極と極線の双対性

極と極線の双対性



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§1  極と極線

極線のグラフ  楕円を一つ固定します。
数式$\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1  (1) $
 この楕円の上の点 P(x_1, y_1) における接線の方程式は
数式$\dfrac{x_1 x}{a^2} + \dfrac{y_1 y}{b^2} = 1  (2) $
で与えられます。

 点 P(x_1, y_1) が楕円の上になくても (2) は直線の方程式であること に変わりありません。そこで直線 (2) を点 P(x_1, y_1) の(楕円 (1) に関する) 極線 (polar) といい、逆に点 P を直線 (2) の 極 (pole) といいます。
 楕円の上の点の極線はその点における接線です。


命題1  点 P から楕円に接線が2本引けるとし、その接点を Q, R と すれば、点 P の極線は QR である。


極線のグラフ 証明   P, Q, R の座標を (x_1, y_1), (x_2, y_2), (x_3, y_3) とすれば、 Q, R における接線は
数式$\dfrac{x_2 x}{a^2} + \dfrac{y_2 y}{b^2} = 1,  
 \dfrac{x_3 x}{a^2} + \dfrac{y_3 y}{b^2} = 1  (3) $
となります。点 P がこれらの上にあることから
数式$\dfrac{x_2 x_1}{a^2} + \dfrac{y_2 y_1}{b^2} = 1,  
 \dfrac{x_3 x_1}{a^2} + \dfrac{y_3 y_1}{b^2} = 1  (4) $
が成り立ちます。他方、点 P の極線は 数式$\dfrac{x_1 x}{a^2} + \dfrac{y_1 y}{b^2} = 1$ ですから (3), (4) は Q と R がこの直線に乗っていることを示しています。 従って点 P の極線は QR です。


命題2  点 P が直線 m 上を動くとき、点 P の極線 p は 定点 M を通り、 M の極線が m である。


極線のグラフ 証明  直線 m 上の2点を P(x_1, y_1), Q(x_2, y_2) とし、 その極線をそれぞれ
数式$p: \dfrac{x_1 x}{a^2} + \dfrac{y_1 y}{b^2} = 1,  
 q: \dfrac{x_2 x}{a^2} + \dfrac{y_2 y}{b^2} = 1  (5) $
とします。 p, q の交点を M (x_3, y_3) とすれば、
数式$\dfrac{x_1 x_3}{a^2} + \dfrac{y_1 y_3}{b^2} = 1,  
 \dfrac{x_2 x_3}{a^2} + \dfrac{y_2 y_3}{b^2} = 1  (6) $
が成り立ちます。他方、 M (x_3, y_3) の極線は zの2乗のグラフ ですから、(6) は 点 P, Q がこの極線にのっていることを示しています。
直線 PQ は m に他ならないから、 M の極線は m です。



§2  二次曲線と斉次座標

 動点 P がある二次曲線上を動くとき、(この二次曲線は最も一般的 で、その中心は原点とは限らないし、対称軸も x 軸や y 軸に 平行とは限らないとします)点 P の極線の包絡線はどうなるか を研究するのが本稿の目的です。
 また、基礎となる二次曲線もはじめは
数式
というような標準形でしたが、さらに、もっと一般的な二次曲線についてどうなるのかを 調べることにします。
 そのために二次曲線の一般論を準備します。
 二次曲線は一般に
数式$a_{11}x^2 + 2 a_{12} x y +
と表わされ、行列を使って
数式a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22}
となり、さらに
数式a_{11} & a_{12} & b_1  a_{21} & a_{22} & b_2 \\
のように表わされます。これは3次元空間における円錐の方程式
数式a_{11} & a_{12} & b_1  a_{21} & a_{22} & b_2 \\
において、平面 z=1 で切った切り口を見ていると考えられます。

polar41
 (7) は簡単に   数式$ ^t{\bf x} A {\bf x} = 0 $ と表すことができます。すると 点 P : 数式x_1 \\  y_1 \\  1 におけるこの二次曲線への接線は   数式$ p :\ ^t{\bf x}_1 A {\bf x} =0 $ となります。

 3次元空間におけるベクトル (x, y, z) に同値関係
数式$ (x,y, z) \sim (\lambda x, \lambda y,
を入れ、その同値類 [x: y: z] を斉次座標といいます。
 それは(原点を除いた)3次元空間において、原点を通る (原点を除いた)直線を点と考えたものです。


§3  直交補空間と標準的双対

n 次元空間 R^n に自然な内積
   (x, y) = x_1^2 + x_2^2 + ・・・ + x_n^2
が入っているとき、 その部分空間 W に対して直交補空間
数式$ W^p = \{ {\bf x} \in R^n \mid ({\bf x},
が定義されます。
 二つの部分空間 W_1, W_2 に対して、それらの共通部分 W_1 ∩ W_2 と、それらの和
数式$ W_1 + W_2 = \{ {\bf x}_1 + {\bf x}_2 \mid
はまた部分空間になります。
 ちょうど集合論においてドモルガンの法則
  ( M_1 ∪ M_2 )^c = M_1^c ∩ M_2^c,  ( M_1 ∩ M_2 )^c = M_1^c ∪ M_2^c
が成り立つように、部分空間の間でも
  ( W_1 + W_2 )^p = W_1^p ∩ W_2^p,  ( W_1 ∩ W_2 )^p = W_1^p + W_2^p
が成り立ちます。

