4次元の正多面体U



2004/11/26 掲載開始         .
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 各次元の正多面体のうち、どの次元にも共通して現れる3種類の多面体があ
ります。
    正三角形、正四面体の延長としての正単体
    正方形、立方体の延長としての超立方体
    正方形、正八面体の延長としての正軸体
これらは4次元ではそれぞれ正五胞体、正八胞体、正十六胞体です。

 ここでは4次元空間に固有な、残りの3種類の正多胞体、すなわち正二十四
胞体、正六百胞体、正百二十胞体の、構成要素の数や、展開図などについて述
べます。

 参考書は 一松 信(ひとつまつ しん)著 「高次元の正多面体」 現代
評論社 が名著です。本稿の内容は、全面的にこの本に従い、かつ、この本の
内容を補足する形になっています。
 さらにこの著書の元になっているのは H.S.M.Coxeter "Regular Polytopes"
です。


§1  正二十四胞体

 正八胞体の 16 個の頂点 (±1, ±1, ±1, ±1) と正十六胞体の8個の頂点
   (±2, 0, 0, 0), (0, ±2, 0, 0), (0, 0, ±2, 0), (0, 0, 0, ±2)
の計24個の点は、共に原点から2の距離にあります。つまりこれらの点はすべて
半径 2 の球面上にあります。
 これらを結んで正二十四胞体ができることを調べてみましょう。
 例えば平面 x_1 - x_2 = 2 は4次元空間の中の3次元平面であって、この上に
6個の頂点 (2, 0, 0, 0), (0, -2, 0, 0), (1, -1, ±1, ±1) があります。
 これらを結ぶと一辺の長さが 2 の正八面体となります。
 このような平面は ±x_i ±x_j = 2 (符号の組み合わせが4通り、 i, j の選び
方が  通り)掛けて24通りになり、24個の正八面体が得られます。

 正二十四胞体の展開図を考えます。 まず正八面体の2面角をδとすると
 cos(δ) = -1/3 です。よって δ= 109.4712 度であり、109.4712 度 < 120 度 
ですから、正八面体は一辺の回りに3個まで並べることができます。一辺の回りに
3個並べると、
   360度 - 3 x 109.4712度 = 31.5864 度
の隙間ができます。
 正八面体 A の回りに、それと合同な正八面体を8個並べてみます。これだけで
正八面体 A の回りについての展開図は完成します。後は同様に、それぞれの正八
面体の各辺の回りに3個ずつ配置されるように、正八面体をくっつけていけばよい
のです。
    正二十四胞体の展開図 

 正二十四胞体の系表を掲げておきます。
    正二十四胞体の系表 

 この系表を眺めていると、正二十四胞体の位相的展開図を作ってみようという気
になります。一点の回りに八面体を6個配置すればいいのです。
 まず立方体を1つ用意して、6つの面に、八面体を1個ずつ対応させていきます。
正二十四胞体の系表正二十四胞体の系表
正二十四胞体の系表正二十四胞体の系表

    正二十四胞体の1つの頂点のまわりの位相的展開図

 八面体をまだ4つしか置いていません。むこうとこちらにさらに1つずつ置かなけ
ればなりませんが、煩雑になるので、省略します。心の中で補充して置いて下さい。
 1点に辺が8本、三角形が12枚くっついていることが、一目瞭然です。

 次の図は、正二十四胞体の位相的展開図の全体像です。

正二十四胞体の位相的展開図

 この図は、D.Hilbert und S.Chon Vossen "Anshauliche Geometrie" Berlin, 
Springer 1932 邦訳では 芹沢正三訳 「直観幾何学」みすず書房 1960 
に載っています。

