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| 未払い賃金、未払い残業代問題 |
西武自動車(株)は労働基準法通りに賃金を支払っておりませんでした。
私たち組合は団体交渉において話し合いの中で解決するよう会社側へ強く求めましたが、会社側は労基法違反を認めようとしないばかりか、悪戯に時間を費やし、時効消滅狙いともとれる引き伸ばしを画策したため、2010年4月14日、提訴に踏み切りました。訴訟の中で争われている労基法違反は大きく別けて4項目あります。
残業代計算の基礎参入問題
西武自動車(株)の労働条件において、路線バス運転士の賃金は
1、日額基本給(初任7,000円〜)
2、乗務手当(歩合給)
拘束11時間30分未満のダイヤ(日額・固定給部分2,000円)
拘束11時間30分以上のダイヤ(日額・固定給部分5,000円)
3、無事故成果手当(月額3,000円)
4、家族手当(月額・妻帯者一律5,000円)
5、交通費(月額・上限5,000円)
6、各種割増賃金(時間外・深夜)
上記6項目によって構成されています。
ここで問題なのは上記2の乗務手当の固定給部分を残業代計算の基礎に参入していなかったことです。会社側は「あくまでも歩合給である」と主張していますが、裁判の中で判事は「乗務手当(歩合給)の8割以上を固定給が占めているとなると、これを歩合給といえるかは疑問である。」「路線バスの運転士は決められた路線、時間、停留所でしか業務を行うことはできないのであるから、歩合給制度そのものを疑う」と発言されました。
変形労働時間制にするための成立要件問題
西武自動車(株)は変形労働時間制にするための成立要件を満たしていないにも拘らず、変形労働時間制を採用していました。
| 変形労働時間制とは? |
労基法32条において、労働時間は1日8時間、週40時間以下と決められています。これを超える時間を労働させた場合は、時間外労働となり、時間外手当が発生します。
しかし、業態によって法定労働時間が業務に適さない場合があります。例えば旅館などの業種で「1週間のうち月曜日から木曜日までは暇、金曜日から日曜日にかけて一気に忙しくなる」といったような場合です。そのような業種は変形労働時間制にするための成立要件を満たす事で、特定する日が8時間を超えていても、1週間の労働時間が40時間以内に収まれば時間外手当を支払わなくて済む(週の変形制の場合)という使用者にとって有利な制度です。 |
この変形労働時間制にするためには以下の法令を遵守しなければなりません。
労働基準法
第32条の2 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が前条第1項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。
2 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。 |
昭和63年3月14日基発150号・平成11年3月31日基発168号
始業・終業の時刻等が勤務態様等により異なる場合
一 同一事業場において、労働者の勤務態様、職種等によって始業及び終業の時刻が異なる場合は、就業規則に勤務態様、職種等の別ごとに始業及び終業の時刻を規定しなければならない。 二 しかしながら、パートタイム労働者等のうち本人の希望等により勤務態様、職種等の別ごとに始業及び終業の時刻を画一的に定めないこととする者については、就業規則には、基本となる始業及び終業の時刻を定めるとともに、具体的には個別の労働契約等で定める旨の委任規定を設けることで差し支えない。 なお、個別の労働契約等で具体的に定める場合には、書面により明確にすること。
三 前2項の適用については、休憩時間及び休日についても同様である。
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上記の通り、変形労働時間制を採用する場合は労働時間、休憩時間及び休日を就業規則にあらかじめ特定する必要があります。しかし、西武自動車は就業規則にダイヤに伴う休憩時間の特定をしていません。休憩時間については「1:00」と記載があるのみです。
会社側はこれに対し「被告会社における労働実態は特殊であるから、就業規則で労働時間を特定することは不可能である。」と開き直りともとれる反論をしてきました。であれば変形労働時間制にしなければ良いだけの話です。また3月22日の地裁にて会社側代理人弁護士は、「一部の同業他社でも変形労働時間制にしている」と発言。「他の会社だってやっているんだから良いでしょ!」とはいきませんよんね。
この問題は西武自動車の労働条件下だけでなく、西武バスの労働条件においても変形労働時間制としていますので、皆さん裁判の行方を注目していてください。
折り待ち時間問題
