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なぜか知らないが、私「園崎魅音」は「前原圭一」と家路についていた。 『俺はこうやって魅音と帰れるのが嬉しい。』 頬が緩んでしまいそうだ。 「でさ、この前貸してもらった漫画の15巻、あそこでああいう持っていき方をするとは思わなかったぜ。いや〜、いいモン読ましてもらった」 ああもう、コッチの気持ちも知らないで楽しそうに話をするナァ。 「・・・魅音、なんか考え事か?」 ついつい圭ちゃんへの相槌がおざなりになってしまったようだ。こういう要らんとこばっかり鋭いんだよね、圭ちゃん。 「ん、あぁ・・・ちょっとね」 それが何かは口に出せないから、曖昧に誤魔化す事にするが 「俺で力になれるなら、何でも言っていいぜ。今日は部活の共有財産なわけだし」 圭ちゃんがニカッと笑ってみせる。 「・・・それに、俺は魅音の「仲間」だからなっ」 ・・・ああもう、こんなコト言われたらぶちまけたくなるじゃないか。 「あ、ああああのさ・・・その、あの、アレさ、アレ」 こういうときに真っ直ぐぶつかる強さも、のらりくらりと誤魔化す狡さも私にはない。というか思いっきりどもってしまった。 「ああ、好いた男の一人も出来たんだな?父さん嬉しいぞ」 「な゛っ・・・」 どうしてこの男はこういう「どうでもいい」時ばかり鋭いのだろう。普段は超が頭につく鈍感なのに。 「・・・で、その相手は誰よ?魅音のことだから年上好みだろうし、葛西さんか?いや、富竹のオッサンか?・・・だが大石刑事は辞めとけ、ハナから不倫はきつい」 ・・・訂正。 「いや、おじさん年はあんまり気にしないんでけどね。どーも相手が鈍くてさぁ」 ちょっと嫌味もこめて言ってみる。 「そーか・・・じゃあ、弁当を作ってやるとかどうよ?大抵の男はこういうのに弱いぜ〜?」 もうやった、もうやったよ前原圭一・・・。 「そ、そういうのもやってみたんだけどねぇ。もうホント、超が付くくらいのにぶちんなんだわ〜。お前はどこのラブコメ漫画の主人公かー!ってくらい鈍い」 「そこまで魅音がやってるなら、気付かないのもおかしいよな〜」 いや、アンタだ、アンタ! 「でも、そんなコトいって・・・魅音のアピール不足じゃないのか?ん〜?」 ・・・この男は・・・ 「いや、おじさんが好きなのはね、実はけ・・・」 二人きりと油断して、自棄になった挙句圭ちゃんを巻き込んで自爆しよう・・・そう思った矢先に、圭ちゃんの後ろの茂みにあるものを見つけた。 「はぅっ・・・圭一君に振り回される魅ぃちゃん・・・かぁいすぎるよぉ☆」 「れ、れれれれれれ・・・」 「蹴れ?」 顔色を真っ赤にしてラ行の四段目を連呼する私を不審に思ったのか、圭ちゃんが私のさしている後ろの茂みに振り向く。 「「レナぁ〜!?」」 「はぅ、バレちゃったかな?バレちゃったかな?」 「みぃ・・・レナは見境という言葉を覚えて欲しいのです・・・」 芋づる式に梨花ちゃんまで出てきた。 「れ、レナ・・・ひょっとして、今まで・・・」 「あはは・・・よく考えればレナの家もこっちだったよ、はぅ☆」 ネコの手で可愛らしいポーズをとって誤魔化そうとしても無駄だ。 「レナぁ〜!そこに直れぇっ!」 「はぅっ魅ぃちゃん怒ってるかな?怒ってるかな?!」 「当たり前だぁっ!」 こういうときばかり素晴らしい逃げ足を発揮するレナを追いかける。 「圭一は、もう少し「おんなごころ」をお勉強しなくちゃいけないのですよ〜」 「梨花ちゃん、今の流れからそう来る理由が分からないんだけど。」 「そこが「みじゅく」なのです、みぃ」 「そっちも微妙に圭ちゃんに吹き込まないっ!」 レナを追いかけながらもう一つの爆弾にも釘をさしておく。 「魅ぃのためなのですよ?」 「俺が女心を学ぶと魅音のため?なんじゃそりゃ」 「・・・みぃ・・・圭一はダメダメだったのです。」 結局、「二人きり」の「夕焼け時」がいつもの帰り道になっちゃった。
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