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激闘豪丸狩其のI
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TOMの野郎はいつも俺を使う。
先日、俺がバイトを誘ってやったのに、へたくそフッキングで獲物は逃げていった。
しかもブチコミキャストのおかげで俺の体は傷だらけ。
魚も持ってきていないのにボロボロだ。
正直、そろそろ引退したいと考えており、ついにそのチャンスが訪れた。
時は4月8日、暖冬の影響で早咲きの桜が満開の日曜午後、
TOMとISAO(from 大阪)が1ラウンド目を終えて、2ラウンド目も終盤に差し掛かったあたりからの実況をお伝えしたい。
午前10時、俺は花見もしないで釣りに興じるあほ二人の会話を聞き流しながら、
タックルボックスの中でゆっくり流れる時間に身をまかせていた。
TOM:あー、マズメも終わったし、もー最後のワンドやなぁ。この池魚おるんかいな?
ISAO:こら!大阪からきてんのに魚いてない池で釣りやってんのんか!?
TOM:いやそんなことは無いけどね・・・ まぁこのワンドでびしっと決めるで見といてや
ISAO:若干キャストむずいんちゃう? すり抜けええルアーにしときーや。
TOM:そやね。ほな淀川くんやね。
俺の出番がやってきた。
俺は待ってましたとばかりにリアペラの準備運動を開始した。
ISAO:ボロボロやん、その淀川。結構釣ってんの?
TOM:・・・・(知らん顔) では、一投目。ワンド手前から。
TOMが俺を投げる。
木が目の前に迫る。
俺は木の枝に激突した。
痛い。
TOMよ、木ではないぞ、奥を打て!
TOM:よし、次、一番奥いっとくわ。必殺バックハンド!それ!
ISAO:おお、ナイスキャスト!
TOMは久々に俺をスィートスポットに着水させた。
これでこそやっと俺の仕事ができる。
波紋が落ち着き体制を整えた瞬間、右下から鋭い視線と殺意と食欲を感じた。
丸々と肥えたブラックが俺をまさに食事として認識している。
よし、こいつを捕って俺は引退だ。
いくぞ!
渾身の力を振り絞って首を振り、ペラをまわした瞬間・・・
グァバッ!
よし、TOM、いまだ!あわせろ!
TOMが必死の形相で竿を立てた瞬間、俺は前足でデカバスの堅いアゴを貫いた。
ゴルゴ13並みの完璧な仕事ぶりだ。
あほトムは大騒ぎしてやがる。
俺のパーフェクトな仕事の後は、もはや巻くだけだというのに。
TOM:よっしゃー!フッキングばっちりやー!
ISAO:ぐえ!TOMやばいんちゃう?でかいんちゃう?
TOM:こいつは50あるで!うひょー、ひっきよるわー!慎重に慎重にや。こいつは死んでもとらなあかん!
ISAO:おおー!でかいぞー!
TOMはバスの口に手を伸ばす。
勢州水面名物、握力マックスランディング。
TOMは初めて使ったはずだ。
TOM:うぉーーーーーー!
ISAO:くわぁ!やったな!
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俺の活躍で釣れたにも関わらず、TOMは自分でやったことのように騒いでやがる。
まぁ、よしとしよう。
これで俺もブッシュに叩き込まれることもなく、岩盤に激突させられることもなく、平穏な日々をすごせる。
TOM:おー、この淀川使いまくって、やっとこいつでとれたわー。これからもガンガン活躍してもらおー!
ISAO:せやな、黒は効くな、やっぱり。
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この分では、まだ引退させてもらえないようだ。
俺にはまだまだ休息が訪れそうにもない。
またコルクのベッドで出番を待つとしよう。
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