ステレオ写真7
プリズムフィルターを使った接写A(応用編4)
接写リング(エクステンションチューブ)
奥行き感とオーバーラップの改善・
135mm単焦点レンズを使う
一眼レフではマクロ機能が無いレンズでも接写リングを使えば接写が可能になる。ここでは接写リングを使った撮影例を示すこととする。

写真7−1 接写リング(エクステンションチューブ)
写真7−1はキヤノンのFDマウント用の接写リングで、これをレンズとボディの間に入れることでレンズ−フィルム間の距離を伸ばし、撮影距離を縮めるわけである。用途によって必要な長さが異なるため、長さの違う物がセットになっていることが多い。写真の接写リングはレンズとボディの間で絞りの動きや絞りリングの位置を伝える機能を有しており、開放測光やオート機能をそのまま使うことができる。

写真7−2 Tokina SD 70-210mm とCANON AV-1
撮影に使用したレンズはTokina SD 70-210mmである。ピントリングにMACROの文字が記されてはいるが、最短撮影距離は1.3mでそのままこの用途に使うには不十分である。一方ボディにはAV-1を使用した。このカメラは絞り優先AEであるため、絞りを決めて撮影したいステレオ写真の接写にはぴったりである。

写真7−3 2セクション、レンズ、接写リングを取り付けたAV-1
まず2セクションを使った撮影から説明する。2セクションはステップアップリング(52mm→55mm)を使って取り付ける。20mmの接写リングを使用する(写真7−3)と撮影距離は30cm前後になり、ズーム位置が70mmに近いところでうまくフレームに収まる写真となった。撮影例を写真7−4に示す。

写真7−4 20mmの接写リングと2セクションを使って撮影した写真(F32, ISO800)
写真7−5はトリミングした左右像である。F32まで絞り込んで撮っているためオーバーラップが少なく、カットする部分も僅かで済んでいる。
写真7−5 トリミングして並べた二枚の写真(平行法の配置)
前回までの例は撮影距離が50cm以上のものばかりであったが、接写リングを使って30cm程まで接近する場合には、適正なズーム位置が70mm近くと短くなるようである。
バリミラージュ(1/2)を使用する撮影では、原理編に記した通りレンズの焦点距離が倍ほどに長くなる。このように焦点距離の長いレンズを使ったテレマクロでは、使用する接写リングも長いものでなければ十分な効果が得られない。ここでは写真7−6のように20mmと36mmの接写リングをつなげて56mmとしてカメラを組み上げた。なおバリミラージュ(1/2)にはフィルター径55mmのバリミラージュの下側を使い、ステップアップリング(52mm→55mm)を使ってレンズに取り付けた。

写真7−6 バリミラージュ(1/2)と接写リング(20mm+36mm)を使ったカメラ
これで撮影したものを写真7−7に示す。撮影距離は50cm前後で、ズーム位置は150mmほどである。撮影倍率はかなり大きくなり、2セクションとは明らかに違った写真が撮れることが分かる。

写真7−7 バリミラージュ(1/2)を使って撮影した写真(F32, ISO800)
トリミングしたものが写真7−8であるが、先程と同じ絞り値F32でもオーバーラップが大きくカットしなければならない部分が大きい。
写真7−8 トリミングして並べた二枚の写真(平行法の配置)。
また実際に写真7−8を立体視してみると奥行き感が薄く、いまいち不満の残る写真になっている。これについてはさらに検討する必要がありそうである。
まずバリミラージュ(1/2)を使って撮影したときオーバーラップが大きく、奥行き感が不足する理由を考えてみる。
バリミラージュ(1/2)を使うときにはレンズ−フィルム間の距離が2セクションの場合に比べ倍近く長くなる。この様子を図7−1に示したが、ここでf1は2セクション、f2はバリミラージュ(1/2)の場合を示している。

