激闘豪丸狩23
 
 
H21.2.21
 
 

その昔、水面乃乱史上、最も反響を呼んだ物語があった
 
そして誰もが、その存在すら忘れかけていた
 
今日
 
あの物語が帰ってくる
 
誰も 待ち望んでなかったとしても・・・
 
 
 
僕の名前は KEY-BOW
 
イカれたハゲ野郎のタックルボックスに住んでいる
 
エアストリームの去年の10月に発売されたモジモジリアクションルアーだ

ハゲ野郎は、道楽フォトダービーとやらに出場する為、僕と友達のシニカケ君を購入した
 
その日以来、ハゲ野郎はストロングスタイルだか何だか知らないが、いつもシニカケ君と仲良くラインに結ばれている
 
ハゲ野郎の釣りは静寂と喧騒、そして、繊細かつ大胆・・・感情の起伏が激しい
 
いつも奥の奥まで入れたがるキャストのせいで、木に当たりながらも更に奥へ
草木をくぐりながらも更に奥へ
 
岩肌、岩盤おかまいなし ドン際に落としてナンボと思っている
ブッシュジャングリラの僅かな隙間や、懐の深いオーバーハングに狙いを定めた時は祈るしかない
 
ハゲ野郎は、自分のミスキャストを僕のせいにする・・・
キャストが決まらない時が連発しようもんなら、おもいっきり・・・水面に叩きつけられたりする・・・
 
僕には兄さんがいたんだ・・・
去年8月に、少量で発売されたんだ
 
兄さんは、ある意味幸せだったと思う
お魚さんに切られて、ハゲ野郎から解放されたのだから・・・
 
さぁ ルアー虐待物語の始まりだ!
今日は風が強い
 
浮き輪なので、ボートに比べればポジションも近いので、多少の安心感はあるのだが・・・
 
ハゲ野郎は、メインの風の当たりの強い場所を避け、風裏のワンド内に侵入した
 
ポチャーン・・・届いてない?・・・きっと僕の20センチ後ろの石の窪みに入れたかったのだろう・・・
ポチャーン・・・?・・・後10センチでドン際なんだけど?・・・納得してないのか?
ポチャーン・・・岸から15センチ離れてる?・・・エッ!?・・・アクションしないの?・・アッ!?・・・息もできない程の回収
 
親「オメェ、コラッ・・・大概にさらしとけよ・・・」
 
僕が悪いのかい? そんなの絶対おかしいよぉ・・・
 
ヒユュュュ〜
 
ガツッ!・・・痛っ・・・始まった・・・ハゲ野郎は僕を岩肌にぶつけ出した・・・
ガチャガチャ ガチャガチャ・・・岩の切れ目に挟まって動けないよ・・・頼む!何とか取れてくれ(汗)
ガチャガチャガチャ ガツッ!!・・・完全に挟まった・・・何故だろう・・・汗が止まらないよ(大汗)
 
ハゲ野郎は、おもいっきり竿を動かし引っ張り倒す
足ヒレを漕いで、近寄って来る事はしない
いわゆる・・・奴が言う・・・ゴリゴリのゴンゴンてやつだ
竿を一直線に、リールをひたすら巻きながら超引っ張り力で浮き輪ごと近寄って来る
 
そう・・・鬼の形相で・・・
 
親「ええ加減にさらしとけよコラァ
 
キャストすると思いきや、おもいっきり水面に叩きつけられ 一瞬脳しんとう・・・
すぐさま間髪入れずのド・ライナーキャストで岩肌にブチ当たり・・・そして跳ね返り、石に頭を強打した僕は意識を失った
 
どれ位、意識不明だったのかは憶えていない
 
少しずつ戻りかけた意識の中で・・・
 
強烈な異臭が、僕の意識を完全に取り戻した!?
臭過ぎる・・・一瞬で悟った・・・この臭い・・・ハゲ野郎のヨダレ
頻繁にラインチェックするハゲ野郎は、傷付いた部分を切り、結び直す
そして締め込む際に・・・潤滑油?・・ヨダレが?・・急速酸化の凄まじい臭い・・・
 
ややラリリ気味ではあるが、完全に意識は戻った
 
何だ!? ハゲ野郎の猛烈な殺気を感じる!!
何?
 
何で投げないの?
 
見てるだけ?
 
ヒュュュ〜     バサッ!!
 
ハングに捕まったよ・・・息を飲む
 
カサカサカサ
 
何だ!?このソフトな扱い?
 
カサカサ ポチャン ーーーー
 
一級ポイントと思い込んでるんだね?
 
静か過ぎるよ
 
親「お前殺すぞ!ちゃんと入れ!」
 
だから、何で小声なん?
 
見てる見てる 見てるよ・・・
 
無駄打ちはしないつもりなんだね?
ヒユュュ〜 ポチャカチンッ!
 
