの解像度をほとんど損ねていないことがわかる。カラフルな被写体よりは色彩の乏しいものの方がアナグリフにしたときには見やすいようである。
これらの撮影例はいずれも左端がシアンに、右端が赤に色付いているが、これは二色のフィルター間を大きく(15mm)とりすぎたため、各々の色が反対の端にケラレを生じてしまったためと考えられる。フィルター(穴)の間隔を狭めれば改善するであろうが、それではステレオベースが小さくなってしまう。まずはアナグリフフィルターを変えずにできる対策から試してみた。
レンズとボディの間に接写リングを挟めば、レンズからフィルムまでの距離が伸びて画角が狭まる。画角が減少すれば当然ケラレも少なくなるはずである。写真19−9左に示した12mmの接写リングを加えて撮影してみた。
写真19−9 接写リング12mm(左)とこれを加えたアナグリフカメラ
撮影例を写真19−10,11に掲げる。四隅に僅かに色付きがあるが先程のような広範囲の着色はなく、大幅に改善されている。また残った色付きは右がシアンで左が赤になっており、写真19−7,8とは逆であるので、先程とは違った場所で生じたケラレが原因であることがわかる。

写真19−10 接写リングを加えた撮影例1(AV-1, ISO400)

写真19−11 接写リングを加えた撮影例2(AV-1, ISO400)
着色は改善したものの、接写リングによって撮影距離が短くなったため、ステレオベースを大きくして撮影距離を伸ばすという当初の目的とは矛盾してしまった。ただこれらを前回の撮影例(写真18−7)と比べると視差が大きく、奥行き感も増加しているのでステレオベースを増やした効果は上がっていると言えるだろう。
写真を縦長の構図にすれば水平方向の画角が狭まり、両端の着色の強い部分をカットできる。そこでレンズに入れるアナグリフフィルターを90度回転させ、写真19−12左のように上にシアン、下に赤が並ぶようにし、同右のようにカメラを立てて撮影することとした。なおこの形は左目利き用であるので、右目利きの人は反対に上が赤、下がシアンになるようにアナグリフフィルターを取り付けると良い。
写真19−12 アナグリフフィルターを90度回転させて取り付け(左)カメラを立てて撮影する(右)
撮影例を以下に掲げる。色付きはだいぶ少なくなっているが撮影例1と2ではまだ少し気になる。これに対して撮影例3と4ではさらに目立ちにくくなっており、被写体の色合いによっても色付きの印象がかなり違うことがわかる。
写真19−13 縦長の構図で撮影した例(ISO400)
最後にアナグリフフィルターの間隔を減らしてみた。穴の間隔を15mm→12mmに、径を5mm→4mmに変更して作ったアナグリフフィルターを写真19−14に示す。

写真19−14 5mmφ−15mm間隔のアナグリフフィルター(左)と4mmφ−12mm間隔のアナグリフフィルター(右)
これをレンズの絞りユニットに付け(写真19−15左)、正面から見れば先程よりステレオベースが小さくなっているのがわかる(同右)。
写真19−15 絞りユニットの枠にアナグリフフィルターを取り付け(左)前玉を付けてチェック(右)
この撮影例を以下に掲げる。ステレオベースが小さくなった分、より被写体に近づいて撮影するように心がけた。
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| 撮影例1 |
撮影例2 |
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| 撮影例3 |
撮影例4 |
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| 撮影例5 |
撮影例6 |
写真18−16 穴間隔12mmのフィルターでの撮影例(AL-1, ISO400)
撮影倍率の小さい撮影例1と2では若干両端が色付いているが、倍率の大きい撮影例3以降はかなり良くなり、撮影例5と6ではほとんど判らなくなっている。奥行き感は構図によっても変わってくるので、ステレオベースの減少はテクニックでカバーするということだろうか。
今回はF3.5のレンズを使用したが、F2.8ならもう少しステレオベースを拡大できる。手頃なジャンクレンズをお持ちであれば、一度試してみたらいかがかと思う。
望遠レンズを使う・
接写リングを加えて画角を小さく・
縦長の構図にする・
ステレオベースを減少