 24個の正八面体は、それぞれ乗っている平面が対応していますので、その平面
の方程式で呼ぶことにします。例えば先ほど調べた平面 x_1 - x_2 = 2 の上の
正八面体の頂点は (2, 0, 0, 0), (0, -2, 0, 0), (1, -1, ±1, ±1) の8個で
す。この正八面体の各面に隣接する8個の正八面体の乗っている平面は
 x_1 ± x_3 = 2,  x_1 ± x_4 = 2, - x_2 ± x_3 = 2, - x_2 ± x_4 = 2 の
8枚です。

 また、平面 ±x_1 ± x_2 = 2 の上の正八面体の中心は、それぞれ
 (±1, ±1, 0, 0) であり、各正八面体の中心 (±1, ±1, 0, 0) およびその置換
 24個を集めてそれらを結んでいくと、内接する双対正二十四胞体が得られます。
 すなわち正二十四胞体は自己双対形です。
 はじめの正二十四胞体を A とし、その内接双対正二十四胞体を B とすると、 
B の大きさは A の 1 / root 2 倍です。
 正二十四胞体 B の内接双対正二十四胞体は、はじめの A と相似の位置にあって、
大きさは A のちょうど半分になります。
 正二十四胞体 B の24個の胞(正八面体)が乗っている平面の方程式は
 ± x_i = 1 が8枚、 ±x_1 ±x_2 ±x_3 ±x_4 = 2 が16枚です。

 また4次元空間において、この正二十四胞体の回りを、合同な正二十四胞体で
取り囲むと、隙間なくびっしり並びます。
 すなわち正二十四胞体は4次元空間を充填します。この様子を詳しく見て見ま
しょう。

 この節の始めに考えたように、原点中心、半径2の球面に内接する正二十四胞
体をとり、その頂点の座標が  (±1, ±1, ±1, ±1) および (±2, 0, 0, 0) の
置換であるとします。24枚の胞(正八面体)はそれぞれ超平面 ±x_i ±x_j = 2 
の上にあります。これらの胞の一つを共有しつつ、24個の正二十四胞体がそれぞれ
外接して、また互いに胞(正八面体)を共有しつつ、4次元空間を充填しています。
これらの正二十四胞体は、その中心の座標  (±2, ±2, 0, 0) およびその置換
で区別することができます。
 例えば超平面 $x_1 - x_3 = 2 上の胞(正八面体)を共有して隣接する正二十
四胞体の中心は (2, 0, -2, 0) です。また、共有されている胞(正八面体)の中
心は (1, 0, -1, 0) であり、6個の頂点は (2, 0, 0, 0), (0, 0, -2, 0), 
(1, ±1, -1, ±1) です。この正八面体を仮に M とよぶことにします。
 正二十四胞体 (2, 0, -2, 0) の回りで、それに接しつつ正二十四胞体
 (0, 0, 0, 0) にも接している正二十四胞体は全部で8個、その中心は
  (2, ±2, 0, 0), (2, 0, 0, ±2), (0, ±2, -2, 0), (0, 0, -2, ±2) 
であって、正八面体 M の8枚の面をそれぞれ共有します。
例えば、正二十四胞体 (0, 0, 0, 0),  正二十四胞体 (2, 0, -2, 0), 正二十四胞
体 (2, 2, 0, 0) は面(正三角形)(1, 1, -1, ±1), (2, 0, 0, 0) を共有します。


§2    正六百胞体と正百二十胞体

 正五胞体の展開図は、正四面体の4つの面に、それと合同な正四面体をそれぞれ
くっつけることで得られました。このとき一つの辺を3つの正四面体が共有してい
ます。
 また、一つの辺を4つの正四面体が共有する場合として、正十六胞体がありまし
た。 では、一つの辺を、5つの正四面体が共有する正多胞体はあるのでしょうか。
 正四面体の2面角をδとすると、cos(δ) = 1/3 です。よって δ= 70.5388 度で
すから、一辺のまわりに5つ集めてもなお 
   360 - 70.5388 x 5 = 7.35 度
の隙間ができます。展開図が可能ですから、そのような正多面体は確かに存在します。