痛っ・・・ちょっとお尻をぶつけたけど・・・
 
うっ!?
 
いるよ・・・お魚さんが、こっち見てるよ(汗)
 
じっと見てるよ
 
まだ、動かさないのか?
 
モゾッ モゾッ ヒラヒラ(水中)
 
ハンドル1/6回転の45度角・・・モジモジの首振り・・・見てるよ〜見てるよ〜
 
モゾッ ヒラヒラ
 
来る!?僕は目をつぶった
 
モワァ!!
 
つっついただけだ・・・心臓がバクバクしてるよ(大汗)
 
親「・・・もうたのぅ」
 
まだ見てるよ!!急速ハンドル1回転だよ!!早く!!
 
ジュボカチン!
 
グボッ!!
 
お魚さんと一緒に、水の中だ
 
大きいお魚さんだよ
 
兄さん?・・・どうやったらハゲ野郎から逃げる事が出来るんだい・・・
 
息が苦しいよ・・・でも・・・僕は、ずっと前から覚悟はできてるよ
 
水の中へお魚さんに連れて行ってもらって・・・これこそが・・・安楽死じゃないのかな・・・
 
ウッ!?
 
ハゲ野郎の手が伸びてきた!!
 
親「アホんだらぁ〜 見たか!握力MAXランディング〜」
親「あるかなぁ〜・・微妙やのぅ」
 
水の中で・・・色々考えてはみたものの・・・
 
やはり・・・なかなかお魚さんに連れて行ってもらえるなんて事は、滅多に無く・・・
 
ブツブツ ブツブツ 独り言を言いながら、何回も計っているハゲ野郎が目の前にいる
 
これが・・・現実です
 
親「・・・あるわ・・・あるある・・・待てよ・・・もっぺん計るか・・・ある・・・あるわ」
ラインを切る?
 
僕はBOXに戻された
 
はぁぁぁぁ〜 大きなため息が出た
 
同居人のみんなが、痛々しそうに僕を見る
 
キーボー君、次は僕の番だ
 
シニカケ君は、力強い眼差しで僕を見つめ・・・ハゲ野郎に連れて行かれた
BOXの中から耳を澄ますと?・・・何やら一人言を言ってるようだ・・・
 
親「お〜さむっ・・・何じゃこりゃホンマにぃぃ・・・穴空いとるやんけ・・・」
 
バカ長靴に穴が空いてるみたいだ!
 
親「お〜さむ〜・・・うぅぅぅぅ〜・・・」
 
ざまあみろ!だ
 
BOXのみんなもクスクス笑ってる
 
淀川君だけ?・・・笑ってないぞ!?
 
淀川君?どうしたんだい?
 
川にハマっても、そのままズブ濡れで釣りを続ける奴が・・・たかだか右足だけの水の侵入で・・このまま帰るとは思えない
 
BOXの中から笑い声は消えた・・・
 
季節は夏だったのかい?
 
いつだったかの・・11月の終わりだったよ・・
 
親「こらぁホンマにぃぃ・・・アホんだらがぁ・・・」
 
シニカケ君が、戻って来た
 
BOX内のみんなの、高鳴る鼓動が響いていた
 
おかしい?
 
誰も連れていかれない?
 
漕ぐスピードが速くなっている・・・
 
やめるのか?・・・
 
シニカケ君も、1バイト取ったらしいが、水中には引きずり込まれなかったようだ・・・
 
そして・・・リアペラを折られ・・・BOXに返って来たみたいだ・・・
親「あかん・・・やめや・・・帰ろ・・・」
 
みんなは顔を見合わせた!
 
珍しい!
 
だけども、僕等にとっては喜び極まりない!
 
僕の名前は KEY-BOW
 
イカれたハゲ野郎のタックルボックスに住んでいる
 
お魚さんを連れて来ても・・・いつも小さいだのブツブツ言われ
お魚さんが外れた時は、罵声を浴びせられ、水面に叩きつけられ
 
ハゲ野郎の所へ来てから1ヵ月でフロントヒートンは折られ
リップとラインの干渉防止で、変な針金を付けられ
ブレードのスイベルのリングがフックにやたら入りこむとか何とかで
お尻にドリルを突き刺され、体をエグられ、カップリグを詰め込まれ
 
今日まで僕が連れて来たお魚は24匹
 
ハゲ野郎の傍で働く位なら、ラインブレイクされ、お魚さんに持っていかれたい
そして、自然の中で朽ち果てていくのも悪くないかも・・・
 
ふぅ・・
 
恐ろしい道楽フォトダービーが終わる迄は、引退はさせてもらえないようだ・・・
 
また・・・鉄板のサビたベットで・・・出番を待つとしよう
 
誰か・・・僕がナチュレになってしまう前に・・・助けて下さい・・・
 
 
つづく・・・ のか?


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