『Sweet Sweet Valentine』 食後にちょっとだけ、よっすぃーと飲もうかな、なんて。 よっすぃーも私もお気に入りな甘い甘いデザートワインを買いに デパートの食品売り場に寄ったら。 『バレンタインコーナー』 と、ショッキングピンクでおっきく書かれた看板を見つけた。 あ、そっか。 もうすぐバレンタインじゃん。 えーと、えーと。 え、もしかして明日!? なーんて。 乙女失格な私。 でも、まあ。 前みたいにメンバーみんなに用意してっていうのも大変じゃない人数だし。 三好ちゃんと岡田ちゃんには明日、現場行く前に用意して。 よっすぃーには、もう、決めてあるし。 うんうん、と1人、確認事項を反芻して頷いて。 ふと視線を戻すと、例のバレンタイン売り場には女の子の人だかり。 うーわーー。 なんかちょっと、ライブとか思い出すかもー。 そんな人混み。 すごい殺気立ってて、怖いよぉ。 見れば、その売り場はチョコを販売してるんじゃなくって 手作りの材料を取り揃えてるコーナー。 大小とりどりのハートの型にビターやミルクの板チョコ。 置かれたモニターには簡単に出来るチョコレートケーキやトリュフのレシピが ひっきりなしに流れてる。 だけど。 そんなのにはお構いなしに自分の目当てのモノに向かって突進するお姉さんたち。 あー、でも。 解かるなあ。 ちょっと、ひいて見ると怖いって思っちゃうけど。 あの必死になっちゃうのって、解かる。 売り場の片隅で。 お姉さんたちに押されながら、必死でモニターに見入る女の子。 ああ、なんか、思い出しちゃうな。 あれは、何年前になるんだろう。 よっすぃーと恋人として迎える、初めてのバレンタインだった。 *** 私はそのとき、すごく必死だった。 そのときの心境を、今でも鮮明に思い出せるくらい。 だって、よっすぃーはすごく人気者で。 バレンタインの何日も前から、矢口さんとか加護ちゃんとかから 「バレンタイン、よっすぃーにあげるねー」 とか 「よっすぃーはどんなチョコが好きなん?」 とか、一杯一杯言われてて。 その上、よっすぃーってば 「ありがとーございます〜」 とか 「うーん。あの、生チョコとかおいすぃ〜よねぇ」 とか、全肯定な返事しかしなくって。 それでむーっとしてる私に気付いても 「梨華ちゃん、どーしたの〜?」 なんて、にこにこ尋ねてきたりして。 もう、聞きたいのはこっちですって!! 「……よっすぃー、みんなのチョコ、貰うんだ」 え?って。 よっすぃーは心底意外そーに聞き返して。 「だって、去年だって貰ったし。梨華ちゃんだって貰ってたし配ってたじゃん」 そりゃそーですけど。ですけど。 だって、だって、去年とは事情が違うじゃん!! 「私、今年はみんなには配んない予定だもん。あげても小さな義理チョコだよ」 少し、ヒントをあげたつもりだったけど。 私の愛しいおバカさんは、とぼけた顔で、なんでなんで?って私の顔を覗き込む。 「あ、もしかしておこづかい足りないのー?だから梨華ちゃん、あんまり無駄遣いしちゃダメだよって いつもあたしが言ってんじゃん。今日の服だって、あたし見たコトないよー!!いつ買ったの?」 あー、もう。 違うもん。違うもん。 地団駄を踏みたい気持ちを抑えて。 私は更に俯いた。 「……よっすぃーは、去年も一杯貰ってたもんね。私があげなくてもいいよね」 えーっと。 少しの沈黙のあと。 よっすぃーが恐る恐るといった体で話しだす。 「石川さんはもしかして、付き合い始めて最初のバレンタインに恋人にチョコを あげないおつもりなんですか?」 だからじゃん!!って。 怒りたかったけど。 怒れなくって。 「よっすぃーの、バカ」 そう言って、よっすぃーにしがみついた。 よっすぃーは、私を髪を優しく撫でて 「チョコもなし、その上バカ呼ばわりかぁ……」 と、つぶやいた。 