待ち続けるということ

 

「さてと・・・今日の特売はこんなもんですかね」

「ねーねー、まだトリササミが残ってますわー」

最近、そんな彼女らをよく見かけるようになった。
沙都子は、詩音が世話を焼くようになってから、随分と素直に笑うようになった。
沙都子に「ねーねー」と慕われるようになった詩音も、母のような心の強さが見え始めている。
そんな二人の姿は、見ていてとても微笑ましいものだった。

「おーす、晩メシの買い物か〜」

先ほどまで目で追っていたのだが、偶然今気が付いたかのように二人に声をかけた。

「あ、圭一さん。今日はねーねーと一緒に天ぷらを作りますのよー」

「ええ、かぼちゃもたっぷりありますしね」

「ふぁぁぁっ!?ねーねーがイジワルですわー」

こういうネタで沙都子をからかう詩音も、今では見慣れた風景だ。

「・・・相変わらずだなぁ」

「・・・悟史君が帰ってくるまでに、沙都子の偏食をなくさないといけませんから」

人差し指を口の前で立て、詩音が片目を瞑って笑う。

「沙都子ぉ、お前頑張って好き嫌いなくさないと、そのうちかぼちゃ料理以外作ってもらえなくなるぞ〜?」

「ふぁぁっ かぼちゃは苦手ですわー」

はやくも半泣きになりかける沙都子を見て、詩音と二人で笑い合う。

「沙都子、頑張ってかぼちゃを食べるなら・・・ねーねーも頑張っておイモの天ぷら作ってあげますよ?」

「ふぇ・・・おいも?」

「ええ、ねーねー腕によりをかけちゃいますよ?」

詩音がその細い腕で力瘤を作るアクションをする。
随分と「ねーねー」が板についてきたものだ。

「・・・おイモのために頑張りますわー」

「よしよし。その調子でアスパラとかピーマンとかも、どーんと乗り切ってくれると嬉しいんですけどね〜」

「ふぁっ!?いっぺんに全部なんて無理ですわー!?」

興宮に戻ってきたばかりのころは、料理がお世辞にも上手とはいえなかった詩音。
悟史に頼りきりで、不安定だった沙都子。
その二人が、悟史の帰りを待つためにここまで強くなれた。
正直、人間って凄いな・・・とすら思った。

「圭ちゃん?」

「ぼーっとして、何かありましたの?」

そんなことを考えていた所為か、少しボーっとしていたらしい。
二人が心配そうな顔をして俺を見ている。

「・・・いや、美味そうだなと思ってな。詩音の天ぷら」

さっきまで考えていたことは、口に出すべきじゃない。
俺は精一杯に笑ってみせる。

「当然ですよ〜。沙都子の偏食を治さなきゃいけないから、料理に関しては猛勉強してるんですから」

「最初のころのねーねーは目も当てられませんでしたわよ?ふふふっ」

詩音がえっへんと胸を張ると、間髪居れずに沙都子のツッコミが入る。

「沙〜都〜子〜・・・かぼちゃフルコースがお望みですか〜?」

「ふぁぁぁっ!?すぐにかぼちゃを持ち出すのは卑怯ですわ〜!?」

・・・楽しそうにじゃれあうもんだ。

「沙都子が食わないなら俺が食う!むしろ俺に食わせろっ」

楽しそうな二人に、俺も積極的に混ざる。

「圭一さんに食べさせるおイモはありませんわー!一昨日おいであそばせ」

「あら、かぼちゃを食べない沙都子にはおイモもありませんよ〜?」

「うははははっ!かぼちゃもイモも食い尽くしてくれるわぁ!」

自転車のかごに特売品。
夕焼けが長く影を引き伸ばす時間に、俺たちはバカ騒ぎをしながら雛見沢に戻る。


・・・なぁ、悟史。
戻ってこいよ。

きっと毎日が楽しいぜ?
沙都子をからかって、詩音と笑い合って、魅音も、レナも、梨花ちゃんも。
皆お前を待ってるんだぜ

こんなにも頑張って、二人は待ってるんだからさ・・・
絶対、戻ってこいよな・・・悟史・・・