第1回拍手御礼SSログ
「暇な時」




=暇な時・「バルレルの場合」=


「あ、いた」
「あぁ?」
「いや、バルレルっていつもここにいるじゃない。だから今日もここにいるって思ったんだっと……ああわあぁ!」
「! ったく、危ねェだろがッ!」
「いや、あ、ありがと。
 びっくりしたぁ。そんな急な屋根じゃないのに、やっぱり滑るもんだね。バルレル、よくこんなところでひなたぼっこする気になれるねー」
「昼寝だヨ」
「同じじゃん。あはは」
「……で? なァにしに来た」
「ん。いや、お昼御飯も終わったし洗濯も掃除も終わっちゃって、暇なのよ」
「で?」
「で、って……だから来たんだけど」
「………」
「………」
「……用もねェのに来ンな」
「う。ごめん。だけど、ほら……えーと……ごめん」
「………」
「……なんか、実はそのー……バルレルの寝顔が見れるかなーなんて思っちゃって。
 ほ、ほら、バルレルいつも夜いないじゃない。だから、夜行性で実は昼間寝てるんだとばかり」
「……テメェは馬鹿か」
「うあ、今のネスティさんっぽかったよバルレル!」
「………馬鹿だナ」
「う。じゃ、いつ寝てるのよー。私にも分かるように説明してよ」
「うぜェ」
「……分かった、もういい。私も寝る!」
「ハァ?」
「おやすみ」
「……勝手に寝てろ」


 ざああぁぁぁ……


「………」
「………」
「………」
「……まっ、たまにゃ来てもいいゼ」
「………むにゃ」
「……ケッ」


 ざああぁぁぁ……

 ざああぁぁぁ……






=暇な時・ケース「ネスティの場合」=


「ネスティさん、いますか?」
「君か。ちょっと待ってくれ、いま開ける。……何か用か?」
「あ、ネスティさん。こんにちは、あの、これ」
「ん? ああ、君はもう家事は終わったのか?」
「はい」
「いつもすまないな。いま直ぐ書くから、中に入って待っていてくれ」
「はい。えーと、失礼します」
「……確かここに…。あぁ、適当に座ってくれ。ベッドでも構わないよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「あった。……全く、あの2人は世話が焼ける……謝罪文を君に寄越して僕に届けさせるぐらいなら、最初から僕の所に来れば良いのに」
「ははっ、怖いんですよ、きっと」
「ちゃんと課題をやればこっちも怒る必要はないんだ。
 それじゃ、これ」
「はい。あの、前から気になってたんですけど……これ、何て書いてあるんですか?」
「気にしなくていい。大した事は書いてないよ」
「でも、これ渡すたびマグナ達青い顔してるんですけど……」
「気のせいじゃないか?」
「すげぇ笑顔ですね……」
「それも気のせいだろう。……ああ、そうだ。
 いつも迷惑かけてるからな、お駄賃代わりとは言わないが」
「え? わっ。私も勉強ですか?」
「違う、君に読んであげようと思ってね。昨日、夕食の時に話しただろう?」
「あ、私が読んでみたいなぁって言った?」
「ああ」
「えっ、いいんですか? でも短くは無さそうですね……」
「少しずつで構わないだろう。どうせあいつらも直ぐには帰ってこない。僕が身に沁みて知ってるよ」
「はぁ。でも、お時間割いちゃっていいんですか?」
「君の隣で本を朗読するんだ。いい休憩代わりだよ」
「……えっと。じゃあ、お願いしますっ」
「ああ。よく聞き取れなかったら言ってくれ。それじゃ始めるよ」

 そうして、ほんの時々だけど。
 トリスとマグナが逃げてる間は、私とネスティさんの時間になった。





=暇な時・「イオスの場合」=


「………」
 静かに、テントの近くに腰を降ろす。
 彼女が縛られ横になっている場所は、入口よりもこちら側に近い。だから。
「……アメル……」
 彼女が、外の衛兵に聞こえないと思っている呟きも、ここに座れば耳に届く。

「ごめんね。アメル、ごめんね」
「どうしようバルレル」
「やだ」

「やっぱり死にたくないよ」

 ……聞こえる。
 ならば。ならばさっさと吐けばいいじゃないか。そうすれば、双方これ以上戦う必要は無い。あの人が苦しむ必要もないのだ。
 お前さえ協力すれば。

「……絶対、駄目」

 なのに、何が駄目だというのか。

「駄目」

 彼女の思いが、分からないでもない。
 でもなぜ彼女がここまでの扱いに我慢できるというのだろう。
 あの日はじめて会った彼女は、戦い慣れてもいなかった。サモナイト石を放り出して逃げたくらいに。