 次の写真は、正六百胞体の展開図の一部分です。正四面体を、各辺の回りに5つ
ずつくっつけていこうとしているところです。

    正六百胞体の展開図 

 正六百胞体の位相的展開図がどのようになるかを考えて見ましょう。それには、
正二十四胞体の位相的展開図を考えて、それを参考にしていくと、わかりやすくな
ります。
 正二十四胞体は24個の正八面体から成り立っています。
 正八面体の中に、内接して正二十面体があったことを思い出しましょう。

   内接正二十面体 

 黄金分割比 (1 + root 5)/2 を tau で表すことにします。上の正二十面体の頂
点は、正八面体の各辺を、ある向きに tau : 1 に内分した点です。

 正二十面体の20個の面(正三角形)と中心を結ぶことによって20個の四面体が
得られます。これらは正四面体ではなく、中心と頂点を結んだ辺の方が少し短いの
ですが、4次元方向に、原点からの距離が root 2 倍になるように引っ張りあげる
と、これらが正四面体になるようにできます。

 この様子を、1次元低いところの例で示すならば、正五角形の各辺と中心とを結
ぶことによって5つの三角形が得られますが、これらは五角形と共有している辺の
方が、中心と頂点を結んだ辺よりも長いので、正三角形ではありません。そこで、
正五角形の中心を、平面と直角の方向へ引っ張りあげることによって、5つの面が
正三角形からなる正五角錐を作ることができます。正二十面体の頂点の回りは、こ
のような正五角錐でできています。

 ともかく上のようにして、正二十面体を「底面」として、20個の正四面体から
なる「正二十面角錐」とでもいうものが、24個の正八面体の中に(4次元方向に
はみ出しているのですが)できました。ここに正四面体が 20 x 24 = 480 個あり
ます。
 しかし、これら24個の正二十面体は、6個ずつが少しずつ隙間を作ってます。
その隙間の数は24個で、正二十四胞体の24個の頂点と対応しています。すなわ
ち、正二十四胞体の一つの頂点を A とすると、A はそれを共有している6つの
正八面体の中の正二十面体の隙間に取り残されることになります。この隙間はどん
な形をしているのでしょう。

   正六百胞体の系表 
      図1   6 x 正8面体 その中に正二十面体

 その隙間の形は、一つの正四面体の4つの面に、それと合同な正四面体をくっ
つけた形、つまり正五胞体の展開図になります。

 この様子を低い次元にモデルを探すならば、立方体の6個の面(正方形)が、
正十二角形になるように、立方体の角を削り落とした多面体を考えます。すると
角は4個の三角形(四面体の展開図)になります。つまり3個の正十二角形に囲ま
れた隙間を、4個の三角形(四面体の展開図)が埋める形になります。これら4個
の三角形は合同な正三角形というわけではありません。まん中の三角形は正三角
形ですが、その周りの3個の三角形は、2等辺三角形です。

   角4切り立方体 

 この類似として、6個の正二十面体に囲まれた隙間を、5個の正四面体(正五
胞体の展開図)が埋める様子を想像して下さい。これら5個の四面体はすべて合
同な正四面体です。

 話を正六百胞体に戻すと、24個の正二十面角錐の隙間が24箇所あって、それら
は5つの正四面体からなる正5胞体の展開図24個によって、充填されます。従っ
て、これらの隙間を埋めるために正四面体は 5 x 24 = 120 個必要です。これで
合計 600 個からなる正六百胞体が得られました。

 正六百胞体がわかったところで、その双対はどのようなものか、見ておきまし
ょう。正二十面角錐の頂点の回りには、20個の正四面体が集まってきていますか
ら、その双対は20個の頂点を持つ正十二面体です。正六百胞体の各胞体となって
いるは正四面体の面は正三角形ですから、双対正多胞体は、正十二面体が、その
辺の回りに3つずつ集まっていることになります。
 念のため、正十二面体の2面角 δ がいくらかを調べてみますと、
   
