「だぁぁあああああッッ!!!!」

「っ!?」



勇ましい掛け声が屯所内に響いた瞬間。

土方の目の前を銀に輝く物体が横切った。










今日こそ憎き敵を討ち果たさんことを










目の前へと突然振り下ろされた鈍く銀色の光を反射しているこの物体。

どう見ても刀だ。

間違いない、刀だ。

刀以外の何ものでもない。

刀といえば、あの長い刃がついた人を傷つけ、そして殺めるつまりは武器だ。


・・・・・・。

では何故そんな物騒なものが障子を開いただけの自分の目の前に振り下ろされているのだろうか。


土方はそろそろと視線を刀の持ち主の方へと辿った。



「・・・・。何のつもりだ・・・?」

「あれ、副長じゃないですか」

「副長じゃないですかじゃねぇえええ!何だお前!お前も副長の座ァ狙ってんのかコラァアア!!」

「わぁ!ちょっと、いきなり怒鳴らないで下さいよ!」



刀を鞘へと戻してから両手で耳をふさぐ

一歩間違えば本当に土方が怪我をしたかもしれなかったというのにこのケロリとした態度。

思わず土方の米神に青筋が浮かび上がった。



「もう、全く短気なんだから。私が狙うとしたらNo.2じゃなくてNo.1の局長の座ですよ」

「(それはそれで腹立つな・・・)」



当たり前じゃないですか。

そんな言葉が言外に聞こえた気がした。

土方は軽く眉根に皺を寄せ、半眼でを睨んだ。

当のといえば、ジロリと周りに向かってなにやら警戒した目線を配っている。



「何やってんだテメェ」

「え?あぁ、実はさっき敵に襲われてまして・・・」

「敵?」



ピンを空気が張り詰めた。

さっと土方は周りに目を配り怪しい影や気配がないか探る。

室内、天井、床下、庭、木の陰や草陰―――。

・・・が、特にこれといった気配はない。




そう判断付け、フッと緊張を緩めた瞬間。



シュッ・・・。



今度は自分の顔ギリギリを刃が横切った。



「っ・・・!?」

「ふぅ・・・危ないトコでしたね副長」

「・・・ってお前のがよっぽど危ないわぁぁああああ!!!」



平然とした顔で流れてもいない額の汗を拭うフリをするに土方は青ざめながらつっこんだ。



「突然何しやがる!大体敵なんかいねぇじゃねぇか!?」

「何言ってるんですか副長。アナタには見えないんですがあの敵が・・・!!」

「あぁ?」



キッと憎憎しげな瞳を土方の後ろへと向け、その方向を指差す

土方が気だるげに振り返れば、そこにはやはり何もいない。



「・・・何もいねぇじゃねぇか」

「はぁ!?副長何処に目ぇつけてるんですか!?」



それでもあなたは鬼の副長ですか!?土方十四郎ですか!?男ですかぁぁああ!!?

と、なんとも横暴な言い分でまくしたてる

そのあまりの迫力にはさしもの真選組鬼の副長もたじろいだ。



「んなこと言っても・・・」



改めてまわりに気をつけてみるがやはり怪しい気配はない。

それどころか皆昼の見回りで出払っているため隊士の気配すらほとんどない。

・・・まさか俺がこの女に気配を悟る能力が劣っているとでもいうのか・・・。

思考の結果辿り着いた衝撃的な結果に土方は口元を引きつらせた。



「あれ!!あいつらですよ副長!!」

「・・・・あ?」



再びが指し示す方向に目を凝らす土方。

だがしかし、やはりそこには人っ子一人いなかった。

一体何なんだ。もしや自分は総悟あたりの策略でからかわれているのでは・・・。

いい加減土方がそう疑いだした頃、ふと耳にブゥゥンという低い羽音が聞こえた。

それは夏になると現れ、人間の血を啜り、人の血によって得た栄養を糧に子を産むアレによる羽音だ。


・・・まさか・・・・



「・・・オイ、その敵ってなぁでかいのか?」

「いいえ」

「・・・空中を飛ぶか?」

「はい」

「・・・人の血を吸うか?」

「えぇ、勿論!!だからこその敵です!」

「・・・そいつは人間か?」

「まさか!!とんでもない!」

「・・・・・・・」

「副長?」



不思議そうに小首をかしげる

そんなをしりめに、土方は半ば呆然としていた。

どうりで見つからないわけだ。何せ自分が捜していたのは人間なのだ。

これでは見つかるわけがない。・・・そう、が敵だと刀を振り回していた相手は何を隠そうただのなのだ。

いっその言葉を真面目に聞いた自分が馬鹿に思えてくる。



「おーい?副長ー?」



立ったままついにくたばっちゃったんですかぁー?

そう言いながら土方の前で自分の手をヒラヒラと振る

何処までも自由奔放なについに土方もキレ、




「アホかお前はぁああああ!!ンな事で刀振り回すんじゃねぇえええ!!!」






屯所内に土方の怒声が高らかに木霊したのだった。














End











あとがき
何か最近しり切れトンボな話し多くてスイマセン;
あー起承転結がないですね_| ̄|●|||
このネタはある夏の暑い日に紅が蚊に刺されたことから思いつきました。
本当はもっと色々盛り上げたりとか考えたんですが・・・。
そうすると長くなるのでカットしました(殴

まぁなにはとこあれ、サイト一周年有難う御座いました!

紅牡丹