ねっくれすのひみつ 『そーいえばさ、最近、梨華ちゃんしてないよね?』 携帯越しの柴ちゃんの声に、あたしは動揺を隠せなかった。 「し、してないって…なに、なにが〜?」 『ネックレスだよ、お揃いの〜。って、なにどもってんの?』 いけない。柴ちゃんが不審がってる!! 「どもってないもん。時計見たらもうこんな時間だなって。 今日、よっすぃーが出るTVやるから。ちょと焦っただけだもん」 よし、上手く話を逸らしたぞっ。 「じゃ、そゆことで切るね?」 『え、よっすぃーの出るのって8時からのだよね?まだ7時過ぎじゃん』 え、えええええーっとぉ。 「よっすぃ、そう、よっすぃーがね、そろそろ来るの」 コレは嘘じゃない。 多分、もっとずっと遅いと思うけど。 『あー、それじゃ片付けしとかないとねぇ』 「片付いてるよ!!今、ちゃんとキレイになってるよ!?」 失礼な柴ちゃんだなー、もう。 最近のあたしの部屋はキレイなもんなんだから。 だって… 『ホントにー?だってこないだよっすぃーにキレられたんでしょ? もうちょっとちゃんと片付けろって』 いや、キレるって程じゃないんだけどぉ。 まあ、注意を受けた?みたいな。 それからはちゃんと注意して片付けしてるもん。 …できる限り。 『そりゃ、よっすぃーも、来るたびに片付けしてたらキレるって』 だから、キレるって程じゃないんだけどぉ。 ……よっすぃが来るまでに片付けしなきゃ。 「そ、そーゆうコトだから。じゃあ、切るね?」 んー、じゃあ、精々片付け頑張ってー。 そう言って、柴ちゃんは電話を切った。 ふぅ。 危ない危ない。 あれはいつのコトだっただろう。 柴ちゃんとオソロで買ったネックレスをなくしたと気付いたのは…。 *** 「……ない」 始めはあんまり真剣に探さなかった。 だって、ほら。 私の部屋って自分で言うのもなんだけど……その、そう、モノが多い。 だから何かが見当たらないってコトってよくあって。 きっとそのうちに出てくるよーって思ってた。 だけど 「どーしよぉ」 いざ必要になって真剣に探してみたら…全然見つからなくって。 それはもう、箪笥という箪笥、引き出しという引き出し、 バックや洋服のポケットも全部ひっくり返して探しても、見つからなかった。 「だっから、いつもアタシがちゃんと片付けしろってさぁ〜」 そう、あのとき丁度泊まりに来てたよっすぃーはそんな私を笑ってたっけ。 自分はベッドに寝転がっちゃって。 悔しくて反論したかったけど、反論する余地も時間もなくて ぐっと堪えたのを覚えてる。 結局その日、柴ちゃんと一緒の撮影だったのに私はネックレスを 付けて行かなかった。 ネックレスを付けるのをすっかり忘れてた、という言い訳をして。 ちょっと離れたトコにいたよっすぃーが、柴ちゃんに必死に言い訳してる 私を見てニヤニヤしてたのも覚えてる。 あれからまたしばらくの月日が過ぎたけど。 結局あのネックレスはどこからも出ては来なかった。 ホントにどこいっちゃったんだろうなぁ。 *** 「あ、もう8時になっちゃう」 私は片付けの手を休めて、TVに駆け寄る。 電話を切ってから始めた片付けのお陰で、部屋は……まあ、大分マシになった。うん。 きっとこれなら、よっすぃーに怒られないんじゃないかな? よっすぃーはああ見えてマメだから、来て部屋が汚れてると几帳面にすぐに 片付けを始めちゃったりする。 私的にはおっけーかなぁって思ってても、よっすぃーにとってアウトだと怒られちゃう。 前に2人でTVを見てて、片付けが出来ない病気の人の特集をやってて 「私ってこの片付けられない病気なんだよ、きっと!!」 って、本気で言ったら 「いいからフザケてないで片付けでもしろYO」 って頭叩かれたっけ…。 そんなことを考えながらTVの電源を付ける。 流れるCMのいくつかの後、番組は始まった。 きゃ。 よっすぃー、今日もかわいい♪ 勿論、かっこいいんだけどぉ。 なんか最近、女っぽさにも磨きが掛かってきたってカンジじゃない? かっこよくてかわいくてきれいで…。 やだなぁ、梨華困っちゃう〜…。 … … あれ? 