『卒業写真』
人ごみに流されて 変わってゆく私を
あなたはときどき遠くで叱って・・・
突然、ぎゅって抱き締められて。
驚いて振り返ると、よっすぃーが私の肩に顔をうずめていた。
部屋には二人きりだったから。
勿論、突然抱きつかれてもそれはよっすぃー以外ありえないんだけど。
やっぱりいきなりだったから、びっくりしちゃう。
「なぁに、よっすぃー?」
ぎゅっと力を込めて私を閉じ込めて。
よっすぃーは私の首筋にキスをする。
そのまま唇はゆっくりと動いて。
鎖骨を暖かで濡れた感触が行き来する。
「……っ」
甘い感覚に襲われながらも、私はなけなしの理性で考える。
まだお風呂入ってないよ…。
てゆーか、ご飯食べ終わったばっかで机の上も片付いてない。
今日は私もよっすぃーも新曲の振り付けでダメ出しされたから
ご飯終わったら、一緒に振り付けの練習を撮ったビデオ見て復習しよーって言ってたのに。
しちゃうのかな?
それは期待と戸惑いの含まれる微妙な感情。
頭では、やらなきゃいけないことが羅列されて。
よっすぃー、全部片付けてからね?
そう考えるけど。
でも、身体はよっすぃーに正直で。
彼女の唇が動く度に、もっともっとと望んでる。
それでも、夜とはいえ煌々と電気の付いた下で。
TVの騒音の前で。
そういうことをするのはやっぱり抵抗があって。
微かに震えの走る手を彼女の肩に伸ばすけれど。
だけどよっすぃーの手がすぐに追ってきて、絡めとられてしまう。
「よっすぃー…」
バランスを崩した私の身体が後ろに倒れると、よっすぃーは着ていた上着を脱いで
覆いかぶさってきた。
ああ…無理、抵抗出来ない……。
そう思って力を抜いた瞬間、服を捲り上げられて。
全てをよっすぃーに任せて。
目を閉じようとした。
その時。
よっすぃーの背越しに見えたブラウン管。
荒い画質で昔の歌番組が流れていた。
悲しいことがあると 開く皮の表紙
卒業写真のあの人は やさしい目をしてる
それまで全然耳に入ってこなかったTVの音声が急に耳に付く。
街で見かけたとき なにも言えなかった
卒業写真の面影がそのままだったから
いつか。
いつか、私たちにもそんな日が来るのだろうか。
ふと、そんなことを考えたら。
「痛っ…」
痛いくらいに強く掴まれて。
乱暴にされて。
「よっ……あっ…」
抗議の間も与えられず。
いつになく荒々しく。
必死に私を扱うその姿に、私は何も言えなくて。
ただ、よっすぃーに身を任せた。
あのころの生き方をあなたは忘れないで
あなたは私の青春そのもの
いつか。
いつか、そうやって振り返る日が来るのだろうか。
そう思うと、切なくて。
涙がにじむのは、今、私を強引に抱くよっすぃーのせいなのか。
いつか離れていってしまうかもしれない未来のよっすぃーのせいなのか。
そんなことを考えたくなくて。
よっすぃーの背に必死にしがみついた。
「あぁ……ん……」
よっすぃーは、全てを振り払うように激しく私を抱いて
「はぁ…あっ……あぁん、よっすぃー…っ」
私は全てを忘れるようにそれに身を任せた。
「よっすぃ……よっ………はぁっ…あんっ………」
******
「言っとくけど」
しばらくして。
隣りでぐったりと寝そべっていたよっすぃーは顔を上げて言う。
その背後にはもう数ヶ月前に流行った明るいメロディー。
「写真、撮んねーから」
「なに、いきなり」
言いたいことは、大体解かったけど。
私はいじわるをして聞き返す。
「卒業のとき、さ。写真、撮らないからね」
ふふ、と。
笑いが漏れてしまう。
「そんな訳にもいかないでしょ」
それも仕事みたいなもんなんだから。
同期なんだし、ツーショットとか撮るでしょ?普通。
黙り込んだよっすぃーに
「悲しいことがあった時とかさ。見返せるよーなものが欲しいじゃん?」
わざと言うと。
よっすぃーはちょっとだけ泣きそうな顔で睨んできた。
ふふ。
可愛いんだ。
こんな風に、時々、よっすぃーはどうしようもなく女の子な部分を覗かせる。
「いいじゃん」
かすれた声で。
「いいじゃん。いつもあたしは隣りにいるんだから。わざわざ写真見る必要ないじゃん」
可愛いなぁ。
本当に、純粋にそう思って。
頭を撫でてあげる。
「……だから、いいじゃん」
そう言って。
よっすぃーはゆっくりと目を閉じて。
私の手を取り自分の頬に寄せた。
可愛い、可愛いよっすぃー。
いつの日か。
やむを得ず離れ離れになってしまう日が来て。
私が人とか環境とかそういう色々なものに流されて、今とはかけ離れた人間になってしまっても。
よっすぃー。
あなただけは変わらないで。
今の、この、私の手にキスをする可愛いよっすぃーのままでいて。
それは、私のエゴかもしれないけれど。
だけど、あなたは、本当に本当に、私の青春そのものだから。
ずっとそのままで、変わらないでいて欲しいの。
「好きよ、よっすぃー」
伏せられた彼女の瞼にキスをすると。
彼女の腕が伸びてきて、ぎゅっと抱き締められて。
また押し倒された。
好きよ、よっすぃー。
永遠なんてないって解かってる。
あなたの本当の幸せを願うなら私はいない方がいいって解かってる。
だからせめて。
あなたは今のその生き方を、ずっと忘れないで。
願うことは、ただそれだけだから。
よっすぃー
あなたは、私の、青春そのもの………
〜 end
じょんさんに捧ぐ >(^▽^(^〜^0
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