 3次元空間 R^3 においては固有な部分空間は原点を通る 直線(1次元) m と平面(2次元) π です。ドモルガンの法則は 
   (m_1 + m_2 )^c = m_1^c ∩ m_2^c,  ( π_1 ∩ π_2 )^c = π_1^c + π_2^c
となって、これを平面 z=1 で切ると点と直線の双対性、すなわち
    2点を結んだ直線の双対点は、その2点の双対直線の交点
    2直線の交点の双対直線は、その2直線の双対点を結んだ直線
が得られます。

polar42$

 平面上の点 (x_1, y_1) に対して斉次座標 [x_1: y_1: 1] が対応します。
 3次元空間におけるベクトル (x_1, y_1, 1) に直交し原点を通る平面は
   x_1 x + y_1 y + z = 0
であり、平面 z = 1 による切り口は
   x_1 x + y_1 y + 1 = 0
です。
点 (x_1, y_1) に対し直線
   x_1 x + y_1 y + 1 = 0
を対応させる双対を 標準的双対 ということにします。

 標準的双対は 「二次曲線」
数式1 &  &  \\  & 1 & \\ &   & 1
に関する極と極線の関係です。

§4  包絡線

 ここで 「もっとも易しい場合」 すなわち 「点 P(x_1, y_1) が二次曲線
    数式$\dfrac{x^2}{c^2} + \dfrac{y^2}{d^2} = 1$
  を一周するとき、標準的双対に関する極線
    x_1 x + y_1 y + 1 = 0
の包絡線は何か」 を調べてみましょう。

 点 (x_1, y_1) はパラメーター θ を使って
   x_1 = c cos θ ,  y_1 = d sin θ
と表されるから、その極線は
   c cos θ x + d sin θ y + 1 = 0   (8)
となります。  一般に θ をパラメーターとする曲線の族
   f(x, y, θ ) = 0  
が与えられたとき、その包絡線の求め方は、 θ による偏微分
   f_θ (x, y, θ ) = 0  
を求めて、連立方程式を解くことです。

 (8) を偏微分すると
   -c cos θ x + d sin θ y = 0  (9)
となりますから、これらを解いて
   c^2 x^2 + d^2 y^2 = 1
となります。これが欲しかった包絡線の方程式です。
 このことは、点 P (x_1, y_1) が二次曲線
数式\dfrac 1 {c^2} &  & \\ & \dfrac 1 {d^2} & \\ & & 1
を一周するとき、標準的双対に関する極線の包絡線は
数式 c^2 &  &  \\ & d^2 & \\ &   & 1
であること、すなわち二つの行列は互いに逆行列であることをしめしています。

 ここで、点 P (x_1, y_1) が一周する二次曲線を、標準形の 数式$\dfrac{x^2}{c^2} + \dfrac{y^2}{d^2} = 1$ から一般の二次曲線 数式$ ^t{\bf x} B {\bf x} =0 $ へと、一般化します。
 一般に対称行列 B は直交行列 T によって対角化され、 部分空間とその直交補空間という関係は直交行列 T によって変わらないので 次の定理が得られました。


定理3  点 P(x_1, y_1) が二次曲線   数式$ ^t{\bf x} B {\bf x} =0 $ 上を 一周するとき、標準的双対による極線 x_1 x + y_1 y + 1 = 0 の包絡線は二次曲線   数式$ ^t{\bf x} B^{-1} {\bf x} = 0 $ である。



§5  一般的解決

 初めの問題では、基準となる二次曲線は
    数式
でしたが、これを一般化して、基準となる二次曲線を 数式polar023 としましょう。これは内積の形に (x, Ax) = 0 と書き直す ことができます。つまり x は Ax と直交しています。
 点 x_1 が二次曲線 数式polar024 上を動くとき、点 y_1 = A x_1 は二次曲線   数式polar025 上を動きます。変数を x に戻せば二次曲線は   数式polar026 となり、定理3によって極線の包絡線は二次曲線   数式$ ^t{\bf x} A B^{-1} A {\bf x} = 0 $ となります。


  定理4  点 x_1 が二次曲線   数式$ ^t{\bf x} B {\bf x} =0 $ 上を動くとき、 二次曲線   数式$ ^t{\bf x} A {\bf x} = 0 $ に関する極線   数式$ p :\ ^t{\bf x}_1 A {\bf x} =0 $ の包絡線は 二次曲線   数式$ ^t{\bf x} A B^{-1} A {\bf x} = 0 $ である。


 点 P がこの包絡線上を一周するとき、その極線 p はもとの二次曲線   数式$ ^t{\bf x} B {\bf x} =0 $ に接することは、定理2からも証明できますが、定理4を使って次の ように直接示すことができます。
 いま   数式$ B_1 = A B^{-1} A $ と置くと   数式$B_1{}^{-1} = A^{-1} B A^{-1}$ であり、点 P が包絡線としての二次曲線   数式$ ^t{\bf x} B_1 {\bf x} =0 $ を一周するとき、P の極線 p は定理4によって二次曲線   数式$ ^t{\bf x} A B_1{}^{-1} A {\bf x} = 0$ に接します。ここで、
  数式$A B_1{}^{-1} A = A (A^{-1} B A^{-1}) A = B$
ですから、それはもとの二次曲線であったことがわかるというわけです。


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