「悟史くんは・・・どうして私と居てくれるんですか?」

ふっとした疑問だった。

「え・・・いきなりどうしたの?詩音」

驚いた顔で私を見ている。
当たり前だ。
私でさえ、どうしてこんな質問をしたのか分からない。

「いえ、なんとなく・・・なんですけど。私って、ほら、園崎だし・・・ダメな所だっていっぱいあるし、我侭だし・・・その、ぁぅ・・・」

こちらを怪訝に思うような瞳じゃなくて、きょとんとしている感じの目。
私がいっぱいいっぱいになっているのを見て、悟史くんはその手を私の頭に乗せて、優しく髪をなでてくれた。

「・・・詩音はさ」

されるがままにされていると、悟史くんが私の目を見ていた。

「僕のダメなところ、結構知ってるよね」

「い、いえそんなっ」

否定しようにも、いくつか思い当たる。
沙都子に構ってばかりで、私に構ってくれないこと。
誰にでも優しすぎること。
自分の問題は、頑なに抱え込み続けること。

「それが分かったから、僕のことを嫌いになる?」

答えは決まっている。
NOだ。

表情を見て答えが分かったのか、悟史くんはいつもの微笑で私を撫でてくれた。

「つまり、そういうこと。」

ダメなところが多いから、嫌いとか。
そんな駆け引きじゃない。
好きと言う気持ちは、そんなものじゃなかった。
そんなことくらいで変わるものじゃなかったんだ。

「ダメなところがあるのに、なんで?」じゃなくて、好きだからダメなところを見ても、変わらない。
胸の中がじんわり暖かくなって、鼻がツンとする。泣きそうだ。
私一人なら、こんな気持ちにはなれなかった。特別な気持ちになんかならなかった。

好きって気持ちは「桃」なんじゃないかと思う。
確かに、一人で食べることも出来る。
それはちゃんと甘いだろう。

だけど、こうやって二人で共有することで
その「桃」はもっともっと甘く香るし、もっともっと甘くなる。

たったそれだけに気付けなかった私は、あんなことを聞いてしまった。
悟史くんを疑ってしまったというのに。
悟史くんはそんな私を咎めるどころか、「桃」を差し出して一緒に食べようと微笑んでくれた。

ただ嬉しくて泣き出してしまった私に、おろおろしながらもしっかり手を握っていてくれた彼が愛しかった。
優しすぎるところも、頑固なところも。そんな小さなことじゃ、この想いは変えられない。
私が園崎だということも、我侭なところも。彼の想いを変えることは出来ないように。

私達の「桃」は、まだまだ甘く香る。