中国便り
初めて日本語を教えてみました



2006/04/28   掲載開始         .
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 中国福建省に行ってきました。3週間ほど滞在していました。福建省
は、中国で台湾に一番近い省です。海のシルクロードの中継点でもあり、
歴史的にも古い街がたくさんあります。多くの華僑を出していて、長崎
の中国人にも、福建省出身者がたくさんいるはずです。

 そこで私は初めて日本語を教えるという体験をしていました。とりあ
えず知り合いの家族のお嬢さんとそのお母さんを生徒にして、毎日2時
間ずつ、昼は二人とも仕事があるので、夜の7時半からの夜間授業です。

 第1日目。「おはよう」とか「さようなら」を教えるのかと思ってい
たら、まず「あいうえお、かきくけこ、さしすせそ」の15文字。その
発音と書き取り。その15文字の範囲での「うし」とか「すいか」、
「あかい」「あおい」など、簡単な単語の発音と書き取り。15文字し
か使ってはいけないといわれたらどんなに不自由かを噛みしめました。

 2日目で「たちつてと、なにぬねの、はひふへほ」。「いぬ」「ねこ」
が扱えます。自由度は爆発的に広がります。15文字の順列組み合わせ
と30文字の順列組み合わせではそれこそ「桁違い」なのですね。
3日目で五十音がそろい、「みかん」「さくら」など。4日目と5日目
で濁音を扱い、「みず」「でんき」など。このあたりで、使えない音か
らくるストレスから解放されていきます。
 6日目が促音で「きっぷ」とか「いっぽん」など。7日目が長音で
「おかあさん」「おとうさん」。

 「おばあさん」を教えたところで、お嬢さんがお母さんを指差して
「おばあさん」。どこの国でも若い娘は年齢については辛らつです。お
母さんが機嫌よく笑っているからこちらが咎める筋合いはないのですが、
一人っ子政策のせいか、ずいぶん甘やかされて育っているなあと感じま
す。

 単語の意味は私がカタコトの中国語で伝えます。その発音が良くない
とお嬢さんが直してくれるので、授業の途中で突然攻守所を変えること
になります。私の発音が合格するとまた授業に戻ります。

 8日目と9日目で「きゃきゅきょ、ぴゃぴゅぴょ」などが終わって日
本語で使われる音が出揃います。

 中国人は童謡の「さくらさくら」が好きです。ある留学生が「日本の
国歌だと思っていた」と言ったことがありますが、なるほど、議論の多
い「君が代」はやめにして、「さくらさくら」を国歌にするのはいい選
択だと思いました。

 「さくらさくら」を教えてくれと言うので、歌詞を書き出してみたら、
促音も長音も使っていない、きゃきゅきょもない。要するに五十音と濁
音だけだから5日目には教材として採用できる。待て待て。これは何を
意味するか。

 丸谷才一さんの文章を読んでいて「平家物語の弾き語りによって、和
漢混交文が日本の津津浦浦に定着した」というのがあって、とても気に
入りました。それまでの日本語は和語が中心で、外来語である漢語はわ
ずかに貴族階級の特権だったようです。

 促音、長音、きゃきゅきょなどは、漢語を発音するための音であって、
「さくらさくら」は和語だけで書かれていたためこれらの音は必要なか
ったことに気が付きました。では「夕焼け小焼け」はどうか。「からす
といっしょに」の「いっしょ」が漢語。和語なら「ともに」となるとこ
ろ。「そらにはきらきらぎんのほし」の「ぎん」が漢語。和語なら「し
ろがね」とでもするか。

 このあと、カタカナと外来語(主として英語)との関係で数日を使い、
かなが自由に使えるようになりました。

 これでやっと準備完了。標準的な教科書である「みんなの日本語1」
に進めるようになりますが、私の授業はここまで。全部で16日だった。

日本語教室 
小さな小さな日本語教室

 私に日本語教育の指導をしているのは、かつて日本で国語学を専攻し
ていた留学生です。大胆にも私に「先生の日本語は間違っています」と
挑戦してきたことがありました。何を猪口才な。内容はすっかり忘れて
しまいました。「いや、そんなはずはない」と反論したのですが、激論
の末完膚なきまでに負かされました。「日本人はみなこのように使って
いるし、自分も今日までこのように使ってきて、何の支障もなかった」
となおも抵抗したら「だから正しいというなら、国語学の存在意義はな
くなる。」

 これには参りました。国語学を数学に置き換えてみれば一目瞭然です。
間違ったまま一生涯問題にならない錯誤なんていくらでもありえます。
悪あがきすればするほど自分の傷が深くなるだけ。すなおに国語学の軍
門に下ることにして、以来、折に触れて外国人に日本語を教えるときの
大切な要点を教わりました。

 「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな」。「なら」は未来、「だら」は
過去。説明するのに最適な例だといいます。「なるほど、日本語を教え
るとはそういうことか。」じわっと日本語を教えてみたいという気にさ
せます。とにかくこの人は寝ても覚めても教材研究に余念がない。

 「先生、地元へ帰省しますが、先生もついてきますか?」という申し
出に一も二もなく、「おお、行く行く」というわけで初めてここを訪れ
たのがもう4年以上前になります。最近は一人で来て一人で帰ることも
できるようになりました。

珍しい果物。
くだもの 
名前は聞いたけれど忘れました。
珍しいけれど、酸っぱくてあまりおいしくない。おいしく食べるには
一工夫必要か。断面が星の形になるのが面白い。

外へ出てみると
日本語教室 
楼門が道路の行く手に立ちはだかっているように見える。
でも、ここはロータリーになっていて、その真中がこの楼門。

植木屋さんの温室。勝手に入っても叱られない。
温室 
でも、人に会ったら、ニイハオと挨拶して、ちょっと見せてください
という。あたりまえだけれど、、、

温室
見事な胡蝶蘭。これぐらいはわかる。

温室
見終わったらシエシエとお礼を言って出る。あたりまえだけれど、、、

あちこちにある土地神様。
土地の神様
中では麻雀で盛り上がっていた。生活を楽しむおおらかな中国の人々。

バス路線は充実している。
バス停
市街地図と付き合わせると、行きたいところへ行ける。運賃は路線に依
る。どこまで乗っても1元(16円)の路線と2元(32円)の路線。
とにかく安い。時刻表はどこにもない。来るまで待つのが中国流。時計
を持っているような人はタクシーを使う。初乗り1.6キロまでが6元
(100円)。
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