三日月

 

月は心の奥底にあるものをさらけ出す。

たとえば凶暴性。
人の心の中に眠る破壊衝動や、それに順ずるもの。

たとえば記憶。
悲しい記憶や苦しい記憶、思い出したくない過ち。

私が思い出すのは彼のこと。
鬼隠しにあって、未だ帰ってこない北条悟史君。

銀の光の中で、寂しさに溢れそうな胸を抱える。
でも、約束した。
「沙都子を頼むよ」といった貴方の言葉に、誓った。
だから、貴方が居ない夜だからって、もう泣かないよ?
頑張ってますよ、強くなりますよって、貴方に報告する。
貴方も見上げていますか?この細くて消えてしまいそうな月を。

生きていればまた会えるだなんて、気休めにもならないけど。
貴方が頭を撫でてくれたあの手のぬくもりが、恋しくてしょうがないけど。

 

貴方は、貴方の大事なものを

貴方の大事な人を

たった一人の家族を


私なんかに任せてくれたんだから

 

どれだけ恋しくなったって
どれだけ寂しくなったって
貴方が居ない夜に泣くなんて、出来ない。

頑張ってますよ

私、強くなりますよ

そう言って、浮き彫りになった弱さに立ち向かう。
涙流して、弱くなるのは簡単だから。

貴方が託した大事なものを

貴方が戻ってくるべき優しい世界を

私の手で守っていこう。
貴方が私の手に託してくれたんだから。

壊してしまうのは簡単だ。
恨むのだって、嘆くのだって簡単すぎる。
全てを憎んで、壊してしまうことはあまりに簡単すぎる。

だけど。

私は悟史君との約束を守りたい。
あの笑顔にもう一度会って、頭を撫でてほしい
野球を頑張る悟史君を応援したい。
一緒に夕飯の買い物をしたり、ブロッコリーとカリフラワーの違いを教えてあげたり。

悟史君のいる世界で、もう一度あの笑顔を見つめていたい。

だから、私はどれだけでも強くなれるし、それだけのために守り続けることを誓った。


貴方がどこかで見上げているかもしてない三日月を、見上げて私は弱さと戦おう。

貴方との約束を守るために

貴方の居場所を守り続けるために