清谷春樹の研究活動(邦語版のページ)


ディスカッション・ペーパー等

「人的資本に基づく技術移転理論は各国の所得 格差を説明するか:動学パネル分析による検証」
経済財政分析ディスカッション・ペーパー DP09/1, 内閣府, 2009年 (青木大樹氏との共著)


【要 旨】

各国の所得格差の大部分は生産性の相違によって説明されてきた。生産性の源泉とな る新技術は、潜在的には世界中の誰もが利用可能であるが、それらの波及過程に障壁が ある場合には、各国の所得格差が長期的にも解消されない。近年の経済成長理論は、新 技術の利用可能性の決定要因として、人的資本の果たす役割を強調してきた。こうした 理論の現実的妥当性を否定する実証研究も少なくないが、その原因の一つに推計式と理 論との整合性の欠如を挙げる有力な指摘がなされている。本稿では、観察不可能な変数 が各国経済に及ぼす影響のコントロールと、現実の所得水準の定常状態への移行過程の 定式化の双方を可能とするパネル・データ分析の手法を応用して先行研究の発展を試み た。その結果、人的資本に対する投資意欲の格差は所得格差の重要な要因であり、新た な生産技術が世界中に速やかに波及し、各国の所得格差が縮小に向かうためには、低所 得国において貯蓄性向のみならず人的資本に対する投資意欲の向上が不可欠であるこ とが判明した。他方、これら以外の各国固有の要因によって所得格差が生じている部分 も無視できないほど大きく、これを明示的に取り扱うことが今後の分析の課題となるこ とも示唆された。

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「景気循環成分の推計精度:シミュレーション手法によるGDPギャップの信頼区間の導出」
ESRI Discussion Paper Series No.194, 内閣府経済社会総合研究所, 2008年  (浦沢聡士氏との共著)


【要 旨】

今日の景気循環分析における枠組の多くは定常なデータを取り扱うことを前提に設計されているが、現実の経済統計の多くは非定常過程に従うことから、ホドリック=プレスコット・フィルターや周波数領域分析等の各種フィルターを用いて非定常なデータからトレンド成分と循環成分を抽出した上で分析を行うことが実用面において広く普及している。他方、時系列分析の理論研究は、和分次数が1次の非定常系列に対するこれらフィルターの適用が原系列の循環成分の性質を歪める効果をもつ等の問題点を指摘しており、抽出された循環成分は一定の推計誤差を伴うものと解釈する必要がある。 本稿では、こうした理論研究からの警鐘を応用研究において考慮に入れることを目的として、各種フィルタリング手法によって抽出される循環成分の精度を明らかにする方法を提唱する。具体的には、モンテカルロ法やブートストラップ法といったシミュレーション手法の適用による循環成分の繰り返し再推計を実行することで、循環成分の推計値の信頼区間を構築する。応用例として、1980年代以降の我が国の実質GDPに対してこの手法を適用したところ、その循環成分であるGDPギャップの推計値には、上下1%程度の推計誤差を伴うことが判明した。

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「資産価格決定理論から見た安全債券利子率と経済成長率の関係」
経済財政分析ディスカッション・ペーパー DP08/1, 内閣府, 2008年


【要 旨】

本稿は、標準的な一般均衡理論の枠組みに依拠して安全債券の利子率の決定について の分析を行う。経済成長に伴い消費量が拡大する経済においては、危険回避的で消費の 平準化を望む家計は、貯蓄を行うよりも借入を行って現在の消費を増やすことに魅力を 感じるため、債券保有を動機付けるために高い収益率が要求され、物価連動債の均衡利 子率は成長率を上回る。他方、物価変動に不確実性のある経済において、物価と経済成 長との相関が十分に強い場合には、名目安全債券の均衡実質収益率が低下し、名目利子 率が一人当たりの名目成長率を下回る可能性がある。しかしながら、1980 年代以降の 日本経済のデータを用いた数値シミュレーションの結果によると、貨幣乗数の大幅な低 下のリスクが均衡名目利子率を引き下げる要因となるものの、平均的には名目利子率は 一人当たりの名目成長率を上回るとの結果を得た。

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