橋をめぐる山賊と海賊の戦い
形式論理における双対性



2004/12/2   掲載開始         .
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 むかしむかし、山賊が黄色の陸に住んでいました。陸は二つに分かれて
いましたので、二つの S に根拠地をもつ山賊は、海峡に橋をかけました。
山賊と海賊 
 ところが、青い海には海賊が住んでいました。二つの K に根拠地を持つ
海賊は、橋のために海峡が通れなくなってしまいました。

 橋をめぐってまる一日戦闘が続きました。戦い済んで日が暮れて、さて戦
果はどうなったのでしょうか。

   橋 Br が残れば    山賊の勝ち。海賊の負け。
   橋 Br が落ちれば   山賊の負け。海賊の勝ち。

 図2。  橋が直列に2つ架かっています。山賊は二つとも守る必要があ
ります。海賊はどちらか1方を落とせば通れるようになります。
山賊と海賊 
  橋 Br(1), Br(2) の両方が残れば        山賊の勝ち。海賊の負け。
  橋 Br(1), Br(2) の少なくとも一方が落ちれば、 山賊の負け。海賊の勝ち。

 図3。  橋が並列に架かっています。今度は山賊はどちらか一方を守れ
ばよく、逆に海賊は両方を落とす必要があります。
山賊と海賊
  橋 Br(1), Br(2) の少なくとも一方が残れば  山賊の勝ち。海賊の負け。
  橋 Br(1), Br(2) の両方が落ちれば      山賊の負け。海賊の勝ち。

 図2では、山賊から見れば、橋は直列に架かっていますが、海賊の立場で
みると、海峡の形は並列になっています。
 逆に、図3では、山賊から見れば、橋は並列に架かっていますが、海賊の
立場でみると、海峡の形は直列になっています。

図2を見ていると
  橋 Br(1) を残す かつ(and) 橋 Br(2) を残す   (山賊の勝ち、海賊の負け)
の「否定」は
  橋 Br(1) を落とす または(or) 橋 Br(2) を落とす(山賊の負け、海賊の勝ち)
であることがわかります。
また、図3を見ていると
  橋 Br(1) を残す または(or) 橋 Br(2) を残す  (山賊の勝ち、海賊の負け)
の「否定」は
  橋 Br(1) を落とす かつ(and) 橋 Br(2) を落とす (山賊の負け、海賊の勝ち)
であることがわかります。

 
 図4.  橋が3つ、直列になっている場合です。これからは「3つ」と
いうことは「たくさん」ということと解釈して下さい。
山賊と海賊" 
  すべての橋が残れば      山賊の勝ち。海賊の負け。
  少なくとも一つ橋が落ちれば  山賊の負け。海賊の勝ち。

 図5.  図4の双対です。橋が3つ、並列になっている場合です。
山賊と海賊" 
  少なくとも一つ橋が残れば   山賊の勝ち。海賊の負け。
  すべての橋が落ちれば     山賊の負け。海賊の勝ち。

 ここで、新しい記号を導入します。  と  です。
 ∀i∈{1, 2, 3} とは 集合{1, 2, 3}のすべての元iについて
という意味です。
 ∃i∈{1, 2, 3} とは 集合{1, 2, 3}のどれか少なくとも1つの元iについて
という意味です。ですから
   ∀i∈{1, 2, 3},  Br(i)が残った とは すべての橋が残った
という意味になります。また
   ∃i∈{1, 2, 3},  Br(i)が落ちた とは 少なくとも1つの橋が落ちた
という意味になります。従って
「∀i∈{1, 2, 3},  Br(i)が残った」 と 「∃i∈{1, 2, 3},  Br(i)が落ちた」 
とは、互いに「否定」の関係になります。