よっすぃーのバカ。 チョコなんて、あげるに決まってるじゃん。 よっすぃーと恋人になって、初めてのバレンタイン。 すごくすごく、ハッピーな日にしたいって思ってる。 だけど、あなたは私以外の人のチョコも平気で貰おうとしてる。 初めてのバレンタインなのに。 私だけのチョコで、満足して欲しいのに。 あなたには、それが出来ないの? よっすぃーのバカ。 よっすぃーの、大バカ。 *** 今でもそういう気持ちがないって訳じゃないし。 やっぱり、よっすぃーがチョコを貰ってるのを見ると、なんかどきどきしちゃうし。 だけど、今になって考えると、あのときの私は確かに焦ってた。お得意の空回り。 やっと両想いになったよっすぃーを誰かに取られちゃうんじゃないかって。 いつもいつも心配だった。 よっすぃーは、梨華ちゃんが思うほどにあたしモテないよ、とか。 ずっと梨華ちゃんだけだよ、とか。 問えば優しく答えてくれたけど。 それでも、私は、心配だった。 事実よっすぃーはいつでも人気者だったし、誰にでも平等に優しくて。 それは、私を不安にさせるには十分なものだった。 私はそれ以来、よっすぃーとバレンタインの話はしなかったけど。 勿論、初めてのバレンタインにチョコをあげるつもりでいた。 初めての手作りチョコを。 私はデパートのエスカレータを足早に上がり。 ブツを入手すると、我が家への道を急いだ。 *** 「……なんで?」 「え、明日の収録、こっから近いし。だから………迷惑、だった?」 深夜と呼ぶにはまだ早い時間。 うちのマンションの玄関には、よっすぃー。 「迷惑、じゃ、ない、けどぉ…」 「うん。良かった」 いつもは嬉しい、よっすぃーの訪問。 入り時間が早かったり、収録時間が押して遅くなったりすると、よっすぃーは 私の住むマンションにお泊りに来る。 でもそれは、建前というか、言い訳で。 だから、よっすぃーは休みの日でも、次の日の入りが遅い時間でも 『明日の現場が近いから』とか、ときには『なんとなく』とか 言い訳になってない言い訳で、ふらっとやって来た。 勿論、私だって嬉しいから、そんな言い訳なんて全然聞かないで 『上がって上がって』って、よっすぃーを迎え入れた。 だからよっすぃーは事前に連絡を寄越したりとかしなかった。 それが、その日に限ってはマズかった。 だって、その日はバレンタインの前日で。 私は仕事から帰ってからずっと、キッチンに籠もってチョコ作りに精を出していたから。 「じゃ、あがって」 私は、よっすぃー用のスリッパを棚から投げるように床に出すと、走って部屋の中に戻った。 キッチンの換気扇を強に回して、キッチンのドアをバタン、と閉める。 隠す必要なんて、ないって言えばないんだけど。 あと数時間でよっすぃーの手に渡るものなんだし。 だけど、やっぱり、完成するまでは見せたくない。 それに、こないだの小さなケンカ。 よっすぃーにはあげないって言っちゃったし。 今、頑張って作ってる姿なんて、恥ずかしくって見せられない。 「なんか作ってたの?」 「ううん。なんでもないぃ」 ふぅん。 よっすぃーは曖昧に頷いて、ソファに座る。 「梨華ちゃん、ご飯もう食べた?」 「う、うん」 正直、夕飯を食べることを忘れるくらいチョコ作りに熱中してたけど ずっとチョコの匂いに囲まれてたせいか、全然食欲がない。 「じゃあさ、途中でたい焼き買ってきたんだー。温めて一緒に食べよ?」 うんうん……と、空返事をして。 じゃあってよっすぃーが立ち上がったところで、やっと気付いて。 「あ、だ、ダメ、よっすぃー!!」 「え、うぇ、なにっ!?」 歩きかけてたよっすぃーの足に縋りつく。 だって、たい焼きを温めるって言ったら、キッチンの電子レンジ。 