La Princesse de Cl'eves |
99/08/15 Ver1.000
02/11/01 Ver1.010
今から、10年ほど前、文献でも紹介している「クレーヴの奥方」を読んだ。興味を持ってもう一度読み返してみる。
以前に挑戦したままだった、本から読み取った人間関係や縁戚関係をここで完成させてみようと思います。
「クレーヴの奥方」の魅力は『野心と色恋は宮廷生活の真髄の如きもの』とありながら、理性をもって自己を抑制したクレーヴ夫人の意志の強さ、平安時代を思わす”ギャラントリー=雅(みやび)”の世界です。訳者によっては翻訳の際、源氏物語を意識したと言っている人もいました。
しかし、フランス文学者ではないので、文学的なことは割愛させていただきます。(爆)
時代背景
アンリ2世の末期1558-9年よりフランソワ2世の即位1559年あたり。
登場人物(名前・呼称は新潮文庫版「クレーヴの奥方」(青柳瑞穂訳)に準じる)
中心人物3名
シャルトル嬢 |
主人公。クレーヴ公と結婚して”クレーヴの奥方”となる 母親のシャルトル夫人とともに架空の人物である ただし、アンヌ・デステがモデルになったとも言われている |
|
クレーヴ公 |
ジャック・ド・クレーヴ |
1544年に生まれ、ディアヌ・ド・ポワテェの孫娘ディアヌ・ド・ラ・マルクと結婚し、1564年に20歳そこそこで亡くなっており、影も薄いので作者ラ・ファイエット夫人が脚色を加え、小説の主人公に選ぶことができた。 |
ヌムール公 |
ジャック・ド・サヴォア |
1531年生まれ、1566年にギーズ公未亡人アンヌ・デステと結婚し1585年になくなった。 |
王家・王族の人々
王様 |
アンリ2世 |
|
王妃 |
カトリーヌ・ド・メディシス |
”猜疑と嫉妬と気位で凝り固まっている”イタリア人で王妃 |
フランソワ1世 |
アンリ2世の父親 | |
皇太子妃 |
(メアリ・スチュアート) |
スコットランド女王 |
皇太子 |
フランソア(2世) |
アンリ2世の長子 |
| エリザベート皇女 | 王の第一皇女 | フェリペ2世と結婚する |
王の妹の内親王 |
マルグリット |
フランソア1世の娘でアンリ2世の妹。サヴォア公へ嫁ぐ |
クロード内親王 |
王の第二皇女 |
ロレーヌ公と結婚する |
ディアヌ皇女 |
ディアヌ・ド・フランス | アンリとピエモンテのさる婦人から生まれた庶子 |
ナヴァル王 |
アントワーヌ・ド・ブルボン |
ヴァンドーム公。アンヌ・ダルブレとの結婚によりナヴァール王となる |
ナヴァル女王 |
ジャンヌ・ダルブレ |
ナヴァール女王 |
コンデ親王 |
ルイ・ド・ブルボン |
ナヴァール王の弟 |
モンパンシエ公 |
ルイ・ド・ブルボン |
|
| モンパンシエの嫡子 | フランソワ・ド・ブルボン | シャルトル夫人が娘の結婚相手にしようとする |
近隣の王侯
シャルル・カン |
カール5世 | 神聖ローマ皇帝、スペイン王 |
フィリップ2世 |
(フェリペ2世) |
スペイン王 |
アルワ公 |
フェルディナンド・トルバレス・デ・トレド |
フィリップ2世の寵臣 |
オランジュ公 |
ナッソー伯ウィレム |
フィリップ2世の寵臣 |
ドン・カルロス |
スペイン皇太子 |
|
ロレーヌ公 |
シャルル・ド・ロレーヌ |
|
ロレーヌ公爵未亡人 |
クリスティーヌ・ド・ダンヌマルク |
ロレーヌ公の母君 |
サヴォア卿 |
エマニュエル・フィリベール |
サヴォア公 |
フェラール公 |
アルフォンス・デステ |
ギーズ公の義弟(ギーズ公の夫人はアンヌ・デステ) |
