コンパクトカメラをつなぐ
zoom90のリモート端子・ 撮影治具の製作・ 撮影・ うまくいかないときは1.リモート端子を備えたコンパクトカメラ
一眼レフは画質の点で有利であるが二台並べるとさすがに嵩張るし、SFXのように古い機種では結構な重さになる。扱い易さの点からはコンパクトカメラを使いたいが、リモート端子を備えているものは思いの他数が少ない。PENTAXのzoom90はその一つである。
写真28−1 PENTAX zoom90二台でステレオカメラに使う
なおzoom90という名を持つカメラは幾つかのメーカーから出ているので間違わぬよう注意されたい。またPENTAXにはzoom90WRと称するカメラもあるが、これは全く別のカメラでリモート端子は備えていない。
2.zoom90のリモート端子
このカメラのリモート端子は左側面にあるが、写真28−2を見ればわかるようにコネクターの形状はSFXと同じである。
写真28−2 カメラの左側面(左)にリモート端子がある(右)
SFXなどと同様にケーブルスイッチFを接続する(図28−1)カメラであるから、二台を直結して使うことも出来そうに思われる。
図28−1 リモート端子にはケーブルスイッチFを接続する
ところが問題はそう単純でもない。リモート端子同士を接続しただけで端子電圧が低下するので調べてみると、未接続の状態でリモート端子にかかっている電圧は直流ではなく、図28−2に示すように周期的な矩形パルスになっている。
図28−2 リモート端子の電圧波形
矩形パルスといっても high の時間が low に比べ圧倒的に長く、平均電圧はほとんど high の値に等しい。ところが図28−3のようにリモート端子同士をつなぐと図28−4に示したように周期の短い発信波形に変わり、平均電圧が低下する。
図28−3 二台のリモート端子を直接つなぐ
図28−4 リモート端子同士をつなぐと周期の短い矩形波に変化する
SFXや他の一眼レフのように直流電圧であればわかりやすいが、矩形波となるとタイミングが絡むので面倒だ。同じケーブルスイッチを使うものでも、電気的には異なるケースが実際にあることがわかる。ただカメラの動作に関する限り接続するだけで勝手にレリーズが動作するようなことはないので、これまでと同じ方法でも大きな問題はないように見える。
電気的な動作がわからぬまま使うのは少々危うい感はあるが、試してみた限りではこれまでの例と同様に、リモート端子を単純につなぐだけで二台のシャッターを連動させることが出来そうである。他に不都合な点はないか調べてみると以下のような問題点が見つかった。
A.はSFXと同じで、この方法にはつきものと言える。一方B.の原因は、ズーミングモーターの始動時に大きな電流が流れて電源電圧が下がるのが原因と思われる。いずれも操作する際、一時的に接続を切れば避けることが出来るが、いちいちプラグを抜くのは面倒であるから、図28−5に示すように接続ケーブルにスイッチを付けて接続を切断できるようにした。
- 一方のカメラがOFF、他方がONの状態では、ONの側のレリーズが押された状態になり、勝手にシャッターが切られてしまう
- 一方のカメラでズーム操作をすると、つながれたカメラのシャッターが切られてしまうことがある
図28−5 スイッチ付きのコードでつなぎ、必要に応じて接続を切れるようにする
3.撮影治具の製作
製作した治具の組み立て図を図28−6に掲げる。縦長フォーマット用で、レンズが水平に並ぶように取り付け穴の位置をzoom90に合わせてある。
図28−6 MDFと角材を使って治具を組み立てる SW穴の大きさは使用するスイッチ(SW)に合わせる
2.5φステレオミニプラグ付きのコード二本と、2回路2接点のトグルスイッチで接続ケーブルを作る。組み立てた形を図28−6に示すが、カメラとの接続には前報のアダプターを使用する。
図28−7 組み立てた撮影治具
製作した治具を写真28−3に示した。中央に開いている穴は設計ミスで開けたもので実際には必要ないものである。
写真28−3 製作した撮影治具
さらに前後から見た様子を写真28−4に示す。トグルスイッチにコードが半田付けされているのがわかる(写真28−4上)。
写真28−4 前から見た治具(上)と後ろから見た治具(下)
製作した治具に取り付けネジで二台のカメラを固定し、アダプターを使ってリモート端子をつないだ様子を正面から見たものを写真28−5に示した。この状態でステレオベースは86mmほどになる。
写真28−5 治具に二台のカメラを取り付けた様子(正面から見る)
さらに後から見たものも写真28−6に示した。電源のON-OFF時やズーム操作時にはスイッチを切って接続を断ち、操作が終わったら接続状態に戻して撮影する。
写真28−6 治具に二台のカメラを取り付けた様子(後から見る)
4.撮影
シャッターを押す前にスイッチがON(接続状態)になっていることを確認する癖を付けないと、接続スイッチをOFFにしたままシャッターを切り、撮り損ねてしまうことがよくある。耳を澄まして二台分のシャッター音がしたかを確認しながら撮影するとよい。
このカメラはズーム位置が液晶に表示されるので、これを使って二台の焦点距離を合わせることができる。ただ目盛りはかなり粗いので、どれ程の精度で合わせられるかははなはだ疑問ではある。ここでは中間の50mmを含め、三種類のズーム位置(38 , 50 , 90 mm)で撮影したものを写真28−7に示した。全てトリミングは済ませてある。
写真28−7 ズーム位置38 , 50 , 90 mmでの撮影例(AF , プログラムAE , ISO100, トリミング済み)
38 mm ( L , R ) , 50 mm ( L , R ) , 90 mm ( L , R )
これを見ると50 mmでも左右の倍率は良く合っている。たまたま運が良かっただけということもあるので確実なことは言えないが、中間のズーム位置でも使える可能性はある。コンパクトカメラでもこのクラスの物は画質も良く、個人的には十分満足できる写真が撮れている。
5.うまくいかないときは
さしあたり問題なく動作するとは言え、リモート端子が図28−4のように発振状態にあるのは気持ちが悪い。また同じ機種でも製品にはばらつきがあるので、組み合わせによってはうまく動作しないケースがあるかもしれない。念のため対策を考えてみたが、図28−8に示すようにダイオードを通して接続すると効果があるようである。
図28−8 ダイオード二本(D×2)を通して端子間をつなぐ
このようにするとカメラの制御は一方通行になり、(A)のレリーズに(B)が連動するのに対し、(B)のレリーズに(A)は連動しなくなる。さらに端子電圧を調べると(A)は図28−2と変わらず、(B)は図28−9のようになっている。
図28−9 (B)の端子電圧
リモート端子を直結した状態では、一方の負パルスが他方の負パルスを誘発し、これを双方向に繰り返して図28−4のように発振するものと思われる。これに対しダイオードを加えた状態では、(A)の負パルスが(B)の負パルスを誘導しても、(B)の負パルスが(A)に影響することはないため繰り返しが起こらず、発振に至らないと考えられる。
図28−9の波形であれば元の波形(図28−2)と大して違わないし、平均電圧もほとんど変わらない。図28−4の発振状態よりはずっと良さそうである。レリーズの連動性が一方向になることは特に不都合ではないから、図28−10のような接続ケーブルでつなげばより安定な動作が期待できる。
図28−10 ダイオード二本(D×2)を加えた接続ケーブル
なおダイオード:Dは小信号用のシリコンダイオードを使えば十分で、特にショットキ・バリアである必要は無いだろう。