Caracalla や Auriban にも、ブサック没落の責を負わせることはできないでしょう。むしろ、輸出されていればそれなりの成功を収めた可能性は十分あります。そもそも種牡馬入りが遅く、自身がブサック血脈で満ちていた彼らに対して、ブサックの良血牝馬はすでに半ば閉じられており、配合パターンを試す余地はほとんど無かったのですから。自家生産種牡馬で同時に3頭も大成功したなら、それは歴史的な僥倖と言うべきでしょう。しかしその3頭にほぼ完全に依存しながら、後継を引き当てられず、3頭が時を同じくして倒れたこと。これがブサックにとって、驀進街道からの曲がり角となります。
ちなみに Caracalla は非ブサックの種牡馬 Forum を通じペルーで父系を伝えています。
結局 Tourbillon 〜 Djebel の系譜を継ぐのは、ウェストミンスター公がブサックの牧場で預託生産した Hugh Lupus(Tourbillon:2x3, Bruleur:4*5x3 の超近交馬。ブサック名義 Marveil の3/4同血甥)になります。この馬はブサック帝国から落ち延びることで、逆に配合の機会を獲得し、近交系の優位性を回復します。Tourbillon だらけの帝国さえ出れば、外にはその血を必要とする世界が待っていたわけです。
結局 Herod から Ksar を経る父系にとっては、ブサック時代さえ壮大な寄り道に過ぎなかったのかもしれません。
| 馬名 | 生年 | 父 | 母父 | 近交 |
| Whirlaway | 1938 | Blenheim | Sweep |
Bend Or=Rose of Lancaster:6*6x5*6*7,
St. Simon=Angelica(f):5*6x6*7, Domino:4*5 |
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60戦32勝、40米2歳王者、41米3歳王者(三冠)、41,42米年度代表馬(連続)、50仏へ輸出、53死亡。
41ケンタッキーダービー/USA、41プリークネスS/USA、41ベルモントS/USA、41トラヴァーズS/USA、 42ジョッキークラブゴールドC/USA、42ブルックリンH/USA、40ホープフルS/USA、40サラトガスペシャルS/USA | ||||
| Fervent | 1944 | Blenheim | Stimulus | Isinglass:5*5x6, Hermit:6*7*7*7x5*6*6*7, Domino:5*5 |
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44戦17勝、53急死した Whirlaway の代用として仏へ輸出、57委へ再輸出。
47ワシントンパークH/USA、47アメリカンダービー/USA、47ピムリコスペシャル/USA、 2nd. 46ピムリコフューチュリティ/USA | ||||
| Coaltown | 1945 | Bull Lea | Blenheim | St. Simon=Angelica(f):5*7x6*7, Hermit:6*6x6*7*8*8*8 |
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39戦23勝、48米最優秀短距離馬、49米年度代表馬(僚馬 Citation は休養中)、55仏へ輸出、65死亡。
48ブルーグラスS/USA、48ジェロームH/USA、49ギャラントフォックスH/USA、49ワイドナーH/USA、 2nd. 48ケンタッキーダービー/USA | ||||
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*アイアンリージ
Iron Liege | 1954 | Bull Lea | War Admiral |
Bull Dog=Sir Gallahad:2x3, Spearmint:4x5*6,
St. Simon=Angelica(f):5*6x6*6*7*8*8*9 |
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33戦11勝、59仏へ輸出、67日本へ再輸出、71死亡、ストロングエイトの父。
57ケンタッキーダービー/USA、2nd. 57プリークネスS/USA、57アメリカンダービー/USA | ||||
これに比べれば、*グランディや*ラムタラが何でしょう。社台が最近引いた*ウォーエンブレムなんて、可愛いものではないですか。このように、自家種牡馬の連続死去と輸入種牡馬の大失敗は、同時並行的に起こり、ブサック帝国を激しく揺さぶりました。救命ボートに乗ったら穴が開いていた、あるいは角を曲がったら信号無視の車が突っ込んできた、というくらいの間の悪さが、そこにはあります。栄光の1950年からわずか10年、あれほど優位を誇ったブサックの牝系はその活気を失い、価値を下落させてしまいます。
伴性遺伝? 性別刷り込み? まさか……薬?ブサックがこの現象に気づいていなかったとは考えにくい所。仮に Whirlaway 輸入当初は気づいていなかったとしても、50年代後半には疑念がつのり、遅くとも60年代には確信に変わっていたでしょう。
2004/11/20
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