マリ |
(メアリ1世) |
イギリス女王 |
エリザベス |
(エリザベス1世) |
イギリス女王 |
クールトネ卿 |
エドワード・コートニー |
メアリ・エリザベス姉妹より思慕を受ける |
宮廷の登場人物(順不同)
ヴァランチノア公爵夫人 |
ディアヌ・ド・ポワティエ |
アンリ2世の寵妃 |
ギーズ公 |
フランソワ |
ギーズ家長男 |
ロレーヌ大僧正 |
シャルル |
ギーズ家次男 |
ドマール公 |
クロード |
ギーズ家三男 |
騎士ギーズ |
フランソワ | ギーズ家五男。マルタ騎士団の騎士となる、大修道院長 |
ヌヴェール公 |
フランソワT・ド・クレーヴ |
クレーヴ公の父親 |
エウ伯(父の死後ヌヴェール公) |
フランソワU・ド・クレーヴ |
ヌヴェール公の長男。王家の女性(アンヌ・ド・ブルボン)と結婚 |
| 弟 | アンリ・ド・クレーヴ | ヌヴェール公の三男 |
ディアヌ・ド・ポワティエの娘 |
ルイーズ・ド・ブレゼ |
オマール公に嫁ぐ |
シャルトル侯 |
フランソワ・ド・ヴァンドーム |
王妃の相談相手 |
シャルトル夫人 |
シャルトル嬢の母 | |
メルクール公爵夫人 |
ジャンヌ・ド・サヴォア |
ヌムール公の妹 |
モンモランシー宰相 |
アンヌ・ド・モンモランシー |
アンリ2世のお気に入りの元帥・宰相 |
サン=タンドレ元帥 |
ジャック・ダルボン |
アンリ2世の寵臣 |
モンモランシーの嫡子 |
フランソワ・ド・モンモランシー |
ディアヌ皇女と結婚する |
ダンヴィル卿 |
アンリ・ド・モンモランシー |
宰相の次男、ラマルク嬢と結婚 |
ピエーヌ嬢 |
ジャンヌ・ド・アリュアン(ピエンヌ) |
王妃の侍女。モンモランシーの嫡子と婚約の約束事をしていた。 |
ラマルク嬢 |
アントワネット・ド・ラ・マルク |
ディアヌの孫。ダンヴィル卿と結婚 |
シャトラール |
ダンヴィル卿の懐刀 |
|
| ブイヨン公 | (青柳版には出ないが、他の訳では出てくる) | |
ランダン伯 |
シャルル・ド・ロシュフーコー |
エリザベス即位のイギリスへの遣使 |
リニュロル |
フィリベール・ド・リニュロル |
ヌムール公の家臣 |
ポーロ3世 |
ローマ教皇 |
ファルネーゼ出身の教皇 |
ダンピエール夫人 |
マルグリット内親王の侍女・シャルトル夫人の友人 |
|
クレーヴ公の義姉 |
アンヌ・ド・ブルボン |
ヌヴェール公夫人 |
マルティーグ夫人 |
←ヴィルモンテ嬢 |
皇太子妃の侍女。シャルトル侯の思い人 |
デスカール公 |
アンリ2世の寵臣 占星術師に頭を割られて死ぬと予言される。 |
|
ユゼス子爵夫人 |
||
テミーヌ夫人 |
第3巻の手紙の主 |
|
ダンボアーズ夫人 |
テミーヌ夫人の友人 |
|
モンパンシエ嬢 |
フランソワーズ? | エリザベート皇女の婚約式で皇女の裳裾を持つ |
ロングヴィル嬢 |
フランソワーズ? | エリザベート皇女の婚約式で皇女の裳裾を持つ |
モンゴメリー伯 |
ジャック・ド・ロルジュ |
騎馬試合で長槍を王の目に・・。 |
王の運命を予言した者 |
ノストラダムス |
カトリーヌ・ド・メディシスの信用のある占い師 |
挿入されている昔話
・皇太子妃がシャルトル嬢に語る”おかあさま”
おかあさま |
マリ・ド・ロレーヌ |
ギーズ公の娘、ロングヴィルの寡婦、 |
マドレーヌ夫人 |
フランソア1世の娘、ジェイムズ5世に嫁ぐ |
|
スコットランド王 |
(ジェイムズ5世) |
メアリ・スチュアートの父親 |
