地平線の彼方に 小市慢太郎 出演作品

shapeimage_4.png

小市慢太郎 出演作品感想

更新日 2013-09-17 | 作成日 2008-09-30

東洋テレビの野中役。笑顔と声が好きな俳優さんのお気に入りを。

「セーラー服と機関銃」

06-4949054.png
お馴染み赤川次郎原作。薬師丸ひろ子の映画版、原田知世のテレビ版に続く長澤まさみテレビ版だ。小市さんの役柄、刑事・黒木は主人公・星泉の父の事故死の捜査で登場する。泉に親身にしてくれるようでいて、実は悪徳刑事。黒幕の通称「太っちょ」と実行班の浜口組の連絡役を務め、実際の麻薬の取引にもしっかり関与しているのだが、長澤版は悪役が少なくなっている分黒木の悪役度があがっているようだ。
登場すぐから覆面パトのドアを柵にぶつけて「あっ」と言ってドアをさすっていたり、泉の住む部屋番号「8940」を「ヤクシマル」と読み、「泉星」と名前を逆さまに呼びつつも笑顔連発で、ボケキャラか?と思わせながら、黒木のカットエンドがスローモーションや妙な効果音や意味深なアングルで、もう最初から悪役バレバレな感じ。映画版の柄本明などの様な飄々とした感じをもう少し出してもよかったと思うのだけれど。ストーリー的にもう有名作品なので意外性は求められていないという事か。
それにしても黒木の悪っぷりは、あまりにブレがなくて潔いほどで惚れ惚れする。泉に協力させる為なら土下座もするし、そういうところは主人に忠実でなりふりかまわない。口調は基本的に丁寧語。「すいません」というのが口癖で、全編中10回近く言っていたと思う。特に笑顔で言う「すいません」のイントネーションがホントに申し訳なさそうな感じでとっても気に入ってる。まぁ、そのTPOには合ってない口調なんだけれどね。しかし銃の撃ち方は問答無用で情け容赦はない。ケンジを殺しそこね、浜口に「逃げられましたねぇ」と言う時も薄笑い。まるで挑発しているような気もするくらい。
その黒木を慌てさせることが出来るのが唯一部下の稲葉クン。正直者の天然系。実はそのおかげで結果的に泉は事件に巻き込まれてしまったのだが。その稲葉クンも黒木の裏の顔を知ってしまい射殺されてしまう。
黒幕の事務所に乗り込んだ目高組の面々の前に、浜口組の子分をずらりと従えて現れて銃を構える黒木。

黒木「お久しぶりです」
泉 「ずっと私たちを騙してたんですね」
黒木「すいません、仕事ですから」

これを言う間、ああ、もうずっと満面の笑みなのよ。(写真参照)だが、刑事よりヤクザの方が仕事なのか?
最終回。マシンガンを構える泉に向かって黒木が言う。
「あなた方が正義で私たちが悪だと仰りたいんでしょうが、それは違いますよ。無防備な人間に、そんな物騒な物を向けているあなただって悪でしょう?正義というのは悪があってこそ成り立つ物で、区別出来るものじゃない。警察の私が言うんですから間違いありません」
妙な論理なんだけれど、いい声してるからちょっと聞いちゃう。
だが「太っちょ」は武器は持ってなかったんだろうけれど、黒木、あんたは拳銃持ってるだろうに。でも、ここの黒木は少々腰が引けてるような立ち方なんだが、一番撃ち慣れているんだろうし、反撃をしようと考えながら、口で丸め込もうとする嫌な奴だ。画面的には逆光気味で薄笑いを浮かべているのが、すごく恰好いいと思うのだが、如何に。
泉たちを撃とうとして「太っちょ」に止められて、結局突入してきた警官隊に逮捕されそうになり、警察手帳を見せて逃れる。そのとたん、目の前の浜口を早く確保しろと命じて離れながらにんまりしているという、最後まで徹底的な悪役だった。だが、浜口を裏切った為に側近の蘭丸に刺されて落命する。刺される寸前は、ほっとしたのか全編中一番気楽そうな顔してたのになぁ。
最後に落とした警察手帳を誰かが踏んでいくカットで黒木は退場するわけだが、ちらりと見える手帳の証明写真が当然制服姿。いつも同じグレーのスーツばっかりだったんで、あの制服姿をもっとはっきり見たかったぞ。
とりあえず、この黒木が印象が強くて、「ハゲタカ」を見た時に「あっ黒木だ」と思ったのでありやんした。
で、かの有名な「本音で来たよ」の所の妙にウレシそうな顔が又黒木と被って、お気に入りキャラになったのよね。