 でも、昨日捕まった彼女と、その時の瞳は同じだった。
 彼女はいつも必死な瞳で自分を見ていた。
 「助けて」と言っていた時も、
 「絶対話さない」と言っている時も、
 その瞳は常に真直ぐに自分を射抜いてきた。

「死にたくないよ」

 ……聞こえる。
 彼女にとって、1番大切なものはなんなのだろう。それを引き合いに出せば、協力するだろうに。それが自分には分からない。
 彼女にとって1番大切なもの。
 彼女にとって1番大切なもの。
 ……命。なのだろうか。それとも……。

 もっとも大切な誰か、がいるのだろうか……。


「………」


 誰かの名前を彼女が呼ぶ。
 聞こえない振りをして、かぶりを振り……イオスはその場を後にした。





=暇な時・「リューグの場合」=


「あ、リューグ、おはよう」
「……え? あ、ああ……」
「あはは、早かったから驚いたんでしょ。昨日、朝腹減るって愚痴ってたじゃない? だから、朝御飯までのつなぎに良いかなって、ほら」
「………」
「ロッカは? ロッカの分もつくってきたんだけど」
「……兄貴ならいねェよ」
「え、なんで?」
「知るか。屋敷の方に行ったはずだぜ、途中で会わなかったのか」
「ううん。屋敷になにしに行ったの、まだ朝御飯まで大分あるし」
「だから、知らねぇって」
「あ、ごめん。で、これ……食べる?」
「………」
「……えーと、もしかして、あんまりお腹……空いてない、かな?」
「……貸せ」
「え?」
「いいから。兄貴が帰ってきちまうだろ」
「わっ。ちょ、リューグ、ロッカの分だよそれ!」
「あぁ? 両方とも同じじゃねぇかよ」
「ち、違うの! ロッカの好きな具とリューグの好きな具で分けたんだよ。
 あー……この2つがリューグので、これと、いまリューグが持ってるのがロッカのなの」
「………」
「あー! た、食べちゃった……なんでぇ? まだ具まで行ってなかったっぽいのにー」
「………」
「あ、それロッカのだって! あ、もう! なんで? リューグもロッカと同じの空きなの?」
「……違ェよ」
「じゃ、なんで」
「腹減ってんだよ!」
「わっ。分かった、それじゃ明日からは4つずつにするよ! だからリューグの分は残し……あぁ、言ってるそばからぁ……」
「うっせェな。兄貴は朝飯で喰うだろ」
「だけどー。うぅ、ロッカ来たらどうしよう……リューグだけって悪いし」
「いーんだよ。食べちまえば差し入れなんてばれねぇだろ」
「うあ、横暴」
「んな事より、明日もつくんのか」
「ん? そのつもりだけど……えっと、おいしかった?」
「……まあまあじゃねぇの?」
「あはっ。なら、明日もつくる! よかったぁ、心配だったの!
 私、元の世界ではこんな毎日三食料理したことなんてなくって。こういう差し入れも始めてで、どういうのにしようかなって! アメルに聞いて、結局おいもさんメニューになっちゃったんだけど」
「………」
「ね、リューグ、何かリクエストある? できる限りだったら、アメルやケイナさんに聞いてみるよ?」
「へっ。別にねーよ。それよかテメェ、明日も起きれんのか?」
「う。起きれるよ、頑張るもん」
「……へっ、へぼいくせにあんま無理すんなよ。兄貴の分は、いらねぇからな」
「え? なんで?」
「アイツは、朝飯で十分だとよ」
「え? そうなの? って、リューグ、食べたあとで直ぐ動いたらお腹痛くするよ!」
「鍛えが違ぇんだよ、テメェと一緒にすんな」
「もう……水ここに置いとくからねー! 私、アメル手伝いに行くから!」
「ああ」
「じゃ、また明日ね!」
「……ああ」

「また、明日……な」


 でも結局次の日までにロッカにばれて、彼女は2人分つくる事になりました。
 「なんでリューグあんな事言ったんだろうなぁ」なんて思いながら。





皆様、拍手ありがとうございましたっ(礼)。

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