 記号「∀」を 全称記号、記号「∃」を 特称記号 といいます。

 ますます複雑になってきました。縦にも横にも「たくさん」あるのです。
山賊と海賊" 
 まず、例えば左の1列 山賊と海賊" を、一つの橋とみなします。

 この部分を T(1) とします。同様に T(2), T(3) を考えることができます。
すると、橋が3つ並列に並んだ場合、すなわち 図5 になりますから、山
賊が勝って、海賊が負けるのは 「∃j∈{1, 2, 3},  T(j)が残った」 場合
ということになります。
 ところで、 T(j) について山賊が勝つのは 図4 から 「∀i∈{1, 2, 3},  
Br(i,j)が残った」場合ですから、これらを組み合わせると 図6 で山賊が
勝つのは
   ∃j∈{1, 2, 3}, ∀i∈{1, 2, 3}, Br(i,j)が残った
場合ということになります。
 逆に、山賊が負けるのは、 「∀j∈{1, 2, 3},  T(j)が落ちた」 場合で
あり、T(j)が落ちるのは、「∃j∈{1, 2, 3}, Br(i,j)が落ちた」 場合です
から、これらを組み合わせると 図6で山賊が負けるのは
   ∀j∈{1, 2, 3}, ∃i∈{1, 2, 3}, Br(i,j)が落ちた
場合ということになります。j ごとに異なる i が選べることに注意します。

 要するに、全称記号と特称記号が組み合わさった命題の「否定」を作るに
は、順序を保たせたまま、全称記号を特称記号に、特称記号を全称記号に変
えて、最後の結論を否定すればいいということになります。

 次の 図7 は、図6の双対です。
山賊と海賊" 
 今度は上の海峡 山賊と海賊" を、一つの橋と
みなして T(1) とします。同様に T(2), T(3) を考えることができます。
すると、橋が3つ直列に並んだ場合、すなわち 図4 になりますから、山
賊が勝って、海賊が負けるのは 「∀i∈{1, 2, 3},  T(i)が残った」場合
ということになります。さらに T(i) について山賊が勝つのは 図5 から 
「∃i∈{1, 2, 3},  Br(i,j)が残った」場合ですから、これらを組み合わせ
ると 図7 で山賊が勝つのは
   ∀j∈{1, 2, 3}, ∃i∈{1, 2, 3}, Br(i,j)が残った
場合ということになります。

 逆に、山賊が負けるのは、 「∃i∈{1, 2, 3},  T(i)が落ちた」 場合で
あり、T(i)が落ちるのは、「∀j∈{1, 2, 3}, Br(i,j)が落ちた」 場合です
から、これらを組み合わせると 図7で山賊が負けるのは
   ∃j∈{1, 2, 3}, ∀i∈{1, 2, 3}, Br(i,j)が落ちた
場合ということになります。

 この場合も、全称記号と特称記号が組み合わさった命題の「否定」を作るに
は、順序を保たせたまま、全称記号を特称記号に、特称記号を全称記号に変
えて、最後の結論を否定すればいいということです。

 最後に練習問題です。

 問題1  図6は、図5の各橋に、図4を「代入」したものであることを確か
  めなさい。
  図7は、図4の各橋に、図5を「代入」したものであることを確かめなさい。

 問題2  山賊が勝ち、海賊が負ける場合が
  ∃i∈{1, 2, 3}, ∀j∈{1, 2, 3}, ∃k∈{1, 2, 3}, Br(i,j,k) が残った
  であるような 陸と海と橋の図 を描きなさい。
  またそのときの、山賊が負け、海賊が勝つ場合の条件を述べなさい。

 問題3  山賊が勝ち、海賊が負ける場合が
  ∀i∈{1, 2, 3}, ∃j∈{1, 2, 3}, ∀k∈{1, 2, 3}, Br(i,j,k) が残った
  であるような 陸と海と橋の図 を描きなさい。
  またそのときの、山賊が負け、海賊が勝つ場合の条件を述べなさい。

 問題2のヒント  うしろの 「∃k∈{1, 2, 3}, Br(i,j,k) が残った」の
  部分は i, j ごとに 「T(i, j) が残った」と言い換えることができて、
  A:  ∃i∈{1, 2, 3}, ∀j∈{1, 2, 3},  T(i, j) が残った
  B:  ∃k∈{1, 2, 3}, Br(i,j,k) が残った
  の2つに分解することが出来ます。Aは図6の場合であり、Bは図5の場合
  ですから、解答の図は、図6の橋に、図5を「代入」したものになります。

参考 
「否定文を作ろう」  もあわせてご覧下さい。
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