堆肥を作ろう
平成13年〜14年



2004/11/30   掲載開始    .
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                 コンポスト講座
                 長崎市科学館
                 平成14年11月9日

        堆肥を作る How and Why


1  堆肥を作ろう

 私は毎日を長崎大学の文教キャンパスで過ごしていて、緑豊かな環境
に一応満足しています。
 掃除のおばさん達が落ち葉を掃き集めていますが、これらはどうなる
のだろうかと気になって事務局に問い合わせてみました。すると、1年
間に2トン積みのパッカー車38台分が、東環境センターへ運ばれて燃
やされていると聞きました。
 以前、テレビで、堆肥に関する番組を見たことがありますが、これら
も堆肥にすることはできないだろうかと考えました。

 森の落ち葉は、土の微生物の働きでまた土に戻って行きます。これが
腐葉土です。
 堆肥作りとはこの過程を大量に短時間に進行させることです。そのた
めに発酵菌を混ぜます。これを「ぼかし」といいます。ぼかしの作り方
は後で詳しくお話いたします。

 落ち葉や除草の草を積み上げて、ぼかしを混ぜて、水を加えますと発
酵が始まり、温度が高くなります。真っ白い放線菌が現れ、50度とか
60度という高温になります。
 20日か30日毎に「切り返し」を行います。発酵菌は好気性といっ
て、酸素を必要とするので、空気に触れさせて、同時に水分についても
適量に調整します。堆肥は切り返しをするたびに、茶色から焦げ茶色に、
そして真っ黒にと変化していきます。

 できた堆肥で発芽試験をして見たところ、畑の土だけの場合と、堆肥
を混ぜた場合とでは極端な違いが出ました。
 この発芽試験の結果から、自分は大変なことをまったく知らずに来た
事、そしてこの事を多くの人に知ってもらいたいこと、特に学校で子供
達に体験してもらいたい事を痛感しました。これがこの講習会を準備し
た動機です。

2  堆肥の種「ぼかし」

 それでは、具体的に堆肥を作る行程を見ていきましょう。
 まず「ぼかし」ですが、すでに完熟堆肥があれば、15リットルの完
熟堆肥に米糠4リットルと鶏糞1リットルを混ぜ合わせ、水を加えて適
当な湿り気を与えます。さらにここで発酵菌を培養した溶液を加えると
効果的です。(たとえばアポロ興産が「土作」という商品名で発売して
います。)

 これを深さ5cmから7cmのトレイ(もろぶた)に広げます。一週
間くらいで水分が蒸発して乾燥状態になり、「ぼかし」ができあがりま
す。細かく砕いて、通気性のある袋に入れて保存します。
 米糠が発酵菌の餌となり、完熟堆肥が住みかとなります。発酵菌は
1ミクロンと小さく、他の細菌に食べられてしまいますが、完熟堆肥に
は発酵菌が身を隠すのにちょうどいい穴がたくさんあいている、多孔性
という性質をもっているのです。

 発酵菌の種としては、森の腐葉土を少し混ぜることも考えられます。
何をどれくらいの量でということは、実は余り正確な基準はわかりませ
ん。発酵菌がどれだけ増えたかを、目で見て直接確かめる事ができない
からです。
 発酵菌が少なければ、その「ぼかし」で作り始めた堆肥は完熟までに
時間がかかりますが、結局いつかは堆肥はできます。そんないわば、漠
然とした話です。

3  堆肥の仕込み

 次に「仕込み」ですが、まず枠を作る必要があります。コンクリート
パネル(略してコンパネ、180cm x 90cm 畳の大きさ)4枚で囲うと3
立方メートルの枠(底はない)ができます。

堆肥槽 

堆肥槽 

 これに落ち葉や除草を積んでいき、ぼかしを混ぜ、水を撒きます。ぼ
かしの量は材料1立方メートルに付き20リットルくらいです。枠から
盛り上がるくらいいっぱい仕込んでも大丈夫。1週間で 20cm くらいへ
こんでしまいます。仕込んで3日目くらいからぐんぐん温度が上がって、
50度から60度くらいになります。堀り起こしてみて白いカビのような
もの(放線菌)がいっぱい発生していれば成功です。

仕込み 
数学科の学生

 雨がかかるのもある程度は望ましいのですが、豪雨や長雨のときはシ
ートを掛けます。また暑い日が続くようなときは、やはりシートを掛け
て乾燥を防ぎます。

4  堆肥の切り返し

 「切り返し」は上と下が入れ替わることが望ましい。したがって隣へ
移すのが最も効率がいいのですが、同じ場所しか使えないときは、2度
手間になりますが、ブルーシートに出してまた元に戻します。
 このとき計画的に出して戻さないと、うっかりすれば上下入れ替わら
ない切り返しになります。

