「守り神」


 僕の町の町役場の建物は、僕のじいちゃんが小学生だったころから立っているそうだ。
だから、ずいぶん古ぼけているし、何だか傾いているようにも見える。
 僕の小学校のグランドの端に土手があって、その向こうが川。その川の向こう岸に役場の建物はあるので小学校の3階にある僕の5年1組の教室から役場の建物がよく見えた。
 
その役場がとうとう建てなおされることになった。

僕の父さんは、役場の土木課というところに勤めている。
役場が建てなおされることで、父さんに思いもよらない災難がいくつも降りかかってくることになる。

 秋に入ったばかりのころ、まず新庁舎の土台の工事をしているときのことだった。
新庁舎は、古い役場の隣の空き地に立つ予定なのだが、工事に入って2、3日したときのことだった。
 僕は小さいころから、建設の重機が動いているのを眺めるのが好きで、工事が始まってからは少し早めに
学校に行って、教室の窓から川向こうの工事の様子を見ていた。
その日も、8時15分には、工事が始まった。
 ところが、役場の時計台の針が8時30分を指し、役場の人たちの勤務の始業時間を知らせるチャイムが
なったとたん、ガラガラと動いていたブルドーザーのキャタピラがピタッと止まり、カニのツメみたいにウニョウニョ動いていたユンボが動かなくなった。
作業していた人たちがだんだん重機の周りに集まってきた。
 「どうしたんだろうな・・・」
と思っていたところで、今度は、朝の会の始まりを知らせる学校のチャイムがなったので、僕は、席についた。

けれども、その日は一日中、止まった重機が動くことはなかった。

その日、父さんは家に帰ってくるのがとても遅くなった。
でも、次の朝に聞いた話なのだけれども、動かなくなった重機は、みんな燃料もたっぷりだったし、業者の人を呼んで、点検してみたけれど、どこも故障していなかったそうだ。
それに、夕方5時になったとたん、何もなかったかのように、動かすことができるようになったそうだ。





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