これは の「休憩時間の特定」という観点に付随しますが、折り待ち時間は休憩時間とは異なります。路線バスは終点に到着後、折り返し、ダイヤに従い次の目的地まで運行します。終点到着時刻から次の出発時刻までの時間を「折り待ち時間」と言います。折り待ち時間には
@お客様が降車される時間
A次の運行系統にご乗車いただく時間
Bお客様からの問い合わせ対応
Cお体が不自由なお客様がお並びの際の乗車補助(スロープ板の準備)また、その注視
Dパスモ・スイカ等のチャージ業務(以前はバス共通カードの販売)
などを行います。ここまでで軽く列挙しただけでも実労働時間であることは誰が見ても明らかです。しかし、西武自動車はこの折り待ち時間の15分以上のものを全て「休憩時間」として取り扱い、遅延発生時のみ遅延分数分を支払うとし、それ以外の賃金は支払っていませんでした。
判例をひとつ紹介します。
大阪淡路交通事件・大阪地裁判決(昭和57年3月29日)
※該当部分のみ引用
「駐、停車時間についてみるに、(人証略)によれば、運転手は、駐、停車時間(配車地における場合を含む)においても、客とのスケジュールの確認、客の乗降の安全の確認、車輛の清掃、点検、車輛の内外の監視、駐車場の整理に伴う車輛の移動、車内に残留ないしは途中で車内へ戻ってきた客との応接もしくはその安全の確保、客の要請によるなどの運行スケジュールの変更への対応の準備など、運転そのもの以外の付随的作業をなすことや、いつでも運行できるよう待機する必要があることが認められ、右各証言中、右に反する部分は措信できず、その他に右認定を左右するに足りる証拠はない。 それによれば、右駐、停車時間は、労働時間であるというべきであって、それを休憩時間とする被告の主張は理由がない。
なお、右各証拠によれば、右駐、停車時間において、運転手は、食事をしたり、他の私用を足したりし、時には仮眠(これは、運転の安全を確保するための運転者の義務であることもあるが)もできる場合もあり、駐車場や休憩所が完備している場所での駐車時間においては、運転及びその付随作業から長時間解放され、運転手の自由になる時間が多いことが認められるが、しかしながら、そのようなことがあるからといって、労働密度が薄いか、たまたま休憩時間と同様の状態が生ずるに過ぎず、前記認定にかかる駐、停車時間の性質自体を左右する事由とはいえず、従ってそういったことを考慮して、労働基準法所定の休憩時間のとりかたを運転手の裁量に委ね、乗務時間のうち一定時間を休憩時間とみなす扱いをする余地は認められるとしても、その限度を超えて、右駐、停車時間の全部を休憩時間とすることは認められない。」 |
これは観光バスにおける判例ですが、当該訴訟においても該当する内容です。
では、どのような労働実態であったのかを具体的数値にてお見せしましょう。
実際に存在したダイヤのほんの一例が…これだぁ
| 表1 |
出勤時間 |
退社時間 |
拘束時間 |
休憩時間 |
折待時間 |
実働時間 |
| @ |
7:20 |
22:35 |
15:15 |
1:49 |
3:26 |
10:00 |
| A |
7:51 |
22:22 |
14:31 |
1:49 |
3:48 |
8:54 |
| B |
8:05 |
19:33 |
11:28 |
0:46 |
3:17 |
7:25 |
| C |
10:40 |
21:08 |
10:28 |
0:52 |
2:34 |
7:02 |
就業規則上では@・Aを通常ダイヤ、B・Cを午前ダイヤと明記してあります。
15時間も拘束されて通常ダイヤ…え?通常なの?と思われますよね。西武自動車ではこれが通常として認識していました。従ってB・Cのような11時間30分未満のダイヤを従業員間では俗に「半日ダイヤ」と呼んでいます。
当ホームページをご覧の皆さん、ここから更に仰天してください。
でご紹介した「西武オリジナル・なんちゃって変形労働時間制」によって残業代が削り取られていきます。運転士は勤務ローテーションによってそれぞれのダイヤを各々が担当していきます。私たちはこれを「回り交番」と呼んでいますが、上記表1のダイヤで例えるならば
@→B→A→C
のようにローテーションが組まれます。
1日の所定労働時間を8時間としているので、
@実働10時間 →2時間超過
B実働7時間25分 →35分不足
A実働8時間54分 →54分超過
C実働7時間2分 →58分不足
となり、@・Aで「折り待ち時間を休憩時間」として引かれながらも、残業時間となった2時間54分は、B・Cで不足となった1時間33分が差し引かれ、1時間21分が残業代として支払われるのです。拘束時間を見てください。どれも10時間を超え、4日間で52時間42分も拘束されながらも残業時間はたったの1時間21分です。まさに奴隷労働です。
サービス残業問題