キッチンに行かれたら、作りかけのチョコを見られちゃう。 ダメダメ!! 「あ、あのね、ダメなの。その、電子レンジは使えないの」 「壊れてんの?」 「そ、そうそう。あのね、壊れちゃって。すごく壊れちゃって、危ないの」 「危ないの!?」 「うん。電源入れると、危ないんだって。だから、ダメ」 そっかぁ。 私の要領を得ない説明に、だけど、よっすぃーは頷いて腰を下ろす。 「じゃあ、食べらんないね、たい焼き。もう、冷たくなっちゃってるから このまんまじゃ、マズいもん」 よっすぃーの足にへばりついてた私の横に座って。 残念そうな顔で。 ちゅって、私の頬にキスをした。 「梨華ちゃんの誕生日プレゼントに、新しい電子レンジ買ってあげればよかったね?」 「……だって、壊れたの、つい最近だもん」 実は、壊れてないんだけど。 残念そうな顔でそんなコトを言うよっすぃーに心の中で謝って。 私は嘘をつき続ける。 「そっか。じゃあさ……あたしの誕生日プレゼントに、電子レンジ買おっか」 「意味わかんないよ、よっすぃー。それに、よっすぃーのお誕生日は4月でしょ。待てないもん」 うーん。 そう言って。 よっすぃーがちゅっとキスをくれた。 「梨華ちゃんのちゅーは、甘いね」 ちゅっちゅっと、キスを繰り返して。 よっすぃーはそんなコトを言う。 「そんなコト……」 ないもん、って言葉を飲み込む。 それって、それって。 「なんか、すごく甘い…甘いよ……」 ドキっとして、思わず、更にキスをしようとしたよっすぃーから顔を離す。 だって、それってチョコの味だよね!? さっきから、一杯味見しながら作ってたんだもん。 「よ、よっすぃー、お風呂入ったら?」 「え……う、うん…」 私の突然の言葉に、私の肩に手を置いたまま、よっすぃーは曖昧に返事を返す。 「あ、あと、今日は私、こっちのソファで寝るから」 今度こそよっすぃーは返事もせずに固まった。 だって、その、よっすぃーが泊まりにきてるときは必ず、一緒にベッドで寝てるから。 「あのさ、梨華ちゃん。もしかして、こないだのこととかまだ怒ってたりする?」 不安そうに、私の顔を覗き込むよっすぃー。 違うの。違うんだけど。 ……理由は、まだ言えないの。 「えっと、違うの。見たいTVがあってね、夜更かししようと思ってて。 よっすぃーは先にお風呂入って、寝てて?明日のお仕事ツラくなっちゃう」 「……そっか」 まだ腑に落ちないって表情で。 だけどよっすぃーは頷いて。 「じゃ、先に入るね」 お風呂場へ行ってしまった。 ごめんね、よっすぃー。 心の中で謝る。 だけど、絶対、バレたくないの。 完璧なチョコレートを作るまで。 だから、よっすぃー、待っててね!!! だけど。 物事はそうそう上手くはいかない訳で。 「ううぅ…」 出来上がったチョコレートは、全然美味しくなくて。 夜中。 散らかり放題のキッチンで。 形だけはどうにかまともっぽく出来たトリュフは、だけど、味が全然イケてなくて。 悲しくて。 すごく悲しくなって。 思わず、泣いてしまった。 こんなに頑張ったのに。 なんでダメなんだろう? そう思ったら、後から後から涙が出てきて。止まらなくって。 「うっ……うっ…」 よっすぃーのことが、ずっとずっと好きだった。 だから、よっすぃーが好きだよって言ってくれて、すごくすごく嬉しかった。 その想いは、いくら言葉にしてもし尽くせないくらいで。 だけど、解かって欲しくて。 そんな想いの全てを、よっすぃーに解かって欲しくて。 だから、そんな想いのカケラでも、このチョコレートから届けられればって。 想いを込めて、おいしいチョコレートを贈りたいって。 そう思ってたのに。なのに。 「……梨華ちゃん?」 よっすぃーがいることをすっかり忘れて、キッチンの床で盛大に泣いていた私は その声にはっとして、現実に戻る。 