イギリス王 |
(ヘンリ8世) |
|
ロングヴィル |
ルイ・ド・ブルボン |
ロングヴィル公、マリ・ド・ロレーヌの最初の夫 |
皇太子妃の母”マリ・ド・ロレーヌ"は美しい人で夫に先立たれた後、まだ子供に恵まれなかったアンリ2世、先妻をなくしたばかりのスコットランド王、イギリス王にも望まれた人であった。しかしながら宮廷ないの勢力争いにより反ギーズ派、反ヴァランチノア派の策謀により”一番ちっぽけな”王にやられ、苦労をしているという。皇太子妃は姿が良く似ていると言われるが、その人生まで似るのでは・・・と自らの運命が幸福に満たされないのでは・・、と心の不安を語る。
・シャルトル夫人が娘に語るヴァランチノア公爵夫人
王 |
フランソワT |
|
第一王子 |
フィランソワ |
最初の王太子 |
第二王子 |
アンリ |
オルレアン公、兄亡き後王太子 |
第三王子 |
シャルル | 兄亡き後、オルレアン公 |
摂政太后 |
ルイーズ・ド・サヴォア |
フランソワ1世の母后 |
エタンプ夫人 |
アンヌ・ド・ピスルゥ |
フランソワ1世の寵妃 |
ブルボン元帥 |
シャルル・ド・ブルボン |
フランソワ1世の寵臣だったが、 カール5世に寝返る |
おばあさま(ディアヌ・ド・ポワティエの) |
ルイ11世の庶子 |
|
サン・ヴァリエ |
ジャン・ド・ポワティエ |
ディアヌ・ド・ポワティエの父 |
ブレゼ卿 |
ルイ・ド・ブレゼ |
ディアヌ・ド・ポワティエの夫、 |
トゥールノン大僧正 |
フランソワ1世の寵臣 |
|
アヌボー海軍大将 |
フランソワ1世の寵臣 | |
オリヴィエ大法官 |
ディアヌ・ド・ポワティエにより |
|
ヴィルロワ卿 |
ディアヌ・ド・ポワティエにより |
|
テー伯 |
砲兵総司令。 |
|
ブリザック伯 |
テー伯の後任となり、 |
|
孫娘を嫁にやるような年齢のヴァランチノア公爵夫人が今もなお王から寵愛を受けていることに信じられないでいる娘にシャルトル夫人が先王の時代から現在にまで関係する宮中の派閥について説明する。
「憎しみというものがこの2人の婦人の間ほど烈しかったためしはないでしょう」と人間関係的にも政治的にも対立したエタンプ公爵夫人とヴァランチノア公爵夫人のことを語る。
ヴァランチノア公爵夫人がフランソワ1世の寵妃だった!?時もあり、それがエタンプ夫人の競争心を煽ったのか、彼女を年齢のことで誹謗したり、皇太子アンリを王位につけないよう、カール5世にわたりをつけようなど様々な追い落としをかけた。しかしフランソワ1世の死後、王位についたアンリをバックに、ディアヌはフランソワ1世の寵臣を追放し、冷遇されていたお気に入りの人々を呼び戻した。
・クレーヴ公が妻に友人の恋を語る
トゥールノン夫人 |
サンセール伯 |
エストゥートヴィル |
才能と貞淑を兼ね備えていると評判の未亡人トゥールノン夫人が亡くなり、その人柄を惜しんでクレーヴ夫人は悲しむが、夫はその評判を見誤ったと告白する。実はトゥールノン夫人はクレーヴ公の友人のサンセール伯と結婚の約束をしていたというが一方でエストゥートビルにも情を通じていた。トゥールノン夫人ほど恋愛やら偽りに縁薄いと思われていたが彼女ほど手管と偽装が功を奏した人はいないとクレーヴ公は夫人に語る。サンセール伯は愛する人を失った悲しみと愛する人から裏切られた悲しみを同時に知ることになった。
・シャルトル侯がヌムール公に恋を語る
手紙事件の余波でヌムール公はシャルトル侯から思いもよらぬ話しをきく。シャルトル侯は王妃の良き相談相手であると。
・皇太子妃がアンヌ・ド・ブーランの来歴を語る
