§1 擬柱の体積の公式
ある晩、Fax が突然動き出して、次のような質問が送られて来ました。
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擬柱の体積は次の公式で得られる。
V = h (S_0 + 4 * S_m + S_1) / 6
ここで、S_1, S_0, S_m は、それぞれ、上底、下底、中央の面積
であり、 h は高さである。
と教科書に書いてありますが、この公式はどうやって作ったものですか?
ちょっと教えてください。
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地理学が専門の友人からで、地理の教科書には時々数学の公式が説明
抜きで使われるそうで、我が家の Fax が突然動き出すというわけです。
§2 公式の十分条件
まず、図から、擬柱の定義を類推しなければなりません。
(1) 上底と下底は平行である。(その距離を h とする。)
(2) 上底と下底はそれぞれ多角形である。
(3) 側面はすべて三角形からなり、それらの頂点は上底または下底の
多角形の頂点である。
図では側面に四角形が見えますが、対角線を引けば (3) のように仮定
して、一般性を失いません。また n 角形といったとき、 n = 2 なら線分、
n = 1 なら頂点のみと解釈します。
さて、次のような、必ずしも垂直でない側面を持った三角柱について
その体積を計算するとしたらどうするでしょうか。
次の図のように、3つの四面体に分解してみます。
(a1) 下底が三角形、上底が頂点のみの三角錐
(a2) 上底が三角形、下底が頂点のみの逆三角錐
(a3) 上底下底とも線分である四面体
まず、 (a1) について、 S_0 = S としますと、 S_m = S / 4,
S_1 = 0 ですから公式は
V = h (S + 4 * S / 4 + 0) / 6 = S h / 3
となって成立しています。 (a2) についても同様です。
(a3) については、下底としての線分の長さを a 、下底としての
線分の長さを b とします。積分を用いて直接体積を計算すれば
です。他方、公式からは S_0 = S_1 = 0, S_m = a b / 4 だから
V = h (0 + 4 * a b / 4 + 0) 6 = a b h / 6
ですから、やはりこの場合も公式が成立しています。
任意の擬柱が、このように (a1),(a2), (a3) に分解でき、それ
ぞれについて公式が成立すれば、それらの両辺を足しあわせると、
擬柱全体について公式が成立することがわかります。
§3 公式の必要条件
前節の内容を Fax で送って、一件落着と思ったのですが、まも
なく次の質問が届きました。
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成り立つということはわかりました。
でもどうやって作ったのかを教えて下さい。
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最初の質問をよく読むと、確かにそう書いてあります。そこでまた
返事を書きました。
今、擬柱の体積が、 S_0, S_1, S_m の一次結合で得られるものとし、
未定係数法をつかうことにして、
V = h (a S_0 + b S_m + c S_1)
と置き、 a, b, c を求めることを考えます。
次の特別な擬柱、すなわち、
(b1) 単位正方形の柱、
(b2) 同じく単位正方形を底面にもつ四角錐、
(b3) その上下さかさまのもの
について、結果を代入します。
h (a + b + c) = h
h (a + b / 4 ) = h / 3
h ( b / 4 + c) = h / 3
この連立方程式を解くと、 a = 1 / 6, b = 2 / 3, c = 1 / 6
が得られます。
以上を Fax で送ったところ、今度はすっきりと理解できましたという
返事をいただき、やっと一件落着をみました。しかし、今度は自分が治ま
らず、いろいろな変形を試みてみました。
まず特別な例として、角柱のほかに下の図のような楔形の擬柱の場合は
どうか。
h ( a + b + c ) = h
h ( a + b / 2 ) = h / 2
h ( b / 2 + c ) = h / 2
これは、連立方程式が、一次従属になってしまって、 a, b, c が決ま
りません。図のほうも、二つの楔形を合わせると角柱になり、こちらも図
形として独立でなくなります。図形と連立方程式の独立、従属の関係が連
動している面白さがあります。
もう一つ気がついたことは、擬柱の体積は、高さにおいて、3箇所の断
面積がわかれば公式を作ることが出来るということです。連立方程式を解
いて a, b, c が決まりさえすればいいということです。
§4 分解は常に可能か
§2で使った仮定:任意の擬柱は、四面体である3種の擬柱(a1),(a2),
(a3) に、常に分解できることは自明だろうかと、心配になってきました。
まもなく分解できない例を思いつきました。
自然数 n ≧ 3 について、正 n 角柱を考えます。次の図は n = 6 と
しています。中が見えるように、上底面がはずしてありますが、本当は上
底面があります。
側面の長方形に対角線を入れて、二つの直角三角形を作ります。対角線
の向きは、全部同じ向きにしておきます。
下底面を固定して、上底面を、上から見て時計と同じ向きに捻りますと、
垂直だった側面の線(赤線)が山折、対角線(青線)が谷折になります。
捻っていくと、高さは次第に低くなるはずですが、この図は高さが変わ
っていません。「手抜き」です。すみません。
この段階で、すでに四面体からなる擬柱(a1), (a2), (a3) のいずれを
切り取ることも出来ません。
捻っていくとすべての対角線が一斉に中心に達することになり、ここで
動きがとまります。
というわけで、§1の十分条件であるという証明は、不完全なのですが、
体積を求める公式そのものは、問題ないようです。
以上、お粗末さまでした。
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