図7−1 オーバーラップが大きくなる理由(左)とステレオベースが小さい理由(右)
まずオーバーラップが大きくなる理由を図7−1(左)を使って説明する。プリズムフィルターの位置での画面幅はそれぞれw1=wD/f1、w2=wD/f2となり、w2はw1の半分ほどになるが、全画面幅に対するオーバーラップの割合はそれぞれp'/w1、p'/w2であるから、もし瞳径p'が変わらなければバリミラージュ(1/2)使用時のオーバーラップは2セクションの時のほぼ倍になる。実際には同じF値の瞳径は焦点距離に比例するためこちらも倍程になり、結果的にオーバーラップは4倍近くになると考えられる。
また奥行き感の不足はステレオベースが小さいことに他ならない。2セクションとバリミラージュ(1/2)使用時のステレオベースは、図7−1(右)からそれぞれおおよそs1=wD/2f1、s2=wD/2f2となり、f2がf1の倍であればs2はs1の半分になる。実際に測定してみるとs2は11mmほどで、撮影距離が50cmでは奥行き感が不足するのは当然と言うことになる。
これらの問題を改善する一つの方法として、レンズとプリズムフィルターの距離Dを増すことが考えられる。ここでは応用編1でzenitに使用した治具(図4−2、写真4−9を参照)をレンズとプリズムフィルター間に入れて使ってみる。実際に治具を加えたカメラを写真7−9に示した。
治具によってDは約50mm大きくなるが、これによってw2は約10mm、ステレオベースs2は約5mm大きくなることが期待できる。

写真7−9 治具(左)とこれを加えて組み立てたカメラ(右)
実際に治具を使用しない写真7−10と使用した写真7−11を比較してみよう。まずオーバーラップについては治具を使った写真7−11が確かに少なく、改善の効果が見られる。これはそれぞれをトリミングした写真7−12と写真7−13を比較しても明らかである。また写真7−12と写真7−13を立体視してみると、奥行き感についても改善されていることが分かる。

写真7−10 治具を使わない写真(F32, ISO800)

写真7−11 治具を使った写真(F32, ISO800)
写真7−12 写真7−10をトリミングして並べた二枚の写真(平行法の配置)。
写真7−13 写真7−11をトリミングして並べた二枚の写真(平行法の配置)。
なお治具を使用すると適正なズーム位置も変化する。治具を使用しない写真7−10ではズーム位置は150mmの辺りであったが、使用した写真7−11では130mほどと短くなっている。
135mmの単焦点レンズはポートレート用望遠レンズの定番であるから、所有されている方も多いと思われる。上記の検討結果によればこのレンズもバリミラージュ(1/2)を使ったテレマクロに使える可能性がある。
ここではCOSINA 135mm F2.8(FDマウント)を20mmと36mmの接写リングをつないでボディ(FTb)に取り付け、さらにバリミラージュ(1/2)をステップアップリング(52mm→55mm)を介してレンズに取り付けて撮影してみた。
写真7−14 COSINA 135mm F2.8(左)とバリミラージュ(1/2)、接写リング(20mm+36mm)をFTbに取り付けた様子(右)
なお先程と同様にオーバーラップと奥行き感(ステレオベース)の問題を生じる可能性があるため、写真7−15のように治具を加えてバリミラージュ(1/2)を取り付け、同じ被写体を撮影して比較することとした。

写真7−15 写真7−14のものに治具を加えて組み立てたカメラ
治具を使用しない写真7−14(右)の構成で撮影したものを写真7−16に、治具を使用した写真7−15の構成で撮影したものを写真7−17に示した。さらにこれらをトリミングして作ったステレオ写真を写真7−18と写真7−19に示す。

写真7−16 バリミラージュ(1/2)+135mm単焦点レンズ+接写リング(20mm+36mm)で撮影した写真(ISO400)

写真7−17 さらに治具を加えて撮影した写真(ISO400)
写真7−18 写真7−16をトリミングして並べた二枚の写真(平行法の配置)
写真7−19 写真7−17をトリミングして並べた二枚の写真(平行法の配置)
これらの写真を見ると135mmレンズでもバリミラージュ(1/2)を使ったテレマクロが十分可能であることが分かる。治具を使った写真ではオーバーラップが減少しているが、左右像が中央に寄ったためにトリミングによるロスはかえって大きくなってしまった。単焦点レンズではズームレンズのように焦点距離を変えて像位置を調節できないのでし方ないところである。また写真7−18では若干奥行き感の不足を感じるが、このあたりは好みにもよるところだろう。
テレマクロは高倍率でいかにもマクロらしい魅力があるが、一方で手ぶれの危険が増して手撮りは難しくなる。高感度フィルムを使ってもよほど明るくないとスローシャッターになってしまうため、積極的にフラッシュを使用することをお勧めしたい。
接写リングを使った撮影・
奥行き感とオーバーラップの改善・
135mm単焦点レンズを使う