イギリスの王様 |
ヘンリ8世 |
|
カテリーヌ・ダラゴン |
(キャサリン・オブ・アラゴン) |
ヘンリ8世の最初の妃 |
アンヌ・ド・ブーラン |
(アン・ブーリン) |
ヘンリ8世の2番目の妃 |
ジャンヌ・セメール |
(ジェーン・シームア) |
ヘンリ8世の3番目の妃 |
カテリーヌ・ハヴァール |
(キャサリン・ハワード) |
ヘンリ8世の4番目の妃 |
ロシュフォール子爵 |
アン・ブーリンの兄・刑死 | |
ロシュフォール夫人 |
アン・ブーリンの義妹 | |
ウォルセー僧正 |
(トマス・ウルジー) |
ヘンリー8世の寵臣・宰相 |
| アランソン公爵夫人 | マルグリット・ド・ナヴァール | フランソワ1世の姉 後のナヴァール女王 |
ヌムール公とエリザベス女王の結婚話からアンヌ・ド・ブーランの話となり、みなは彼女をフランス生まれだ思い込んでいたので皇太子妃がとりまきに来歴を話す。
アンヌ・ド・ブーランはルイ12世妃となるメアリー・オブ・ヨークの侍女として渡仏してきた。ルイ12世亡きあともフランスにとどまり、クロード王妃、(アランソン公夫人だった)マルグリット夫人に仕えた。イギリスに戻ってからは当時の憧れのフランス風を身につけて、カテリーヌ・ダラゴン王妃の侍女となり、ヘンリ8世の寵愛をうけたとイギリス宮廷の事情を話す。
ここでエリザベスを優しい方だと思うとかたり、その前にも母親の辛苦をかたっているが、この先、皇太子妃(メアリ・スチュアートとしての)の人生を思うと悲劇性が助長されている。
見所
・誰もがシャルトル嬢を好きになる。
騎士ギーズ、クレーヴ公、ヌムール公、サン=タンドレ元帥、彼女に魅了されるのは当代随一の男性ばかり。
彼女の髪は金髪と語られるが、瞳の色は語られない。
「透き通るような肌の白さ、見事な金髪、その目鼻立ちは端正で、顔にも、姿にも品の良さと愛くるしさが
漂っていた。
・歴史のスキをつく
クレーヴ公の父親・ヌヴェール公は1562年まで生きたが、58年ころに死んでいただいて
クレーヴ公がシャルトル嬢との結婚の障害にならにようなっています。
・宮中の派閥
ギーズ派
宰相派
・宮中の派閥(女性版)
王妃・・・・・・・貞操堅固を旨とした盛りを過ぎた女たち
皇太子妃・・・歓楽と情事を求めている
ナヴァル女王・・若く宰相と親しいので人望もある。
内親王・・・・・知識人にファンが多い。
ヴァランチノア公爵夫人・・・ここぞと思う女はみんな手なずけているが、本当のお気に入りは少ない。
おっと、忘れちゃぁいけない!
本来の心理小説ならではのクレーヴ夫人とヌムール公緊迫したやりとりも味わって見てください。
★★リンク紹介(02/11/01)★★
このクレーヴの奥方の複雑な人物相関図を系図にコラボレートしたHARUNAさんのサイトSea Lion Islandとすばらしい人物相関図のペエジ
系図フェチと名乗りながら、直系しか作成できないセンスのない私にはこんな作図絶対無理です・・・。
参考文献
「クレーヴの奥方」(青柳瑞穂訳)新潮文庫
「クレーヴの奥方」(二宮フサ訳)世界の文学セレクション36 中央公論社
「クレーヴの奥方」(川村克己訳)集英社ギャラリー世界の文学6 フランスT 集英社
「クレーヴの奥方」(生島遼一訳)岩波文庫
「中世ロワール河吟遊」 アンドレ・カストロ 原書房
「カトリーヌ・ド・メディシス 上下」 ジャン・オリュー 河出書房新社
「スコットランド女王メアリ」 アントニア・フレイザー 中央公論社
「聖バルテルミーの大虐殺」ドキュメンタリーフランス史 フィリップ・エルランジュ 白水社