「しばらく置いてほしいんだ」
「しばらくってどれくらい?」
「3ヶ月・・・・・・いや半年くらい」
「さよなら」
ローマの休日
言い捨てて席を立ち上がろうとした私にグラスの水をふっかけびっくりした隙に「ごめん手がすべった!」と叫び手をひっつかんで「会計はチェックアウトの時にまとめて」とレジをすり抜けエレベーターに私ごと乗り込んだのは突然4ヶ月ぶりに電話をかけてきてこのシティホテルに呼び出した張本人である。名前→クロロ=ルシルフル、年齢→26歳、職業→盗賊。私は不本意ながらぽたぽた髪からしたたりおちる水滴ごしに彼の後姿を見あげる。
「なんなの」
「俺、盗賊だから」
意味が分からない。
エレベーターがびっくりするくらい上のほうまで昇っていくので耳鳴りがして私はもうそれだけでぐったり疲れてしまう。それとも盗賊ってのは自分の恋人(かもしれない)女を4ヶ月も放ったらかしするものなの? 思い通りにならない相手に水をふっかけて部屋に連れ込む鉄則でもあるのかしら? だいたいホテルの部屋を取ってるなら私のワンルームの小さなアパートなんか要らないでしょうに。
「もうすぐ金がなくなるんだよ」
「知らないわ。普段からちゃんと貯金しておかないのが悪いんでしょ。パクノダを見習ったらどう?」
「パクは几帳面すぎるんだ。俺にはできない」
うちのなんかよりずっとふかふかのベッドに座った私の髪をタオルで挟みながらクロロが哀れっぽく呟く。「にしか頼めないんだ」なんて都合のいい男だろう。この4ヶ月間私がどれだけ心配してきたと思ってるの。今まで長く来なくなることはあったけど2週間おきくらいに電話だけはしてたのにそれさえなくなったときの私の気持ちといったら! この男はそんなこと考えさえしないで好き勝手に世界中飛び回って趣味の悪いお宝を漁りまくっていたんだろう。私は心配のあまり暴食して2kgも太ってしまったというのになんてこと。
私がぶすくれているとクロロがタオルごと髪をかきあげ、あらわになった額に唇を押しつける。「やめて」ひじをつっぱって逃れようとしたけれどクロロの綺麗な腕は軽々と私の動きを封じてしまう。「やめてったら」クロロのしっかりした肩を叩いてみたがダメだった。我慢できずに笑い出した私を抱きすくめてクロロも笑う。「ねえ、頼むよ」息がかかってくすぐったい。首に腕を回すとクロロの私を抱く力が強くなった。「」ああ、嫌になっちゃう。私は降参の印にクロロの口に噛みついた。部屋だって食事だってきっちり用意してやろうじゃないの。クロロの腕はとても心地よいのだ、なんてこと、私はずっと前から知っていた。こうやって私はクロロの手のひらで転がされる。
「なんで私、貴方なんか好きになっちゃったのかしら」
クロロは嬉しそうに耳元で笑った。
「俺がを愛してるから」
(それって運命じゃない?)