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冤罪について考える
冤罪や支援活動などについて考えていること、思いついたことをメモしてみた。また関係資料を掲示した。
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冤罪考3
パソコン遠隔操作事件と狭山事件
パソコン遠隔操作事件(遠隔操作ウィルス事件、PCなりすまし事件)の被疑者・片山さんの逮捕について、私は狭山事件の経験から、誤認逮捕との強い懸念を持ってきた。
すでに、新聞や雑誌でも冤罪事件ではという指摘が『東京新聞』(3/3)や『週刊現代』(3/9、3/16)、『AERA』(3/4)、『週刊朝日』(3/8)などで詳細に報道されており、改めて私が発言するまでもないのであるが、20数年前に『狭山事件を推理する』をまとめ、最近、ホームページ「推理・狭山事件」で追求を続けている私としては、1点だけ、強調しておきたいことがある。

私は、狭山事件は被差別部落出身の山田養豚場関係者に罪をなすりつけようと巧妙に偽装された殺人事件と分析し、真犯人像と事件像の解明に務めてきた。狭山事件の真犯人は、事件の1週間ほど前に関係した高校1年生の上田善枝さんを誕生祝いの食事を口実に呼び出し、性交したうえで殺害し、幼児営利誘拐事件に偽装し、被差別部落に捜査が集中するよう脅迫状をはじめとする証拠を偽装し、無実の石川さんに罪を負わせた、2重に悪質な犯人であると私は考えている。
この狭山事件の捜査で明かとなったのは、日本の警察・検察は、巧妙に偽装された犯罪、なりすまし犯罪に対しては、完全に無力であり、太刀打ちできない、という現実である。
この国の警察・検察、とりわけペーパー試験組の指揮官達は、犯人が巧妙な偽装工作を行ったなら、ほぼ確実にその罠にはまる、という恐ろしい現実である。
第1に、彼らは「自分達は優秀で、犯罪者はバカだ」と思っているから、まず、この点で悪賢い犯人には歯がたたない。
狭山事件では、脅迫状に「友だちが車出いく」などと書かれていたから、車犯と信じ込んで40人もの刑事を張り込ませながら、歩いて現れた犯人を取り逃がしている。また、脅迫状に「で」を「出」などと書かれていることから、「犯人は小学生程度の学力」と信じ込み、被差別部落出身者に捜査を集中している。
起訴する検察官や勾留決定を行う裁判官達にチェック能力がないことは、言うまでもない。
第2は、上位下達の官僚組織では、幹部の捜査方針が間違えば、現場はそれに従って迷うことなく動くから、捜査はとんでもない方向に進む。しかも後戻りがきかない。異論を唱えるまともな刑事がいるものであるが、幹部は押し切ってしまう。
第3は、組織捜査の弊害として、大捜査体制が敷かれると「浮いた捜査」「お祭り捜査」「踊る大捜査線」になってしまうことである。大組織を迅速に動かすためには、短期間に捜査方針を立て、役割分担を決めて動かすことが必要であるが、現場から遠く離れてマネジメントに苦慮するデスクワーク組の幹部には鋭い推理力や柔軟な対応などはまず期待はできない。膨大な捜査報告にまともに目配りする余裕も鋭い感性もなく、犯人仮説から外れた捜査報告などは無視されてしまう。
第4は、犯人がそれらしい証拠を小出しに見つかるように仕組んでおけば、捜査本部の指揮者達は自分達の犯人仮説が次々と証明されたと信じ込み、他の犯人像など考える余地はほぼ完全になくなることである。この「予言証明」「仮説証明」の罠が小出しに仕掛けられていると、博打の「ビギナーズ・ラック(初心者の幸運)」の罠と同じで、この罠から逃れることは不可能である。
第5は、捜査体制の整備、上部への報告、マスコミ対応などに忙殺され、睡眠不足と肉体的疲労、心理的重圧の蓄積する捜査幹部達は、次第に冷静な判断力を欠いていくことである。狭山事件のように犯人取り逃がしのミスがあり、厳しい世論の批判を浴び、捜査が長引いた場合には、冷静な思考力はなくなり、逮捕―自白の博打に突き進む。
パソコン遠隔操作事件の捜査においても、ほぼ同様に、警視庁と神奈川・三重・大阪府警の合同捜査本部は「浮いた捜査」「お祭り捜査」「踊る大捜査線」体制に陥り、同じように真犯人の罠にはまる危険性を孕んでいる。
そもそも、東京都・大阪府・愛知県・福岡県・三重県・神奈川県の6人のパソコンを遠隔操作し、4人を誤認逮捕、1人を有罪とさせた犯人は、その手口からみて、より巧妙に7人目として片山さんを選び、犯人に仕立て上げる可能性は大きいと見なければならない。
特に、神奈川新聞が写った写真や雲取山の三角点の写真、江ノ島の猫の写真の送付は、ネットからリアルの世界に犯人が登場したとして大きく報道されたが、小出しに仕掛けられた偽装工作であり、捜査撹乱の罠の可能性が大きいと考えなければならない。
狭山事件と同様に、私がもっとも重視するのは動機である。犯人は犯行声明やSDカードには「警察・検察を嵌めてやりたかった、醜態を晒させたかった」「警察の強引な取り調べ」「自分は以前、事件に巻き込まれたせいで、無実にも関わらず、人生の大幅な軌道修正をさせられた」などと書かれているというが(ウィキペディアによる)、実際に逮捕・取調を受けた経験者なら、同じように冤罪者を苦しめることは考えにくい。私が片山さんは無実であると考えるのは、この動機の点が一番大きい。
さらに、当時の石川さんには脅迫状を書くだけの作文・筆記能力なかったのと同様に、片山さんがウイルスソフトを作成する言語・C#(シー・シャープ)を使えないと主張し、勤務先のIT関連会社社長がそれを裏付ける証言していることも見逃せない。
今後とも、警察・検察の動向を注視したい。 130306
甲斐仁志
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