擬柱の体積



2004/9/9  掲載開始          .
ご意見、ご質問などは こちらのメール へ
「ホームページ」  へ戻る。        .

§1  擬柱の体積の公式

 ある晩、Fax が突然動き出して、次のような質問が送られて来ました。

-----------------------------------------------------
 擬柱の体積は次の公式で得られる。

     V = h (S_0 + 4 * S_m + S_1) / 6

ここで、S_1, S_0, S_m は、それぞれ、上底、下底、中央の面積
であり、 h は高さである。

と教科書に書いてありますが、この公式はどうやって作ったものですか?
ちょっと教えてください。
擬柱
-----------------------------------------------------

 地理学が専門の友人からで、地理の教科書には時々数学の公式が説明
抜きで使われるそうで、我が家の Fax が突然動き出すというわけです。


§2  公式の十分条件

 まず、図から、擬柱の定義を類推しなければなりません。

(1)   上底と下底は平行である。(その距離を h とする。)
(2)   上底と下底はそれぞれ多角形である。
(3)   側面はすべて三角形からなり、それらの頂点は上底または下底の
      多角形の頂点である。

図では側面に四角形が見えますが、対角線を引けば (3) のように仮定
して、一般性を失いません。また n 角形といったとき、 n = 2 なら線分、
 n = 1 なら頂点のみと解釈します。
 さて、次のような、必ずしも垂直でない側面を持った三角柱について
その体積を計算するとしたらどうするでしょうか。
三角柱
次の図のように、3つの四面体に分解してみます。
分解
(a1)   下底が三角形、上底が頂点のみの三角錐
(a2)   上底が三角形、下底が頂点のみの逆三角錐
(a3)   上底下底とも線分である四面体

 まず、 (a1) について、 S_0 = S としますと、 S_m = S / 4, 
S_1 = 0 ですから公式は
     V =  h (S + 4 * S / 4 + 0) / 6 = S h / 3
となって成立しています。 (a2) についても同様です。

(a3) については、下底としての線分の長さを a 、下底としての
線分の長さを b とします。積分を用いて直接体積を計算すれば

積分 
です。他方、公式からは S_0 = S_1 = 0, S_m = a b / 4 だから      V = h (0 + 4 * a b / 4 + 0) 6 = a b h / 6 ですから、やはりこの場合も公式が成立しています。  任意の擬柱が、このように (a1),(a2), (a3) に分解でき、それ ぞれについて公式が成立すれば、それらの両辺を足しあわせると、 擬柱全体について公式が成立することがわかります。 §3  公式の必要条件  前節の内容を Fax で送って、一件落着と思ったのですが、まも なく次の質問が届きました。 ---------------------------------------------------------    成り立つということはわかりました。   でもどうやって作ったのかを教えて下さい。 --------------------------------------------------------  最初の質問をよく読むと、確かにそう書いてあります。そこでまた 返事を書きました。  今、擬柱の体積が、 S_0, S_1, S_m の一次結合で得られるものとし、 未定係数法をつかうことにして、     V = h (a S_0 + b S_m + c S_1) と置き、 a, b, c を求めることを考えます。  次の特別な擬柱、すなわち、 (b1)   単位正方形の柱、 (b2)   同じく単位正方形を底面にもつ四角錐、 (b3)   その上下さかさまのもの
典型
について、結果を代入します。

    h (a + b      + c) = h 
    h (a + b / 4     ) = h / 3 
    h (    b / 4  + c) = h / 3

この連立方程式を解くと、 a = 1 / 6,  b = 2 / 3,  c = 1 / 6 
が得られます。

 以上を Fax で送ったところ、今度はすっきりと理解できましたという
返事をいただき、やっと一件落着をみました。しかし、今度は自分が治ま
らず、いろいろな変形を試みてみました。

 まず特別な例として、角柱のほかに下の図のような楔形の擬柱の場合は
どうか。
楔形
 h ( a  + b  +    c ) = h 
 h ( a  + b / 2     ) = h / 2 
 h (      b / 2 + c ) = h / 2

 これは、連立方程式が、一次従属になってしまって、 a, b, c が決ま
りません。図のほうも、二つの楔形を合わせると角柱になり、こちらも図
形として独立でなくなります。図形と連立方程式の独立、従属の関係が連
動している面白さがあります。

 もう一つ気がついたことは、擬柱の体積は、高さにおいて、3箇所の断
面積がわかれば公式を作ることが出来るということです。連立方程式を解
いて a, b, c が決まりさえすればいいということです。


§4  分解は常に可能か

 §2で使った仮定:任意の擬柱は、四面体である3種の擬柱(a1),(a2), 
(a3) に、常に分解できることは自明だろうかと、心配になってきました。
まもなく分解できない例を思いつきました。
 自然数 n ≧ 3 について、正 n 角柱を考えます。次の図は n = 6 と
しています。中が見えるように、上底面がはずしてありますが、本当は上
底面があります。
 側面の長方形に対角線を入れて、二つの直角三角形を作ります。対角線
の向きは、全部同じ向きにしておきます。
 下底面を固定して、上底面を、上から見て時計と同じ向きに捻りますと、
垂直だった側面の線(赤線)が山折、対角線(青線)が谷折になります。
 捻っていくと、高さは次第に低くなるはずですが、この図は高さが変わ
っていません。「手抜き」です。すみません。
 この段階で、すでに四面体からなる擬柱(a1), (a2), (a3) のいずれを
切り取ることも出来ません。
 捻っていくとすべての対角線が一斉に中心に達することになり、ここで
動きがとまります。
分解不能1 分解不能2 分解不能3
 というわけで、§1の十分条件であるという証明は、不完全なのですが、
体積を求める公式そのものは、問題ないようです。
以上、お粗末さまでした。
「ホームページ」  へ戻る。