「張り込み」

vlcsnap-11797165.png
主婦のスミレの住む団地は自殺の名所と言われている。ある夏の昼下り、訊ねてきたのは刑事だという男。刑事は向かいの棟の張り込みにスミレの家を使わせて欲しいと言い、言葉巧みに上がり込んでくる。なれなれしい態度が気にくわないが、張り付いた笑顔と裏腹に強引な刑事にあらがえない。しかしスミレの家が選ばれたのは偶然のはずが、刑事はスミレの過去を知っている上、1年前の飛び降り自殺の話を執拗に持ち出す。ひたすら刑事に挑発され続けて、怯えるスミレ。帰るはずの夫は現れず、謎めいたスミレの存在。刑事が本当に張り込んでいるのは・・・?
全体はモノクロ。一部はカラーという構成。デジカメのハンディでなんと5日間で撮影されたという低予算映画。しかし、その妙な画面のブレや粒子の粗さが怖さをあおる。ほとんどが団地の一室で進んでいく、薄ら寒く、恐い話。
刑事が小市さん。ずっとしゃべり続けのような気がするなぁ。愛想がいいのだが、図々しくてあからさまに猥雑な事も平然と話し出して、スミレをいたぶり続けるわけだが、その目的が判らないうちが恐すぎる。特に深夜のビデオカメラ撮影は・・・。
「嘘つき」と刑事が言うシーンがあるのだが、普通はマジな顔で言う台詞を笑みを浮かべて言っちゃう。もちろん監督の演技プランも当然あるのだろうが、この人の笑顔の怖さが強烈なのだ。スミレの間男セールスマン荒川役が堺雅人。堺さんの方もずっと笑顔に見えるんだが、真顔が柔和でそういう風に見えるだけで、実際はそれほど笑ってないよね、特に目元は。小市さんはホントに歯を見せてニカっと笑うんだが、台詞は全然笑う内容でなかったり次の瞬間に劇的に表情が変わったりする。「嘘つき」とか、世間話をしながら「殺しちゃいけませんね」と言うの台詞のあたりが一番好きだ。
結局、実は刑事ではなく鑑識係だった男。1年前に自殺と思われた荒川の遺体を搬出する時に見掛けたスミレの表情で、彼女が犯人だと確信した。そしてその表情に惚れてしまった。そのために、荒川が死亡時に昏睡状態で自殺は出来ないはずであったことを隠蔽してしまう。
スミレを追い詰めて行きながら、いつかまたその表情が見たいと願い、その為には殺されても構わないと思う男。荒川がうらやましいと言い、スミレに殴られて「あの時の顔はもっと綺麗だった」と言う男。何度も自らをさえない男と呼び、警察も辞めさせられて、誰からも顧みられない孤独な男。スミレに殺されたら「少なくともあなたは気にかけてくれるでしょう」と言い、逆襲されて殴られ続けても、頭を上げてスミレの顔を見ようとする男。
これは勝手な歪んだ愛情にひたすら身を焦がす男のラブストーリーなのだ。そして大勢の人間が寄り集まって生きている中にいながらも、逆に閉塞感に押しつぶされているひとりの女の渇望の果ての姿なのだ。
「愛を求める飢餓の物語」そう思って再度見ると、初見よりずっと切なく思えてくる作品なのだ。