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錦心流薩摩琵琶について

 私たちは薩摩琵琶のなかの錦心流とよばれる流派に所属して、お稽古を重ねています。
 一口に琵琶と言っても、複数の種類や流派があり、楽器のつくりやその音色、また奏でられる歌曲の旋律が大きく異なります。
 ここでは、簡単に琵琶の歴史と流派などについて、ご説明します。
琵琶の歴史と種類
薩摩琵琶と錦心流について
歌曲について


琵琶の歴史と種類


 琵琶はリュート族の弦楽器です。ペルシャ発祥のリュートウードといった楽器がシルクロードを経てインド、中国、そして朝鮮半島から日本へ伝播して現在の琵琶となりました。日本に伝わったのは遅くとも 6〜7 世紀と考えられています。正倉院の螺鈿紫檀五弦琵琶をご存知の方も多いでしょう。
 日本に渡来した琵琶は、分岐の古い順に楽琵琶盲僧琵琶平家琵琶,薩摩琵琶,筑前琵琶の各系統に分かれ、現在に至っています。
 楽琵琶盲僧琵琶平家琵琶の演奏はイメージとしてはお経の音の変化に近く、日本古来の音楽として楽しむことができます。薩摩琵琶はこれら三種の琵琶よりも洋楽に近くなり、12 音階で捉えられる音が多くなるため、広く現代の人々にも受け入れられ、楽しまれています。しかし、五線譜には表すことができない中間の音も随所に見られ、邦楽独自の面白さや難しさを堪能することもできます。
 薩摩琵琶は、音色の美しさや技の巧みさよりも、武士のような堂々とした姿勢、勇ましさ、そして素朴な演奏が特徴で、それが大きな魅力となっています。作曲家の武満徹さんは薩摩琵琶を次のように評しています。

殊に薩摩は、豪壮な気風をたっとびながら粗野を排し、仏教や儒学の影響をこうむって、一撥が弾ずる一音に万物の諸相を聴きだそうとする。さらにまた、薩摩の士風が色濃く反映されて、きわめて精神性の強いものになった。

(朝日新聞社編「日本の形」より)


 最後に、筑前琵琶は薩摩琵琶よりも洋楽に近い演奏をすることができる、一番新しい琵琶です。


薩摩琵琶と錦心流について


 さて、私達が学んでいる薩摩琵琶の各流派についてお話しします。現在、薩摩琵琶は、正派,錦心流,錦琵琶,鶴田流の 4 つの流派に分かれています。私たちの学んでいる流派は錦心流(きんしんりゅう)です。

 上述したように、薩摩琵琶は楽琵琶、盲僧琵琶、平家琵琶と比べ音階がよりはっきりとしておりわかりやすいですが、筑前琵琶ほど洋楽的ではありません。明確な音に加え、日本古来の微妙な音も継承しており、なじみやすさと奥の深さを兼ね備えた面白い演奏ができます。

 薩摩琵琶の中で、正派は一番平家琵琶に近く、精神性を重んじた素朴で力強い演奏をします。撥で弦をはじいた後に必ず絃を手で押さえ、弦の音を消すという特徴があります。
 私たちが習っている錦心流は、正派の次に平家琵琶に近く、素朴で精神性を重んじた演奏をします。情景描写や心理描写も微妙な音色や声音、大胆な撥さばきと腹の底から出す豪快な声を使い分け、緻密さと、勇ましさを兼ね備えた奥の深い流派です。
 錦琵琶鶴田流は平家というよりは筑前琵琶に近いと思われます。豪快さよりも、非常に美しい繊細な音色が印象的です。


歌曲について


 入門後、初を目指すお稽古で習う歌曲は、基本的な節回しや弾法を習得するための技術的に比較的平易なものです。景色の美しさを謳ったものや人間はどうあるべきかといった道徳的な内容のものが多くなっています。
 例えば、「金剛石」を見てみましょう。(青字の部分を試聴できます。)

金剛石 ♪試聴  kongouseki.mp3(274kB,56秒)

金剛石も磨かずば 玉の光は沿わざらん
人も学びて後にこそ 誠の徳は表わるれ

時計の針の絶え間なく 巡るが如く時の間も
日陰惜しみて励みなば 如何なる業か成らざらん
人は器に従いて その様々になりぬなり
人は交わる友により 良きに悪しきにうつるなり
己に優る良き友を 選び求めて諸共に
心の駒に鞭打ちて 学びの道に進めかし

作詞:昭憲皇太后
演奏:中里宴水


 さて、修行を積んで中、奥と進むにつれて、「敦盛」や「本能寺」といった歴史や軍記物を題材として人間の心情を扱う歌曲が多くなり、語りの難しさと面白さを存分に味わうことができるようになります。また、弾法も「崩れ」といわれる軍記物らしい激しいさばきが要求されます。
 長く複雑な弾法を多用して、物語の登場人物の心情を微妙な音色で表現することも求められます。景色の雄大さなどの情景描写も節回しと撥さばきの微妙な加減で表さなければなりません。次の一節はこれらの要素がふんだんに盛り込まれた物語、「羽衣」を題材にした歌曲です。

羽衣 ♪試聴  hagoromo.mp3(292kB,1分)

富士の高根を三保ヶ浦 実に長閑なる春なれや
松原遠く海なぎて 吹くも静けき時津風
浜松風の音に和し 虚空に響く楽の声
妙なる薫り花降りて 及びなき身の眺めにも
心空なる景色かな
是は このあたりに住む白竜と申す漁夫にて候
あれなる松をうち見れば 梢にかかる羅の
色香も妙に常ならず 取りて帰りて人にも見せ
家の宝ともなさばやと存じ候
なう それは天人の羽衣とて 
たやすく人間に与ふべきものにあらず
もとの如くに置き給え
さては天人にてましますかや 然らば衣をとどめ置き
国の宝となすべきなり 衣を返すことあらじ
悲しや 衣なくては飛行の道も絶え 
羽なき鳥の如くにて 上らんとすれば翅なし
地にまたのぞめば下界なり 力及ばずせん方も
涙の露の玉かつら かざしの花もしをしをと
五衰の姿目の前に ふりさけ見れば霞立つ
天路の雁もなつかしや 千鳥鴎の沖津浪
行くか帰るか春風の なれし雲居に通ふらん
あら恋しやとうち歎く
いかに申し候 御姿を見奉れば
あまりに御痛わしう候と 衣を返し与うれば
乙女は衣を着なしつつ 仮にあづまの駿河舞
霓裳羽衣の一曲も ゆたに吹くなる春風に
誘われ顔の舞姫が 霞に匂ふ花の雨 
雪をめぐらす雲の袖
左右さ 左右颯々とたなびきたなびく三保の浦
浮島ヶ原に立つ雲の あしたか山や富士の嶺
いつしか霞へだつれば 波の鼓や松の琴
調べもともに澄み渡る
面白や ここも妙なり天津風 雲の通路吹きとじよ
乙女の姿今しばし この松原にとどまりて
千代萬代の舞衣 なづる巌のためしをば
仰ぐ御世こそ楽しけれ

作詞:飯田胡春
演奏:中里宴水
阿彦汀水




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