切り替えし 
数学科の学生

切り替えし 
数学科の学生

切り替えし 
環境科学部の学生

 第一回目の切り返しに一番注意を払います。材料が乾燥して硬くくっ
つきあっているので、ほぐすのに苦労します。水分も十分補給します。
発酵が順調でないときは、「ぼかし」を追加することも考えます。
 20日間以上の間隔で、2回目、3回目と切り返しを繰り返します。
そのたびに、始め茶色だった材料が、こげ茶色になり、真っ黒くなりま
す。もろく柔らかくなるので、3回目などはフォークに無理な力がかか
らなくなります。

 完熟した堆肥はそのまま畑に入れて、土壌改良剤として利用できます。
また篩に掛ければ、ぼかしの原料にもなるし、植木鉢で使う事もできま
す。篩に小枝などが残りますが、植木鉢の底に入れるとちょうどよいそ
うです。

耕す 
環境科学部の学生



5  畑に入れるなら完熟堆肥を

 堆肥は少量を作るのはかえって難しく、量が多いほど熱が逃げにくく、
高い温度になります。しかし量が多いと仕込みも切り返しもたいへんで、
3立方メートルなら4人くらいの共同作業になります。
 高い温度に達することは、完熟堆肥にするという意味でも、草種を殺
す意味でも大切です。完熟でないと、畑に入れたとき、土の発酵菌によ
ってさらに発酵を続けますが、このとき酸素を消費します。よって、根
が酸素を必要とする野菜と競合し、野菜が負けて病気になることがあり
ます。また、草種が生きていて、畑で芽を出すようでは困ります。

6  剪定した枝は破砕機にかける

 材料が落ち葉や除草のときはそのまま仕込みますが、剪定した枝など
はそのままでは無理で、破砕機(チョッパー)に掛けます。これでおが
くずのようになり、非常に細かい質の良い堆肥になりますので、なるべ
く破砕機を使いたいものです。家庭用の小さなものもありますが、営業
用の破砕機は安くても 180 万円、個人では無理で、共同利用という事
になります。太さ10cm の丸太まで処理できます。

 破砕機でおがくずのようになったものはそのまま畑に入れられそうに
見えますが、必ず1度発酵させたほうがよいそうです。そのままでは、
土の中で発酵をはじめ、土の中の酸素を使ってしまいます。そのため、
根に病気が出る可能性があるということです。

7  肥料か土壌改良剤か、

 堆肥は土壌改良剤として十分利用価値がありますが、落ち葉や除草だ
けでは窒素分がほとんどありませんので、肥料として使いたいという事
であれば鶏糞や畜糞を混ぜることが考えられます。このときは第一回目
の切り返しのときの臭いはかなり強いはずで、ある程度の覚悟は必要で
す。ただし臭いのは切り返しの最中であり、作業が終われば臭いはほと
んどありません。

8  家庭の生ごみはコンポスト容器で

 「家庭の生ごみを堆肥にして下さい」と、あちこちの自治体がコンポ
スト容器を安く提供しています。しかしノウハウを指導する力は十分で
なく、試みた家庭で腐らせてしまって、断念する場合が少なくありませ
ん。「土の上でやれば土壌の中に発酵菌がいて」などと無責任なことを
いう人がいますが、十分な発酵菌のいる土などというものは、そう簡単
に手に入るものではありません。こんなとき、先ほどの「ぼかし」が効
果抜群です。

 生ごみに「ぼかし」を十分まぜて、あるいは、「ぼかし」の中に生ご
みを埋めて、毎日かき混ぜていけば、簡単に堆肥化できます。
 自治体は「ぼかし」を安く提供するシステムを早急に作るべきです。

 家庭での堆肥作りは、臭いが心配ですが、完全に無臭というのは難し
いでしょうから、勝手口の外とか、ベランダでということになると思い
ます。夏には黒い蜂の幼虫(うじ)が発生しますが、落し蓋の要領で表
面に網をかぶせておくと、羽化できずに死んでしまいます。

 できた堆肥は鉢植えなどに使えますが、十分時間をかけて、完熟を待
つ必要があります。急いで使うと、未熟なため、大切な鉢植えを枯らす
羽目になることがあります。

9  小学校や中学校の環境教育として

 小学校や中学校で堆肥作りに取り組んでいただきたい。これにはたく
さんの理由があります。

 まず平成14年度から完全実施される総合学習の環境教育としてです。
生徒が、知識としてではなく、体験として環境教育を受けることを考え
たとき、これはすばらしい教材となります。