で、 120 度よりわずかに小さいので、正十二面体をその辺の回りに3つ集める
ことができます。

 次は正百二十胞体の展開図の一部分です。正十二面体を各辺の回りに3個ずつ
くっつけていこうとしているところです。

    正百二十胞体の展開図 

正六百胞体のこれだけのデータから次の系表が得られます。
   正六百胞体の系表 
 正六百胞体の位相的展開図をつくるには、前にも述べたように、まず正二十四
胞体の位相的展開図を考えて、正二十四胞体を構成する各八面体の中に二十面体
を用意します。

位相的展開図位相的展開図
位相的展開図位相的展開図

 この図は、正二十四胞体の一つの頂点回りに、6個の正20面体を作ろうとして
いますが、4つまで作って、前後の2つを描かずに中断したところです。

 これらの図は Micro Soft Visual Basic Ver.6 を使って描いていますが、その
プログラムを  こちら に載せています。

 正百二十胞体の系表は、正六百胞体の系表を180度回転すれば得られます。
次に掲げておきます。
   正百二十胞体の系表 

§3    正六百胞体の頂点の座標

 正六百胞体の頂点の座標の決め方を考えます。そのためにはやはり正二十四胞
体から作っていくのがわかりやすいでしょう。元になる正二十四胞体の頂点の座
標の決め方は2通りあります。一つは
     (± 1, ± 1, ± 1, ± 1),   (± 2, 0, 0, 0) とその置換
を採用するものです。もう一つはその双対の
     (± 2, ± 2, 0, 0) とその置換
を用いるものです。
 前者の場合、まず次の問題を解いてみましょう。

問題  正二十四胞体の一つの胞(正八面体)
     (2, 0, 0, 0),  (0, 0, -2, 0),  (1, ±1, -1, ±1) 
に内接する正二十面体の12個の頂点の座標を求めよ。

注意  分母に tau + 1 = tau^2 が現れるので、あらかじめ正二十四胞体の座
標を tau^2 倍しておくことにします。これらの注意は今後省略されます。

 正二十四胞体の96本の辺上に、次の点が二つずつあって、正二十面体の頂点は、
そのうちの半分です。
 (±2, 0, 0, 0) と (±1, ±1, ±1, ±1) を tau : 1 に内分した点
     (±tau^3, ±1, ±1, ±1) とその置換 
 (±2, 0, 0, 0) と (±1, ±1, ±1, ±1) を 1 : tau に内分した点
     (±(tau + 2),  ±tau, ±tau, ±tau) とその置換 
 (±1, ±1, ±1, ±1) 相互を tau : 1 に内分した点
     (±1/tau, ±tau^2, ±tau^2, ±tau^2) とその置換
これらはそれぞれ符号の選び方と置換で64通りずつになり、合計192通りですが、
このうちの半分の96通りだけが使われます。
 あとは正二十面体の中心(元の正八面体の中心でもある)を4次元方向に引き上
げた
     (±2tau, ±2tau, 0, 0) とその置換
が24個で、合計120個となります。

 もう一つの双対正二十四胞体 B をあらかじめ tau 倍して、頂点の座標を
     (±tau, ±tau, 0, 0) およびその置換
としておくと、同じようにして胞(正八面体)に内接する正二十面体の頂点が
     (±tau,  ±1, ±1/tau, 0) とその偶置換  96個
となり、これらは原点からの距離が 2 ですから、残りの24個の頂点は正二十面
体の(したがって正八面体の)中心は
     (±1, ±1, ±1, ±1), (±2, 0, 0, 0) とその置換    24個
です。以上で正六百胞体の頂点120個が得られました。

参考書  一松 信(ひとつまつ しん)著 高次元の正多面体 現代評論社
名著です。本稿の内容は、全面的にこの本に従い、かつ、この本の内容を補足
する形になっています。

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