もうとっくにお風呂から上がって寝ていたよっすぃーは うちに置きっぱなしにしてある黒いジャージの袖で目元を擦りながら キッチンのドアに手を掛けて、立っていた。 「梨華ちゃん……どーしたの!?」 目元を擦ったあと、髪をぐしゃぐしゃかきあげて。 それからひとつあくびをし掛けて、途中でやっと覚醒したよっすぃーは はっと目を見開くと、床に座り込む私に駆け寄って声を上げた。 「なに?なに?お腹痛いの?どーしたの?え、どーしたの!?」 その慌てぶりにびっくりして、私の涙が止まっても。 よっすぃーはばたばたと立ったり座ったり、一人でパニックを起こしてて。 「あ、頭にアイスノンとか……包丁…り、梨華ちゃんもしかして 包丁でどっか切ったの!?きゅ、救急箱、救急箱どこだっけ!!」 私を抱き締めたかと思うと立ち上がってキッチンを行ったり来たり また戻ってきたかと思うとおでこに手をやって熱を確認したり 手を取って握り締めたり。 「違うの、よっすぃー…」 「何が!?」 パニックに興奮するよっすぃーに抱きついて。 私が深呼吸すると、よっすぃーもつられったようにひとつ、深呼吸。 ぎゅっと抱き締められて。 深夜のキッチンで。 もしかして、愛されてたり、するのかな、なんて。 思ってしまう。 「痛くないの、ドコも」 「そ、そっか。良かった」 私から、ぎゅって抱き返して。 よっすぃーの匂いを、一杯に吸い込む。 「チョコが、上手く出来なくて」 「うん」 「……」 「……」 「……」 「え?」 よっすぃーの間が抜けた声に顔を上げると。 案の定、顔も間が抜けた表情で。 でも、そんなよっすぃーもとてつもなく愛しくて。 うっとりと見上げてたら。 「待って待って。梨華ちゃん、なんで泣いてたの?」 がしっと肩を掴んで引き離されて。 「だから、チョコが上手く作れなかった、から」 「……えぇ?」 もう一度、よっすぃーは聞き返して。 私がもう一度説明しようと息を飲んだら。 「ふっ…ふはっ……はは、なに、ソレ」 笑い出した。 あはは、なんだよ、ソレ。あはははは。 って。 よっすぃーが笑うから。 私もつられて、エヘって笑ったら。 「なんだよ、ソレ、びっくりすんじゃん!!」 いきなり、真顔で怒られた。 「ひっ……」 「夜中に声が聞こえて起きてみたら、キッチンに座り込んで泣いてるんだもん。 なんか病気とか怪我とか、とにかく、びっくりすんじゃん!!」 「ご、ごめん」 よっすぃーの言葉に、止まった涙がまた滲み出す。 だけどそれがこぼれる前に。 よっすぃーが、また、ぎゅっと抱き締めてくれた。 「だから、泣かないっ」 「ふぁい……」 あのね。 私の背をゆっくり撫でながら。 よっすぃーは、優しい声で続ける。 「あのね、泣きそうなときは、言って。泣く前に。 寝てたら起こしていいし、遠くにいたら、電話したらいいし」 ね?解かった? こくこくと頷く私の髪を、よしよしって撫でて。 「そしたら、あたしが泣かないように、慰めてあげっから」 甘いよっすぃーの言葉に。 また涙が溢れてきて。 よっすぃーにバレないように、よっすぃーのジャージに顔を埋めた。 深夜のキッチンで。 もしかして、愛されてたり、するのかな、なんて。 思ってしまう。 よっすぃー。 そう思っても、いい? 「よしっ。じゃあ、あたしからのバレンタインプレゼント!!」 そう言って。 よっすぃーはジャージのポケットから、ごそごそと何かを取り出した。 「なぁに?」 手に握られたのは、小さな袋。 多分、チョコじゃない…よね? 「キッチンの床、冷たいから冷えたでしょ?お風呂行こっか」 そう言って、嬉しそうによっすぃーが私の手を取り立ち上がらせる。 「今日、一緒に入ろうと思って買って来たんだ」 はにかんだよっすぃーの横顔はかわいくて、かっこよくて、見とれてたら また、涙はいつの間にか止まってた。 