I can flyそれは満月の夜。 私の部屋に泊まりに来ていたよっすぃーが窓の外をじっと見るので、つられて見ると。 真っ暗な空に、白く光るお月様。 思わず窓際に寄って見入っていると、よっすぃーも寄って来て。 肩を並べて夜空に見入る。 「空が飛べたらいいのにな」 思わず、零してしまった言葉。 だって、なんだかすごくロマンチックな雰囲気。 よっすぃーの私よりちょっと高い位置にある肩にこてん、と頭を乗せたりして。 そんなロマンチックな言葉を、言ってみたい雰囲気。 するとよっすぃーは 「あたし、飛べるよ」 こともなげにそう答えた。 知らなかった?って。 ふふーって笑って。 私の顔を覗き込む。 イタヅラっぽい笑顔で。 よっすぃーの悪ふざけに、私はふぅーんって言って。 邪魔なよっすぃーの頭をどけて、また月を見上げた。 あ、コイツ信じてないなぁー!? よっすぃーがそう言って私の頭をつっつくので、面倒くさいけど乗ってあげる。 「ま、まさかよっすぃーが鳥だったなんて!!きゃぁーーーー!!」 あーあ。 もう、ロマンチックな雰囲気台無しじゃない。 でも、その反応によっすぃーは満足そうに笑って 「そーだぞ。鳥だったんだぞぉ」 梨華ちゃんを食べるためにやって来た鳥人間なんだぞ。コケッコー!! って。 なおも言い続ける。 手を大きく広げて。 頬に手を当ててわざとらしく悲鳴をあげる私に、覆いかぶさってくる。 「……よっすぃー、コケッコって、鶏は空飛べないよ?」 あ、って。 よっすぃーは手を広げたまま一瞬固まって。 それから、あははって笑いながら、私に抱きついてきた。 「失敗失敗」 全く、おバカさんなんだから。 最近、TVとかで見せる大人なよっすぃーは私をドキリとさせるけど。 私の知らないよっすぃーがいるようで、不安になってしまうけど。 こんなおバカなよっすぃーを私にだけ見せてくれるよっすぃーが、愛しくてたまらない。 「でもね、ホントに飛べるんだよ?」 まだ続けるの〜? よっすぃーの腕に包まれて、呆れてよっすぃーを見上げると。 いきなりよっすぃーが歌い出した。 ♪ きみとでぇーあーぁった きぃーせぇーきがぁー こぉのぉむぅーねぇに あふれてぇるぅ〜 ひとむかし前に流行った歌。 そうそう、ドラマ見てたわぁ…なーんて。 一瞬、思考が飛びかけるけど。 ぶつりと歌を止めたよっすぃーのいきなりのちゅーで、無理矢理に戻される。 「あのね…」 照れくさそうに、頬を赤らめて。 私に抱きつく腕の力を強めて。 よっすぃーがちょっとだけ声をひそめて囁く。 それはなんだか、出会った頃の、ほんの少し大人びてて、でも可愛らしい少女だったひとみちゃんを私に彷彿とさせる。 梨華ちゃんに会えたこと、恋人になれたこと。 そんな奇跡を考えたらさ。 空くらい簡単に飛べちゃうよ? そう言って。 白い肌を首まで真っ赤にして、私の首筋に顔を埋めてぎゅっとしがみつく。 どうしちゃったの? 今日、誕生日でもクリスマスでもなんでもないのに。 出血大サービスじゃない? そんな言葉。 喉まで出掛かって。 だけど、そんなこと言ったら恥ずかしがり屋のよっすぃーをもっと真っ赤にしちゃうだけだから。 ぐっと飲み込んで。 その好意だけを、受け取ることにする。 「嬉しい」 その言葉の素晴らしさだけを、受け取ることにする。 「あのね…」 頬に手を当てて、顔を寄せて。 「私もだよ、ひとみちゃん……」 ちゅっと、キスをする。 一瞬、驚いたように目を丸くして。 だけどすぐに、ふふって。 よっすぃーが嬉しそうに微笑むから。 私も微笑んで。 そんな2人を、満ちたお月様が照らして。 幸せで。 幸せで。 ねえ、よっすぃー。 私もきっと、今なら空も飛べるよ? もう一度。 この幸せと感謝を伝えるために。 私はゆっくりとよっすぃーにキスをした。 君と出会った奇跡がこの胸に溢れてる きっと今は自由に空も飛べるはず 〜Fin