これは読んで字の如く、業務を遂行させておきながらも賃金を支給していなかった問題です。1つ目に西武自動車は出庫前に要する準備作業時間を15分とし、それ以上の賃金は一切支給していませんでした。出庫前作業には、アルコール検知、私金預け入れ、点検着着用、運行前点検(点検時に球切れ等が発覚した場合はその交換作業等)、始業前点呼を行います。この一連の作業を15分で行うことは不可能です。従って従業員は少し早めに出社し、作業に取りかかっています。
訴訟を起こす前の団体交渉において、会社側代理人弁護士は「社会通念上15分で間に合う」と発言しました。しかし近隣同業他社12社を調査したところ、20分〜30分、親会社である西武バス(株)でさえも20分です。どこが社会通念上なのでしょうか。提訴後、会社側は「出勤〜出庫まで15分で出来るDVD」を作成し、証拠として提出してきました。しかし、球が切れているのに「良し」と言っていたり、走りながらオートコーダーの端末を入力したり、料金機の上に携行品ホルダーを置いたまま動き出した為に携行品ホルダーが下に落下する等々、非常に残念な作品でした。某営業所の方が会社に指示されてやらされたのでしょうけれど、無理もないですよ。15分で出来ないものをやれと言われたんでしょうから。裁判の中で判事はDVDを見ながら「トイレに行く時間は?」や「座席やミラーの調整してないですよね」などダメ出しされていました。また「制服の着用を義務付けているんですよね。制服に着替える時間は?」との質問に対し会社側代理人弁護士は「制服で出勤することを認めてますので」と回答しましたが、「それは従業員さんが家から着てきてくれているから間に合っているだけですよね」と更につっこまれていました。なによりも点検時、車輌に不具合が発覚した場合の対処ができません。このことについて会社側は「不具合が発覚した際は、点検済みの予備車がある」などと反論してきましたが、予備車の点検は午前ダイヤの運転士が出庫し、ある程度落ち着いてから事務員が行っていたものです。仮に予備車があったとしても、荷物を持って予備車へ移動し、一度セットしたシートポジションやミラーの位置、座布団やマイクなどを再度セットし直すだけでも相当な時間がかかります。定時に出勤し、そんなことをしていたら確実に出庫時間に間に合いません。時間的に車輌に不具合が発覚した場合の整備となんら違いはないのです。
また、入庫してから乗務員は給油、金庫の清算、車内清掃、汚れのひどい日は洗車機、整理券の廃券・補充作業、運行途中にてバルブ等の球切れが確認できた時はその交換作業、日報の整理、アルコール検知、終業点呼を行います。また、苦情等があればその事情聴取などもあるのですが、西武自動車は退社までを10分のみで計算してきました。当然、定刻通りに退社出来ることは殆どありません。
| 4月16日の朝日新聞(多摩版)にこんな記事が出ていました。 |
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就業前後の着替え・移動「労働時間に含む」
審査会 過労死の運転士巡り
京王電鉄バスグループの京王バス東(府中市)に勤務し、07年に過労死と認定された男性運転士(当時32歳)について、労災保険の不服審査を行う労働保険審査会が「就業前後の着替えや、点呼の場所までの移動は労働時間に含まれる」とする裁決をしていたことがわかった。この裁決を受け、男性の遺族に15日、遺族補償年金などの差額分となる約75万円が支給された。裁決は昨年1月27日付。遺族の代理人で東京過労死弁護団の尾林芳匡弁護士は「支払いまで時間がかかったが画期的な裁決。今後バス職場の労働時間と賃金にも影響するだろう」と話している。 (記事より一部抜粋) |
2つ目は、警察講習や消防員による火災予防講習、また役員巡視の際の講話等がある場合、午前ダイヤ終了後に出席可能者を掲示板に貼り出し、出席を強要していました。会社側はこれを「任意参加」としてきましたが、過去に欠席したことを理由として一時金を3万円も減額された従業員もいることから、これは「任意」ではなく、一時金の査定をちらつかせた、言わば脅迫による「強要」に他なりません。
実際に貼り出された掲示物
「出席可能者は必ず出席して下さい。」
「やむを得ず欠席する場合は、予め所長まで申し出てください。」
ここまで指示しておいて「任意」と言えますか?
※ この警察講習に出席しても残業代は一切支払われません。 |
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また、班別業務講習会といった会議が約二ヶ月に一度程度あるのですが、8名前後いる班員が全員集まるまで始められないため、13時頃に入庫した運転士は15時頃まで約2時間近く待機させられます。その待機・拘束時間は一切考慮されず、会議が始まってからの1時間半分のみが時間外として支給されてきました。
以上4項目が現在、東京地方裁判所立川支部において争われています。 |
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