市販のイメージスキャナを改造
原理・ 実験・ 考察
1.はじめに
クローズアップレンズを使って表示面付近、あるいは表示面より前に飛び出る立体像を撮影する方法を第8報で紹介したが、ここではこれを立体イメージスキャナに応用する検討を行った。
基本的には第5報の立体イメージスキャナに対物レンズとリレーレンズを加えるもので、市販のイメージスキャナをベースにして装置を組み立てた。試作機ではそれぞれのレンズを所定の距離をおいて設置するため、ここにミラーを入れて光軸を曲げ、被写体を直立したままイメージを取り込めるようにした。
2.原理
第8報の光学系をイメージスキャナ用に変更したものを図14−1に示す。本装置では対物レンズと固定リレーレンズまでを固定とし、シリンドリカル凹レンズアレイからラインイメージセンサまでを走査して画像を読みとる。
図14−1 クローズアップ光学系を加えた立体イメージスキャナ(斜視図)
さらに平面図を図14−2に示す。対物レンズと二枚のリレーレンズが被写体の像を撮影面(シリンドリカル凹レンズアレイの位置)付近まで移動させるもので、これらを除く部分が第5報で説明した立体イメージスキャナの機能を果たす。第5報ではレンズシートを使用したが、レンチキュラーの場合にはシリンドリカル凹レンズアレイに変えてイメージセンサと一緒に走査させても同じことである。
図14−2 クローズアップ光学系を加えた立体イメージスキャナ(平面図)
被写体の像は対物レンズによってシリンドリカル凹レンズアレイの位置に投影され、固定リレーレンズと移動リレーレンズによって効率よく光が伝えられる。なおシリンドリカル凹レンズアレイと移動リレーレンズの位置関係は逆転してもかまわない。
3.実験
市販のフラットベッドイメージスキャナのメカを利用して図14−1,図14−2に相当する立体イメージスキャナを組み立て、立体像の読み取りからレンチキュラー立体写真に相当する立体イメージの作成までを行った。
3−1.装置の製作
試作した立体イメージスキャナの斜視図を図14−3に、側面から見た平面図を図14−4に示した。ベースに使用したイメージスキャナはエプソンのGT-7600である。
図14−3 試作した立体イメージスキャナ(斜視図)
図14−4 試作した立体イメージスキャナ(側面から見た平面図)
対物レンズ、固定リレーレンズ、移動リレーレンズにはそれぞれf=150mm,270mm,270mmのフレネルレンズを使い、シリンドリカル凹レンズアレイは20 lpiのレンチキュラーレンズを型にして透明シリコン樹脂で作成した(写真14−1)。さらにミラーを加えて光軸を90度曲げ、センサーヘッドを水平に走査しつつ直立した被写体の立体イメージを読みとることを可能にした。
写真14−1 透明シリコン樹脂で作成したシリンドリカル凹レンズアレイ(20 lpi)
実際の装置内部を写真14−2に示す。元々の原稿台や原稿押さえは全て取り除き、対物レンズ(f=150mm)、固定リレーレンズ(f=270mm)とミラーを備えた自作カバーをかぶせる。
写真14−2 試作装置の内部
センサーヘッドの部分を拡大したものを写真14−3に示す。読み取り窓の上に写真14−1のシリンドリカル凹レンズアレイをかぶせ、その上に細く切った移動リレーレンズ(f=270mm)が載せられている。
写真14−3 イメージセンサーヘッド周辺
センサーヘッド上のマイクロスイッチは、ヘッドが動き出したとき照明ランプを消すために設置したものである。スキャナのコントロールソフトまで自作すれば良いのだが、そこまでは出来ないので、標準のドライバーで使えるように機械をうまく騙す工夫をしなければならない。
試作した立体イメージスキャナの外観を写真14−4に掲げた。
写真14−4 試作装置の外観 天井の蓋を開けた様子(左)と蓋をした状態(右)
対物レンズと固定リレーレンズの距離は30cmで、対物レンズから30cmの距離にある被写体が表示面に存在するように撮される。
3−2.立体イメージの読み取り
実際に解像度600dpiで取り込んだ立体イメージの例を写真14−5に掲げた。
写真14−5 試作装置で取り込んだ立体イメージ
読み取りイメージには縦縞状のノイズが多いが、これはリレーレンズのフレネル縞の影響と考えられる。フレネルのピッチを細かくしたり、装置の構造や制御法を工夫することで改善は出来ると思われるが、移動リレーレンズの方はレーザープリンターに使われる(テレセントリック)fθレンズのような細長い凸レンズ(fθレンズそのものでは歪みを生じて好ましくない)にして、フレネルレンズの使用を避けた方が良いかもしれない。
取り込んだ立体イメージは約2/3に縮小印刷し、30 lpiのレンチキュラーレンズを重ねて立体像とした。使用したプリンターはCANON PIXUS 900PDで、ピッチを合わせるように倍率を調整したところ905 dpiで良い結果が得られた。これを写真14−6に掲げる。
写真14−6 読み取りイメージを約2/3に縮小印刷し、30 lpiのレンチキュラーレンズを重ねた
さらに立体感を示すために、視点を右から左に移動しながら立体像を撮影したものをアニメーションにしたものを写真14−8に掲げた。中央付近の白い花の像は、表示面よりやや手前に存在している。
写真14−7 視点を右から左に移動しながら立体像を見た様子
4.考察
市販のイメージスキャナを利用した試作には様々な制限があり、読み取り画像にはノイズが多く画質も十分ではないが、これらは設計の最適化でかなり改善できると思われる。
スキャナのセンサーヘッドは水平に走査する方が、垂直に走査するより機械的に容易であると思われる。ミラーを介したクローズアップ光学系を加えることは、水平走査のままで直立した被写体を読みとれる点でも有利であるし、被写体との作動距離を取れる点でも有利である。
写真14−5の画像データはサイズが大きいので、1/2に縮小してyahoo!フォトに公開した。ダウンロードして905dpi(プリンターによっては若干調整が必要)で印刷すれば3Dフォトフレーム(60 lpi)用の立体写真になるので、一度試して見ていただければ幸いである。
[特許出願済み]