 私自身、自分の職場で、この4月から始まった総合演習という授業の
内容をどうしようかという事で、一昨年4月からこの堆肥作りを始めま
した。
 初めはこれだけ環境が問題にされる中で何もしないのは悪かろうとい
う、いわば免罪符として考えていました。しかし発芽試験を見て、これ
こそ今閉塞している教育問題の解決につながる希望ではないかという気
がしてきました。

 昨年の秋、ある小学校で堆肥作りの授業があり、手伝ったことがあり
ます。小学校などでは、堆肥の材料がそれほど多くないので、大き目の
コンポスト容器(200リットル)か、半分のコンパネ(90cm x 90cm) 4
枚で囲った枠(700 リットル)などが適当だろうと思います。

10  生ごみが腐ったら

 私達はこれまでいろいろな経験を積んできましたが、興味深かったの
は生ごみを腐らせレしまったときでした。
 昨年の秋、大学祭の模擬店からでる生ごみを、枯草の堆肥に混ぜて、
いっしょに堆肥にすることを試みました。

 混ぜて一週間後に腐ってハエがきて、うじがわきました。係りの学生
がきちんと記録していて、生ごみ 460kg とラーメンの汁など103 リット
ルを3トンの枯草の堆肥に混ぜたのでした。2週間後に切り返しを行う
とともに、腐った部分には「ぼかし」をたっぷりと混ぜておきました。
 その結果、一ヶ月後にもう一度切り返した時にはすっかりきれいな堆
肥になっていて、さらに4ヶ月後にその堆肥で、小松菜の発芽試験をし
てみたところ、悪い影響はまったくなく、普通の畑の土と比べて、この
堆肥を半分混ぜた場合の効果が非常によいことがわかりました。
 「ぼかし」の効果を、もっとも極端な形で確認できた事件でした。

11  堆肥の上で飼育されている豚

 兵庫県姫路市に事務所をもつ、福永微生物研究所では、1.5メートルの
堆肥の上で、600 頭の豚を飼育しています。この夏、環境科学部の学生
とじっくり見学してきました。

 豚の糞尿は、堆肥と混ざって一緒に堆肥になってしまうので、少しも
臭くないうえ、豚はその堆肥を食べてさえいます。堆肥には整腸作用が
あるので、他の飼育場によくみられる下痢などの症状がここではまった
くなくて、体重の増加が順調だそうです。
 餌もリサイクルで、病院などの給食の生ごみを、6立米の発酵槽のな
かで、発酵菌を加え 24 時間かけて攪拌してヨーグルト状にして、パイ
プで豚小屋に送りこむなど、その合理的なことに感心させられました。

 また、その福永微生物研究所は、県境を超えた岡山県にも堆肥工場を
もっていて、そこではさまざまな有機的廃棄物を堆肥にしています。
 幅3メートル、高さ2メートル、長さ45メートルのレーンが10本並んで
いるので、その容積は 2700 立米にもなります。
 ここで毎日1回、機械によって自動的に切り返されて、少しずつ送ら
れ、一ヶ月で反対側の端に到達します。そのあとは、熟成室に移されて
3ヶ月間保存され、完熟堆肥として出荷されます。

12  長崎市の堆肥工場

 長崎市はごみ処理施設を、3箇所もっています。東工場、西工場、三
京クリーンランドです。このうち、三京クリーンランドに、堆肥工場が
あります。
 そこでは、汲み取りの汚泥レーキ、剪定材、市内の学校給食の生ごみ
を材料にして、堆肥を作っています。年間それぞれ 3000 トン、750 ト
ン、150トンを処理しています。

13  地域のネットワーク作り

 地域のネットワーク作りという事で、少し考えてみたいと思います。
 堆肥の材料を出したいという人。植木屋さん。養豚家、養鶏家。家庭
や食堂などのの生ごみ。
 堆肥を作るところ。堆肥舎、破砕機、パワーシャベル。作業員、運搬
手段。
 堆肥を使いたいという農家。

 これらがなるべく狭い地域で閉じたシステムとなり、需要と供給が安
定する必要があります。
 また供給する側はどこでどう使われるかを知り、利用する側は、材料
がどこから来ているかを承知している必要があります。

 特に家庭の生ごみなどは、農作物に有害なものが混じらないように、
厳密な分別収集が徹底されなければならず、これはかなり厳しい条件で
す。お互いが信頼関係にあって初めてシステムが生きて機能します。

 数年前、いくつかの自治体が堆肥作りを試みてかなりの投資をしなが
ら、その後撤退しています。ごみを処理することだけを考えて、堆肥が
どう使われるかに思いが至らなかった結果でした。使う方から考えてい
って、どんな堆肥が必要か、そのためには材料として何が利用できるか、
という逆の発想を必要としています。行政は、地域のネットワーク作り
を援助して欲しいと思います。
 

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