手を繋いで入ったお風呂場で。 よっすぃーは謎を明かしてくれた。 バスタブにさらさらと落ちていく、小袋の中身。 みるみるうちに、湯船はチョコレート色に染まってしまった。 「入ろ?」 まだ少し照れながら。 よっすぃーが私の服に手を掛けるから。 私も俯きながら、よっすぃーの服を脱がせた。 その、まあ、多少慣れている訳で。 お互い難なく衣服を脱ぎ、また手を引かれて浴室に入る。 中は既に、チョコレートの甘い匂いで一杯。 よっすぃーに軽くシャワーを掛けられて。 子供みたいに、導かれるままに湯船に入る。 確かにお湯だった筈のバスタブの中はどろどろで。 びっくりしてよっすぃーの腕に掴まったら、ふふって笑って抱き締められた。 「よっすぃー、コレ…」 「うん。チョコレート風呂。バスグッズの売ってるお店で見つけたんだ」 2人の間がどろどろの液体で満たされる。 甘い甘い、2人だけの空間。 なんだか恥ずかしくて、頬のあたりまで沈んだら、よっすぃーに抱き上げられてキスされた。 「チョコの味がする」 お風呂の熱のせいか、少しとろんとした目で、よっすぃーが私を見つめる。 「梨華ちゃんがさ、バレンタインくれないって言ったからさ。 強制的に、貰おうかと思って」 「強制的?」 「ん、その、チョコレート風味の梨華ちゃんを」 それって……。 「……よっすぃーのえっち」 「え、うぇ、あ、そ、そーゆう意味だけじゃなくって、その、違う、えっと 梨華ちゃんを、欲しいなって、あ、だからそーゆう意味だけじゃなくってね!!」 あわあわするよっすぃーが可愛くて。 思わず笑っちゃう。 そんなに焦らなくっても、大丈夫だよ。 ちゃんと、解かってる。 「そんなので、いいの?」 「うぇ?」 「そんなのでいいの?バレンタイン」 こくこくと頷くよっすぃー。 嬉しいなって思う。 さっきまでの涙が嘘みたい。 すごくすごく、私は今、幸せだ。 多分、これからも。 私はきっと泣いたり拗ねたり、色んなことを繰り返していくだろう。 また空回ってしまったりすると思うし。 よっすぃーを思って切なくなったりするんだと思う。 だけど。 その全ては幸せに繋がっていく。 よっすぃーと2人なら。 よっすぃーと一緒なら。 「じゃあ、よっすぃーも頂戴ね、バレンタイン」 キスを交わす。 甘い甘い、バレンタインの夜。 チョコレートの匂いで満たされたお風呂場で。 永遠の愛を誓うように。 私たちは何度も何度も、キスをした。 *** 「ただいまー」 「んー」 ソファに寝転がったまま、よっすぃーが返事をした。 ちゃんと『おかえり』くらい言いなさいよう。 「よっすぃー、お腹見えてる」 「梨華ちゃんのえっちぃー」 ふへへ、って笑って。 だけど直す仕草は見られない。 ぐてん、としたままTVを付け雑誌を広げ。 その様子はまさに休日のお父さん。 もぉ。付き合いが長くなって、そりゃ最初の頃みたいな初々しさはお互いなくなったとは言え。 ホント、おやじみたいなんだから。 ……それもエロおやじ。 「明日バレンタインだから、買って来たよ?」 初めてのバレンタインから。 その夜には2人でチョコレートのお風呂に入るのはなんとなく 決まりごとみたいになってしまった。 「えへへ、じゃあ、今夜はチョコレート風味の梨華ちゃんを頂きますかぁ」 「バカよっすぃー…」 そんなエロおやじでも。 やっぱりよっすぃーはよっすぃーで。 2人でいれば、何だって幸せに変わる。 付き合って何年も経って。 例え、何十年も経ったって、きっと。 よっすぃーがいればそれだけで、それだけで Sweet Sweet Valentine 「……でも、好き」 「あたしも。好きだよ、梨華ちゃん」                              FIN