| …別に驚きゃしないさ、だって僕ぁ知ってるんだ。 | ... Je savais bien qu'en dehors des grosses planétes | |
| 地球や木星、火星に金星みたいな、おっきくて | comme la Terre, Jupiter, Mars, Vénus, auxquelles | |
| 名前を持ってる惑星以外にも、何百と星はある | on a donné des noms, il y en a des centaines d'autres | |
| んだ、ってね。あんまり小さいもんだから望遠鏡を | qui sont quelquefois si petites qu'on a beaucoup de | |
| 覗いたって見つけられないのまであるんだよ。… | mal à les apercevoir au te'lescope... | |
| 〜 サン=テグジュペリ A. d. St.-Exupéry : 『星の王子さま Le Petit Prince』 第4章 より | ||
自称ナチュラリストの叫ぶには:うーん…もちろん、父と娘の交配というような極端な例については、あるいはそのリスクの大きさから避けるべきでもあるでしょう。が、4x4のインブリードについてまで上記のごとき理屈を持ち出すのは、ほとんど疑いなくナンセンスかつ不自然 (^^; なことではないかと鞘次郎には思われるのです。
「近親交配は、自然の摂理を冒涜する不自然な所業だ」
「倫理的にも動物学的にも正しくないことだから絶対に止めた方が良い」
科学の徒をもって任ずる者のいわく:
「インブリード配合で名馬が出るなんて、非科学的な迷信だ」
「4x4のクロスなどというものは、確率的に考えれば、ほとんど意味がない」
我苦笑せば、両者そろって憤慨し:
「何を笑うか、我らが良識/論理の一体どこがどう可笑しいというのだ」
| 配偶子 | RY | Ry | rY | ry |
|---|---|---|---|---|
| RY | RRYY | RRYy | RrYY | RrYy |
| Ry | RRYy | RRyy | RrYy | Rryy |
| rY | RrYY | RrYy | rrYY | rrYy |
| ry | RrYy | Rryy | rrYy | rryy |
|
※ 遺伝子型 R*Y* = 表現型 丸黄豆 …同様に R*yy = 丸緑 / rrY* = 皺黄 / rryy = 皺緑 | ||||
農水省畜産試験場の家畜ゲノムデータベースにあるウマの染色体地図をご参照下さい。では、同じ両親から生まれるサラブレッド全きょうだいのDNAパターン、すなわち〈遺伝子型〉は、2の64乗=およそ1845京通りだけあると考えれば良いのでしょうか。
これらの知見を加えれば、減数分裂後の配偶子が持つバリエーションは、もう超天文学的なスケールになります。にも関わらず、全きょうだい間では遺伝子のおよそ半分が共通する、という事実は(加齢による影響を除けば)依然変わりません。むしろ、染色体の本数が多くなり、交叉の起こりうる地点が増えれば、それだけ却って遺伝的分散は小さくなり、総合的に見て平均を逸脱するような個体は少なくなるのです。もちろん独立に遺伝しても構わず働くような(=純粋に相加的な効果を持つ)遺伝子であれば、この結果はさして問題ではありません。2+3が4や3になってしまう、というだけです。つまり生物の性質を導く遺伝子のそれぞれが、染色体上の非常に短い部分に込められており、またそれらが互いに関係しないとすれば、〈交叉〉の結果は、単に減数分裂のバリエーションを水増しするに過ぎません。
※ コンピュータでも、こんな風に「フォールトトレラント」なディスクシステムがありますよね。そう、ミラーリングによるRAID(Redundant Array of Independent Disks)ってやつ。具体的に考えてみましょう。ある種牡馬が、ある有益な遺伝子を〈同型(ホモ接合)〉で持つ場合、1対の相同染色体上の向かい合う部分には、一定の長さだけ、同じ塩基行列が並んでいます。ですから、交叉がその遺伝子部分中のどこで起ころうと、どちらの染色体が選ばれようと、すべての精子には、この遺伝子がそのまま含まれてゆきます(厳密に言うと、転座なんかが起こっちゃえばご破算ですけども)。したがって、交叉頻度や連鎖・エピスタシスの状況にもよりますが、〈ホモ化〉すれば、遺伝の確率は〈異型〉の場合より、少なくとも2倍以上に増大するのです。
| 配偶子 | AB(40%) | ab(40%) | Ab(10%) | aB(10%) |
|---|---|---|---|---|
| Ab(50%) | AABb(20%) | Aabb(20%) | AAbb(5%) | AaBb(5%) |
| ab(50%) | AaBb(20%) | aabb(20%) | Aabb(5%) | aaBb(5%) |
| 配偶子 | AB(50%) | ab(50%) |
|---|---|---|
| Ab(50%) | AABb(25%) | Aabb(25%) |
| ab(50%) | AaBb(25%) | aabb(25%) |
| 配偶子 | AB(25%) | ab(25%) | Ab(25%) | aB(25%) |
|---|---|---|---|---|
| Ab(50%) | AABb(12.5%) | Aabb(12.5%) | AAbb(12.5%) | AaBb(12.5%) |
| ab(50%) | AaBb(12.5%) | aabb(12.5%) | Aabb(12.5%) | aaBb(12.5%) |
この部分は現在工事中です。
この事実は、一見漠然とマクロな「種の保存」へ向かっているように見えますが、同時にまた、淘汰の基準を生物個体ではなく遺伝子に据えるべきだとするドーキンスの〈利己的遺伝子 selfish gene〉説にしたがえば、より重要な「遺伝子の自己保存・能動的複製」への道筋を示唆していることにも注意しておきましょう。わかりやすくするために想定が単純すぎましたが、近交によるホモ化、資質の固定とは要するにこういった過程の集積だということがおわかりいただけたのではないかと思います。実際、品種改良とは偶然に遭遇した形質から望ましいものを〈選抜 select〉し、その都度このように〈固定 fix〉して足場を固めながら、種の進化を目指す高みへと導いてゆく行為であり、その様はロッククライミングにも喩えられます。
2001/09/06
鞘次郎は今の所、ダンスインザダークとスペシャルウィークの2頭が、次代への扉を開くのではないかと考えています。Nijinsky はサンデーに対する母父としては消化不良気味ですが、代を経てからを考えれば、なお最有力候補ではと。20世紀の100年間、ハクチカラやホオカノなどのわずかな例を除き、一度も欧米へ血統を還元できなかった日本が、21世紀に独自の貢献を行えるかどうかは、*サンデーサイレンスという稀有な血を、いかに止揚できるかにかかっています。*サンデーサイレンスの系統が育ち、自身の近交が花開く段階に至るまでに、この系統の中心が日本を離れてしまうようなことになれば(あるいはもっと情けないことに、その段階以前に国内で系統ごと飼い殺すような羽目にでもなれば)、再び「種牡馬の墓場」という嘲りを浴びることになりかねません。知恵を絞りましょう。
2002/01/06
See ― R.ウォーレス・他 著, 石川 統・他 訳:現代生物学(上・下), 1992, 東京化学同人
国立遺伝学研究所 NIG:遺伝学電子博物館
農林水産省畜産試験場:家畜ゲノムデータベース
安田徳一:集団遺伝学講座 第9回, 第14回
石丸のりりん:『月刊競馬情報』「ひねくれ者の血統論」 第3回, 第4回, 第5回
Anne Peters : Why Inbreeding ?