今、なんか、見えた気が。 えっえっ? うそうそ、目の錯覚だよねっ? いや、でも…。 ちょっと、カメラさんもっかいよっすぃーをアップにしてよ!! 私はTV画面に噛り付いて見入った。 「違う違うっ小春ちゃんじゃなくって、その右、もっと右っ」 言ったトコロでアングルが変わる訳じゃないけど、思わずTVに向かって 叫んでた。 だってだって、今、有り得ないモノを見た気がするんだもん。 よっすぃーの胸元に。 ……ううん。 そんなコトないよね。 きっと目の錯覚。 あんまり、あのことばっかり考えてたから……ああん、もう、避難訓練なんて くだんないコトやってないで、とにかくよっすぃーをアップで映してよ!! ちょっと、小川と紺野とかにこにこしちゃって明らかに避難とか 思ってないんじゃない!? 美貴ちゃんと田中とかも明らかに疑いの眼差しだし〜。 こーゆーのは嘘でも怯えて見せないとっ。 そこんとこ、高橋は今回GJだわ。 って、ちょっと小春ちゃん、うちのよっすぃーに近づきすぎよっ!!! よっすぃーもなに腰に腕回してんのよっ!!!!!! ……はぁはぁ。 違う違う。 そーじゃなくってぇ。 よっすぃーアップ来い、よっすぃーアップ来いっ。 あっ……。 画面に一瞬、アップで映ったよっすぃーの胸元には。 私をずっと思い悩ませていたネックレスがひっそりと輝いていた。 「う、うそぉっ」 私の悲鳴と同時に。 ♪ぴろりんぴろりーん あまりのタイミングの良さに、私は飛び上がる程驚いた。 だって、その着信音はまごうことなき柴ちゃんの設定音…。 「えええええ、えぇーっとぉ」 お、落ち着け。 とりあえず落ち着け、石川梨華。 私がなくした筈の柴ちゃんとお揃いのネックレスが、今、TVに映るよっすぃーの 首に掛かっててぇ、それがアップになった瞬間、柴ちゃんから電話が掛かって きててぇ……柴ちゃんも、TV見てたってコト? それって、ヤバくない? てゆーか、なに、よっすぃー、私のネックレス勝手に付けてTV出てんの? 私、一時期いろんな番組にアレ付けて出てるんだよぉ? ちょっと、ヤバくない? いやいやいや、てゆーか、よっすぃー、なんでアレ持ってんの? えええええ? そんなことを考えてるうちも、携帯はガンガン鳴り続け、TVからは 娘。の新曲のハイテンションなメロディー。 そしてあわあわと混乱する私に追い討ちを掛けるように…。 「りっかちゃーん。お仕事早く終わったよーん♪」 鍵を勝手に開けて入ってきたよっすぃーの声。 えええええっと。 えっと。 えっと。 私、どーしたらいいの? ♪ぴろりんぴろりーん ♪逃した魚はおっきいぞぉー 「あ、梨華ちゃん、見てくれてたんだぁ。どーよ、この回。 避難訓練とか言ってヒドくね?…って、梨華ちゃんまた部屋汚れてんじゃん!!」 ああ、私のあんまり性能のよろしくない脳内回路はショート寸前。 誰か、助けてください……。 〜その後 あたしは勿論、柴ちゃんに叱られた。 川σ_σ||¶<ちょっと、梨華ちゃんどーなってるのよ!! そりゃーもう、こってりと。 川σ_σ||¶<いくら恋人だからって、よっすぃーに あげるなんてヒドすぎるでしょ!!! …かなり凹むまで。 川σ_σ||¶<こーなったらもう、よっすぃーと お揃いのネックレスだって雑誌とかで吹聴して よししばの振興を図っちゃうんだからね!!!! (;^▽^)<そ、そこまで……。 で。 肝心のよっすぃーはというと (;^▽^)<で、よっすぃーはなんで そのネックレス付けてたの? (0´〜`)<んー?家にあったから。 (;^▽^)<は? (0´〜`)<あたしの部屋のサイドテーブルか どっかにあったから、急いでたから とりあえず今日はコレしてくかって… (;^▽^)<そ、そんなアバウトな… 怒るに怒れませんでした。 だけどその分、よっすぃーはこってり事務所に 怒られたみたいだし まあ、いっか☆ (0T〜T)<よくねーYO 〜その後のその後 (0´∀`)<ま、コレがキッカケでまた週刊誌とかに 載ったら、いい加減事務所もうちらのカンケー 認めてくれるかもしんないし まあ、いっか★